知ってるようで知らない海苔の話 その2

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今回取材させていただいた成清海苔店の成清忠さん。
海苔のことをわかりやすく説明していただきましたです。ありがとうございました。



産地周りをしていた頃のことである。
奈良の山の中のお蕎麦屋さんでお昼をごちそうになった。

うどんと海苔巻きという驚異の炭水化物ランチである。
海苔巻きの海苔が真っ黒でツヤツヤでとてもおいしそうだったのだが、
ひとくち食べると噛みきれず、みよーんとどこまでも伸びた。

「ああああああ、これ昔鳥取でもよく食べたなあ・・・・」
伸びるだけ伸びて切れない海苔をちぎりながら、ぼんやり考えたわたくし。
久しぶりに伸びる海苔を食べたが、なぜ伸びるのか理由はわからなかった。
東京で食べてる某D社の海苔は、そんなふうにはならないのだ。

さて、ではなぜ海苔巻きの海苔がみよーんと伸びるのか?
その秘密は海苔の葉の長さと硬さにある。

海苔は11月から3月まで収穫されるが、おいしいと言われているのは
11月に初めて収穫する海苔「秋芽一番摘み」である。
種付けをして最初に伸びたこの芽は、柔らかく色がよく、香りもいい。

秋芽の中でも評価が高いのは2番摘みまでで、
3番、4番になると海苔の葉が硬くなり、食感が少し悪くなる。

これは1月に収穫される冬芽も同じで、1番2番は価格がいいが、
それ以降はそうでもなくなり、網を変えた一番摘みでも評価は下がる。
2月や3月に収穫する海苔も同じだ。
「秋芽一番摘み」は海苔の中でも特別なものなのだ。

当然入札価格もいいため、漁師はいいものを収穫しようとする。

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摘み取られた海苔は海苔漁師のところでこのような機械で乾海苔になる。
この乾海苔を作るのにも技術が必要で、それが海苔漁師の技であり腕の見せどころ。

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帯に摘み取り日が書いてあるでしょ? これ、同じ秋芽一番海苔だけど、
3日違いで等級も変わっちゃうんだって。触ってみたら確かに19日の方が
ふわふわで柔らかい。その違いが食感や食味の違いになるわけ。
3日の違いは海苔の長さの違い。うーん、すごいなー。



いい海苔とは葉の長さが10センチから20センチくらいで、
短ければいいというわけでもなく、長くても良くない。
長くなると海苔の葉が硬くなってしまうのだ。

完成した海苔の柔らかさは、葉の柔らかさと収穫後の裁断の大きさによって決まる。
細かすぎると歩留まりが悪くなり、長すぎると歩留まりはいいが、
食感が硬くなる。だから適度な長さの海苔を摘み、歩留まり良く、
なおかつ食感を損なわないよう、適度に裁断する必要があるのだった。

また、その裁断の細かさと水洗いの程度で、海苔の味は決まる。
洗いすぎると海苔の味がしなくなるし、少なくても良くない。
そういうことを総合的に判断し、海苔の調整をするのが漁師の腕でもある。
いい海苔を収穫し、おいしい乾海苔に加工するまでが漁師の仕事なのだ。

さて、乾海苔は漁協に出荷後、格付担当者が等級をつける。
上から優、特、1、2、3、4、5といくつかの等級があり、
それぞれいろいろな分類があって興味深い。

例えばちょっと穴があいてるのには「○」がついてたり、
とくに優れているものは「旬」と呼ばれる。

海苔は等級を付けられた後、入札にかけられて価格が決まる。
「秋芽一番摘み」の入札価格を見せていただいたが、
「優・旬」のものと、「2等」とでは一枚あたりの入札価格は4倍も違うのだ。
いい海苔が高いのはあたりまえなのだった。

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海苔の密度を比較するのに、おひさまに透かしてみました。
こちらが皿垣漁協の海苔。海苔の密度も繊維も細かいのがわかります?

