きのこという生きものの不思議

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毎年まつたけは居酒屋とか料理屋で土瓶蒸しとかごはんとか食べます。
自分で料理することなどめったにありません。買わないからです。
しかしまれにいただいたりすることがあります。その際に
「わー、菌根菌もらっちゃった!」とか思う自分がちょっとイヤです。



わたくしはきのこが好きだ。

好きっていうのは、カモノハシとかハリネズミが好き!ってのと同じで
生きものとして非常に魅力的だと思うが食べものとしてはそうでもない。

わたくしがきのこを好きな理由は、野菜みたいに栽培されたりするくせに、
実は「菌」で非常に変わった生き方をしているところにある。

その証拠に「きのこ」とかかわいい名前で呼ばれるが、実はあれは
「子実体」という菌が胞子をまき散らすために発生させる器官であり
言ってみれば生殖器のようなものである。

わたくしたちは子実体とともにおそらく胞子も食べているに違いない。
だからきのこを食う=菌を食うってことでもある。
だからきのこを生で食うなんてそら恐ろしい気がするが
マッシュルームを生で食うステキな奥さんとかいらっしゃるのだ。

ひいー、コワイよう。

レイ・ブラッドベリの『ぼくの地下室においで』とか
昭和の名作映画『マタンゴ』(水野久美が美しい)のように
きのこを食べてその菌に汚染され、体を乗っ取られ、もしかしたら
違う生きものになってしまったりするかもしれないとか思うと
うぎゃあああおう!!! とか叫びたくなるが、みんな違うのかな。

違うか。

さて、そのへんは置いといて。
きのこにはおおまかに言うと腐生菌と菌根菌の2種類がある。

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原木シイタケって雷が落ちると発生するんだって。
あとホダ木をビシっと叩いても発生するとかで、もしかしたらあの
「ホクトプレミアム!!」と叫ぶと発生するCMってなんか
この逸話を知ってる人がつくったのかもと思わないでもない。



腐生菌のなかにもいろいろな種類がいるが、
朽木を分解して栄養を取り生育するきのこを木材腐朽菌と呼ぶ。
この代表選手はシイタケやエノキダケ、ヒラタケなど
現在スーパーで販売されている栽培品種である。

ちなみにマッシュルームは牛とか馬の糞に発生するきのこで、
糞生菌と呼ばれるんだけど、そう聞くとなんか生で食うとかいう
マッシュルームの魅力が半減する気がするけどまあいいかわたくしは食べないし。

現在のマッシュルームは堆肥で栽培されているようである。

木材腐朽菌の栽培は人工的に作られた培地で行われ、菌床栽培と呼ばれる。
培地には栄養剤なども添加されるため、栽培きのこは生育が早く、
とくにシイタケは味が淡白でなんつーか歯ごたえもなくて培地の味がする。

シイタケ嫌いの人はこの培地のニオイがキライな可能性があるから、
原木栽培のシイタケを食べてみるといいかもしれない。
ちなみにわたくしがそうでした。菌床のシイタケは今もキライです。

原木シイタケは1年から2年かけてホダ木に菌を充満させて発生するが
(その間ホダ木を水につけたり場所を移動したりですごーく大変)、
菌床栽培のシイタケは180日で出てくる。しかもなんかでかい。
でかいから得した気分になるが、食べてみると細胞が粗くて
味が薄くて培地の味がして、以下同文(しつこい?)。

きのこ(子実体)は胞子を飛ばすために出てくるので、
栽培品種でもかさの裏から胞子を取ろうと思えば取れるが、
品種登録されたきのこの自家増殖は種苗法で禁じられている。

わたくしの知りあいのきのこ農家は山に行って珍しいきのこを見つけ、
その胞子を取って培養し交配させてオリジナルきのこを作っていた。
きのこはそういうことができるからおもしろい。
そういうことに血道を上げている人もいた。とてもおもしろい。

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菌根菌の代表選手・まつたけ。毎年同じところに発生する、
とかいう噂を聞くけど、見たことがないから不明。天然のきのこって
キノコバエの幼虫が潜んでたりして見つけると一気に食欲がなくなるが、
そういう人は天然きのこを食べてはいけないのでしょう。



さて、もうひとつの菌根菌の代表選手は、マツタケや松露、トリュフである。
どれも非常に貴重で高価なのは自然発生したものしかないからだ。
植物の根っこと共生関係にある菌根菌のきのこは人工栽培ができない。

