大変わかりやすい「五十嵐さんのシャインマスカットがおいしい理由」

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いい形ですなあ、シャインマスカット。早く食べたい。


昨年、一昨年とわたくし的シャインマスカットの食味No.1は
山形県高畠町の五十嵐晴夫さんが栽培したものである。

五十嵐さんはもともとはぶどう農家だった。
長いことおつとめしていたが、定年後、もう一度ぶどうを作りたいと考えた。

そこで、定年になる前からずーっと「今のぶどう栽培の問題点」
「おいしいぶどうをつくるための畑」「高齢者にもできるぶどう栽培」
「省力化」について考え抜き、新しい農地に新しいぶどう畑をつくってしまった。

それが「60歳から始め25年間、85歳まで無理なくできるぶどう畑」、
作業性がよく、省力化、剪定もカンタンという3拍子揃った
すんばらしい畑である。

っつーことで行ってきましたその畑に。

五十嵐さんいわく「短梢剪定の本に出てた」という仕立ては
マンソン仕立てに似ているが少し違っており、
今までに見たこともない形だが、非常に効率よく作られている。

ここでぶどう栽培の基本情報。

生食用ぶどうは主に棚栽培なので、基本的に作業は上を向いて行われる。
摘房・摘粒・収穫・剪定、全て腕を上げて上を向いて行う作業だ。
棚の高さはだいたいそこんちのかあちゃんの背の高さに合わせてある。
というか、家族の背の低い人に合わせてあると言ったほうがいいかもしれない。

剪定時には葉っぱも果実もついてないのでぶどう棚は本来の高さだが、
果実が実ってくるとその重みで棚が下がってくる。
棚が下がると想定以下の高さになるから、中腰で移動しなくてはならない。

わたくし(164センチ)はたいがいのぶどう畑をチョー中腰で移動し、
腰は痛くなるし蚊には食われまくるしで畑でゆっくり話などとてもできなかった。
これじゃ年取ったら大変だわーとか考えていたが、ぶどう農家はもっと大変だ。
常に上向きの作業。そして中腰。70過ぎたら腰を痛めるに違いない。

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五十嵐晴夫さん。果実が胸元になるので作業性がとても良くてらくちん。
棚が低くないから腰もすっと伸ばして作業できます。
袋かけたり粒を摘んだりするのは若いうちはいいけど年取るとたいへん。

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変わった形をしているでしょう。ぶどうが一列にズラッと並んでいます。
んでかまぼこ型の棚に枝がまっすぐに伸びております。
風がふき通って気持ちよくて蚊がいないので
まんなかにあるテーブルでコーヒー飲みながら長時間話せます。



しかし五十嵐さんのぶどう畑はそういう具合に作られていない。

ぶどうの果実は胸元に実るよう結果母枝がまっすぐ誘引されていて、
かまぼこ型につくられた棚にそって枝が、まっすぐに伸びているから
ぶどうの葉っぱがいたずらに重なりあったりしていない。
作業は全て胸元で行われる。ぶどうの重みで棚が下がることもない。

そして前回も書いたのだが、この時期のぶどう畑なのに蚊がいないのだ。
全くいない。全然いないから、ぶどう棚の下にテーブルと椅子を置いて
何時間でも座ってお茶やコーヒーを飲んでいられる。もーこれだけでスゴイと思うわ。

さらに。

五十嵐さんのぶどう畑は田んぼの跡地に客土したものだが、
風通しが良くて、どうかすると外よりもハウスの中のほうが涼しい。
「何かしました?」わたくし。「炭は入れてあるけどね」五十嵐さん。
つーことで、理由は不明だが、佐藤さんの畑と同じくとても気持ちいいのだ。

その気持ちいいぶどう畑に見事なシャインマスカットが一列に実っている。

今回初めてぶどうがなっているところを見たのだが、
なるほどよく考えてあるなーってな部分をそこかしこに発見した。

実がついているところから2本の枝が伸びていて、
一房に対して葉っぱが何枚ついているかひと目でわかる。
わたくしが今まで見たぶどう畑のように、枝がどっから出てきてるかとか、
そもそもこの枝の元の木はどこだっけ? みたいなことは全くない。

まるでぶどう工場みたい。こんな仕立てができるんだあ。

「葉っぱがたくさんついてても、あんまり意味ないと思うんだよね。
ひとつの果実にだいたい30枚くらいでいいかなって思って。
この一本の枝にだいたい15枚。その先は切っちゃうの。
葉っぱを茂らせても全ての葉が光合成するわけじゃないからね。
あとは土づくりかなあ。土ができたらもっと味が良くなると思うよ」

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3芽残して剪定したところから2本出した枝に4個花をつけて最終的に1個残し、
2本出た枝に15枚葉っぱをつけたら先端を切る。何枚葉っぱがあるか、
ちゃんと数えられる仕立てにするんだと言ってたのを聞いてたけど、
ほんとにそうなってるからスゴイ。よく考えたなーって感じ。

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ぶどう畑全景。まーっすぐにぶどうがなってるので収穫もしやすい。
変わった形をしているのがわかっていただけましたでしょうか。


五十嵐さんのシャインがおいしいと騒いでるのはわたくしだけではなく、
地元の農家の主婦のみなさまたちにもかなり評判で、
けっこういいお値段するのにリピーター続出でよく売れる。
おいしいものは黙ってても売れるんだなー。スゴイなー。

だからと言ってこの畑を見に来る農家がいるかと言ったらそうではない。
なぜだろう?