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こちらは同じ等級の佐賀県産の海苔。穴あきなので◯がついてました。
でも密度が薄いような気がするし、繊維がちょっと粗い。うーん。
こんなに見た目が違うとは。ふだん全然気にしてないってことよね。

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手前が佐賀県産、奥が皿垣漁協のもの。手前のほうがツヤツヤしてる。
実は海苔の等級は、この「ツヤ」と「色」で判断されることが多いのです。
皿垣漁協の海苔は、味はいいけどなんとなくぼんやりした色合い。
海苔の世界では「ツヤツヤしていて黒い海苔」が評価されるんだって。
味がいいほうがいいのにねー。



では、コンビニで使われてる海苔はどれぐらいの品質の海苔なのかな?

コンビニの海苔は、だいたい3番摘みから6番摘みのもの、
外食では7番とか8番摘みになる。等級はどれぐらいなのかな? 
あまり高くはないだろう。おそらく価格もだ。

海苔は食味と見た目が価格に正しく比例するから、
安ければ安いほどおいしくないと言ってもいいのだった。

というような知恵がつくと、わたくしが鳥取で食べたみよーんと伸びる海苔は、
海苔の葉が長くて硬く、裁断も粗く、単価もそれほど高くない、
安い海苔だったのであろう。技術の差や産地の違いがあったかもしれない。
昔は全て手作業だしね。柔らかいのを作るのが難しかったのかも。なんちて。

さて、今回取材させていただいた福岡県柳川市の成清海苔店さんは
皿垣漁協の海苔を中心に扱っている。
その皿垣漁協では格付検査員の方針で
全国でも稀な全ての海苔の食味検査を行っている。
他の漁協ではそういうことは行われていないらしい。

それほどに手間をかける理由は、
「おいしい秋芽一番摘みの海苔をつくろう」と組合員皆が考えているからだ。
そのため、他の漁協では100枚で340gの重量があればいいところ、
皿垣漁協では400gで作ることになっている。「秋芽一番摘み」だけだけど。

一枚あたりの重量が多いということは海苔の密度が高い=味が濃い
=おいしいということでもある。

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成清海苔店さんでは遠赤外線で海苔を焼いております。
遠赤外線は海苔を芯までしっかり香ばしく焼くことができるです。

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赤茶色だった海苔が緑色に美しく焼き上がりました。
んー、いいにおいー。おにぎり食べたい。

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成清忠さんとおつれあいの千賀さん。昨年NHKの「サラメシ」で
成清海苔店さんが紹介されました。その時のおにぎり食べてる千賀さんと
お母様の映像がその後も時々登場しているらしいです。



ということで、成清海苔店ではその「秋芽一番摘み」しか扱っていない。
「秋芽一番摘み」の入札時に、一年分の海苔を仕入れてしまうのだ。

だから、成清海苔店の海苔は、誰がいつ食べても
「今までこんな海苔食べたことない」と驚愕されるほどおいしいのだ。
何しろいつ買っても「秋芽一番摘み」の海苔である。一年中、
海苔のなかでも一番品質が良く味がいい海苔を食べることができる。

他の海苔メーカーがどんな海苔を使っているのかは不明である。
でもおいしい海苔を食べたいなら断然、成清海苔店の海苔だ。
当たり外れなく、いつでもおいしい。
そういうものってさあ、なかなかないのよね。

おいしいものにはちゃんと理由があるのだった。
そしておいしい海苔は人をしあわせにすることができるのだ。

わたくしは最近、海苔を食べたいがためにおにぎりをつくっているのだ。
そして、食べるたびに「日本人に生まれてよかったなあ」と思うのだった。

※成清海苔店さんの海苔は大地を守る会・生協やまゆり、
首都圏のこだわりやで購入できます。


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知ってるようで知らない海苔の話 その1

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夕暮れの海は美しくて寒さを忘れるほどでございましたが、
この後深々と冷えてきましたよ。いや、寒かったです。そんななか
水をじゃぶじゃぶ浴びてる海苔漁師は大変だよなあと思ったです。



