「有機入り複合肥料偽装」の件でよくわかんなかったこと

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「有機米」として売れなくなると価格もかなり大きく下がるし、
有機圃場に対して出ていた助成金ももらえないし大打撃だと思うんだけど、
なぜか農家の報道をまだ見てないけど想像すると恐ろしいのです。



『秋田など11県の農家に供給している秋田市の肥料メーカー「太平物産」の有機肥料に
5日、成分の偽装表示が発覚した。「製造工程を簡略化した」との説明がある一方
「高価な成分を減らしたのでは」との臆測も出ている。
ただ、農産物の付加価値を高めようとする農家は裏切られた格好で、
県関係者は「聞いたことがない。農家の意欲を落としかねない」と憤った。』
(毎日新聞11月6日より)


最初にこの報道を見たのはNHKのニュースだったが、
全体的に変な報道に思えたのでわたくしは混乱した。

「有機肥料の成分が偽装されたため有機と表示して販売できなくなります」
(アナウンサー)
「有機が信頼できなくなりますよねー。何を信じればいいのか」(消費者)
「困りますねー(的な発言)」(お米屋さん)
「信頼して購入している肥料ですから困ります」(どこかの県のさくらんぼ農家)

ゆ、有機なのになぜさくらんぼ農家???? ← 一番の衝撃

JAに出荷してる人っぽいその農家は有機農家ではなさそうだった。
もしかして特別栽培農産物? 有機JAS適合の肥料なのに特栽に何の関係が?
そもそも有機複合肥料ってどういうもの?

有機JASと表示して販売する農産物には肥料にもキビシーイ決まりがある。
某D社時代に有機農業推進室という部署にいた友人はしょっちゅう農家に
「ちゃんと有機で使えるかどうかメーカーに確認してね」と言っていた。

有機JAS規格に適合しない肥料を使うと有機JAS認証は取得できない。
取得していた農家が適合外のものを使うと有機は取り消しになる。だから、
有機農家は肥料を購入する前にメーカーにちゃんと確認しなくてはならない。

大きく報道されなかったが、今年の春にも有機JAS適合として販売していた肥料が
実は有機に適していなかったという悲しい事件があった。
それを使ってた農家はその肥料を使った圃場で栽培していたものから全て
「有機」をはずさなくてはならなくなった。もちろん有機取り消しである。

これが具体的にどういうことかというと。

コメの場合とくに「有機」には優位性があり付加価値商品として売りやすい。
通常は「有機米」の販売計画をきちんと立てて売り先も確保しているから、
有機米が一般米になると売れなくなる。売り先からペナルティがつく可能性もある。

こういったことに理解のある売り先ならいいが、単に「有機米が欲しいから」で
取引されていた場合(ほとんどがそう)、今年の取引がなくなると
翌年も継続できる保証はどこにもない。
今年の穴に別のコメ農家が入れば、来年はそこに発注されるからだ。

また有機取り消しとは、その圃場は一からやり直しということである。
来年一年間有機JASに適合した栽培を行った後にようやく「転換期間中有機」
の申請を行うことができるのだ。つまり、今年度産及び来年度産を
一般米で販売したその翌年にようやく転換期間中有機で有機シールが貼れるわけ。

有機農産物とは
1.播種・定植前2年間有機JASに適合した栽培をした圃場で
2.栽培した作物にのみ有機JASシールを貼付して販売できる ものだ。
シールは作物に貼られるが、認証は圃場に対して与えられる。影響は数年に及ぶ。

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有機JAS適合肥料でチッソ分が7%以上あるものは「ちょっとそれ
大丈夫なの?」と某D社でよく話してたことを思い出す。有機質肥料なのに
どうやってチッソ分を高くできるのかがよくわからなかったからね。
今回テレビで見た有機複合肥料のチッソは8%だった。高いよなあ。
でも有機で使えるチッソ分の高い肥料ってのは人気なの。



いやー。農家すげー大変。とわたくしは思うのだが、
報道からはそういったことはあまり伝わってこなくて、消費者が
「何を信じたらいいのかわからなくなりますね」なんて言っているのだった。

さらに「有機肥料ではなかったけれど栽培された作物の安全性には
何ら問題はありません」とアナウンサーが一日の間に何度も言うのを聞いて、
わたくしは「どどどど、どういう発言?」と思ってしまったよ。

ああいうことを言うと人はことさらに「安全性」が気になる。
肥料成分に化成肥料が混じってただけなのに安全性とか言うな!!!
んじゃ化成肥料は危険なのか!!! と聞きたくなってしまうじゃないか。

