農薬について知っておきたい10のこと

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今んとこ農薬の使用量がわかる公的なデータ最新版。
世界一というタイトルを韓国に奪われました日本。



1.農薬取締法でいろいろなルールが決まっています

農薬取締法は2002年に改正されました。それ以前は
「トマトに使ってもいい農薬だからミニトマトにまいてもいいよね」とか、
「希釈倍率が決まってるけど濃くしても(薄くしても)いいよね」とか
わりとザックリ使えましたが、今はダメですバレたら罰せられます。

農薬それぞれに使っても良い作物(適用作物)や希釈倍率とか
散布量とか何日前までに使用することとかが決まっています。

昔は登録がないから日本では売ってないけどよく効く農薬を中国から輸入した、
みたいな噂話をしょっちゅう聞きましたが、最近はさすがになくなりました。
農薬取締法が厳しく取り締まっているからでしょう。

2.農家は農薬をまくことを「消毒」と言います

なぜかは不明です。

3.平成26年時点で日本の農薬は4,339件登録されています

内訳は殺虫剤1096,殺虫殺菌剤504,殺菌剤915,除草剤1490(すげー!),
植物成長調整剤(トマトトーンとかジベレリンとかね)94、殺鼠剤28、
その他(展着剤とか)212 となっております。
http://www.greenjapan.co.jp/n_torokjokyo26.htm GREEN JAPANより

年々減っております。古くて安くて危険な農薬がとくにどんどん失効しています。

4.日本で一番売れているのは除草剤グリホサートです

農薬名はラウンドアップです。モンサント社の特許が切れたので
他の名前でも売られています。ラウンドアップは作物を枯らしてしまうため
栽培中は使えませんが、ホームセンターでも売っており、
ダントツの販売金額を誇っております。
http://jaccc.jp/pdf/ARfD_gn.pdf
農薬のADI及びARfD値 一覧表(含、我が国における出荷金額)
(株)化学分析コンサルタント-技術資料 より ※数字は平成22年

5.日本の単位面積あたりの農薬散布量は世界2位です

1位は韓国、3位はオランダです。韓国の農薬が多い理由は不明ですが、
オランダは施設栽培が盛んだからではないかと想像しています。

高温多湿なアジアモンスーン気候である日本は病害虫の発生が多く、
お国柄としてちまちました小面積で非常にていねいに栽培をすることに加え
消費者が世界一見た目にうるさいことなどから農薬の散布数が多めになっている、
と考えられます。だから日本は・・・などと言いたくなりますが、
粗放栽培&大面積で穀物を大量に作る米国などと単純に数字を比較してはいけません。

6.農薬にはマジで危険なものやフツーに危険なものがあります


農薬の裏を見ると「劇物」「毒物」「指定毒物」とか書いてあります。
これらは急性毒性が高いものなので取り扱い・散布に注意が必要です。
劇物は405、毒物は10(殺虫剤7、除草剤3)、指定毒物は殺虫剤で11あります。

真夏のクソ暑い時でもカッパ着てゴーグルかけてマスク、ゴム手袋して農薬まく、
というのが農薬散布時の一般的な装備ですが「俺はマスクしないで消毒するのが自慢」
みたいなおじさまや、有機許容農薬であるBT剤なら「手で混ぜてもいいんじゃないの」
とか言うおじさまもいます。

しかし、有機許容農薬である石灰硫黄合剤がカッパの隙間から入って手首と首に
ものすごい火傷を負った農家がいましたから、危険なものは危険なんですよ。
合剤は車の塗装もハゲるしね。だからちゃんとしないとダメなのよね、ほんとにもう。

7.同じ農薬を続けてまいているといつか効かなくなります

例えば、世代交代が早い害虫(コナガとかダニとか)に同じ農薬をまいていると、
死なずに生き残ったものが次世代に残り、また残りしているうちに
その農薬が効かなくなります。これを「抵抗性がついた」といいます。
農薬が効かなくなると大変とても困りますから農薬のまき方にも注意が必要です。

8.なんてことを加味して防除暦が作られています


作物に農薬をまくカレンダー「防除暦」は、当該地域の病害虫を予測して、
抵抗性がつかないようさまざまな系統の農薬をバランス良く配置してあり
その通りに散布すればそれなりに作物ができます。

出張に行くと朝っぱらから「今日は灰星病のナントカをまきましょう」
なんつー有線が流れてまきどきも忘れないしくみになっているようです。

9.農薬の散布量・散布数を減らすためには技術が必要です

防除暦通りに農薬を散布しているとそれなりに作物はできますが、
減らして作ろうとすると上記のような農薬についての知識及び、
栽培技術や土づくり、観察力などが必要になります。

例えば、某D社でわたくしが担当していた落葉果樹農家では、
地域の慣行栽培の農家の農薬散布数50%以下で栽培する人がほとんどでした。

落葉果樹類は農薬を減らして作るのが非常に難しいため、
某D社の落葉果樹農家は地域でも技術のある方が多かったのですが、
具体的に言うと、りんご、梨、洋梨はやっぱり難しくて1/2、
桃やさくらんぼで1/4ってな感じです。

なんだ大したことないじゃん、と思った農家の方々もいらっさると思いますが、
なんと某D社では有機リン、カーバメイト、キャプタンなどが使えません。
これらの農薬が使える一般的な特栽と比ベると、かなり技術が必要だと思います。

そして、割合で言うと大したことないようですが、りんごの場合殺虫殺菌混合で
18回散布のところ9回とか8回ですから、回数を知るとグッと来ませんか?