おにぎり、海苔巻き、寿司。
わたくしたち日本人にとってあたりまえの食材。それが海苔である。

しかし海苔がどのように作られているか、知ってる人はいるかな?
わたくしは知らない。
海苔にもおいしいものとそうでないものがあるが、
その理由を知ってる人はいるかな? わたくしは知らない。

ということで、福岡に海苔の取材に行ってきた。

海苔の養殖は、有明海、瀬戸内海、伊勢湾、東京湾、松島湾で行われている。
大きな川があるところがいいようだ。これ、川からミネラル分が注ぐからよね。

森付き魚とか魚付き森とか言われるが、こういう海は栄養分が豊富で、
いいものができるのであろう。牡蠣の養殖も同じである。
だから佐賀県では諫早干拓事業で海が閉じられ困っているのだ。

有明海では主に支柱方式という、海苔網が支柱に固定され、
潮の干満によって海苔網が海面から出たり海中に入ったりする方法で養殖されている。
その他の地域では海苔が常に海面下にある浮き流し方式が取られている。

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出港! 波を切ってびゅんびゅん走るぞ! そして海水かぶりまくり。
出港時間は17:45位だったかな? 西日本は明るいねえ。

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10分ほど走って、最初の摘み取り場所に到着。
海苔の摘み取りはこのボートで行います。真ん中の銀色のものは刈り取り機。
なんか風呂桶みたいだなーとちょびっと思ったわたくし。

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海苔の網の下をくぐって新しく伸びた海苔の芽を摘んでいきます。
今回は冬芽の2番摘み。秋芽に続いて冬芽の2番摘みまでは品質が良く、
入札価格もいいらしい。時間が経つと海苔の葉がだんだん硬くなるんだって。



海苔の人工養殖は海苔の繁殖方法がわかった昭和30年以降に始まった。
イギリス人の研究者、ドゥルー・ベイカー女史が偶然発見するまで、
海苔がどのように繁殖しているか誰も知らなかったのだ。
面白いなあ。しかも、海苔は雌雄同体なのだった。

春先に受精した海苔は、胞子を作作り、その胞子はカキの殻に取り付く。
そこでじゅうぶんに成長してから海中に放出される。
現在は海苔の胞子を海苔漁師や漁協が人工的に栽培し、効率化が図られている。

これ以前は、海中の胞子を取り込む自然養殖が行われていた。
うなぎの稚魚を採取するのと同じである。

日本における海苔生産量は佐賀県がTOPで、その次が福岡県だ。
有明海で養殖されている海苔は品質が良く高値で取引されているらしい。

これは支柱方式という養殖法と、有明海の状態によるものだ。
支柱方式で養殖すると、一日のうちの数時間海苔が太陽光線にさらされ、
海苔が乾かされ、光合成が活発に行われる。この時殺菌もされる。
海中に入り、夜の間海苔は生育する。

この繰り返しが、柔らかく味のいいものを作ると考えられている。

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2網分の海苔を収穫して帰ってきた小舟。いっぱいに海苔が入っとります。
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海苔をポンプで吸い上げて船の保管庫に移します。海水をじゃんじゃんかけて、
海苔をきれいにポンプに集めます。人、濡れ放題。

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ポンプで吸い上げる際に海水と海苔をちゃんと分離しているのよね。
この海苔を食べてみたけど「へー」って感じの味。磯臭いし。
香ばしさもとくになくて、これを加工することを思いついた日本人ってエライなあ。

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分離された海水は海に戻しております。これ、以前は手作業だったんだよね。
どんだけ寒いか、体力使うか、大変か。想像したら頭がくらくらしちゃいましたよ。
高級品だったのは当然よね、海苔。徐々に機械化が進んで良かったなあ。