さらにわたくしが混乱したのは「この有機複合肥料を使っていた場合、
有機、特栽と表示して売れなくなります」という言葉である。

まず「有機複合肥料」=「有機質に化成肥料が混じってるもの」
だとわたくしは考えていた。
化成成分が入っていたら最初から有機JASでは使えないから変な話だと思った。
そしてここになぜ「特栽」が入るのかもわからなかった。

特別栽培農産物とは「その地域での一般的な栽培で使用する
農薬&化学肥料(窒素成分)の50%減で栽培されたもの」である。
有機JAS規格適合の肥料に別に関係ないじゃんと思ったのだ。

「有機複合肥料」についての疑問は全農から出たプレスリリースを見て解決した。
http://www.zennoh.or.jp/press/release/2015/212197.html
たーくさんある肥料のなかの一部が特栽と有機に使用されているということらしい。

特栽についての疑問は昨日お風呂に入っててふと思いついた。
わたくしの知っている農家は基本的に有機質肥料のみを使っており
特栽を取得していてもほとんどの人が化成肥料を使っていない。
しかし一般的にはそうではなく、有機質肥料だけで作る人はまれである。

でも特別栽培農産物にはメリットがあるから特栽で作りたい。
だから特栽が取れるチッソ成分50%減ギリギリの施肥設計をしているのではないか。
つまりチッソ成分の比率が変わると50%以上になってしまい特栽ではなくなる。
ううううう。悲しい話だよう。。。

有機JAS取り消しの影響は、販売する際の表示だけでなく
有機圃場に交付されている助成金の返金やそれを何年前まで遡るのかとか、
売り先の減少とか回収費用、もちろん売上も、ものすごーく広範にわたるが、
今後どうなるのだろう。なんだかどんどんいろんな情報が出てくるのだ。

全農取り扱い肥料だからJAがなんとかしてくれるのかな。どうだろう。

そうは言っても、実は我々消費者にとってはあまり大きな問題ではない。しかし、
これをきっかけに「やっぱり有機は信頼できない」的な話が出ないといいな。
なんて思ってしまったわたくし。

あともうひとつ。
人間関係で繋がってる売り先を持つのってやっぱり大事だよね。


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嫌気性微生物を使う―微生物資材「カルスNC-R」のお話

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かれこれ1年半ほどベランダに置きっぱなしの私のモミガラ。全く分解していません。
これを土中で分解し堆肥化してくれる資材って、省力化ですんごくいいと思うんですけど。



今から半世紀ほど前、農業は化学肥料と農薬に頼った収奪型農業が基本でした。

65歳以上の農家に話を聞くと、化学肥料の力にびっくりした!と皆が言います。
化学肥料は夢のような肥料。安くて軽くて効果が大きい…誰しもが使いました。

しかしその後。ツケは一気にやってきました。

有機物を畑に戻していた時代の貯金がある間、問題は出なかったのですが、
化学肥料だけ入れて有機物を入れなくなった結果、土がどんどん痩せてきて
土壌病害・害虫が多発するようになったのでした。

栽培の前に必ず土壌消毒剤で微生物を絶滅させ、土壌由来の病害を防ぐ。
発生した病気や害虫に対しては、農薬で対応する。
これでなんとか継続して作物を作ることはできるようになりましたが、
食べものの安全性や環境への配慮はほとんどなかったと言ってもいいでしょう。

そんな当時の収奪型の農業に、疑問を持った人がいました。
このままの農業ではいつか何も作れなくなる。何かいい方法がないものか。

それが現在「カルスNC-R」を製造販売しているリサール酵産(株)の前社長、
当時は化学薬品の商社に勤務していた、飯川綜二さんでした。

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リサール酵産株式会社の現社長・飯川雅丈さん。農家に出向いて栽培の指導もしています。
土壌消毒剤を使わなくても連作障害が出なくなった・病気が減った等々の事例がいっぱい。
日本の農家の省力化、循環型農業の実現に貢献しています。


飯川綜二さんは何人かの知り合いとともにフランスへ渡り
パスツール研究所で嫌気性微生物を研究していたプレボー博士と出会います。
そこで、嫌気性微生物の力に触れて驚き、嫌気性微生物に着目したのでした。

当時の農業では、好気性菌は「善」で嫌気性菌は「悪」と言われていました。
(今でもそういう人はたくさんいます)
そんな時代に、味噌や酒を作る嫌気性菌に着目し、嫌気性菌の農業資材を作ろうと、
飯川さんはいきなり会社を辞め、無収入のなか微生物資材づくりを始めたのです。