まずぶどう棚を新しく作り替えるなんてことは普通はできない。
親から受け継いだぶどう畑の番線を新しくしたり品種を代えたりはするが、
ぶどう棚の構造を一から変えるにはお金がかかるし、
まずそこに植わってる木をどうするかという問題も起きる。

五十嵐さんのぶどう畑と同じ仕立てにするには新しい畑が必要である。

またシャインマスカットのような大粒種は価格はいいが、
反当たりの収量から考えると種なしデラウェアの方が確実に儲かる。
山形県ではとにかく種なしデラウェアが確実に収入源になるらしく、
大粒種は手間がかかるわりに儲からない、というのが農家の常識らしい。

つーことで、とくに大粒種オンリーで食味の優れたものおいしいものを!
みたいなことはあんまり誰も考えないようなのだった。

五十嵐さんにそれが可能なのは、定年退職後の就農だからだ。
65歳になれば年金が支給されるからそれほどガツガツしなくていい。
農業が好きだから85歳までおいしいもん作り続けたいなー、って感じ。

であれば。

五十嵐式改良マンソン仕立ては
定年後にぶどう農家になる人に向いてるのではないかな?

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訪問中にざーっと雨が降ってきたのだが、わたくしが感心したのはここ。
通常ハウスの境目部分から雨が落ちてくるので、減農薬栽培だと
ここからベト病などが広がる。五十嵐さんのハウスは境目に葉っぱが存在しない。
ちょうど伸びてきた枝を切るところにハウスの境目があるからだ。すごいわー。


60歳過ぎてぶどう農家の後を継ぐ人がずいぶん増えているようだが、
親の背に合わせたぶどう棚の下で上向きで作業して腰を痛めたりして
75歳くらいには疲れちゃってぶどう栽培を辞めてしまうかもしれない。

胸元で作業できて夏季剪定もそんなにしなくていい管理しやすい畑。
五十嵐さんの畑も管理方法も、定年後就農者にピッタリなのではなかろうか。
60歳から85歳までの25年間、おいしいぶどうが作れてしかも儲かる。
ちょっとウキウキするような話のような気がするが気のせいだろうか。

つーことで、今年も始まります、五十嵐さんのシャインマスカット。
パリンという食感、鼻に抜ける艶やかなマスカット香、甘み、歯ごたえ。
あああああああ、早く食べたい。じゅる(よだれ)

あと半月。ぶどうシーズンに向けて五感を解放中のわたくしです。


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巨峰の原木(!)を自根(!)で栽培している人-佐藤善博さん

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佐藤善博さん。お父さんが大井上さんに「これ植えてみたら」と
原木を手渡しされ、くれたのかと思ってたらあとで請求書が来た(笑)。
その木の子どもが今2本残っている。巨峰会にももう原木がないとかで、
数年前穂木をもらいに来たんだと。すげーなー。



巨峰ってぶどうがあるでしょう。

以前は高級品種だったけど、最近はシャインマスカットやピオーネが人気で
値段も下がり気味、つーことで「巨峰かあ。。」的なぶどうになりつつある。

小学生のとき初めて巨峰を食べ「こんなにおいしいぶどうがあるんか!!!」と
感動したわたくし自身も最近は「輝く新参者」シャインマスカットに夢中だ。

ごめんね、巨峰。

さて、わたくしはくだものの中ではぶどうが一番好きだが、
落葉果樹の担当をするまでぶどうのことをあまりよく知らなかった。

某D社のぶどう農家に「先生」と言われる人が3名ほどいらっしゃり、
たまたまわたくしはその先生たちの担当だったため「門前の小僧なんとやら」で
一般の消費者よりはちょびっとぶどうに詳しく不必要な知識も持っている。

例えば「巨峰」という品種はないとかね。知ってました? みなさん。
巨峰は農水省に品種登録を拒否されたぶどうで、品種名ではない。
現在の通称「巨峰」は登録された商標なのだった。

商標だから許可無く「巨峰」と表示して売ってはいけないし、
個人的に販売する際は日本巨峰会から箱を買うとか、巨峰のジャムを作って
「巨峰」ってつける際には許可を取らなくちゃいけなかったりするはずなんだが、
そのあたり徹底されていないように思えるがどうなのかな、ま、いいけど。

このすんばらしい品種「巨峰」を育種したのは大井上康さんという方で、
大井上康さんは栄養週期理論を打ち立てた方でもある。

巨峰と栄養週期について詳しくは以下のサイトをご確認ください。
http://www.kyoho-kai.net/index.html  日本巨峰会
「苦難の歴史」とか読むと「なんなんだあ農水省!!」って感じだ。

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これが巨峰の原木です。地際を見ると台木がないのがわかります。
50年生くらいってことだから、寿命の短いぶどうにしてはわりと長生き。
でもはじっこの方はどうやっても枝が枯れこんで来てるから、
自根で新植しています。「年も取ったし栽培面積は縮小中」だそうです。



さて、どんな果樹でも「原木」と呼ばれる品種のおおもとの木がある。

例えばいまや海外でも栽培されているりんご「ふじ」の原木は盛岡にある。
現在栽培されているふじは言ってみればこのふじの子どもたちだが、
上から下まで同じふじではない。それは台木に接がれているからだ。

だいぎ【台木 stock】
接木のさいに,接木植物の地下部となる部分をいう。
台木に接着させる部分は接穂または穂木といい,台木と接穂は相互に影響を及ぼし合う。
栽培的に重要なのは,台木の種類によって地上部の大きさ,結実までの期間,
種々の不良環境に対する適応性が異なることである。
(世界大百科事典 第2版の解説 コトバンクより)


地下部と地上部が違う木なので原木の性質がそのまま果実に出るわけではない。
原木になる果実と台木に接いだものとは、よく似ているが違うものである。
台木によって微妙に姿が変わったりもするから不思議だ。

ふじの原木から出てきたひこばえをもらった長野県のりんご農家、故・原今朝生さんは
その木を地面にそのまま植え、色づきのよくないふじがなるだろうと言っていた。
ふじはもともとそういう色づきの悪いりんごだったからだ。

