1反15俵採りの技術! 西出隆一さん

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120万の除草機を運転してもらいました。「有機栽培は草との戦い」と皆が口を揃えて言います。
安全なお米には手間暇がかかっているのです。



大地を守る会のお米生産者が一堂に会する「米生産社会議」に参加しました。
今回の講師は、石川県穴水町の西出隆一さん。

科学的なアプローチによる土づくりと微生物の利用で、
露地ならば1反あたり90万円、ハウスなら600万円を目標とし、
収量UPの技術を農民に伝えている、私の師匠です。

米作りは日本全国で行われていて、
農家ごとの多少の栽培方法の違いはあるにせよ、
生育の過程でしなければならないことがほぼ同じという、まれな作物。

共通言語が多いと言ったらいいのか…九州と北海道の農家が
普通に自分の栽培方法について話せる作物でもあります。

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これは手押しの除草機。先のワイヤーに草がひっかかり除草できます。
重くもなくよく取れるそうです。比較的安価で、効果が期待できそうでした。

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こんな具合に草がひっかかるわけですね。


無農薬栽培で1反あたり9俵(1俵は60kg)取れれば恩の字という農家が多いなか、
15俵もとれる技術とはいったい…? キーワードは「ケイ酸」と「土づくり」でした。

米を100kg採るのに窒素分は2kg、ケイ酸は20kg必要と西出さんは言います。

以前は田んぼにはケイ酸を入れることを普及所その他でも指導していたそうです。
「そう言えば最近言わなくなったよね。昔は入れろって言われてた」
西出さんの話を聞いた後、何人かの米農家が言っていました。

ケイ酸は、土壌中にどれだけ入っていても過剰にならず、作物に影響を及ぼさない物質。
また、肥料分を吸収する緩衝材ともなり、肥効が穏やかになります。

イネの場合では、葉が強くしっかりするため、イモチ病にかかりにくくなる効果もあるようです。
最近では、ウリ科作物のうどんこ病予防効果もあることがわかっています。

忘れられた大切な資材…ケイ酸はそういう要素なのかもしれません。

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写真中央が田んぼの前で講評する西出隆一さん。写真右は幹事の笠原農園・笠原勝彦さん。
資材屋さんや普及所の机上の指導とは違う、実践と観察力に基づいた知識は、
農民の目からウロコを落としてくれる、まさに「革命」です。



さて、15俵採るためには…その計算を西出さんがしてくれました。
米を作ったことのない私にはよくわかりませんが、米農家にはわかる数字です。

西出さんの方法は、ひと坪40株植え(苗の本葉は4.5葉~5葉)。
それぞれの苗が25本分けつすれば、穂の数は1000本。
穂ひとつに150粒米がつけば、穂が1000本なので15万粒。
15万粒を米一升ぶん(7.5万粒)で割ると二升になります。

ひと坪二升、一反分300坪で掛けると、6石=15俵。
会場からは「無理~」という小さな声があちこちから聞こえました。

ただ15俵どりをするには、その他いくつかしなくてはならないことがあります。

まず土壌分析。たいがいの田んぼは腐植不足でCECの値が低いはず。
しかし米価が下がっている昨今、高い資材を投入するのは割に合いません。
モミガラや完熟堆肥と合わせ、微生物資材を入れて腐植分を高める努力をする必要があります。
※CECと腐植については以下のWEBサイトに詳しく書いてありますので、そちらをご確認ください。
http://www.hontabe.com/

微生物がたくさんいる田んぼは、水が濁っているので自分の田んぼを見ればすぐにわかります。
水が透き通っていたら、微生物が少ないと判断して間違いありません。

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豊かな実りとともに生きもののゆりかごにもなる有機栽培の田んぼ。
生きものがたくさん住む田んぼのお米は、きっと幸せな味がすると思います。



また、何人かの米農家の圃場の分析値を見ましたが、ほとんどの農家がカリ欠乏でした。
カリの役割は「運搬」。
葉が光合成して生み出す糖分を、種に移動してくれるのがカリ。
カリ欠乏は、米粒の重さに影響します。