え。来ない? あれま。

やみくもに農薬散布を減らして栽培すると収入に関わります。
木村秋則さんが8年間の無収入期間を我慢できたことはすばらしいですが、
現実的ではないでしょう。誰にでもできることではないからすばらしいのです。

我が師匠西出隆一さんは「技術のないものは有機栽培するな」と言いますが、
ある意味真実だと思います。

10.そうは言ってもやっぱり日本の農薬散布量は多いでしょう

昨今の研究で、農薬・除草剤の散布により、土壌中の微生物や
植物にくっついている微生物相が変わることがわかってきました。
これらの微生物は植物の生育に大きな役割を持つと考えられています。
まだ研究段階ですが作物の食味にも大きく影響するとも考えられています。

そのうち科学的に「農薬の散布量が少ないほうがおいしい」と
言われるようになる日が来るかもね。


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残留農薬について知っておきたい9つのこと

短期暴露評価_ページ_06
残留農薬の決め方(厚生労働省サイトより)。以前はADIしか参照されていませんでしたが、
一昨年からARfDも参照されております。非常に詳しい残留農薬についての説明は以下。
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html(農水省・農薬の基礎知識)



1.残留農薬基準値は食品衛生法で定められています。

日本で販売されている野菜・果物・穀物は残留農薬基準値以内のもので
基準値を超えたものはお店には並んでおりません。

2005年にポジティブリスト制が施行され基準値が無かった作物についても
海外の数値を参考にした基準値が定められ、それもない場合は
一律0.01ppmというヒジョーにキビシイ数値が決まりました。

現在は基本的に全ての作物について残留農薬基準値が定められております。
残留農薬基準値は「安全の可視化」であり、この数値以内であれば
作物は法的に「安全」と言えます。つまり売られているものは全て「安全」です。

2.残留農薬基準値は公開されています

http://m5.ws001.squarestart.ne.jp/zaidan/search.html
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 サイト

農薬名ではなく成分名で検索しないといけないのでコツがいるけど
眺めているといろいろと発見があって楽しいです。
基準値は頻繁に改正されており、ネオニコが改正された時だけ騒がれますが、
その他のものも高くなったり低くなったりしています。

すでに失効した農薬の残留農薬基準値も掲載されていて検索すると
DDTとかBHCとかもう使われていないものも出てきてビビります。

3.残留農薬の単位はppmです

ppmとはparts per millionという意味で、100万分の1ということです。
1ppmは0.0001%です。ちなみに残留農薬基準値のデフォルト数値0.01ppmは
0.000001%になり、ものすごーくちょびっとです。ピンと来ないので
1ppmは1リットルに対してどれくらいになるかというと(厳密に言うと違うけど)
だいたい1mgらしいです。それでもピンと来ないけどまあいいか。

4.市販の作物の残留農薬はゼロではありません

1で書いたとおり売られているものは基準値以内ですが=ゼロではありません。
どれぐらいかは不明ですが直近に散布されたものは残っている可能性が高いです。
野菜や果物はちゃんと洗って食べましょう。

5.有機農産物にも農薬が残留している可能性があります

なぜなら日本の国土は狭くお隣の畑で農薬をまいたら飛んできます。
これをドリフトと言います。こういった影響を防止するため、
慣行栽培の圃場が隣りにある場合、有機圃場には緩衝地帯が設けられます。

ただでさえ狭い畑の枠に1mも栽培できない土地ができるのってどうよ、
と思いますが、そこに違う作物を作って非有機で出荷することは可能です。

6.まいた覚えのない農薬が出ることがあります

なぜなら日本の国土は狭くお隣の畑で違う農薬をまいたら飛んできます。
これをドリフトといい、その農薬が当該作物に適用がない場合は
出荷停止とかになりおおごとになります。

例えば米産地で空中散布すると、50mくらい離れた畑のぶどうから
空中散布した農薬が出たりします。適用がある場合は基準値がありますから
基準値以内であれば出ても出荷停止にはなりません。

また、果樹専用の農薬散布機スピードスプレイヤーで農薬をまくと
とある流通の実験で150mほどバッチリ飛んだという結果もあり、
果樹産地でぽつんと1か所野菜を作ってる人とかはおおごとです。

なお適用とは「この農薬はこの作物に使えるけど他のにまいちゃダメだからね」
というもので、すべての農薬に定められており、違反すると出荷停止です。
適用作物を知りたい人はホームセンターで農薬の裏の表示を見てみましょう。

7.残留農薬が基準値以内になるように農薬はまかれています

毒性が高く残留しやすいものは出荷前にまかない、
などの配慮がなされた防除暦がきちんと定められています。

防除暦とは地域のJAが定めている「この時期にこの虫・病気対策に
この農薬をこれだけまきましょう」というカレンダーのことで、基本的に
防除暦通りに農薬をまけば残留農薬基準値以内に収まる設定になっています。

2002年農薬取締法が改正されて以降、それまでわりとざっくりしていた
農薬の適用作物やまき方についてきちんとする必要性が生じたため、
(なにしろ違反したら出荷停止→回収なんてことになりますからね)
JAから栽培日誌を書かないと出荷できませんからね的な指導が出て、
年取った農家が大わらわ、みたいなことがあったようです。

というようなこともあり、リスク軽減のため防除暦通りに農薬をまいてないと
出荷を受け付けないなんていうJAもあり、減農薬しづらいしくみになっています。

8.洗っても落ちない農薬はあります

表面についてる農薬は洗っても落ちますが、浸透移行性の高い農薬は
洗っても落ちません。しかしそういうことも考えて基準値は定められています。

ただ、果物は果実よりも果皮の方が残留農薬の値は高いため、
残留農薬が死ぬほど心配!!! という人は皮をむいて食べましょう。
果皮と果実の間にとても大切な成分が含まれているのでそっちが大事!!!
という場合は皮ごと食べればいいと思います。

なお、輸入柑橘類の果皮だけは積極的に食べないほうがいいでしょう。
日本で禁止されている農薬(OPP・TBZ)が残っている場合があります。

9.残留農薬よりも農薬のほうが危険です

残留農薬基準値の高いものは、どんなに高くても50ppmくらいですが、
それを散布する農家は直接農薬に触れ、場合によっては吸い込みます。
また、そこにいる虫、微生物もかなりの割合で死滅します。