そう言えば以前、鳥取砂丘の防風林(松)で松露がよく取れたらしいが、
数十年前からバッタリと取れなくなったと親戚のおじさんが言っていた。
天候のせいか、マツクイムシ防除のせいかしらとか思ったりするわたくし。

というように菌根菌の子実体は気難しいのだった。

ところで冬虫夏草とかナラタケのように、一方的に栄養を奪取して
相手を殺す、あるいは枯らしてしまう菌は寄生菌と呼ばれる。
これらはきのこだけどヒトにとっては木の病気と受け止められている。

しかしナラタケはそもそも朽木を好む木材腐朽菌であるのに
なぜか吉野の桜に寄生し桜をバンバン枯らしているらしいのだ。
なんでそんな違う性質が突然出るわけ? 的なところが
きのこの不思議であり、なんとなく不気味なところでもある。

あと、ナラタケっておいしいんだって。そのへんもさらに不気味だ。

さて、ここで問題提起。

某D社時代にきのこの勉強をした際に読んだ本に(題名も著者も失念)、
ヒトがこのように通年でさまざまなきのこを大量に食べるようになったのは
現代が初めてだそうで、こんなに菌を食べて大丈夫かどうか
実はわかっていなくってちょっと心配、的なことが書いてあった。

トンデモな人が書くならトンデモネタだが、これを書いたのは研究者である。
わたくしは少しビビった。

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菌床栽培のシイタケはこういった人工の培地で栽培します。
ホダ木をあちこちに移動させる的な手間はかからず楽ちんなので、
あと安いので、菌床シイタケしか売ってないスーパーは多く
原木シイタケは絶滅危惧種になりつつあります。



たしかに栽培品種のきのこがやたらと増えたのはここ数十年で
それ以前はシイタケとエノキダケしかなかった。
このふたつは江戸時代から栽培されている歴史あるきのこだが、
タモギタケとかハナビラタケとかはそうではない。

も、もしかしてマタンゴ的なことになったら・・・どうしよう。ううううう。

つーことで、先日上杉景勝(遠藤憲一氏)がマツタケ名人に扮するCM
「ホクトプレミアム!!」を見て思わず霜降りひらたけを買ってしまったが、
あのCMのようにきれいな奥さんになってしまったらどうしようとか思うわたくし。

い、いや、いいのかそれは。

わたくしは『マタンゴ』とか『ぼくの地下室においで』とかのせいで
からだがきのこの菌に乗っ取られるという変な妄想に取り憑かれていて
そんなにきのこ(を食べるの)が好きじゃないのかもしれない。

なんてことに急に気づいたいつまでもクソ暑い秋の夜でした。
まつたけごはんはおいしかったです。


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日本一エコなきのこを栽培する人―前橋市・自然耕房(株)

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生育中のまいたけくん。まだちょっとちっちゃいですね。アフロヘアみたいです。
まいたけの栽培室はアフロの小人がたくさんしゃがんでるみたいで、とってもかわいいのです。


きのこの生態をご存じですか。

知れば知るほど変わった生きものだなと思ってしまうわたくし。
だからきのこ屋さんの見学とか大好き。きのこ屋さんの話を聞くのも好き。

そんなわたくしが初めてきのこ栽培を見たのが、群馬県にある自然耕房さんでした。

知らない人がほとんどだと思うのですが、実はきのこ栽培には、
大量の電力を必要とします。

きのこ栽培というのは人工的な培地にそれぞれのきのこの菌を植え付け、
それぞれのきのこに適正な環境を作ってやり、発生させ生育させるもの。
自然環境の中では年に一度発生するきのこの環境を、
常時準備してやる必要があるのです。で、その環境は電気で作ります。

つまり、きのこは電気でできているのです。
そんなきのこづくりに、疑問を持った人がいました。

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栽培に使う電力を少しでも減らそうと、屋根には太陽光発電パネルが並びます。
白い王蟲の目みたいなのは、アクリル製の採光窓。ここから入る光で照明を使わずに済むのです。
どちらも電気料金では回収できないほどの経費がかかっています。

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採光窓を栽培室から見たところ。けっこうな光が入ってきていて、ほとんど照明は必要ありません。
きのこ栽培では厳禁と言われている床に水をまいて温度調整をしたり、薬品での消毒をしなかったり。
電力同様、佐藤さんのきのこ栽培も、きのこ屋さんの常識から大きく外れたものでした。