何が言いたいかというと、原木そのままの性質を持っている果樹というのは
やたらとそこいらにはないということである。だいたい台木に接がれてるからだ。

んで、巨峰の話に戻ります。

山形県に巨峰の原木を持っている人がいる。と聞いたのは今年の1月だった。
大井上さんから木をもらった(あとで請求書が来たらしい)というから驚きである。
さらにその人は、その原木を自根で栽培していると聞いてさらに驚いた。

果樹農家以外にはわかりにくい驚きどころは以下のふたつ。
1.巨峰会にもなかった巨峰の原木を持っている
2.台木に接がず自根で栽培している


つまり、大井上康さんがつくった巨峰の持っている性質をそのまま、
全く失うことなくこの人の巨峰は持っているということなのだった。
しかも現役でまだ実がなっているのだ!!!(コーフン!)

ひゃー、それ、どんな味? どんな形? 
巨峰が大好きだったわたくしとしては見てみたいじゃありませんか。
つーことで、行ってきましたよ。山形県に。

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露地栽培のタネあり巨峰。きれいにまっくろに色づいております。
これが畑の端っこもなかほども全部同じような玉張り・色合いなの。
枝によっておいしかったりそうでなかったりするもんだと思ってたけど、
どの枝もほぼ同じって言うからビックリしちゃったわ。



佐藤善博さんは山形県天童市でさくらんぼ、ぶどう、桃を栽培している。
現時点で栄養週期をきちんと実践できている数少ない農家の一人なのだが、
わたくしは佐藤さんの、誰の畑にも似ていない巨峰畑を見て心底驚いてしまった。

まず巨峰の葉っぱが小さくて分厚く、枝先の生育がビシっと止まっている。

「生育が止まる」というのは枝がムダに伸びていないということで、
これは栄養成長がきちんと止まっているということで、
果実に養分が集中している=おいしいってことでもある。

肥料が多すぎると果樹類は徒長枝というよぶんな枝を出す。
ある程度はいいが、徒長枝がびゅんびゅん出るような木の果実はおいしくない。
こういうぶどうをつくっている人の畑はこの時期行くと
めっちゃヤブ蚊に食われる。なぜかは不明だがとにかく蚊がいる。

理由の一つは棚のうえに葉っぱを茂らせていてぶどう畑が暗いことだ。
葉っぱが茂っているのは肥料が多いからで肥料が多ければ味は良くない。
棚がまっくらということはお日様がきちんと入らないからで、
下になっている葉っぱは光合成ができなくて、さらに味が悪い。

日差しが適度に入っている明るいぶどう畑でめっちゃ蚊がいる場合は
地面が湿っている(水はけが悪い)とか風通しが悪い畑ってことで、
こういう畑のぶどうは作り手の腕によって良かったり悪かったりする。

さて、そのようなぶどう畑をさんざん見てきたわたくしは
佐藤さんの巨峰畑がとにかく明るくて気持ちいいのに驚いた。
そして当然だが蚊がいない。全くいない。マジでいないのだ!!!

棚のうえに茂りまくっている枝などはいっさいなく
来年の結果枝がひょろっと2本伸びているだけである。
しかもその葉先は止まって全体的にこぢんまりしているのだった。

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この2本が来年の結果枝なので、6節目で切り落とす。
って言われたのでこの写真を撮った気がするけどどうだったっけ?
葉っぱがなんか小さくてこぢんまりしております。葉数が多いから
光合成をよくするかっつったらそんなことはなくかえって邪魔らしい。



ぶどう農家が見たら「この葉っぱの大きさでいいのかな?」とか言いそうだが、
それは西出隆一さんのきゅうりの葉を見た人がよく言うセリフである。
葉の大きさと光合成能力は関係ない。関係するのは葉の厚みである。

剪定は今年の結果枝を全部切り来年の候補の枝を6芽残すだけで
つねに太い枝から出た枝に果実をつけると佐藤さんは言う。
「その方が味がいいと思うよ」

長梢剪定をしている人の場合、枝がどこから伸びてきて、
どこに果実がついてるんだかちっともわからない状態の人が多いが、
佐藤さんの巨峰は結果母枝から出た小さな枝に果実がついている。

また、通常は畑のはじっこのぶどうの生育がいいものだが、
すみからすみまでどのぶどうも生育度合いがほぼ同じなのだった。
どこを見てもまっくろな玉張りのいい巨峰が同じように実っている。

んー。わからん。なぜ6芽とかいう剪定で木が暴れないのか。
枝先がきちんと止まるのか。そしてタネありにできるのか。

その秘密は栄養週期の技術と、苗を植える際の枝の選び方にある。
苗木になる枝の、どこを残してどこを植えるかがちゃんと決まっている。
そこを間違えると暴れる木ができる。そうなるとこのような剪定はできない。

「暴れない性質を持った木」を最初からつくることができるんだなー(ため息)。
「カンタンなことだよ」と言われてわたくしはうーんと唸ってしまった。
畑で食べた巨峰は「久しぶりにおいしい巨峰を食べた!!!」って感じだった。

「品種がつくられたときそのままの性質を持っている巨峰」という
わかりづらい付加価値に目がくらんでいる可能性があるので、
家に持ち帰って糖度を測ったら19度だった。

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棚上に枝があまり伸びていないのは夏季剪定してるからじゃなくて
そもそも伸びていないから。さすが栄養週期!!である。
施肥設計とか農薬とかこの木に圧倒されて聞くの忘れちゃった。



でも糖度だけじゃなくてさあ、なんつーかこう、食べ終わったらすぐ
「もう一個食べたいっ!!!」って思ったのよ。
そういうぶどうってめったにないの。
「一個でいいですすんません」ってのが多いの。

というように、原木・自根の巨峰は畑も果実もすばらしいものでした。

わたくしはこのようなおいしいものとおいしいものをつくるひとと会えて
いろんな話を聞けて、そのつどいろいろびっくりすることがあって、
ほんとにしあわせだなーとしみじみしみじみ思ってしまったです。

栄養週期がもっと広まるといいなー。
そしておいしいぶどう天国になれ!! なるのだ! 日本! 