アメリカでは農薬散布後の圃場に入ってはいけないという時間的な制限があり
法律で定められていますが、日本では農家の判断にまかされています。
日本における農薬関係の法律は消費者のみに向いています。

ちょびっと残った農薬がついた菜っ葉を食べる人よりも
その場にいて農薬をまいている人のほうが危険だという事実を受け止め
ときどきはそのことを考えてみて、自分のふるまいを決めてもいいかもと思います。

結論:
残留農薬を闇雲に怖がる必要はありませんがリスクはゼロではありません。
中には「毒物」「劇物」に分類されるもの、魚毒性が高いもの、
また水質を汚染するもの、発がん性・催奇形性が疑われるものなどもあります。
心配であれば農薬を散布しないで栽培している人のものを選んだり、
一歩進んで自分で作ったりすることもできます。

そういえば、何かの農薬が一般人の体内から出たとかいう情報を時々見かけますが、
何があるにしても直接影響があるはずの農家から何か出た的な話は全く見かけませんが、
どっちかって言うと農家の体内から何かが出ないと変だよなー、なんでかなー
誰かの陰謀かなーなどとこれを書いてて思いました。

そういう研究には予算がつかないのかもしれませんね。


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ネオニコチノイド系農薬は規制されないよねと思った話

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講師の本山直樹氏(千葉大学名誉教授 東京農業大学総合研究所研究会農薬部会長)
なんか前に農大で講演聞いたような気がしたことをあとで思い出したけど
ARfDのこととかいろいろ聞けて良かったです。



NPO法人みつばち百花主催の
「最近の報道から考えるミツバチと農薬 それぞれの課題」に参加した。

ネオニコチノイド系農薬とはニコチンに似た化学式をもつ物質で、
日本人が開発したわりあいと新しい農薬である。
最初にできたのは「イミダクロプリド」だ。

当初、この新しい化学式を持つ農薬はネオニコ系という名前ではなく
クロロナントカ系と呼ばれていた(正式名称失念)。
それを「ネオニコチノイド系」と名づけたのも日本人である。

ネオニコはそもそもメイドインジャパンの農薬なのだった。
おお、すごいじゃないか! 
開発した会社は外資系の農薬メーカーに買われたので、今はもう無い。

ネオニコがクロロナントカ系という名前であれば
こんなに話題にならなかったかもとわたくしはよく考える。

ネオニコチノイドという名前は非常にキャッチーで覚えやすく
ニコチンという既知の物質名がついてるからさらに身近な感じがする。
そしてなんとなく「ニコチン=悪いもの」という気もする。
クロロナントカ系だったら絶対話題になってないはずだ(言い切り)。

さて、ネオニコチノイド系農薬には現在以下の7剤があり、
このうち5剤がミツバチに影響があると考えられている。
※がEUで2013年から2年間規制されてる農薬

成分名 イミダクロプリド 農薬名 アドマイヤー ※
成分名 アセタミプリド  農薬名 モスピラン
成分名 チアクロプリド  農薬名 カリプソ
成分名 ニテンピラム   農薬名 ベストガード
成分名 チアメトキサム  農薬名 アクタラ   ※
成分名 ジノテフラン   農薬名 スタークル
成分名 クロチアニジン  農薬名 ダントツ   ※

ネオニコ系農薬とひとくくりに言われるが、
イミダクロプリドとジノテフランは違うし、
適用作物も殺す虫も微妙に違う。

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中村 純氏 玉川大学ミツバチ科学研究センター教授 みつばち百花理事
ネオニコとミツバチの話が出る際に、なぜミツバチの研究者や
農薬関係の科学者が発言しないのか、率直な意見を聞かせていただきました。
「ですよねー」って感じ。以前「関わりたくない」って言ってた人もいたし、
科学者として非常に発言しにくい話題だってことを再認識したです。



ネオニコ系農薬はそもそも有機リン・カーバメイト系などの
毒性の強い絶滅系農薬の代替品として開発された。
有機リン・カーバメイト系は、散布するとそこにいるものを全部殺す。
毒性は強く、環境への影響もおそらく高い。

しかしこれらの農薬が生態系にどういう影響を及ぼすかとか、
どんな虫を殺しているかとかはあまり研究されていないようだ。
検索したら「空中散布は人間にどれだけ危険か」という報告書を見つけた。
たぶん虫はどうでもいいのだろう。

ミツバチの農薬被害について研究されているのは
養蜂という職業が関わっていてヒトの利益に関係あるからだ。
害虫ですら農薬まいたらどれぐらい死ぬかなんて研究もされている。

ヒトに関係ないそのへんにいる小さな虫は気にしてもらえない。
そしてそのへんの虫は殺虫剤でバンバカ死んでいるのだった。

数年前から果樹農家に「なんとなく最近虫が減ったよね」と聞くことが増えたが、
どんな虫がどれだけ減ったかなんつーのはわからない。「なんとなく」だもん。
研究してもお金にならないし、たぶんされないから
何かが絶滅していてもおかしくないが、誰も気にしないのだった。

虫にも価値のあるものと無いものがいる。

ちなみに某D社は有機リンとカーバメイト系農薬はほぼ使えないが、
これらの農薬を使わなくなって3年経つと「変な虫が増えてくる」と
友人のりんご農家が言っていた。

実際に他の人の畑では見ない虫が木にくっついてるのを見たが、
強い農薬でバンバカ死んでいた虫が、
それらを使わなくなったため戻ってきたのだろう。

絶滅系農薬がいろいろなものを殺しているのは間違いない。
そして生態系の強力な修復能力にもちょびっと驚くわたくしであった。

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5月、害虫が出始める前に一度有機リン系農薬をまいて叩いておく。
それが果樹防除のコツ。ここで叩きそびれると後日大変なことになり、
最終的に農薬散布数が増えたりするから大変。まだ実が小さい
初期の農薬は、相変わらず強いものが使われております。