「きのこ栽培に電力をそれほど使わない方法があるんじゃないか」

自然耕房の社長・佐藤英久さんは、きのこ栽培に取り組む前、
空調設備の会社で働いていました。きのこ屋さんの空調なども長年見ていて、
「こうやったらどうだろう。あれはどうだろう」といろいろと気づいたことがあったそうです。

人生も半ば過ぎ、自分のためというよりも地域のため、環境のため、
循環型のきのこ栽培をやってみようと思い、自然耕房を立ち上げました。

その循環は徹底しています。

まずきのこの栽培に使う菌床を、地元でできるだけ手配する。
栽培後の菌床をリサイクルする。さらにその廃菌床を堆肥化する。
菌床を包む容器を燃料にし、その熱できのこを栽培する。

これが栽培・環境においての循環。

そしてもうひとつ。地域活性という循環もあります。

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近隣の原木栽培のホダ木を回収して、まいたけの培地に加えています。
通常は、きのこ培地は輸入のコーンコブ(とうもろこしの軸をチップにしたもの・もちろんGM作物)。
広葉樹の粉を使うのは、経費もかかるしまいたけの生育期間も長くなり、効率が悪いので、
早く生育し入手しやすく安価なコーンコブが一般的に利用されています。

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で、これがまいたけの培地。キューブ型のポリ袋にオガコを入れてあります。
ここへ植菌すると、トップの画像のようにまいたけが出てくるのですよ~。不思議ですね~。



まず余剰分のきのこを販売するための施設「直売所」を作り、
きのこの売り先と地元住民の雇用を発生させました。

直売所ですから「売り場」には地域の農産物を置きます。
これでJAに出せない小規模農家の売り先を生み出しました。

きのこ工場できのこの栽培に携わるスタッフは、
一般的には雇用が難しい障害者と高齢者を主に採用しています。
このことにより、地元でお金が回る経済の循環も生まれたのでした。
現在では、自然耕房というきのこ会社を軸に、いろいろなものが循環しています。

「最初はお金のことには気づいてなかったんですよ」佐藤さんは言います。

「障害者や高齢者、そして地域のおばちゃんたちが働ける場を作りたい。
純粋に雇用を発生させたいという思いだけでした。

でも、お金が循環するってことに、後で気づいたんです。

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直売所では自然耕房のきのこが割安で売られています。白まいたけ、人気です。
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地産地消・身土不二。自然耕房の理念のひとつ。それを実現したのが直売所です。
近隣のじいちゃん、ばあちゃんの農産物が格安で販売されています。



月に5万の収入で、何か経済の役に立つのかと最初は思ってた。
でもそうじゃないんです。5万でも3万でもいいんです。
毎月固定した収入があることで、人はそれを使う気になる。

農家ってのは、お金を貯めたらなかなか使わないですよ。
儲かる時もあればそうじゃない時もある。農業は収入が不安定なんですから。

しかし、現金収入が月々5万あると、それはあてにできるお金になります。
毎月収入があるという安心感が、お金を使うことにつながるんです」

効率優先で考えれば、高齢者や障害者を雇わない方がいい。
電力は使いたい放題に使い、資材は一回で廃棄してしまえばいい。
実際にその方が利益が上がると佐藤さんは言います。でも絶対にやらないのです。

その理由は、非常にシンプルなのでした。

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まいたけを収穫後の培地を再利用して、うすひらたけを栽培します。
このきのこ、煮込みうどんや芋煮にするといい出汁が出るおいしいきのこ。
まいたけと少し性質が違うため、まいたけの培地を再利用できるのでした。

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うすひらたけを収穫後は、培地は堆肥化。培地が入っていたポリ袋は、
こんな風にまとめられ、別の種類のきのこを栽培するためのボイラーの燃料になります。
きのこ栽培の上流から下流まで無駄を極力排して、循環の仕組みを作っています。



「私は実は反原発なんですよ(笑)。でもきのこ屋がそんなこと言ってどうする、
きのこは電気で作るものなんだから。じゃあ、できるだけ電力を使わないしくみを作って、
ちゃんときのこが栽培できるというモデルを作ろうと。