現在の「カルスNC-R」という名の微生物資材には、そんな物語がありました。

代掻き
稲刈り後に水田用の資材「アイデンカルス」を入れワラを分解。ワラが浮いてきていません。
また、乳酸菌の働きで雑草が3年分芽を出すので、それを耕運すれば草が生えなくなるそうです。
これは西出隆一さんの草を見ずして草を取る「上農」の技術。



さて、カルスNC-Rの優位性って何なのでしょう。
それは、粗大有機物をそのまま畑に入れられることにあります。

モミガラやバーク、オガクズなどの炭素率の高いものを土中にすきこむと、
チッソ飢餓・生育障害・乾燥害などが発生します。だから上に置くのはOKだけど、
すきこむのは絶対にやめましょう!というのが今までの常識でした。

カルスNC-Rを一緒に使うと、こういった害は全く出ないどころか、
分解過程で発生するアミノ酸や、植物ホルモン(サイトカイニン・エチレン)等の
有益な物質を、作物に与えることができます。

そのまま置いておくと、いついつまでも分解されないモミガラが、
半年~1年後には分解されてしまうのですから、恐るべし!カルスNC-R。

さらに、嫌気性菌のため、空気がなくとも餌さえあれば畑をどんどん耕してくれます。
その速度は西出隆一さんによると、一年で5センチだとか。おお、すんばらしい!

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微生物が深くふか~く耕してくれた西出さんのトマト畑。トマトの支柱がスカッと入ります。
嫌気性菌のいいところは、空気のない土中で活動してくれること。
餌を絶やさないよう、また、餌がなくなったとき休眠できる場所の供給をしなくてはなりませんけど。



「手間暇かけて有機農業をがんばってる人というより、どっちかって言うと、
連作障害が怖いのでそれまでは土壌消毒剤を使っていた人や、
堆肥も必要と思っていたけれど面倒くさいと思っていた人の方が
よく使ってらっしゃいます。そういう意味で省力化なんですね、この資材は」と飯川さん。

「捨て場所に困っているモミガラや畜糞を利用して、
土中で堆肥化できるのがカルスNC-Rなんです。
使い捨て・収奪型農業ではなく、循環型農業が実現できるんです。

堆肥を切り返ししたり、堆肥舎を作ったりというような手間もお金もかからない。
カルスNC-Rという嫌気性菌を使って、省力化の農業ができるんですよ」

粗大有機物は分解されて腐植となり、微生物相が豊かになれば
団粒構造が作られて、徐々に保水性・保肥力のある土に変わっていきます。
腐植が増えればCECは上がり、多収が見込める土になります。

微生物と腐植が土の団粒構造を作る。有機農業の基本ですよね。

なかやま1
堆肥舎でカルスNC-Rを使っている農家もいます。堆肥になる前の状態で土に入れている農家もいます。
畜糞だけでは炭素分が足りないので敷料などの炭素分があることが条件ですが、
半生の状態で土中に入れても、全く土壌障害が出ていないとか。うーん、それは見てみたいぞ。



昨今食の分野でも、微生物の働きに注目が集まっています。

どぶろく、ワイン、味噌、ぬか漬け、そして野沢菜・白菜・たくわん漬け…
自分自身でこれらの発酵食品を作ってみると、腐敗しない発酵の不思議が実感できます。
微生物に守られているという実感を持つこともできます。

農業分野の微生物ブームは、今少し鎮静化していますが、
積極的に微生物を利用する方法は、少しずつ注目され始めています。

拮抗作用をもつもの、制菌力の強いもの、菌にもいろいろな性質があります。
それら、菌の力を借りて作物を生産するのは、楽しいことに違いありません。

gazou 010
カルスNC-Rの家庭菜園セット。カルスNC-Rと油粕などがセットになってます。
菌が働くためには燃料になるチッソが必要なため、増量剤とチッソ分を同時にすきこみます。
コイン精米機のモミガラを大量に収集して、家庭菜園に入れなければ!!!!!



カルスNC-Rは、そんなに高価ではなく、使用量も多くは必要ないもの。
家庭菜園ならば1kg袋が1年もつ…リーズナブルな資材です。

わたくし、3月になったら、カルスNC-Rとモミガラとチッソ分を入れ、
今ほとんど微生物のいなそうな家庭菜園で土づくりを開始します。

今後のレポートにご期待ください!

カルスNC-Rはリサール酵産株式会社のWEBサイトで購入できます。
http://www.resahl.co.jp/
使い方・その他詳細情報は、上記URLでご確認ください。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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