さて、そこにいるものを全部殺す絶滅系農薬は効果絶大だが、
農薬散布時に飛んでっちゃう虫に対しては効果が無い。
そういう虫はあとで戻ってきて悪さをするから腹が立つ。
また害虫を食ってくれるクモなんかも死んじゃうからそれはそれで迷惑だ。

効かなかったから再び農薬を散布すると散布量が増えるしお金もかかるし、
何度もまくと虫に抵抗性が付いてそのうち効かなくなる。
飛んで行く虫にも農薬を効かせるにはどうしたらいいか。
そこで浸透移行性の高いネオニコの出番なのだった。

浸透移行性とは作物の体内に農薬成分が残るということで、
飛んでった虫が戻ってきて、それをかじると死んでしまう。

これが「怖いねー、ネオニコ!」と言われる理由のひとつでもある。

果樹類・稲類のカメムシほか難防除害虫に絶大な効果があり、
「スゴイよねー、ネオニコ! 効くよねー、ネオニコ!」的なことを
某D社の果樹農家に何度か言われ、当時のわたくしは
「有機リン使えなくても虫が死ぬ農薬があって良かった!」と真剣に思った。

ネオニコを規制してと言う人はおそらくこういうことを知らないのだ。
難防除害虫をやっつけるのはものすごく大変で
そういう害虫に食われた作物を消費者は食べたくないだろう。

オーガニックではない安価で提供される見た目のいい作物を
フツーにお店で選択している人々は、間接的に農薬の恩恵を受けている。
そのことを知らねばらないと思うが、それを意識している人は少ない。

ネオニコの浸透移行性の高さにはもうひとつメリットがある。
例えば果菜類の初期のアブラムシ防除はすばらしい。

定植時に株元にパラパラと置いておくと、苗が農薬を吸う。
この苗にアブラムシがたかって樹液を吸うと
同時に農薬成分も吸うからアブラムシが死ぬ。

総合的な毒性評価
初めて聞いた時はどうかと思ったアドマイヤーの使い方。
トータルで散布する農薬量が減らせるし、ヒトには危険性ないし、いいよねー。
しかし最近、イミダクロプリドにも抵抗性がつき始めたらしくって、
虫ってすごいなー。次代の地球はきっとあなたたちのもの。



この定植時の植穴散布は、栽培ステージトータルで考えた場合
初期の農薬散布回数が抑えられることから農薬数が減らせるというメリットもある。
また、幼苗期の農薬は可食部に残らないから人間にとっても安全だ。

小さな苗のときにアブラムシにたかられると生育が悪くなるし、
アブラムシ対策で何度も農薬をまくと農薬の手間も経費も大変なので
農家にとってもメリットが大きい。

ということで、ネオニコチノイド系農薬はとても便利で、安全面では
有機リン系・カーバメイト系よりも環境負荷が少なく毒性も低く、
クモを殺さない等の選択制もあり、初期の使用で農薬が減らせる。

規制しろと言われても絶対そうはならないだろうとわたくしは確信している。
農薬メーカーと国の陰謀ではなく、この農薬がないと
野菜や果樹類の難防除害虫に効く農薬がなくなるからだ。

さて、EUで上記3成分の農薬を規制して一年が経ったが、
一年間の評価はどうだったのか質問してみた。

「蜂群は増えたが採取できる蜂蜜が1/4に減った。理由は特定されていない。
作物被害ではナタネにノミハムシの被害が拡大し、平均で7%の減収だった。
イギリスでは最大で40%減収というところもあった。
ナタネの被害によりミツバチの蜜源が減少した」等々。

使用規制で期待された効果(蜂の健全な生育?)が出たかどうかは
はっきりしていないが、ナタネの生産減という予測は的中したらしい。
2年後の評価がどうなって、規制自体がどうなるのか
わたくし的には大変とても楽しみで注目しているのだった。

日本ではミツバチとネオニコ系農薬が不幸な出会いをする場は
ある程度特定できていて、どうかすると訴訟問題になるから
昨今では農業者の意識は以前と比べてはるかに高くなっている。

海外の事例とは環境も栽培作物も規模も違うのだから、
EUの例を持ちだして日本も規制を!というのは全然違うのだが、
そういうことをきちんと伝えているメディアは少ない。っつか
見たことないんだけど、知らないのか、あえてそうしてるのか、どっちかな?

単位面積農薬国際比較

粗放栽培で穀物生産が主の米国と単純に比較しては絶対にいけないけれども、
そうは言ってもこの農薬は多いでしょう。アジアモンスーンのせいと言っても、
この農薬は多いでしょう。半分はムリかもしれないけど、
せめて2/3くらいにならないのかなー。できると思うけどなー。



現在の日本の農薬散布量が多すぎるのは事実だし、
減らす技術は研究されてはいるのだが、農業の現場にそういう技術の伝達は
積極的に行われていないように思える。どちらかというとこのへんが
「農薬メーカーの陰謀では!!!」(振り上げるこぶし)
なんちて思ったりする。

しかし、最近の防除暦を見ると全体的に強い農薬は減りつつあるし、
安い&毒性が高い&古いという3拍子揃った農薬が次々失効してたりして
やっぱり安全性だよな~としみじも思ったりするのだった。

わたくしは農薬については「絶対ダメ」とは思っていないが
自分が食べるものは農薬をできるだけ使わない人のものを選ぶ。

だってさあ。ミツバチ以外の小さな虫も大切だし、
そういうものがいなくなったら世界が少しつまらなくなるような気がするでしょ。

わたくしの菜園にはイモムシもカマキリもいて、食べたり食べられたりしていて欲しい。
山椒を食われてキーっとなっても、アゲハの幼虫はいて欲しいのだ。

農薬を嫌う人は多いが、嫌いでも安定的に生産される野菜や
おいしいくだものという利益は享受しているわけで、
そういうことも考えて反対したりする必要があるんじゃないかしらと思いながら
セミナーを聞いたわたくしでありました。