私が成功したら、真似するところが出てくるでしょう。
成功すれば人は真似するものなんです。そうでないと説得力がない。
反対するだけでは。

残念ながらまだ成功には遠いのですが。いつかは実現したいと思っているんです」

屋根には太陽光発電パネルが、そして採光のため天井に窓が設置されています。
太陽光パネルには、今後何十年も電気料金では回収できない経費がかかっています。
また、天井の採光窓は、当時研究段階だったものを商品化してもらったそう。
そうまでして、循環型のまいたけ栽培を実現しようとした佐藤さん。

その理念の徹底・貫徹力には一言。「すごい」としか言えません。

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何年も前から存じ上げていたのですが、今回初めて「反原発」であることをお聞きしました。
できるだけ電力を使わずにきのこを栽培できるモデルを作りたい。その夢を私も応援したいです。
最近通勤に自転車を使って17kmの道のりを通っているという佐藤英久さんです。



もっとその取り組みを知ってもらえることが、売り上げが上がることが、
佐藤さんの理念を実現することに近づくのに。そう思うのですが、

「宣伝しない、ウソつかない、セコイことしない。うらやまない、真似しない。
そんな風に思って今までやってきました。まだまだなんですよ。

これからは廃菌床の堆肥を使って野菜を作りたいんです。
きのこの循環は、その野菜を作ることで完結する。でもまだ忙しくてできない。
どんな成分を入れてどのような作り方をすればいい野菜ができるのか。
いろいろとやってみたいですねえ」

日本中探しても、こんなきのこ屋さんはいないに違いありません。

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まいたけ、うすひらたけの他に菌床と原木栽培のしいたけも作っています。
しいたけの培地って、菌が回る間にほとんど木のようになってしまうらしいです。
直売所に行くと、いろんなきのこが置いてありますよ。ぜひ行ってみてくださいね!



脱原発、リサイクル、地域活性、循環…地道に粛々と群馬の片田舎で
これからの日本を支えるであろうモデルを作ろうとしている佐藤さんの自然耕房。

もし自然耕房のまいたけを見つけたら、購入して応援してください。
群馬に行くことがあったら、直売所に行ってみてください。

私は今、日本中に自然耕房のようなきのこ屋さんができる日を夢見ています。

自然耕房の直売所→
風の駅 やげんじ
風の広場 おおまえだ


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シイタケはやっぱり原木栽培でなくっちゃ! 岩手県山形町

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1mくらいの長さの丸太に、シイタケがたくさん出ているのを見かけたことはありませんか?
これは原木栽培されているシイタケで、原木シイタケと呼ばれます。

日本ではシイタケ栽培の歴史は古く、江戸時代から行われていたという記録があります。

山から切り出した広葉樹をホダ木にし、使い終わったら薪にして最後まで利用する。
日本ならではのエコなしくみ…それが原木シイタケなのです。

さて昨今では、原木シイタケ以外に「菌床栽培」のものが増えてきています。

原木シイタケはナラやクヌギなどの広葉樹をホダ木にしてシイタケ菌を植え付けたもの。
菌床栽培は、広葉樹のオガクズ(オガコ)にふすまや米ぬかなどの栄養剤を添加し、
それを筒状(キューブ型)に成型した培地に植菌して栽培したもの。

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ちょこちょこシイタケが出てきているのが見えますか?
発生中のホダ木を積み上げてあるビニールハウス。原木シイタケはこんな環境で育っています。


原木栽培は植菌から発生までに1年かかるところ、菌床栽培はその1/4の約120日。
栽培期間が短く、ホダ木の移動などの手間がかからない菌床栽培は、
原木シイタケと比較して価格が安いのが特徴です。

昨今スーパーの店頭では、菌床栽培のシイタケに駆逐され、
原木シイタケをあまり見かけることはありません。

ひょっとしたら絶滅危惧種になりつつある? そんな原木シイタケですが、
味を比較してみると、原木シイタケに軍配が上がります。

ホダ木を一年かけて分解し発生するシイタケは、
じっくり育つことから食感がよく、食べた瞬間、まさに「木の子」と言いたくなる
木の香りがふわっと口中に広がります。

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ぽってりとしていかにもおいしそうなシイタケくん。
炭火で焼いてちょっぴりお醤油たらして…それだけでごちそうです。



