儲からない農業なんておもしろくない!―千葉県・桜井誠さん

gazou 044
桜井誠さん。趣味・サーフィン。農業関係の本を読み漁るすごい勉強家です。
「サーファー農民って紹介してくださいね!」ってことでしたので、そう書きましたです。



「農業って、9時から5時までの仕事じゃないんですよね。
忙しいときは朝早くから働いて、夜も遅くなる。それが当たり前の仕事。
だから、農業参入する企業がうまくいかないのは当たり前なんです」

もともと実家が農業を営んでいたという桜井さん、昔から「いつかは農業を」と思っていました。
サーフィンが好きなので千葉に引っ越し、某居酒屋チェーンの自社農場でアルバイトをし、
その縁で現在、「株式会社雲地ファミリー農園」で働いています。

自力で農場を立ち上げたわけではないけど、新規就農者。
わざわざ法人化された組織に入ったのには理由があります。


gazou 048
この日はブロッコリーやかぶの出荷でとっても忙しい日。
このブロッコリーをいただいて帰ったのですが、本当おいしかったです!
おいしいものには説得力がありますよね~。



「僕の実家はクワイと米、れんこんを栽培してました。
父がもう農業を辞めちゃってたので、僕は後継者にはならなかった。
でもなんとなく農業という仕事から離れたくなくて、
居酒屋チェーンの農場でアルバイトしてたりした。

そこで学んだことは、サラリーマン感覚では農業はできないってことでした。

自分たちの作ったものが即報酬になるんじゃなくて、
毎月同じ額のお給料をもらえて食べものを作るでしょう。
そうすると、食べものの生産を自分のこととして捉えられないんです。

だって、うまくできなくてもお金をもらえるんだから。それで一生懸命になれますか?
だから、ちょっとここは違うなって思ったんです。

そんなとき、雲地さんに会って、後継者のいない雲地さんの話を聞き、
農家を継ぐのじゃなくて、農業を継ぐって考え方もありだと思ったんです」

雲地康夫さんは、現在の農業の在り方について疑問を持ったことなどから、
昨年、株式会社雲地ファミリー農園を立ち上げました。
家族経営という昔からの農業の形を、なんとか変えたいと考えています。

gazou 039
親子というか兄弟というか、なんだかとっても仲の良い雲地さんと桜井さん。
面白い勉強会や興味深い農家があると聞くと、フットワーク軽くぴゅっと行ってしまうとか。
同じものを見て感じて話し合い、お互いに得たものを共有する…そんなプロセスを大切にしています。
これから一緒にいろんなものを作って行こう!という情熱・熱意・男気…とっても熱かったです。



「農業って家族経営でしょう。どうしても視野が狭くなってしまう。
だから会社にすることで、いろんな経験をしてきた人が入れるしくみを作った。
その人たちの経験や知識を合わせて農業の可能性を探っていきたいんです。

家族経営だと【誰かがいなくなったらできなくなってしまう農業】なんですよね。
会社組織にすれば、【誰かが継続してくれる持続可能な農業】になる。
農家という枠にしばられずに農業ができるでしょう。
株式会社になっていれば、社員が農業を継続していくことができるんです。

それに、家族経営の農業には経営的にも限界がある。

家族皆ががむしゃらにがんばればお金は儲かるかもしれないけど、
時間給換算するととてもサラリーマンには勝てない。農業ってそういうもの。

だけど、法人化することで、経費や売り上げがはっきり見えるようになる。
そうしたら、どこが弱いのかわかるようになる。
費用対効果を見ながら、効率よく面白く、強い農業を考えていきたいんです」

gazou 053
この日、成田で西出さんの勉強会がありました。雲地さんも西出会の会員です。
除草剤を使わない雲地さん、西出さんに効率のいい除草の方法を質問したところ、
「草を見て草を取らないのは駄農」と言われ、ちょっとショック。でもこの畑を見たら、
確かに草が生えすぎかも…生えてる草はハコベなので、土がいいってことではあるんですけどねえ。



何軒かの農家と話をすると、割合とすぐに気づくことですが、
技術を通じた農家同士の横のつながりって、意外にないもの。

高い技術を持っていても、それを誰かに教えるなんてことをする人は、
そんなにたくさんいないものです。

農家は個人事業主ですから、自分が一番。そのせいか人の話を聞かない人も多く、
有機農業などの技術の継承がなかなかうまくいかないのは、こういう背景も影響しています。

だから、自分の技術を惜しげもなく人に与え、同じだけの高収入を得られるまで
指導する私の師匠、西出隆一さんはスゴイなあ…と思うのです。

そういった閉じられた考え方にも、風穴を開けたい…
桜井さんはそんな風にも思っています。


gazou 047
11月にもなると朝は凍ってたりするブロッコリー。溶けるのを待って収穫。
冷たい風が吹く中、延々とブロッコリーを切る作業は、確かに楽しくなさそうです。
でも自分が栽培したものが収穫できる喜びはあるわけで…
それを食べた人が「おいしい!」って言ってくれれば、それも喜び。
でも現在の流通では、消費者の声が農民に届くことはありません。
そこもなんとかしたいと思っている桜井さんと雲地さんです。



「よく研修生と一緒に作業するんですけど、農業って楽しいって言うんですよ。
僕は絶対楽しくないと思う。大根を延々と抜き続ける作業のどこが楽しいのかなって思う。
同じことばっかやるのは、誰だって楽しくないですよ。