さて、以前は高級品だった海苔だが、海苔養殖の技術が進み、
機械化などの効率化が図られたおかげで、
昭和50年代をピークにして海苔一枚あたりの単価は下がり続けている。

しかし、どういうわけか、ご家庭での海苔消費量も右下がりになっており、
上がっているのは業務用だ。主にコンビニと外食である。

ってことで、コンビニのおにぎりがどれぐらい海苔を使ってるか調べてみた。

2012年度のセブン-イレブンの年間のおにぎり販売個数は16億8千222万個らしい。
おにぎりの海苔の大きさは半帖なので、2で割ると8億4千111万枚である。
ローソンは6億個。ってことは3億枚。

平成20年の数字しか見つけられないが、海苔生産量は91億枚であった。

セブン-イレブンとローソンだけで15%の海苔を使っているのだった。
すごいなあコンビニ。日本人、1人でコンビニおにぎりを10何個食べてる計算だ。
単純に感動である。

さて、海苔養殖の一年はどんなふうになっているのかな?

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海苔を全部移したら再度海苔摘みに出発。海苔の生育によって、
収穫できる網を全部回るみたい。この時期は毎日収穫している。さむー。

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支柱の間を網を持ち上げながら移動するのはこんな感じ。
日が沈んだら真っ暗っす。

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見学させていただいた漁師さんが育成している海苔の胞子。
この地区では胞子を自分で育成している漁師さんが多いらしい。
それはなんとなく楽しい気がするなあ。自分好みの性質の海苔を作ってるのかも。



海苔の養殖は9月にスタートして4月で終了だ。
9月、海苔漁師は海に養殖用のサオを刺しに行く。
有明海の場合でこのサオの長さは6mから12mまで。
海の底に2mほど刺すらしいが、これは人力だ。

船の上から海中にサオを刺すなんてさあ、大変だよね。

2013年は、海苔の種付けの解禁が10月19日だった。
ここで海苔の胞子が海苔の養殖網に付けられる。
一部を海に残し、残りは網ごと冷凍保存される。

海苔の生育は早くて、種付けから1か月後には収穫が始まる。

2013年の初摘は11月14日である。
これが秋芽一番摘みという、海苔の中で一番品質がよくて高級で、
おいしいと言われるものだ。なんとなく新茶みたいだね。

この網は12月20日に撤収されたらしい。次の海苔網を張るまでちょっと休憩し、
冷凍してあった網を12月27日に再び張り、冬芽が収穫される。
冷凍網のほうが生育が早くて、1月7日には一番摘みが始まっている。

この後3月頃まで何回か網を変えて、その都度収穫だ。
海が暖かくなってくるとプランクトンや病気が発生するので、
寒い間しか海苔の養殖はできないのだった。

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港に戻ってきたら、船からポンプで加工場まで吸い上げます。
よその漁師さんはコンテナに入れてトラックで運んでたから、皆がそうではないらしい。
船の清掃や後片付けで、彼が加工場に戻るにはまた30分くらいかかります。

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とっぷりと日が暮れて大変美しい月が海面を照らしていました。
とても幻想的な風景で、ぼんやり見てたらからだの芯から冷えました。冷えた分、
海苔は大切に大切に食べないとなあとつくづく思いましたよ。



収穫された海苔はその日のうちに加工である。
撹拌→裁断→水洗→脱水→水洗→整形→乾燥という工程を経て、
10枚つづりの乾海苔の完成。それを10束にして結束されてできあがり。

この後、格付→入札となり、加工業者のもとで焼かれて商品になる。

この加工と格付けのあたりにも、美味しい海苔の秘密が隠されている。
んで、長くなったので続きは次回に。

参考資料
WEBサイト・セブン-イレブン、ローソン、白子のり、
一般財団法人 海苔増殖振興会、全国海苔貝類漁業協同組合


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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