例えば、千粒重が22gだった場合。
じゅうぶんなカリがあると1gくらい増えるのだそうです。
仮に千粒重で1g増えると、一反では1俵増になる…魅力的な数字ではありませんか。

米価が下落し、現在のニッポンの米農家は大規模化することで生き残りをかけています。
小規模の複合経営では立ち行かなくなっていると言ってもいいでしょう。

昨年の米価はブランド産地ではない一般的な価格で12000円(1俵)程度だと聞きました。
このうち経費が10000円程度とも。それでは本当に立ち行きません。
一反当たりの手間は同じですから、収量が増えれば単純に収入が増えることになります。

「収量に限界はない」が西出さんの農業に対する考え方。
食味がよくて、安全で、しかも収量が多ければ、消費者もうれしいし、農家ももっとうれしいはず。

西出さんの技術なら、ニッポンの農業が明るくなるのに!と実感した会議でした。


※西出さんの技術を学びたい方は「西出会」にご入会ください。
以下のWEBサイトの問い合わせフォームにて「西出会入会希望」と書いてお問い合せください。
いただいたメールアドレスに入会方法を返信いたします。
http://www.hontabe.com/


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省力化の農業はCO2削減につながる?

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周りに花がないわけじゃないのに、ネギ坊主で何かをしているミツバチくん。
蜜を集めてるんでしょうか。


「省力化」というと、大規模・単一栽培を想像する方が多いかもしれません。

確かに広大な面積を機械で耕すことは省力化への第一歩。
省力化と言えば、一番わかりやすいのが稲作です。

昭和40年代米づくりにかかった一反あたりの労働時間を調べると、141時間となっています。
(農水省の統計による)
平成18年では28時間。約5分の1に減っています。

これは大規模・機械化により労働時間が大幅に削減されたということですね。
ただ、面積が増えている農家が多いでしょうから、単純に省力化とは言えないかもしれません。

さて、このような機械を使用した省力化だけが目につきやすいのですが、
個人農家でも日々省力化に励んでいるものです。

そのひとつが、自家採種。
先日埼玉県の瀬山さんの畑に行き、種を採っているところを見せていただきました。

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長年とり続けている小松菜の種と瀬山さん。
「この袋にサヤごと入れて、バサバサ振ると種が落ちるから手間かかんないよ」
種採りにも段取りと省力化の方法があるのですね。


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バサバサ振って落ちてきた種がこれ。今年の秋作に利用されます。


自家採種は「種を残す」という尊い行為の他に、種を買わなくていいというメリットがあります。
最近の種の価格、知らなかったのですが、とっても高いのですね。

例えば長ネギを1反(10a)栽培するのにかかる種代は、1.5万円程度。

長ネギは種まきから収穫までに約12カ月かかります。
一年間畑をみっちり使って、植え替えなどの手間もかけなくてはなりません。
削減できる経費はできるだけ削減しておきたいもの。

そこで自家採種。

ネギの場合は、すみっこの一列をネギ坊主が出るまで置いておけば、
わりあい簡単に種が採れます。

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畑でちゃっちゃと振っただけで種がこぼれおちてきました。らくち~ん!

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自家用のさやえんどうも種を採りました。これからいい種を選抜し、今年の秋には種します。


自家採種した作物は、翌年作りやすいというメリットもあり、
種代はかからず、おいしいネギが栽培できる。
こういう省力化もあるのですね。

そのほか、化石エネルギーを使わない育苗(燃料の削減)、
天敵利用、バンカープランツやコンパニオンプランツの積極的な導入(農薬の不使用)など、
農家によってさまざまな省力化が行われています。

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天敵がたくさん集まる植物を混植し、有機農業に役立てます。
この花はボリジ。エディブルフラワーにもなるハーブですが、天敵くんがここで育ってくれるそうです。



地域の資材を安価に入手し、栽培に利用することも大切です。
手に入る資材で自家製のボカシ肥を作れば、食味の良い作物を栽培することが可能です。

購入肥料や農薬、燃料をできるだけ使わず、売り上げを伸ばす。
省力化することによって、結果としてCO2削減にもつながり、
環境負荷が抑えられる…省力化への第一歩は、環境にもメリットがありそうです。