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作物の持つポテンシャルを引き出す人と出せない人がいる

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佐藤善博さんのさくらんぼ。感動しました。
栄養週期をちゃんとお勉強しようかしらと思うほど。
果樹栽培って楽しそうだなー。つくるなら果樹がいいなー。



巨峰を育種した大井上康さんが提唱した栄養週期という技術がある。

作物の生育ステージで必要なものを提供し、そのことにより
作物の生育をコントロールするという技術である。
必要なものは単肥で与えるため有機JASを取得した人には向かない。

有機農業&巨峰黎明期にこのお勉強をした人はたくさんいて、
某D社の生産者にも多く、学習会なども行われていた。
栄養週期、略して「栄週」。お聞きになったことありますか?

たまたま、というか今では運命だったのではないかと思えるが、
わたくしが担当していた生産者に栄週の先生と呼ばれる人がいて、
栄週を実践している人もかなりいた。

これを書くので思い返してみたら、某D社で栄週をやってる人は
ほぼわたくしが担当していた。出張のたびに話を聞いていたから
とりあえず「栄週とはこんなもの」と説明はできるようになった。

しかし。

聞きかじったことはいくつもあるが、他人には全く説明できない。
つまり全く理解していないということである。

むかーし聞いた栄週の先生だった担当産地の生産者が言ってた
「菜っ葉の7枚目の葉が出たら栄養成長から生殖成長に変わる交代期」を
他の栄週の人に言ったら「んー。ちょっと違うなー」と言われた。

聞きかじりの知識を披露してはいけないとわたくしはしみじみ思った。

このように、栄養週期は作物を栽培していないとちんぷんかんぷんで、
家庭菜園の本も出ていてわかりやすいんだがわたくしにはいまいちわからず、
大井上先生の本は読んだらすぐに眠くなってしまって読めない。

わたくしは「聞きかじり」のまま生産者と話をし、
「聞きかじり」のまま今まで生きてきたが、別にそれで良かった。
栄週をやってる人はおいしいものをつくる人が多い。
そのことがわかっていれば良かったからだ。

さてその栄養週期の世界で名前をちらほら聞く人がいた。
山形県天童市の果樹農家、佐藤善博さんという方である。

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佐藤善博さん。さくらんぼ、巨峰などを栽培されております。
栄養週期は現在実践している人が非常に少なくなっていて、
後継者もあんまりいなくて技術としては先細りになっております。
悲しい。


今年、有機農業参入協議会のお勉強会で山形県天童市に行った際、
佐藤善博さんと知り合う機会があった。これもたまたまであった。

佐藤さんは栄養週期の技術を大井上さんに直接教わった数少ない一人で、
ぶどう畑には巨峰の原木が植わっているらしい。すごいのだ!!!
わかんないかもしれないけどわたくし的にめっちゃすごいのだ!!!!!!

お勉強会の翌日、さくらんぼ畑を見せていただき、
素人のわたくしに剪定した木の形などわかるはずもなかったが、
花芽が非常に充実していることはわかった。一応果樹担当だったからね。

その時聞いた話は剪定の話より枝がねじれると葉芽がどうなるとかの
細かいことばかりだったが、佐藤さんは変わったことをおっしゃった。

さくらんぼは通常一か所にたくさんの花をつける。
ほっとくと全部実になるため5個から6個くらいに調整する。
これを摘果という。ならせすぎると味が落ちるため必須の作業である。

佐藤さんはこの5個から6個つけるところに2個しかつけないと言うのだ。
5~6個つくのに2個。な、なぜ? 少なすぎない? 
しかし、葉っぱが光合成をした養分は5個のところ2個に集中するから、
おいしいものができるはずである。この理屈は素人でもわかる。

だいたいひとつの果物に必要な葉っぱの数は40~70枚と言われる。
少なすぎると味はよくない。しかし果実が少なすぎても良くない。
果実に行くはずだった養分が余ると木の生育に回ってしまうからだ。
そうなると変なところから枝が出たり果実の味も悪くなってしまう。

5個つくとこに2個しかつけないんじゃ木は暴れないのかな? と
栄養週期をやってた元担当産地のすもも農家、古郡さんに聞いたら
「それをコントロールするのが栄週。暴れるわけないじゃん」と言われた。

おお、そうだった。栄週とはそういった技術なのだった。
すげーなー、栄週。とやっぱりしみじみ思った。

さて、このように栄週のことをくどくど書いたのには理由がある。
先日佐藤さんからさくらんぼが送られてきて、
そのさくらんぼがすごかったのだ。わたくしは驚愕した。

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山梨県で栄週をやっていた古郡正さんのすもも。現在は自然農法。
わたくしは最近古郡さんの自然農法のすももしか食べてないので、
一般的なすももの味がわからなくなっておりますが、これもたぶん
木の力を最大限に引き出した、そういうすももになっていると思います。



わたくしの考えるすげーおいしい砂糖錦の味は、
東根市の奥山博さんが栽培している佐藤錦が基本である。
ちなみに奥山さんも栄養週期の人だ。栄週=うまいものなのだ。

佐藤さんの佐藤錦は実を言うと佐藤錦っぽくなかった。何かが違った。

自分の頭のなかにある佐藤錦の味は、ぷちんと皮を噛むと
最初にロウっぽい香りがふわっとしてその後に少し酸味が来て
甘みがどっと押し寄せ後味はひたすら甘く、せきが出るほど甘いこともある。

しかし、佐藤錦は紅秀峰のように甘いだけではなく、ほんのりした酸味と
独特の香り(ロウとか言ってすんません)がありそこが魅力的なのだ。

「今から佐藤錦を食べるぞ!」と集中し準備したわたくしの脳は
佐藤さんの佐藤錦を一口食べて困惑した。あれ? これなに?
佐藤さんの佐藤錦は酸味も甘みも強くものすごーくおいしかったが、
色合いも軸の形も佐藤錦なのに佐藤錦っぽくないのだった。

ほんのりふんわりした佐藤錦をクッキリ際立たせたパンチのある味。
そんな感じだ。さて、これはどういうことかな? 