自分のうまみを他の素材にも与え、料理全体の質を上げてくれる…
原木シイタケにはそんな力があります。

さて、山形町で原木シイタケを栽培している、苅間沢由広さんに話を聞きました。

岩手県山形町は、典型的な中山間地。
最近では短角牛という放牧主体の和牛で有名な町です。

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苅間沢由広さん・悦子さんご夫婦
「菌床栽培のシイタケを食べると、シイタケから培地のニオイがしますね。
シイタケ嫌いな人は、ひょっとしたら菌床シイタケ食べてるのかも…。
食感も香りも、原木シイタケは本当においしいです」…私も菌床のシイタケは苦手です。



山は売るほどあるのでホダ木の手配は割合と簡単なのですが、
冬場マイナス20度にもなる土地柄で、シイタケ栽培をするのは容易ではありません。

「シイタケの菌は夏用と冬用とで違うんですが、ヤマセが吹くことがあり、
夏用の発生が始まって温度があがんなくて出なくなり、あれこれ調整していたら秋になってた…
なんて笑えないこともあるんですよ」と苅間沢さん。

原木シイタケは植菌した後一年間山に寝かせ、その後冷たい水に浸けて発生を促します。
水から引き上げ、温度管理をしてシイタケが発生し始めたら収穫開始です。

発生が悪くなったらまた水に浸けて引き上げて温度管理して約一カ月、その後再び発生が始まります。
一本のホダ木から3回収穫できるそうですが、こまめな温度管理と環境の調整、
さらに水をかけてやったり、天地をひっくり返したり…。

「まめな人じゃないとなかなかできないと思うね」と苅間沢さん。


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ピンボケで申し訳ないのですが、水槽に浸けられたホダ木。
水は山からの湧水を使っています。冷たい水でないと発生が促されないそうです。

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ホダ木の切り口がこのように白くなったら、シイタケ菌がまん延した目印。
ホダ木を触るとちょっと柔らかくなっているそうです。この後、発生室に移動します。ああ…重たい…。

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今年の秋から発生するホダ木が寝かせてあります。
夫婦二人で常時10000本を手入れしなくてはならないのですから大変。
10000本は原木シイタケの専業農家では規模が小さい方らしいです。



さらに、直径15~10センチの1mの長さの丸太をあちこち動かすことを想像してみてください。
機械は使うとはいえ、そりゃもう、重労働。
男手が必要で、誰にでもできる仕事ではありません。

苅間沢さんも、重労働が大変なので一度は菌床栽培への転向を考えたそうです。
でも原木シイタケを喜んでくれるお客様がいる限りは、続けていこう。
そう考えて現在に至っています。

温度が足りないと傘の色が薄くなったり軸が太くなったり、
傘の開き具合も大きいものや小さいもの、ぽってりとしたいかにもおいしそうなものなど、個性はさまざま。

菌床栽培のように一定した形にならないのが、原木シイタケの特徴です。

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ちっこいのや大きいの。軸が曲がったのやぽってりしたもの。
傘が薄かったり厚かったり…収穫したばかりのシイタケくんたち。
ほんと、個性的な形をしていますよね。こういうの多様性っていうんだろうか。


「菌床栽培は形がいいからねえ…原木シイタケはそういうふうにうまくできないんです。
だから、あの形だけで判断されてしまうと困るんだよね」

自然に近い生育方法、そして温度によって個体差が出る…
一定の温度管理ができる菌床栽培は、そういった品質のバラつきがないのがメリットです。

そして丸太を上げおろしする重労働も必要ありません。

1980年代に中国からの輸入が爆発的に増加し、価格が大暴落したシイタケ。
経費も手間もかかるため、原木シイタケ農家は高齢化も相まって、徐々に廃業しています。

そのうち日本のシイタケは、菌床栽培のものだけになってしまうのでは…。
菌床栽培のシイタケが食べられない私は、秘かにそれを恐れています。

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「今出てきました!」って感じのシイタケくん。
発生が悪くなるとホダ木をバシッとたたいたりすると、シイタケがびっくりして出てくるとか、
雷がドーンと落ちたりするとびっくりして出てくるとか…かわいいですね。
子孫を残そうとする菌の働きだとか…ウソのようなホントの話です。



ちなみに、干しシイタケは発生までに2年かかるというさらに手間のかかったもの。
生シイタケとは使う菌も栽培方法も違います。

じっくり木を分解しながら大きくなるので、味も濃くしっかりとした肉質になります。
その結果、えも言われぬ香り高い良いダシが出るようになるのです。

ときおり菌床しいたけを干したものを売っているのを見かけますが、
これはダシがほとんど出ない、ほんものの干しシイタケとは似て非なるもの。

安いからか、それがバンバン売れていくのを見るにつけ、
「シイタケのことを知っている人って、ほんとに少ないんだろうなあ…
かわいそうな原木シイタケ…そして干しシイタケよ!」と思ったりするのです。