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安心して食べられるマッシュルーム 山形県舟形町 舟形マッシュルーム

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最近店頭でもよく見かけるブラウンマッシュルーム。
ホワイトよりも味が濃いけど、色が出るので色合いを気にする料理には向かないとか。


マッシュルームは「ツクリタケ」とも呼ばれ、世界で最も生産量の多いきのこ。
木材腐朽菌同様腐生菌の仲間で、17世紀のフランスで人工栽培が始まったという記録があります。

実はマッシュルームは木材腐朽菌ではないため、培地は木ではありません。

一度ダッシュ村で栽培にチャレンジしていたのを見ましたが、堆肥で栽培されています。
堆肥にマッシュルームの菌を植え付けて約80日後、
小さなマッシュルームがぽこぽこと顔を出し、収穫が始まります。

山形県舟形町にあるマッシュルーム屋さん「舟形マッシュルーム」では、
秘密の技で、この発生期間を短くしています。

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出荷前のマッシュルームたち。大きさをそろえてきれいに並んでいます。
まるでおまんじゅうが並んでいるみたいでかわいいですねえ。


菌床栽培をやっているきのこ屋さんが言うには「マッシュルーム栽培はすんごく難しい」のだそう。
でも一度発生してしまえば9日おきに合計3回収穫できるそうですから、
一度しか収穫できない菌床栽培のことを考えると、効率がよさそうです。

「堆肥栽培と言われるとイメージがちょっとよくないけど、
畜糞はそんなに必要ないんですよ」と代表の長沢光芳さんは言います。

舟形マッシュルームでは、サラブレッドが使った敷きワラを利用して培地の堆肥を作っています。
サラブレッドは大切に育てられているため、敷きワラの交換は一日おき。
搾乳用の牛の敷きワラのことを考えると、夢のような清潔さです。

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岩手県からやってきたワラ。すでに発酵開始。
発酵熱は約80度くらい。雑菌や虫の卵などは死んでしまいます。


「必要なのは、馬の腸内細菌なんですよね。この微生物がワラについてやってくる。
そのワラと、大豆の粉と、ジュース工場から出たコーヒー粕などを混ぜ合わせ発酵させ、
培地をつくっています。
マッシュルームに必要なチッソ分は、大豆やコーヒー粕で供給されます。
堆肥といってもほとんどニオイがないでしょ? それが自慢なんですよ」

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大豆粉などを混ぜて自動で切り返す堆肥作成のための機械。
この機械、金額はベンツと同じ。舟形マッシュルームさんしか持ってないとか。
発酵中なのにニオイはほとんどなく、ほんのりとした熱を感じます。
通常堆肥を作ってるところはものすごくニオイがするものです…動物性のものが少ないんですね。


マッシュルーム屋さんに何度も行ったことがある人に話を聞くと、
施設が近くなるにつれ悪臭が感じられ、施設内はかなりひどかったとか。

このにおいのもとは鶏糞粉だといいます。

培地に添加剤として鶏糞粉を利用すると、発生も早く収量も増えるのだそうです。
手っ取り早いチッソ分として利用しているのでしょうか。
きのこに鶏糞…なんかちょっとイヤなんですけど。

「うちは鶏糞粉は使いません。発生はいいけど臭うし、当然キノコバエ等の害虫も来る。
それに味があんまりよくない。なんだかぼやっとしたマッシュルームになってしまう。
やはりきちんとしまって、味の濃いもの、生で食べてもおいしいものをつくりたい。
安全であることも大切ですしね」

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舟形マッシュルーム代表の長澤光芳さん。
「できるだけ地域で循環できるマッシュルーム栽培を目指しています」
安心して食べられるマッシュルームの栽培、これからもがんばってください。


キノコバエはきのこの害虫。
堆肥栽培をするマッシュルームでは一番気をつけないといけない虫です。

私の知っているマッシュルーム屋さんは、施設内の壁に殺虫剤を塗りつけていました。
ハエ取り紙が施設にいくつもつるされているところもありました。

栽培前の施設は蒸気で完全に殺菌し、
栽培中は気圧の調整で虫が侵入できないしくみをつくっている舟形マッシュルームでは
キノコバエの心配もなく、安全なマッシュルームの栽培が可能なのです。