わかっているのは作り方が違うことだ。しかし作り方と一言でいうが、
果樹の場合、剪定、土づくり、木の仕立て、摘蕾・摘果のタイミング、
施肥管理と生育ステージ上にさまざまなやり方・技術がある。

生育期間が半年から一年で終了し毎年更新する畑作と違い
果樹は永年作物だから今年だけではなく長年の蓄積が果実の味を決める。
佐藤さんの佐藤錦の味は佐藤さんが今まで蓄積した結果によるものだ。
それがこのような独特の味をつくっているのだ。

佐藤錦っぽくないけどすげーパンチがあっておいしい佐藤錦。
木の持っている力と佐藤さんの技術が結晶したものである。

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なんかでかい花芽だったなー。次に行った人の畑の花芽が
とても貧弱で弱々しく、そういう花芽はいい花がつかないから、
やっぱりこういうのって技術だよねとしみじみしみじみ思いました。



わたくしはスーパーのくだものが仕組み的においしいものを販売しづらい
と知っているため、果樹担当になってから一度も買ったことがない。
生産者に送ってもらったおいしいものしか食べていないのだが、
それでも作り方でこんなに味が変わるのかと感動してしまった。

しかも「甘い」ということでのみ評価されがちな佐藤錦で、
目からウロコが落ちるような味のものができるとは。
佐藤錦にそういった潜在能力があるということだろう。

作物の持つポテンシャルを引き出せる人とそうでない人がいる.。
そしてそうでない人の方が圧倒的に多いのだ。

同じ品種だから一律同じ味なんてことは思い込みにすぎないと
某D社を辞めて5年経ってしみじみ思った佐藤さんのさくらんぼでした。


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大変驚いたぶどうの「鉢植え栽培」

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シャインマスカットの出荷時期は8月下旬。土耕よりも少し早い。
ってことは値段がいい。鉢植え栽培メリット多し。左のちんまりしたぶどうは
今年初生りのシャイン。右は5年目。大きさが全然違うのだね。普通もそうだっけ?



観光農園なんかで、いちごの培地が宙に浮いてるハウスに
入ったことがある人、たぶんいると思うけど、
ああいう風に土から栽培土壌が切り離されてる栽培方法って、
知らないだけでけっこうある。

いちごの場合は高設栽培という。わりとわかりやすい。

フツーのハウスにトマトが植わってるように見えるけど、
実はトマトと地面はビニールシートで切り離されていて、
トマトの根が大きく広がっていかないような水・肥倍管理をして、
高糖度トマトを作る方法もある。

また、ハウスの中のパパイヤの下にシートを敷き、
地中に設置したパイプから化成肥料の液肥を流し、
養分管理をするとかいう栽培方法もある。

これらのものが植わっている土は配合してあったり、
山の土だったりいろいろだけど、シートが敷いてあるので、
根が大きく広がることができない。

植物には負担を与えるが、環境を完璧にコントロールできる。
また、土を入れ替えられるので、土壌由来の病気が減る。
だから農薬が少なくて済むと言うメリットもある。

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下に敷いてあるシートを突き破って根が地面に広がることがあり、
そうなるとぶどうの樹が生育し始めるらしい。鉢植え栽培はこじんまりとした樹で
生育を早くし、熟期を早め、更新を楽にするってな技術なのだね。
りんごのワイ性台にちょっと似てるかな。



こういうの、正式名称はなんて呼ぶのか知らないけど、
便宜上、「鉢植え栽培」と呼ばれてるらしい。

一般的な、地面に栽培されているものは「土耕」と呼ばれる。
有機JAS認証は、土耕しか認められていない。
野菜工場で作られる野菜が無農薬だけど有機じゃないのは
法律的に決まりがあるからである。

だって、土づくりをするからこそ有機農業なのであって、
客土や溶液管理じゃ有機農業って言えないよね、理念的に。

ってのはおいといて。

先日「大豆の種まきから味噌作りまで」のオプションで、
八郷町のぶどう農家見学に行ったのだが、
そこのぶどう畑がまさに、この鉢植え栽培であった。

驚愕の鉢植え栽培。山梨に何十回も行ったのに、
山形でもぶどうけっこう見たのに、一度も見たことのない鉢植え栽培。
いいとか悪いとか別にして、いたく感心して帰ったのだった。

この方は、昔から農業をしてたわけではなく、
54歳の時に退職し、農業をすることを考えたらしい。

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ぶどう農家と話すたびに不思議に思うこと。皆、番線を握りながら話すの。
なんで握っちゃうのかなあ…っていつも思うが、聞いたことはない。
ほんたべ的七不思議のひとつ。しかしお若い方でした。もう70歳なんだって。



では、何を作るか。

彼はスーパーで高値で売られているものを観察し、
ぶどうが高いってことに気がついて、ぶどう栽培をすることにした。
実家は米を作ってたけど、果樹の経験は全くない。なのにぶどう。
すごいなあ、そこだけですごいと思ってしまう。