講師のお二方、くどい質問に答えていただきありがとうございました。


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農薬取締法と残留農薬基準値の話

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メーカーにとって「異物混入」は企業イメージを損なう大変恐い事象だが、
「よくあること」でもある。異物混入が一切ないなんてことはあり得ないから、
危機管理上、初動(対応)が大切だと考えられてるのに、今回失敗してる感。
だからなんかしらんでかい話になってるのかなーと考えてるわたくし。



2002年7月、「無登録農薬問題」というでかい事件が発生した。
経緯は以下のように農水省のWEBサイトに書かれている。



主な経過

(1)平成14年7月30日に山形県において無登録農薬(ダイホルタン及び
プリクトラン)を販売していた2業者が農薬取締法違反及び毒物及び
劇物取締法違反の容疑で逮捕され、8月9日には、更に山形の業者に販売していた
東京の業者が、農薬取締法違反の容疑で逮捕された。

(2)その後、東京の業者が販売していた他の都府県の販売業者への
立入検査の結果をもとに、他の販売業者及び購入農家への立入検査も進み、
平成14年末までに44都道府県で無登録農薬の販売(約270営業所(個人を含む。))
又は購入(約4,000農家)が行われていたことが判明している。




当時、某D社の落葉果樹産地を担当していたわたくし、
ダイホルタンがどんなものか農家にあれこれ聞いてみた。

曰く「ものすごくかぶれるから使うのやめた」
「まいた後に樹の下を歩いただけでかぶれた」
「収穫した梨を箱詰めするときにかあちゃんの手がかぶれた」
「6月にまくと収穫するまで殺菌剤がいらないほどよく効いた」

相当残効性の高い剣呑な物質だったようである。

ダイホルタンは昔、洋梨や和梨、りんご等に使用されていた殺菌剤だ。
同じく失効農薬で問題となったナフサクは植物成長調整剤(ホルモン剤)で、
メロンのネットを美しく出すために使われており、プリクトランはダニ剤である。

これについても聞いてみたら、こんな返事だった。
ナフサク使うと果実が急に大きくなるからネットがきれいに出たんだよねー。
まだ使ってる人いたんだねー」(茨城県のメロン農家)
プリクトランね、家の倉庫にまだ1ケースある。どうしよ」(静岡県のお茶農家)

gazou 022
農薬の適用はなくても桃で使えるものを使っていたすももなどは、
マイナー作物と呼ばれた。期間内に自治体に「適用にして!」という届けを出し、
許可されたらOKだったため、山梨・長野などの大産地は対応できたが、
地域に一人だけ作ってるってな人は農薬が使えない状況が発生した。
もー、めっちゃ大変。パセリ作ってた人、その年は何もまけなかったんだもの。



2002年当時は失効した農薬を使うことについて法的な縛りはとくになく、
いつまでに使いなさいなんて指導もなく、回収システムもなかったから、
失効農薬がホコリをかぶって倉庫の隅に眠ってる農家はたくさんいた。
ホリドールがあるんだけどどうしよう、なんて言ってた人もいたのだ。
※ホリドール・成分名パラチオン。1960年、1970年代に次々失効。

ともあれ2003年に農薬取締法は劇的に改正され、
残留農薬基準値の設定が速やかに整備された。
そして失効農薬の販売・購入の禁止及び、回収システム、
違反した場合の罰則規定などがこまかーく決まった。

さて、この「整備」とはどういうことだったか。

農薬とは、使ってもいい作物(適用作物)と
使い方(希釈倍率、散布量、散布できる期限)が決まっている。
農薬取締法が改正されて以降、この決まりごとを順守することと、
決まりごとを守らなかった場合、罰則が発生するようになった。

えーと。つまりですね。それまでは適用作物や希釈倍率は
それほど守られてなかったってことです。

例えばトマトに適用あるからミニトマトにまいてもいいよねとか、
小松菜にあるからほうれん草にもまいてもいいよねとか
作物をかっちりわけてまいてたわけじゃなかったわけ。
桃に適用があるからすももにもOKでしょう! って感じ。

倍率や散布量についても、収穫直前のものにまく以外は
おそらくどんぶり勘定だったはず。濃度が濃い人いたと思うなー。

さらに、さらに。

全ての作物について全ての農薬の残留農薬基準値が
きちんと定められていたわけでもなかった。
つまり「残留農薬基準値のない作物」がかなーりたくさんあった。

短期暴露評価_ページ_04
「急性参照用量(ARfD)を考慮した食品中の残留農薬基準の設定について」
厚生労働省サイトより抜粋。残留農薬基準値の定め方。めっちゃ複雑。



ええー、そうなの? とわたくしもその時初めて知った。
意外とザルじゃん! 残留農薬基準値! とか思ったものだ。

その結果、今まで使えた農薬が使えなくなった作物が大量に生まれた。
適用がなければ「適用外」となり農薬がまけない。
一年程度の猶予期間があったように記憶しているが、現場は混乱した。

わたくしの担当作物では、パセリ、大葉のほか、すもも、さくらんぼ、
プルーンなどの小粒核果類にまける農薬がゼロになった。
まいたら違反である。わあ! 大変、どうしよう? なんとかしてー!