「殺菌の熱はバイオマスボイラーが熱源です。
これは、近隣の木材加工所から出るチップを燃やして発生させてます。

また使用済みの培地は堆肥として販売し、農家の方々に喜ばれています。
きのこは大量のエネルギーを使うものなので、ある程度はしようがないとは思うのですが、
やはりできるだけ環境に配慮し、地域循環のしくみをつくりたい。
これからもいろいろと考えていきたいと思っているんですよ」

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バイオマスボイラーの燃料チップ。ご近所の製材所からどんどん持ち込まれます。
一番いい状態のチップの形を試行錯誤し、現在の形になりました。
ただの木片みたいですが、効率よい形なのですね。



野菜と違い、個人農家ではもうきのこの栽培は対応できないでしょう。
必要な設備を整えるのに、個人レベルは超えています。
今後もきのこ栽培は次々に統合され、大きなきのこの会社が生き残っていくことでしょう。

そんななか、地域循環型という大きなビジョンを掲げて栽培をしている舟形マッシュルーム。
ぜひ応援したいですね。

市場には卸していないそうなのですが、大地を守る会の宅配で入手可能です。
興味のある方はぜひ。

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安心して食べられるマッシュルームその① きのこの基礎知識

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昨今、機能的食品として注目をあびるきのこたち。
スーパーには、ひらたけやしいたけ、なめこなど様々なきのこが売られています。

ふと思ったことはありませんか? きのこは野菜なのかどうか。
実はきのこは菌類で、食用部分は植物で言うところの「花」にあたるもの。
「子実体」と言われるその器官は、次世代のための胞子を飛ばす器官でもあるのです。

生物と植物の間に存在しているようなきのこは、
その生態や性格を知れば知るほど魅入られる、私にとっては魅力的なたべもの。
これを食用にしようとした人たち、さらに栽培を思いついた人たちはスゴイなと思う瞬間です。

さて、一般的に販売されている栽培きのこは「腐生菌」に含まれます。
(まつたけや松露などは「菌根菌」という種類のきのこですが、ここでは説明を控えます)

しいたけやえのきたけは、江戸時代から栽培されている歴史あるきのこ。
これらは自然の状態では朽木を分解して繁殖するきのこで「木材腐朽菌」と呼ばれます。

自然の枯れ木の代わりに人工的な培地「菌床」で栽培されているのが、
現在一般的にスーパーで販売されているきのこ類なのです。

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むか~しから菌床栽培されているおなじみのえのきたけ。
細長いポットにで栽培されていて、ちょうど1パック1ポット。
えのきの旬は冬なので、えのき栽培は冷房完備の部屋で行われています。


菌類であるきのこ類は雑菌に弱いため、完全に温度管理された施設で、
非常にクリーンな状態で栽培されています。
栽培に大量の電力を使うことから、きのこは電気でできているとも言われるほど。
しかしそうしないとうまく作れないのも事実なのです。

きのこの栽培は、施設が近代化されればされるほど効率よくできることから、
農家経営の小規模なきのこ屋さんは現在次々に廃業しています。

これは、大規模化され、きのこの価格が大きく下がったのが原因。
だからこそ私たちは安価なきのこが楽しめるのですが、知ってしまうと複雑ですね。

きのこ栽培にはその他、より自然に近い環境で栽培する林地栽培、
しいたけやなめこなどで行われる原木栽培などもあります。
これはまたの機会にご説明しようと思います。

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しいたけにも菌床と原木栽培の2種類があり、原木栽培の方が高価です。
でも味は原木栽培のしいたけに軍配が上がります。
しいたけ嫌いな私でも食べられる原木しいたけ。味が濃くておいしいですよね!