そして、茨城の農業試験場に行き、鉢植え栽培に出会った。
地面にシートをしいて客土し、ぶどうの苗を植えるこの栽培方法では、
定植後3年でぶどうがなり、5年もすればある程度の収量が上がるようになる。

土の分量が少ないからぶどうの生育が早く、
土壌由来の病気にならないので農薬が少なくてすむ。

雨よけハウスだが、周りは防虫ネットで囲ってあり、
環境のコントロールは通常のぶどうよりもかなり完璧にできている。

培地は有機質肥料と鹿沼土・腐葉土を毎年少しずつ足しているが、
3m×3m×60cm位の倍土に15kgの肥料一袋だけらしい。

うーん。不思議だ。しかもそのぶどうがおいしいのだ。

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ハウスの全景。こんな感じ。入った瞬間に「あれれ?」と思ったわたくし。
これだと下草管理がらくちん。水は棚に沿わせたホースから地面に直接流れる。
水分の調整も、肥培管理も、かなりの精度でコントロールできそう。
もちろん園主の観察力も並みじゃないでしょう。話を聞いてて想像できました。



好き勝手に根を伸ばすことができないため、木の寿命は早い。
しかし初なりが早く本格的に収穫するまでの期間が短いので、
おいしくないもの、うまく作れないものは簡単に更新できる。

更新しても惜しくないのだね。だから次々新しい品種を試している。

そんなことは、一般のぶどう農家にはなかなかできない。
植えたらそれなりに大きくして経費を回収しないといけないからね。
でも鉢植えではそれが可能だ。

栽培されてるのは、マスカット・オブ・アレキサンドリアを始め、
高級ぶどうと言われるものばかりで、主に欧州種を作っている。
欧州ぶどうってね。病気や虫に弱くてさ、農薬がたくさんいるものなの。
でも殺菌剤2回、殺虫剤2回しかまいてないんだって。

ええー、そんなことが可能なんですか!!!

「安心して食べられるうまいぶどうが目標だから」と笑う彼。
ブランド地域でもない茨城県でぶどうを作ってる。
すごくいいのは、直売でほとんどのぶどうが売れてるってこと。

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ハウス周りの防虫ネット(っていうかなんだろ?)にくっついてたカマキリちゃん。
植わってる品種はマニキュアフィンガーとかロザキとか、高いぶどうばっか。
だから差別化がしやすく、珍しいからいい価格で売れてるらしい。そして低農薬。
なんだかなあ。すごいよね。



「地域の人はそんなに買いに来ないから、地元のぶどう農家とは
バッティングしないのがいいんです。東京からわざわざ人が
買いに来る。そういうぶどう作りをしてきたんです」と彼は言う。

うっとりするマスカット香がステキなアレキを買って帰りましたが、
そりゃまたおいしいアレキでしたよ。
しかも500g1,050円というお買い得価格(価格設定は100g210円)。

54歳から始めたぶどう栽培。
毎日ハウスに来るのが楽しみでたまらない。
夜もハウスに来て、懐中電灯でぶどうを見ては「きれいだなあ」とうっとりする。

きっとこの人、ぶどうが好きで好きでしょうがないんだな。
今まで何人もの農家と話したけど、こういう人ってほんとにおいしいものを作る。
しかも、人が真似できないことをやってのける人が多い。

すごいなあ。話半分に聞いても相当すごいなあと思いながら
おうちに帰ったのでございました。
(農園の名前を失念しました。すんません。わかったら書いておきます)

※ブログ読者の方からこの栽培方法は「根域制限栽培」というのだと教わりました。
スナフキンさん、H2さん、ありがとうございます!


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大きなりんごと小さなりんごの木の話

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最近スーパーでも見かけるようになった「秋映」というりんご。
10月上旬に出荷されます。以前はここは千秋というりんごの出荷時期でした。
おいしいけど作りにくいので、千秋を作る人は減ってきています。
品種構成を変更するのも「改植」の役割。いいりんごに植え換えるのですね。



例えばわたくしがりんご農家だったとする。

年老いた両親と自分、そして夫の4人でりんご栽培をしている。
両親が植えた木は、昔たくさんりんごをならせたが、
今では両親と同じように年老いて、収量が上がらなくなってきた。

品種も一昔前のものばかりだ。
つがる、千秋、王林、ジョナゴールド、ふじ。

昨年母が脚立から落っこちて、幸いけがはなかったが、
もう大きなりんごの木の作業は難しくなっているのだと実感した。

年老いた大きな木。今まで自分を養ってきてくれた木。
これを新しいものに更新しなくてはならない。
新しい木、新しい今風の品種構成にして、
次世代につなげるために、わたくしは「改植」を考える。

というように、昭和の時代にりんごを栽培していた人々は、
どこかの段階で上記のようなことを体験する。
そして、りんごの木を新しく植え換える。

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これが「大きな木」のきょう木栽培。カメラのフレームにおさまりません。
もう60歳以上になるおばあさんのふじ。でもまだ実をならせています。

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ワイ性台につなれたワイ化のりんご。ティーンエイジャーって感じ。
この2倍位の大きさにはなりますが、小づくりで作業が楽そうでしょ。
りんごの実も大きな木と比べて、早くなり始めるという特徴もあります。



そして、ほとんどの農家が「作業を楽にしよう」と思う。
りんごの作業とは、春から秋までのさまざまな作業を
全て脚立に乗ってやらなくてはならない。

脚立を上がったり降りたりするのはすごく大変だから、
落ちるし滑るし危ないし、できるだけ脚立を使いたくない。
そうすると、新しいりんごの木は「小さい木」にしようと思う。