さらに2003年、新しい残留農薬基準値の告示が出た時にはもっとあわてた。

残留農薬基準値は動物実験等の結果で設定されるから、
基準値がないものは動物実験からやらなくてはならない。
ひとつの実験をするのに何百万というお金がかかるから、
農薬メーカーだってそんなことをたった一年間ではできはしない。

で、どうしたかというと、よその国の基準値を当ることにしたのだった。
その数値がどこにもない場合は、一律0.01ppmという数値を決めた。
これを残留農薬基準値のポジティブリスト制と言う。
今でもデフォルトの数値として0.01ppmが残っている作物がある。
(ちなみにこの0.01ppmってべらぼうに低い数値なのね)

この制度が施行されたのは2006年5月だが、
施行されたらこんなことが起きる。

例「りんご畑の横にセロリ畑があります。
セロリの収穫時期、りんごには農薬をバンバンまいていますから、
セロリに思いっきり農薬がかかります。そしてりんごにまく農薬は
セロリには適用のない農薬ばかりです」

P7196188_20140402140531658.jpg
りんご畑の手前に田んぼがありますね。コメに適用のない
りんごの農薬がコメに残ってたら出荷停止ですよ。
こういう畑はそこいら中にあるから、自治体も大変だったでしょう。
でも、当初は当事者同士で相談してねとか言ってたらしいけど。



答「セロリにりんごの農薬が飛散してその農薬の適応がない場合、
セロリは回収・廃棄処分となるのです。セロリ農家大打撃です。
「隣接圃場からの飛散」と言っても法律違反だからダメなのです。
損害賠償なんて話が出るかもですよ」

ってことで隣の畑に違う作物があたりまえに植わっている地域、
山梨・長野あたりでは防除暦が一から見直され問題が起こらないようにした。
結果として防除暦には共通で使用できる農薬が組み込まれ、
収穫前の農薬には残効性の低いものが選択されることになった。

昨今「基準が緩和されてわあ大変!」と話題になっている農薬は
農薬メーカーがちゃんと動物実験してADI値を出して設定したら
デフォルトのものより高くなったってことなのではないかと
わたくし、密かに思っているのだがどうでしょうか。

さて2014年10月、再び残留農薬基準値が変わることになった。

今まではADI値(一日摂取許容量)から導き出されていた数値が
ARfD(急性参照用量)を元に計算し直されることになった。
いくつかの農薬の残留農薬基準値が段階的に変わっているが、
JAに出荷していない農家にはうまく伝わっていないかもしれない。

急にARfDを元にするという話になったのは
中国の毒餃子が原因じゃないだろうかと推測しているわたくし。

ADI値(一日摂取許容量)をベースに「安全」というのは違うだろう、
ARfD(急性参照用量)から計算すべきであると
当時WEBでいろいろと騒がれていたからである。

心配な農家の方は以下の一覧表を見てみてください。
メジャーどころではオルトランの数字がめっちゃ変わってます。
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0907/nb/documents/1219ichiran.pdf

短期暴露評価_ページ_05
短期暴露評価_ページ_06
「急性参照用量(ARfD)を考慮した食品中の残留農薬基準の設定について」
厚生労働省サイトより抜粋。すでにちびちびと変わっています。
また、急性参照用量を参考にするものとしないものとがあります。



ともあれ、残留農薬基準値が厳しくなったり緩くなったりするのは、
農薬メーカーや国の陰謀ではなく、そのときどきの状況だろうと思う。
2002年以前のことを考えれば、使用方法も基準値も
相当整備されているとわたくしは考えている。

「何か事件があって法律が整備される」のはいいことで、
例えば食品偽装事件を発端とした景品表示法とか、
コメトレーサビリティ法とかはかなーり厳しい法改正が行われた。

さてしかし。

ここんとこマクドナルドの異物混入をきっかけにメディアがやたらと騒いでいる。
ああいう異物混入はわりと日常茶飯事だと食品業界にいる人なら知っている。
単に個々の事例が全体化されただけだろうと思うんだが、
これをきっかけに食品衛生法が変わったりするのかもしれない。

わあ、大変。

それにしても、個別の対応でいいものがなぜ公になっているのか。
そしてなぜそれを大騒ぎしているのか。不可解である。

なんちて昨日から思ってるわたくし。

食品衛生法上、異物混入については第六条で定められています。
あいまいなので整備されそうなニオイがプンプンします。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO233.html


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農薬の数字をいろいろ調べてみた

130.jpg
EOSkissX7買ってCANONのまき餌レンズ50mm買ったら
MACROが欲しくなり、買いました。SIGMA50mmMACRODG CANONマウント。
製造停止になってるから中古で買ったんだがこれがスグレモノで、
虫とか花とかきれいに撮れて大変しあわせです。



単位面積当たりの農薬散布量が世界一と言われる日本。

某D社で農薬原稿を書いたのは2006年だった。
いつ頃の数字だったのかなー? そして今もそうなのかな?
WEBで農薬の数字についていろいろ調べてみた。

んで見つけた興味深い数字。
http://jaccc.jp/pdf/ARfD_gn.pdf
農薬のADI及びARfD値 一覧表(含、我が国における出荷金額)
(株)化学分析コンサルタント-技術資料 より

これは農薬のADI値とARfD値の諸外国との比較を書いた一覧表だが、
日本の農薬の出荷金額が表示されている。
この出荷金額を上から下までちみちみと見てみると、
日本で一番出荷金額の多い農薬はグリホサートだということがわかる。

グリホサートの農薬名は「ラウンドアップ」その他もろもろで、
モンサント社から特許が外れたのでいろんな農薬会社が作っている。

農薬の使用量は検索しても出てこない。
使用量という統計はないのかもしれない。

『農薬のADI及びARfD値 一覧表(含、我が国における出荷金額)』によると、
「2010年5月現在のデータ。各数値はしばしば更新され、また完全ではないので、
公式に使用する際は再確認が必要」という注意書きがある。

数値はあくまでも参考値としてみなさいということであろう。
その表の中で出荷金額の高い順に農薬成分を並べてみた。

IMG_5482.jpg
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ホームセンターで気軽に買えるオルトランとラウンドアップ。
マンションの駐車場などに使われているのではなかろうか。
オルトランの値札に「コガネムシ」って書いてあるけど、
コガネムシの幼虫ってなんか悪さするんだっけか。



グリホサート 219.8億円(除草剤・ラウンドアップなど)
クロルピクリン 90.5億円(土壌消毒剤)
アセフェート 76.1億円(殺虫剤・農薬名はオルトラン)
フィプロニル 69.2億円(殺虫剤・農薬名はプリンス)
プロベナゾール 66.3億円(殺菌剤・農薬名はオリゼメート)