おまけのつぶやき

そう言えば、ときおり「無農薬」を強調している菌床栽培のきのこを見ることがありますが、
そもそも殺菌され、虫一匹入らぬような大規模な施設で栽培されている場合が多いのに、
これは誤解を生む表現なんじゃないかと思うことがしばしばです。

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次回はマッシュルーム栽培についてお知らせします。
写真はマッシュルームがぽこぽこと発生しているようす。かわいいですね~。


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科学的な有機農業を実践するひと 穴水町 西出隆一さん

「健康な作物は土づくりから」
いろいろなところで何度もよく聞く言葉です。
でも「土づくり」って何のこと? そんな疑問を持ったことはありませんか?

その質問に科学的に答えてくださるのが私の師匠でもある、
石川県穴水町で農業を営む、西出隆一さんです。

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全国各地の農民の畑に行き辛口アドバイスをする西出さん。
2006年夏の北海道視察時のようす。超辛口でしたが、勉強になりました。


「健康な土とは、物理性・生物性・化学性の整った土のこと」
「農業は脳業。やる気と元気と根気が必要」
「農民ならば、自分の畑で作物を観察すること。一日5分作物を見る時間をつくること。
今の農民は自分の作物を見なさすぎる」

従来の「我慢と根性の有機農業」を、「食味が高く収量も増える優位性のある農業」として
考えている西出さん。発想や考え方は従来の有機農業家とは一線を画するものです。

※土の物理性や化学性については、このスペースでは書ききれないため、
下記のWEBサイトをご参照いただけるとと思います。
http://www.hontabe.com/

西出さんが今の土地で農業を始めたのは、45歳の時。
あまりの土の悪さに入植者が全員出ていってしまったほど、
雨が降ればすぐにぬかるむ粘土質の固い土地でした。

今でも雨が降るとべったりとしたぬかるみに足を取られる、そんな土。

しかし西出さんのハウスの中はふかふかで、トマトの支柱が1.2mもすうっと土のなかに入るほど。
ハウスの外と中の土が、もともと同じものだったとはとても思えません。
土は土づくりで変わるのだ。西出さんの畑に行くと、その言葉が実感できます。

あぜに棒
西出さんの畑見学時に試しに通路に支柱を入れてみたら…。
スカッと入りましたです。なぜ1.2mかというとトマトの支柱の高さが1.2mだから。


「土は微生物で耕してやる。微生物は一年に5センチ、土を耕してくれるから。
微生物が生きていける環境を整えれば、土壌病害も出なくなる。
わしの畑では微生物叢が豊かだから、土壌由来の病気は出ない。
だからトマトでもなんでも、無農薬でできとるよ。

無農薬栽培で虫が出た、病気が出たと言う人がいるが、
土づくりがちゃんとできていれば、虫や病気にやられることはない。
そういう人は土づくりができてない。科学的な農業をしてないからよ」

科学的な農業とは、再現可能な農業のこと。
西出さんの農法はあいまいなところのない、誰でも実現可能な農法であることが特徴です。

たとえば、土壌分析の数値をベースにして施肥設計を行うこと。
物理性を確認し、土壌三相分布を整えること。
土壌由来の病害が出なくなるよう、微生物資材とそのエサになるものを土に入れてやること。

土壌三相
「試しに三相を見てみよか?」
フライパンと簡易コンロがあればすぐに測れる土壌三相。
やろうと思えば簡単なんですよね。でも測ってる農民を私は見たことがありません。


これらはどれも理にかなっているけど、今まで誰もしてこなかったこと。

それが可能なのは、東京大学の農学部出身であることが関係あるかもしれません。
研究者や公務員などの道を選ばず、農業者としての道を選択した西出さんは、
農業を始めるにあたり、農業関係の研究について資料を取り寄せ、もれなく調べたと言います。

「いろんな文献を読み漁ったけど、新しい発見はそんなになかった。
昔から同じようなことを皆が研究しとる。

だから自分で実践することにした。思いついたことはなんでもやってみた。
その中で“これはいい”と残ったのが、今の技術。
もっと新しい発見があるかもしれないから、毎年何か試してみる。
その結果を確かめて、使えるものは残す。だから、毎年農業一年生やね」