この小さい木が「ワイ化」と言われる
クリスマスツリーのようなこじんまりした木である。

ちなみに上記の大きな木は「きょう木」と言われる大きな木のことだ。

大きな木は体力があり、なり始めると収量もいいし、
ワイ化と比較して味もよく(と言う人が多い)、天候や
いろいろな悪条件にも耐え忍んでくれるというメリットがあるが、
なにしろ作業が大変。

一番の問題は、植え換えるとなり始めるまでに
何年もかかることだ。その間はりんごが採れない。

gazous 011
ワイ化で調子が上がってきたシナノゴールドの木。植えて8年位かな。
もう収量も上がってきて相当りんごが収穫できるようになっています。



ワイ化にすると4年程度である程度採れるようになり、
計画的に改植すれば経済的なダメージが少なく、
とにかく作業が楽になる。木の寿命は短いけどね。

脚立に登らずいろんなことができるようになる。

というので、現在の主流はワイ化栽培である。
昭和の時代に植えた現在まだ残っている大きなりんごの木は、
そのうち切られ、小さな木に更新される。

いつか大きなりんごの木がなくなる日が来る。

それはそれで少しさみしい気がするね。大きなりんごの木の下で
風に吹かれるのはとても気持ちがいいものだから。

さて、りんごの作業ってほんとにいろいろあるのだが、
そのあたりも技術によって省力化が図られている。

gazou 057
木のてっぺんでも脚立の上から2段目くらいで手が届く、これがワイ化のいいところ。
若いうちはまだしも、年とってから脚立から落っこちるとおおごとです。
骨でも折れたらもっとおおごとです。低い位置での作業って大切なんですよ。



まず花を減らす摘花。その後受粉。なった実を減らす摘果。
さらに摘果。さらに適正な数にする仕上げ摘果。

その間に袋かけ(青森に顕著)。大きくなってきたりんごに
きれいな色がつくよう、りんごの周りの葉を摘む葉摘み。
その後、まんべんなくお日様がりんごにあたるよう、玉まわし。

こういった作業の合間に農薬散布、草刈などがある。

現在では受粉は蜂にまかせて人間はやらないという農家も多いし、
摘花や最初の摘果は農薬で間に合わせている人がいる。
長野県では袋かけはあまり行われていないし
JA・市場出荷でなければ葉摘みもそんなにしない人もいる。

そして、脚立に登らなくても作業ができるようになった。

まあしかし、ワイ化と言ってもてっぺん近くは3m以上になるので、
脚立のてっぺんに手放しで乗らないといけなかったりするけど、
大きな木に比べたらほんとに楽だとりんご農家は言う。

gazou 062
りんごの中心花にひとつひとつ花粉をつけてく作業は、そりゃもう大変。
蜂に任せず人間がやった方がいい実がなるからと今でも受粉する人もいますが、
それは個々の農家の判断。この作業があるとないとでは春先の仕事量が全然違います。



なんてことが、消費者の知らないうちに進んでいるのだった。
作業性を上げ面積を増やさないと、食べていけないってこともあるけどね。

なぜこんなことを書いてるかと言うと、
無肥料栽培のりんご畑を見て、思うところがあったからだ。
無肥料(無農薬)である程度できるのは、
たぶん木が大きいってことの影響も大きい気がする。

環境・天候の影響を受けにくく、安定している大きな木は
多少の変動には動じない。かんばつ後の急な大雨でも
りんごの実が割れたりしないし、葉っぱが黄色くなったりもしない。

そういう意味で大きな木の栽培は安定している。
青森県の木村さんの無農薬りんごの畑も、大きな木だった。

木村さんに影響されて無農薬にしたワイ化の畑を見たが、
たった一年で惨憺たる有様になってしまっていた。
これが大きな木であれば、影響が目に見えるまで2年はかかる
木の大きさでずいぶん違うのだなあと思ったものである。

gazou 094
りんごも60歳を過ぎるとあちこち病気になって、枝が折れたりするもんです。
老体にムチうって実をならせてる木を切るのはせつないもんですが、
自分も、子供たちも食べてかなきゃいけないですから。



さて、りんごの木を大きな木からワイ化に改植し、
経済的に困らないよう、4年後に一反4トン収量が上がる技術。
これを考えたのは長野県の故・原今朝生さんだ。
原さんの記事は過去ログから
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-35.html

原さんはりんご栽培の省力化に尽力し、年をとっても、
りんごの木が古くなっても、農家が困らない技術をいろいろと研究し、
その技術をおしみなく人に与えた方である。

原さんが今生きていたら、無肥料・無農薬栽培のりんごのことを、
なんて言っただろう。最近よく考える。

「すごいことする衆がいるわなあ」って言うだろうか。
それとも? 

もうじきお盆。原さん、夢でもいいから遊びに来てくれないかなあ。
聞きたいこと・伝えたいことががたくさんあるのに。


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無肥料(無農薬)のりんごを見て来た

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道法正徳さん(右)と紺野邦男さん。紺野さんは桃も切り上げ剪定で栽培中。
桃はまだ無肥料・無農薬じゃないんだけど、興味深い畑でしたよ。



りんごについて考えるとき、わたくしの知識の源は
長野県の故・原今朝生さん一家と、
その安曇野に就農した元同僚である。

つまり長野県安曇野界隈のりんご栽培の知識しかない。

原さんはりんご界では技術的に頂点に位置する方だったため、
原さんに聞いたことは品種にしても剪定技術にしても改植にしても、
ある意味りんご界の最新情報でもあった(と思ってた)。

だからその他の地方の人々のやり方を全く知らない。

とくに、原さんちは小さい木で作るワイ性台が主体なので、
でかい木で作るきょう木(きょうぼく)栽培については
さらに全く知らないのであった。だから、かなり知識的に偏ってる可能性はある。