店頭で原木シイタケを売っているのを見かけたら、ぜひ味を確かめてください。
菌床とは違う食感、そして食べたときの木の香りに驚くことうけあいです。




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安心して食べられるマッシュルーム 山形県舟形町 舟形マッシュルーム

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最近店頭でもよく見かけるブラウンマッシュルーム。
ホワイトよりも味が濃いけど、色が出るので色合いを気にする料理には向かないとか。


マッシュルームは「ツクリタケ」とも呼ばれ、世界で最も生産量の多いきのこ。
木材腐朽菌同様腐生菌の仲間で、17世紀のフランスで人工栽培が始まったという記録があります。

実はマッシュルームは木材腐朽菌ではないため、培地は木ではありません。

一度ダッシュ村で栽培にチャレンジしていたのを見ましたが、堆肥で栽培されています。
堆肥にマッシュルームの菌を植え付けて約80日後、
小さなマッシュルームがぽこぽこと顔を出し、収穫が始まります。

山形県舟形町にあるマッシュルーム屋さん「舟形マッシュルーム」では、
秘密の技で、この発生期間を短くしています。

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出荷前のマッシュルームたち。大きさをそろえてきれいに並んでいます。
まるでおまんじゅうが並んでいるみたいでかわいいですねえ。


菌床栽培をやっているきのこ屋さんが言うには「マッシュルーム栽培はすんごく難しい」のだそう。
でも一度発生してしまえば9日おきに合計3回収穫できるそうですから、
一度しか収穫できない菌床栽培のことを考えると、効率がよさそうです。

「堆肥栽培と言われるとイメージがちょっとよくないけど、
畜糞はそんなに必要ないんですよ」と代表の長沢光芳さんは言います。

舟形マッシュルームでは、サラブレッドが使った敷きワラを利用して培地の堆肥を作っています。
サラブレッドは大切に育てられているため、敷きワラの交換は一日おき。
搾乳用の牛の敷きワラのことを考えると、夢のような清潔さです。

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岩手県からやってきたワラ。すでに発酵開始。
発酵熱は約80度くらい。雑菌や虫の卵などは死んでしまいます。


「必要なのは、馬の腸内細菌なんですよね。この微生物がワラについてやってくる。
そのワラと、大豆の粉と、ジュース工場から出たコーヒー粕などを混ぜ合わせ発酵させ、
培地をつくっています。
マッシュルームに必要なチッソ分は、大豆やコーヒー粕で供給されます。
堆肥といってもほとんどニオイがないでしょ? それが自慢なんですよ」

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大豆粉などを混ぜて自動で切り返す堆肥作成のための機械。
この機械、金額はベンツと同じ。舟形マッシュルームさんしか持ってないとか。
発酵中なのにニオイはほとんどなく、ほんのりとした熱を感じます。
通常堆肥を作ってるところはものすごくニオイがするものです…動物性のものが少ないんですね。


マッシュルーム屋さんに何度も行ったことがある人に話を聞くと、
施設が近くなるにつれ悪臭が感じられ、施設内はかなりひどかったとか。

このにおいのもとは鶏糞粉だといいます。

培地に添加剤として鶏糞粉を利用すると、発生も早く収量も増えるのだそうです。
手っ取り早いチッソ分として利用しているのでしょうか。
きのこに鶏糞…なんかちょっとイヤなんですけど。

「うちは鶏糞粉は使いません。発生はいいけど臭うし、当然キノコバエ等の害虫も来る。
それに味があんまりよくない。なんだかぼやっとしたマッシュルームになってしまう。
やはりきちんとしまって、味の濃いもの、生で食べてもおいしいものをつくりたい。
安全であることも大切ですしね」

社長画像
舟形マッシュルーム代表の長澤光芳さん。
「できるだけ地域で循環できるマッシュルーム栽培を目指しています」
安心して食べられるマッシュルームの栽培、これからもがんばってください。