一般では30回以上の農薬を散布する無農薬栽培が非常に難しいトマトで、
無農薬栽培を実現し、さらに糖度も常に7度以上という食味の良さをキープできるのは、
この努力とチャレンジ精神のたまものでしょう。

グリーンマーク
西出さんのトマトじゃないんですが…
グリーンベースがくっきり出た見るからに糖度の高いトマト。
だいたい5段目までは普通にこういうトマトがなります。
勝負は10段目以上。西出さんは6月から11月まで収穫する作型で25段採るというので驚き。
25段目でも7度近くをキープというので、さらに驚愕。



「おいしくて安全なトマト」が西出さんの畑では次々と生まれています。

「ハウスでトマトをつくるなら、最低でも坪2万の収益を上げること」
獲得した知識と技術を惜しげもなく弟子たちに教え、
高品質で多収が可能な農業を広めている西出さんが彼らに提示する目標です。

トマト農家が聞けば「絶対無理。そんなの夢」という数字ですが、
「坪3万取れました!」という報告が弟子から上がることもあるそうです。

「今の有機農業は対処療法で虫や病気をなんとかしようとしとる。
そういう考え方は農薬をまくのと同じやね。
土づくりをきちんとしてないからそういうもんが出る。
原因をつぶしてやれば、出なくなることがわかっとらん。

有機でやるのにはきちんと理由があるのに、それもわかっとらん人が多い。
堆肥を入れれば有機だと思っとる。
食味の向上も、虫が出なくなるのも、有機だから可能なんだってことがわかっとらんね」

正しいきゅうりの形
正しく生育しているきゅうりの葉は、写真のように等間隔で同じ大きさ。
そしてお日様をじゅうぶんに浴びられるよう上を向いています。まるでハスの葉みたいに美しいですね。
初期にチッソが効き過ぎると下葉の方が上よりも大きくなり、葉はだらりと下がります。
作物の生育状態から肥料の効き具合が見ることも大切。それは日々の観察力のおかげです。


鬼花
西出さんの畑のものではありませんが、チッソが多い場合のトマトの花。
花弁が多く変形しているので「鬼花」と言われ、変形果の原因。
施肥設計を間違えたか、水分管理が雑なのか…とにかくうまく管理されていない状態。


黄緑色
トマト農家がこの色合いを見ると「緑が薄すぎるんじゃないの?」と言います。
緑が薄くても葉っぱが等間隔に互い違いに出て、上を向いているのが適正な状態。
肥料の効きすぎは病気や虫の原因。常に適正値を…それが科学的な農業なのです。



その辛口のアドバイスにも関わらず、師事した人たちからは
「収量が上がった!」「食味が上がって評価が高くなった」と喜びの声が寄せられています。
再現性のある科学的な農業だからこそ、誰でも努力をすればできるのです。

安全でおいしい野菜が一般よりもたくさん収穫できるようになったら。
現在のように特別な人だけが食べられるものではなくなります。

西出さんの農業は、そんな可能性を秘めています。
これはきっと、有機農業の革命。私はそんな風に思っています。


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おいしいさくらんぼをつくるひと 東根市 奥山博さん

6月上旬から店頭に並ぶさくらんぼ。

紅秀峰だけど
これは紅秀峰という名のさくらんぼ。果実が硬くて糖度の高いさくらんぼになります。
佐藤錦よりも遅い品種で、山形県の主力ではないけれど、今一番注目されています。
写真提供・市川泰仙


宝石のようなきらきらとしたかわいらしい姿…、
さくらんぼは私たちにとって特別なくだもの。
おいしいさくらんぼを食べると、本当にしあわせな気持ちになります。

さて、さくらんぼ産地と言えば山形県。

山形県は日本全体で7割程度の生産量を、
そのなかでも東根市では全国の約2割の生産量を誇っています。

駅名に「さくらんぼ東根」とわざわざ「さくらんぼ」を冠する東根市。
さくらんぼに対する意気込みを感じますね。

ハウス張り
5月下旬の東根は雨よけハウスのビニル張りで大忙し。
さくらんぼは裂果しやすいので、雨に濡らすのはご法度。雨よけは必須の作物です。
自分ちで張れない人は1m1000円で張ってもらうのだとか。経費がかかりますねえ。