ちなみにミツバチがどうたらというイミダクロプリドは 50.1億円。
ネオニコチノイド系農薬の中では一番出荷金額が高いのだった。

グリホサートがよく売れているのは、
農業だけでなく一般的に使われているからだろう。

駐車場とかその他いろいろ、わたくしのうちの近所でも
除草剤をまかれているのはよく見かける。きっとこれラウンドアップ。
ホームセンターで普通に買えるし入手しやすいのだ。
と言う意味で、オルトラン(アセフェート)も同じである。

オルトランとは有機リン系の殺虫剤である。ピンとこない人には、
先日ピザとかいろんなものに入っていたメタミドホスって言ったほうがいいかも。
メタミドホスはオルトランが加水分解したものらしい。
オルトランはそこにいる虫を絶滅させる農薬で、
むかーしからあってわりと何にでも効く。

オリゼメートはホームセンターで見たことはないが、
適用作物を見ると、イネのイモチやネギの軟腐病に効くらしい。

プリンスはコナガ・アワノメイガ・オオタバコガなどの鱗翅目に効く。
有機リンやネオニコ、合ピレに抵抗性がついたものに使うのかなー。
むかし果樹農家が合ピレで抵抗性がついた何かにまきたいと言ってきて、
プリンスはどうだろう? って言われた記憶があるんだがどうだったかな。

ちなみにプロベナゾール以外は、某D社では禁止農薬である。

さてその農薬が今日本でどれくらい作られているのかな?
出荷量の数字の推移が厚生労働省にあった。

農薬出荷量 1
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_info/pdf/24seisan_suii.pdf
「農薬の生産・出荷量の推移(平成元~24農薬年度)」(厚生労働省WEBサイト)


これを見ると、農薬の出荷量は年々減っているのだ。
しかし、農薬を使わなくなっているかというとそうではなく、
耕地面積も同じように減っているからそのぶんを割り引かなくてはならない。

1 田・畑種類別耕地面積の推移
耕地面積
資料:農林水産省大臣官房統計部『耕地及び作付面積統計』
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sokuhou/kouti_13/(農水省WEBサイト)


農薬工業会の統計データでは、農薬の市場規模は約3300億円で、
年々微増しているようだ。出荷量は減っていても金額は微増である。
http://www.jcpa.or.jp/labo/data/H25.pdf

この出荷実績を見ると、非農耕地(家庭園芸とかゴルフ場とか)、
果樹類・水稲類の除草剤使用が増えており、畑作地が減っている。

果樹類に除草剤が増えてるのは高齢化が理由かなー、
また、草取りするのがイヤなご家庭での使用量が増えたのかなー、
林野でも人手不足で除草剤使うのかなー等々いろいろ想像してみたりするのだが、
単年度で比較してもわからないのでなんとも判断できないのだった。

ところで、冒頭に書いた単位面積当たりの農薬使用量の数字は
農薬工業会のサイトで見つけた。2003年の数字でグラフも掲載されていた。
http://www.jcpa.or.jp/qa/a6_06.html

■単位面積当たりの使用量で比べると
OECD加盟国の2003年の農薬使用量を全耕作面積で割った比較では、
アメリカを基準とすると日本が約8倍、韓国が約7倍、英国が約3倍、
フランスが約2倍で、この統計と比べても“アメリカの7倍”と言う数字は
現在も同様の傾向を示していると言えます。
ただしここで注意すべきは、単純に単位面積当たりの農薬使用量の多寡でもって
環境負荷にまで言及すべきではないことです。

(農薬工業会 教えて!農薬Q&A より引用)

平均耕作面積が10アールという小規模の日本の農業と
100ヘクタール規模の海外の農業を単純に比較してはいけないのだが、
WEBで出てくる各県の慣行栽培農薬数(成分数)を栽培期間で割ると、
だいたい「1週間から10日おきにまいている」計算になる。

国際会議などでこの話をすると相当驚かれると天敵の研究者が言っていた。
単位面積当たりの使用量はやはりいまだに世界一なのかもしれないね。


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農薬をまくのは農家の勝手?

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SS(スピードスプレイヤー)で農薬まいてます。
ガアーッっていう大きな音がします。早朝の果樹産地に響き渡ります。
「ああ、今日は無風で晴天なのだな」と寝床で天気がわかるという。



産地担当時代、新緑の美しい5月は「作付」の季節であった。
「今年はこんだけ出荷してね」とかいう話をしに果樹産地に行き、
農家のお家に泊めてもらっては大酒を飲んでいた。

翌朝、スピードスプレイヤーという機械で農薬をまく音でよく目が覚めた。

窓から外を見ると、りんごや梨の樹がワサワサ揺れ、
農薬が高く吹き上がっている果樹産地ではおなじみの風景が見えた。
まだ酔ってて頭がふらふらするしで、この写真をいつも撮り損ねた。

そして、前夜、わたくしと同じように飲んでたはずのおじさまは、
もう起きて農薬をまいてたりするのだった。
今考えるとわたくしは仕事の邪魔しに行ってたのではないだろうか。

申し訳なかったなあ。

山梨のすもも農家を訪問した際、畑に濡れた犬、というか
何か動物のニオイみたいは、妙なニオイが漂いはじめたことがあった。

少し刺激のある不思議なニオイ。「これ、何ですかねえ」と聞くと
「ああ、隣の柿畑の人がさっき農薬まいてたから、それかな」と生産者が言った。

作業場に戻って作付の話をしていたら、急にめまいがして、
その後かる~く吐き気がし、頭がくらくらしてきた。

「なんか頭痛いんすけど、なんともないですか?」
「へえ? ほんたべさんは敏感だね~。俺らは何も感じないよ」
生産者は笑った。

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難防除害虫「カイガラムシ」によく効く農薬「アルバリン」は
ネオニコチノイド系農薬「ジノテフラン」。EUには農薬登録はないが、日本の
ネオニコの残留農薬基準値はEUの10000倍!って煽りデータによく出てる。
農薬登録がないものに日本のデフォルト値0.01ppmを当てて、
10000倍ってのはダメだよね。って思うんだけど違うかな?