キノコバエはきのこの害虫。
堆肥栽培をするマッシュルームでは一番気をつけないといけない虫です。

私の知っているマッシュルーム屋さんは、施設内の壁に殺虫剤を塗りつけていました。
ハエ取り紙が施設にいくつもつるされているところもありました。

栽培前の施設は蒸気で完全に殺菌し、
栽培中は気圧の調整で虫が侵入できないしくみをつくっている舟形マッシュルームでは
キノコバエの心配もなく、安全なマッシュルームの栽培が可能なのです。

「殺菌の熱はバイオマスボイラーが熱源です。
これは、近隣の木材加工所から出るチップを燃やして発生させてます。

また使用済みの培地は堆肥として販売し、農家の方々に喜ばれています。
きのこは大量のエネルギーを使うものなので、ある程度はしようがないとは思うのですが、
やはりできるだけ環境に配慮し、地域循環のしくみをつくりたい。
これからもいろいろと考えていきたいと思っているんですよ」

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バイオマスボイラーの燃料チップ。ご近所の製材所からどんどん持ち込まれます。
一番いい状態のチップの形を試行錯誤し、現在の形になりました。
ただの木片みたいですが、効率よい形なのですね。



野菜と違い、個人農家ではもうきのこの栽培は対応できないでしょう。
必要な設備を整えるのに、個人レベルは超えています。
今後もきのこ栽培は次々に統合され、大きなきのこの会社が生き残っていくことでしょう。

そんななか、地域循環型という大きなビジョンを掲げて栽培をしている舟形マッシュルーム。
ぜひ応援したいですね。

市場には卸していないそうなのですが、大地を守る会の宅配で入手可能です。
興味のある方はぜひ。

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安心して食べられるマッシュルームその① きのこの基礎知識

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昨今、機能的食品として注目をあびるきのこたち。
スーパーには、ひらたけやしいたけ、なめこなど様々なきのこが売られています。

ふと思ったことはありませんか? きのこは野菜なのかどうか。
実はきのこは菌類で、食用部分は植物で言うところの「花」にあたるもの。
「子実体」と言われるその器官は、次世代のための胞子を飛ばす器官でもあるのです。

生物と植物の間に存在しているようなきのこは、
その生態や性格を知れば知るほど魅入られる、私にとっては魅力的なたべもの。
これを食用にしようとした人たち、さらに栽培を思いついた人たちはスゴイなと思う瞬間です。

さて、一般的に販売されている栽培きのこは「腐生菌」に含まれます。
(まつたけや松露などは「菌根菌」という種類のきのこですが、ここでは説明を控えます)

しいたけやえのきたけは、江戸時代から栽培されている歴史あるきのこ。
これらは自然の状態では朽木を分解して繁殖するきのこで「木材腐朽菌」と呼ばれます。

自然の枯れ木の代わりに人工的な培地「菌床」で栽培されているのが、
現在一般的にスーパーで販売されているきのこ類なのです。

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むか~しから菌床栽培されているおなじみのえのきたけ。
細長いポットにで栽培されていて、ちょうど1パック1ポット。
えのきの旬は冬なので、えのき栽培は冷房完備の部屋で行われています。


菌類であるきのこ類は雑菌に弱いため、完全に温度管理された施設で、
非常にクリーンな状態で栽培されています。
栽培に大量の電力を使うことから、きのこは電気でできているとも言われるほど。
しかしそうしないとうまく作れないのも事実なのです。

きのこの栽培は、施設が近代化されればされるほど効率よくできることから、
農家経営の小規模なきのこ屋さんは現在次々に廃業しています。

これは、大規模化され、きのこの価格が大きく下がったのが原因。
だからこそ私たちは安価なきのこが楽しめるのですが、知ってしまうと複雑ですね。

きのこ栽培にはその他、より自然に近い環境で栽培する林地栽培、
しいたけやなめこなどで行われる原木栽培などもあります。
これはまたの機会にご説明しようと思います。

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しいたけにも菌床と原木栽培の2種類があり、原木栽培の方が高価です。
でも味は原木栽培のしいたけに軍配が上がります。
しいたけ嫌いな私でも食べられる原木しいたけ。味が濃くておいしいですよね!


おまけのつぶやき

そう言えば、ときおり「無農薬」を強調している菌床栽培のきのこを見ることがありますが、
そもそも殺菌され、虫一匹入らぬような大規模な施設で栽培されている場合が多いのに、
これは誤解を生む表現なんじゃないかと思うことがしばしばです。

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次回はマッシュルーム栽培についてお知らせします。
写真はマッシュルームがぽこぽこと発生しているようす。かわいいですね~。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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