病気に弱く、またショウジョウバエが果実に入ると商品にならないさくらんぼは
山形県の防除暦では、28回程度(収穫後農薬含)の農薬の使用が推奨されています。

ショウジョウバエ対策で収穫前日まで農薬が散布できるので、
一般のさくらんぼを洗わずに食べるのはよした方がよさそうですね。

防除暦どおりに農薬散布をしていればそれほど苦労もないのですが、
低農薬栽培をするには大変な技術がいる果樹栽培。
とくにさくらんぼは流通途中に病気が発生することもあるため、
低農薬のリスクは相当高いのです。

葉摘み前
お日様をいっぱいに浴びるよう、上についている葉っぱは取らずに、
下側の葉を摘みます。食味を維持し色づきをよくするための工夫です。
中には色づきだけ考えて葉っぱをどんどん摘んじゃう人もいるとか…味は言わずもがなって気がします。



さて、東根市でさくらんぼを栽培している奥山博さんは、
慣行栽培の約1/3という農薬散布でさくらんぼを栽培しています。

たんに回数が少ないだけではありません。

選択している農薬は、有機リン系など環境負荷も毒性も強いものなどは避け、
安全性に配慮したものになっています。

ひとことで言うと「そんな農薬でできるなんてスゴイ!!」という内容。
相当の技術と自信がないとできないことです。

博文くん
息子の奥山博文さん。さくらんぼと桃を栽培している奥山さん家では、お父さんがさくらんぼ、
桃は博文さんと役割分担をしています。桃栽培はお父さんの友人に教わっているという博文さん。
「桃は剪定も管理も全部僕がやってます。お父さんにも触らせないんですよ!」



奥山さんの栽培の特徴は、「栄養周期」という農業技術と、独自に編み出した剪定方法。
当初はどちらの技術も近所の農家に「何してるんだ」と笑われたと言います。

「サラリーマンを10年ほど経験してからさくらんぼ農家を継いだので、
農業に対する先入観が全くなくて、自分がいいと思うことはすぐに試せた。
それが良かったんでしょうね。いまでは誰も笑わなくなって、教えてくれって言われます(笑)」

奥山さん
「人生の節目節目にまるで導かれたように出会いがあった」という奥山博さん。
謙虚な人柄も魅力的な方です。


奥山さんの剪定方法は、通常は切ってしまう徒長枝に実をつけるというもの。
よそのさくらんぼ畑で木を見てみると、姿形が明らかに違うことがわかります。

「この剪定方法だと一粒が大玉になり、着果しないものは勝手に花ぶるいしてくれます。
さくらんぼの作業で一番大変なのが摘果。
人を頼むと経費もかかるし、作業の負荷も大変なもの。
でも、木が勝手に花ぶるいしてくれるから省力化が図れるんですよ」

はなぶるい
この小さな実が勝手に生理落果してくれるので、省力化が図れるのです。
この時点で大きな実は、全部赤くておいしいさくらんぼになります。


栄養周期については少し難しいので、具体的な技術を説明するのは控えますが、
この技術が食味を向上させているのは間違いありません。

一般のさくらんぼと比較して、プリッとした食感、そして20度にもなる糖度の高さ。
それは奥山さんの技術と手間のたまもの。

ぎりぎりまで木において完熟直前で収穫して直送するからさらにおいしく、
一度食べるとほかのさくらんぼは食べられなくなります。

マメコバチ
さくらんぼの受粉はミツバチではなくマメコバチというハチにお願いします。
春先に忙しく働いて蜜を集め、カヤの茎の中に子孫を残して死んでしまうマメコバチ。
動きが早いので写真を撮るのが難しいハチでもあります。
カヤの茎に泥がつまっているのが見えますか? ここに来年出てくるマメコバチが眠っています。



今年は霜の影響も少なく平年並みの収量がありそうという奥山さん。

5月下旬は葉摘みをしていましたが、もうすぐ摘果に入ります。
そして6月20日過ぎには収穫作業が始まり、朝は4時起き。
目が回るようなさくらんぼシーズンのスタートです。

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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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