麦の取材中にお蚕を飼っている作業場を見せてもらったことがあった。

その建物に入ると、目が痛くて開けられなくなった。
刺激臭がして涙がぽろぽろ流れて止まらない。

「このニオイ、何ですか?」
「え? ニオイなんかする? ああ、ホルマリンかな?」

蚕の病気を防ぐためのホルマリンを7日前にまいたらしい。
わたくしは建物を出るまで目をしっかり開けられなかったが、
中ではおつれあいとばあちゃんが蚕の世話を粛々としていた。

涙でぐしゃぐしゃになったわたくしの顔をみてかあちゃんが一言。
「わたしら何ともないけどねえ。敏感なんだねえ」

「都会の子はヤワだねえ」的な空気を感じて情けなくなったが、
なにしろわたくし某D社勤務だし、酒には強くても化学物質には弱い。

そして、農薬やホルマリンが日常生活にいつもあると
人間は慣れてしまうのだろうかと考えた。

少量の毒を飲んでいると毒が効かなくなるようなものだろうか。
ボルジア家の毒みたいじゃありませんか?

IMG_6373_201404021405300e9.jpg
難防除害虫「アブラムシ」。病気を媒介するしで野菜が出荷できなくなる。
めちゃくちゃ種類が多くて、果樹にはワタかぶってる奴とかもいて大変。
んでネオニコがよく効く。EUで規制されてるアドマイヤー、ダントツ、アクタラ
の他に、規制されてないベストガードとかモスピランもあるのね。



さて、アメリカでは、農薬散布後、農家はすぐに畑に入ってはいけないと
法律で定められているらしい。それは農薬の害から農家を防ぐためである。

日本にはそういう法律はない。農薬をまいた後、
自主的に畑に入らないということはできるが、法的な拘束はない。

食品衛生法で残留農薬基準値が定められてたり、
農薬取締法で希釈倍率や作物の適用が定められているが、
それは農家のためというより、消費者の安全のためだ。

「マスク・ゴーグル・カッパなどで身体を防護してまきましょう」
この指針だけで農家は農薬をまいている。

農薬の被害ってどれぐらいあるのかな? 
平成23年度の農薬事故調査結果を見つけた。
これによると、人への事故・被害は36件で被害人数は48人である。

内訳は、農薬を飲料の空容器などに移し替えたため誤飲した例が9件、
管理・取り扱いがずさんだったために誤飲した例が7件、
散布時の装備不十分が7件などである。死亡例は誤飲が原因だ。

散布時の装備不十分というのは、マスクやゴーグルをつけずに
まいちゃったということであろう。この人たちに何があったかは不明だ。

20110614154954b2f_2014040214052893e.jpg
難防除害虫「ダニ」。世代交代が早くて抵抗性がつきやすく
去年まで効いたものが今年はダメとかもあり、大変イヤな害虫。
高温でかんばつだと出やすくて、りんご畑が遠目に見て真っ赤になることもあり。
でもこれ、ネオニコは効かないのよね。ダニ剤ってのが別にあるの。



「農薬をさあ、一番まきたくないのはさあ、農家なんだよね。
まかなきゃ作れないからまくけどね。そういうこと、消費者は知ってるのかなあ」
むかーしりんご農家にこう言われたことがある。
わたくしは深く考えず、以下のように思った。

「しょうがないじゃん。まかなきゃ作れないんだもん。
嫌ならやめるしかないし、やめられないなら続けざるを得ないよね」
今思い出してもあまりにも冷たくて心臓のあたりがひやりとするが、
思っただけで言わなかった。

代わりに「あなたがりんごをどう作ってるか消費者にちゃんと伝える」と言った。
わたくしにできることはそれしかなかった。代わりにりんごは作れない。

当時のわたくしは、世の中のことを知らない無知な小娘であった。
農家が農薬をまくのは農家の勝手だとでも思っていたのかもしれない。
今ならそんな単純な話でないことはわかる。

昨今、WEBや雑誌で話題になるのは、農薬の毒性、残留農薬基準値、
そして、消費者の農薬被害の可能性とミツバチが死んでるという話である。
誰も農家のことを考えていないようだ。

皆、以前のわたくしのように、農家が農薬をまくのは農家の勝手だと
思っているのかもしれない。きっとそうだろう。 

しかし、農薬の被害を直接受けるのは農家だ。まいてるその場にいるのだから。
ミツバチみたいに飛んで逃げたりできないのだ。

IMG_1446.jpg
トマトに恐ろしい病気を媒介するってので、減農薬栽培をしてた農家を
一気に通常の農薬使用に変えたというコワイ虫「コナジラミ」。
ネオニコがよく効いてたけど、昨今抵抗性がついて効かなくなってるらしい。
これに効くのはEUで規制されてない「スタークル」とか。



「まかなくちゃ作れない」という言葉は
「そういう風に作らないと売れるものにならない」、あるいは
「食べていけるだけの収入が得られない」ということでもある。

ミツバチのためにネオニコの規制をという人のことがイヤなのは、
なぜ、なんのために農薬をまかなくてはならないのかという視点が
絶対的に欠けているからだと最近気がついた。

「まきたくないならまかなきゃいいじゃん」という人は、
まきたくない農家のものがちゃんと売れる世の中にならないと
農薬はまき続け無くてはならないのだと知る必要があるだろう。

それは、アブラムシやアオムシがついてたり、虫食いのある野菜を、
斑点米を、見た目の悪い果物を、今よりも高い価格で買えますか? 
ってことでもある。

そういう社会がいつか来るかな?

消費税が上がって野菜の価格が高いといってる報道を見てると
「来ないだろうなあ」とつくづく考えてしまうのだった。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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