でもまあ、それがベースになっちゃってるのよね。
しょうがないのよね、なのであった。今回、
この偏りの中でレポートしていることをご了承いただければと思います。

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りんごってね、一昨年伸びた枝に実をつけるのね。昨年の枝は二年枝っていって、
これに実をつけるとピカピカの良くない実が着くってのが常識なの。
20センチ以内の二年枝なら、ピカピカにならないって話を今回初めて聞いたの。
しかも、糖度が高くなるって言ってるのよね。ああ、よくわからないわ~。



さて、切り上げ剪定でおなじみの道法正徳さんにくっついて
福島県で無肥料でりんごを栽培している
紺野邦男さんの畑に行って来た。

紺野さんは、りんごは経営の主体ではないらしい。
7年前からりんご畑を無肥料にした。

今年からそのうちの一本を無農薬で栽培してみている。

一昨年の冬、すべてのりんごの木を切り上げ剪定にし、
昨年は切り上げ剪定した枝に、りんごの実がなった。
木はワイ性台ではない、きょう木栽培。品種は「ふじ」である。

この畑で、ほんとに驚いたことがたくさんあった。

ところで、一本だけ無農薬の木のことなんだけどね。
同一圃場の他の木には慣行よりも少ないとはいえ農薬散布がある。
これは厳密に言うと無農薬とは言えないかなあと思うので、
無農薬はカッコ付で紹介させてもらうことにした。

IMG_6548.jpg
これが驚きのモンパにやられてて復活した樹でございます。
とっても元気で何事もなかったかのように実がついてます。



なにしろ、スピードスプレイヤーで農薬散布すれば、
その木のとこだけノズルを閉めようが風を止めようが、必ず農薬は飛ぶ。

まんべんなくかかってはいなくても、かなりかかっている。
「無農薬」って言うのはちょっと厳しいかなと思うのよね。

ま、それはともかく。無肥料7年間ってのには驚いた。

大きな木なのでワイ性台に比較して影響は出にくいとは思うが、
木の様子だけみると、葉っぱは厚く、同化能力が高そうで、
枝元から枝先まで全く同じ大きさの葉が、V字型の美しい形で並んでいる。

もちろん、徒長枝は出ていない。花芽はふくふくと充実してるし、
木としてもとてもいい状態に見える。恐るべし、切り上げ剪定。

りんご産地では、青森だろうがどこだろうが、
枝が全部上向いてるようなりんごの木を見ることはない。

IMG_6550.jpg
ところどころこんな具合にモリモリッと実がついてるが、わざとなんだって、
こういう具合についた実が糖度が高くていいものができたとのこと。
つけすぎでしょ!って写真がお見せできないのが残念でございます。



果実がなって下がってきている枝はあるが、
紺野さんのりんごの木は、ほとんどの枝が上を向いている。

だから、全体的に木の勢いがいいのかなと思う。
でも、徒長枝が出たり、暴れたりはしていないのだ。

きょう木栽培だから? 無肥料だから?
そう言えば昔、桃農家がこんなことを言っていた。

「肥料入れるとさ、夏によぶんな枝が出るでしょう。
結局捻ったり切ったりする。その分、肥料が余分なんだよね。
じゃあ肥料を減らせばいいんだろうと思うけど、誰も減らさない。
毎年よぶんな枝を出しては捻ったり切ったりしてるんだよね」

肥料って何なのかな。なんか考え込んでしまいましたよ。

さらに、モンパ病というリンゴの木を枯らす
恐ろしい土壌菌による病気にかかった木が完治していた。

IMG_6555.jpg
りんごの写真がないので、桃で代用。ご想像ください。
この桃も相当ついてます。でも少し小玉だね。5kg箱22玉位なんだって。
でも核ワレ果落としてこのつけ方ですから、その前どんだけついてたかって話です。



切り上げ剪定をすると、枝がぐっと伸びる。

枝が伸びる際、同じように根っこもびゅっと伸びている。
新しい根がたくさん出たことで、病気に勝ったのだと道法さんは言う。

切り上げ剪定、恐るべし。剪定方法でモンパが防げるなんて。
モンパの防除は土壌消毒しかないと思ってたのに。

さて、紺野さんの木には、驚くほどりんごの実がついていたが、
これは切り上げ剪定の特徴でもある。

通常の1.5倍は実をつけてもいい。樹勢がいいので問題ない。
昨年のようすを写真で見せてもらったが、もう玉すだれのように
りんごの実がついてんの。びっくり! こんなならせ方、あり得ない!

自分の担当産地でこんなにつけてる人見たら、
「ならせすぎだからちゃんと摘果してよ!」と叫ぶところだ。

その玉すだれのようになったふじは、糖度が13度~15度あったらしい。

IMG_6575.jpg
上向いた枝が風にそよいでおります。この樹形・長果枝に実がついてるとこ、
などにご注目ください。あんまり見たこと無い桃の木でございます。



ええ~、ほんとですか~。

たくさんなって糖度が高いんじゃ、儲かっちゃうじゃないですか!

栽培方法がどうあれ、味が良くなくては果樹の経営は難しい。
だって日本では、果物は嗜好品だからね。まず味なのよ。

果物を高く売るには付加価値が必要だ。その付加価値は、
おいしさがダントツで、その他化学肥料不使用・低農薬などがある。

ここに無肥料と、まだ発展途上だが無農薬が加わると
そりゃあすごい付加価値商品になるでしょう。
紺野さんは今、チョー付加価値商品を栽培しているのだった。

無肥料で玉すだれのようになりまくってるふじ、どんな味なんだろ。

落葉果樹での切り上げ剪定は、ずっと疑問符つきだったけど
このふじを見て気持ちが変わった。今年の秋には道法さんに
「まいりましたあ!」と言ってるわたくしが想像できましたです。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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