楽しいって一過性のものでしょ。
「あっ!楽しい」って思っても、それは継続されないじゃないですか。
楽しい=好きでは絶対にない。

僕は農業が好きなんです。楽しくなくても続けられるのは、農業が好きだからなんです。
そこんとこを勘違いしてる人って、絶対にいると思う。

だから農的生活って考え方が、僕にはよくわからない。
農業やるならちゃんと経営的に成り立つ、利益がきちんと出る農業をやりたい。
ちゃんとした技術も学びたい。

そのために今、社長といろいろ試行錯誤しているとこなんですよ」


gazou 049
雲地さんの畑は3町(ha)。うち1町が有機JAS認証を取得した圃場です。
新規就農で有機JAS認証を取得するなど、なかなか難しいこと。
すでに技術も基盤もあるところに就職するというのは、かなりのメリットがあります。



雲地さんと桜井さんは社長と使用人というより、農業を軸にした同志のようなもの。
同じ立場でものを考え、いいなと思うことをとりあえず試してみる。
そうしているうちに、自分たちの目指す農業の形が見えてくるに違いない…
雲地さんはそう考えています。

「今ね、新規就農者が何組かこの地域にも入って来てるの。
その子たちは一生懸命農業に取り組んでて、それはそれでいいと思うんだけど、
それでは変わらないなと思うんだよね。

新規就農者が入ってきた分、高齢化の農家がやめていく。
細胞は入れ替わってるけど、担い手はできるけど、農業自体は変わらない。
そうじゃなくって、もっと地域が元気になるようなしくみがないかと思ってるんだよね」


gaszou 060
ハウスがあれば雨降りの日に作業ができ、出荷時期のコントロールもできるため、
この地域では、どの農家もハウスをいくつも持っています。
惜しむらくは、ハウスが露地畑の補完的な役割しか持っていないこと。
この施設の有効活用なんかも、今後考えられるかもなあ…と雲地さん。
ハウスがあるっていうのは、単価の高いトマトなどの果菜類が作れるってことなんですから。



食べものだけ見てると見えない、その背景にある大切なことを、
今は食べる人も作る人も、忘れてるんじゃないか、
だからそういったことも伝えていきたいと雲地さん。

自分たちは食べるもの、いのちを作るものを作ってる、
安心・安全は、食べものなんだから当たり前。
そのうえでおいしいものを作っていきたいと桜井さん。

「3年後にどうなってるか、もう一回見に来てよ。形になってると思うから」

まるで親子のように、兄弟のように、何でも語り合っているお二人を見て、
これから雲地ファミリー農園が新しい農業の形を作ってくれるに違いない…
そんなふうに感じましたです。

3年後が楽しみです。

★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村


関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

ほんたべさん、こんばんわー。とても勉強になりました。うちの社長も家族経営ではなくて会社として経営するには云々・・・と話していたことを思い出しました。
3年後が楽しみですね♪がんばって欲しいです!

同感です。

 「儲からない農業なんておもしろくない!」
確かにその通りだと思います。
記事を読んで、思わず頷いてしまいました。

 なぜか農業って(特に有機農業なんだけど。)
儲けることはあまり重要じゃないみたいに思ってる人が
多い気がするんですよね。
 儲けるためなら何でもいい(偽装とか)みたいになってしまうのは
いけないとは思うけど。
ちゃんと利益を得なければ農業は衰退していくばかりだと思うんですけどね…。

 な~んてあまり儲かってないので偉そうなことは言えないんですけどね。
 うちの農園にも3年後また来てくださいよ。
そのときには順調に儲かってるか、もしくは辞めてるかの
どっちかだと思いますから。

 あ、そうだ。
やっとのことで、ブログ村のバナーを貼ることが出来ましたので、
気が向いたらまたポチッとしてください。

 あ。あと。
うちのブログにほんたべさんのリンクを貼らせていただいてよろしいでしょうか?
こちらのブログにもリンクを貼っていただいてるみたいなので…。

 では、また。
次の更新楽しみにしております。

Re: No title

駆動さん

かなり大規模な感じなのに、まだ家族経営的なところがあるんですね~。
そう言えばアットホームな感じでしたね。

そろそろ雪のシーズンですね。
風邪ひかないように気をつけてくださいね。

Re: 同感です。

のんのんまいさん

リンク、全然OKですよ~はってくださいまし。
ありがとうございます!

> ちゃんと利益を得なければ農業は衰退していくばかりだと思うんですけどね…。

そうですね。
有機農業は思想的なところが強いので、禁欲的な人が多いような気がします。
ギラギラするのも「うっ」って感じですが、再生産可能な収入は必須ですよね。

のんのんファームさんも利益がガンガンあがるよう、がんばってくださいね!
辞めるなんて言わずに…野菜、本当においしいんですから!

3年後、バリバリ儲かっててメディアに露出しまくってるような農家になってくださいね!
応援しております。

初めまして!

リンクを辿ってやって来ました。
千葉県で野菜を作っています。
・・・といっても家庭菜園ですけど。
ご縁があり、山武市の農家さんと月1回のペースである農法の勉強会に参加しています。
同じ山武にこのような考えを持った方がいらっしゃるとは知りませんでした。
農家さん同志のネットワークができてくれば、いろいろな技術も残されて行くと思います。

Re: 初めまして!

ちゃありぃふぉとさん

はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
ブログ、拝見いたしました。
噂に聞いたことはあるのですが、炭素循環農法…難しそうですね。

山武は有機農業運動が昔から盛んな土地でしたので、
面白い考え方をしている人がたくさんいると思います。
ご紹介した雲地さんは、農家に珍しい柔軟な考えを持っていてとても楽しい方です。

農家同士のネットワークってなかなか難しくて、よく聞く話は
農家が話が聞けるのは農協と市場、あと近所の人2~3人くらいしかいないとか…。
消費者の声も直接聞けないと嘆く人が多いです。

何かのきっかけで地域のネットワークができていくといいですね。
横のつながりって絶対必要ですもんね。

微力ながらブログとWEBサイトを通じて、なんかネットワーク作りたいとか思っている私です。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR