六本足の家畜「ミツバチ」と農薬について思うこと

ミツバチ
後足の花粉かごに大量の花粉をつけているセイヨウミツバチ。
この花粉は巣で内勤蜂が花粉パンに加工し、幼虫の食べものになります。
彼女は外勤蜂なので、おそらくあと少しで死んでしまうでしょう。
わき目もふらず花から花へ飛びまわり花粉を集める姿はかわいくて、いつまでも眺めていたくなります



「アメリカでミツバチが大量失踪!?」
2006年のある日、新聞の小さな記事が目をひきました。

果樹類の産地周りをしていた自分にとって、ミツバチは身近な昆虫。
飛んでいるのを見ると、必ず写真を撮るほど好きな昆虫でもありましたから、
その小さな記事を丹念に読みました。

これが、現在に至るまではっきりした原因がわかっていない、
「蜂群崩壊症候群(CCD)」の最初の報道だったように思います。

CCDになった巣は、働きバチがほとんど失踪してしまい、
巣には女王と幼虫とサナギ、何匹かの働き蜂が残っているという妙な状態で、
全滅しているわけではないのが特徴です。

現在ではアメリカのみならず、日本でもミツバチの失踪が始まっており、
農水省でも2009年から具体的な受粉昆虫対策を取り始めています。

CCDを深刻な問題と受け止めているのは、蜂蜜製造業界ももちろんなのですが、
どちらかというと、イチゴやメロンなどの受粉昆虫として利用している受粉産業界。
(これは送粉業と言われるそうです)

これらの受粉ができないということは、代替昆虫がいないことから
農家には大打撃を与えます。
そこで、国をあげて対策を取っているのです。

桃の花10
桃やすももの受粉は、人間が手作業で行っています。
これは自家受粉する品種とそうでない品種があり、確実に受粉させていい果実を作るための必須の作業。
ミツバチの不在は人工授粉している農家には、それほど影響ありません。




先日、このCCDに関する講演会2つに参加しました。

一方は農薬会社及び研究者の講演会、もう一方は消費者団体の主催するもの。
それぞれの立場で主張が違い、ミツバチを取り巻く問題の複雑さを考えさせられました。

CCDについては前述したとおり、はっきりとした原因が解明されていません。

ダニ・ダニ駆除剤・遺伝子組み換え作物・病気・ウイルス・異常気象・電磁波・農薬…
原因になりそうなものは多々あれど、特定できていないのです。

(CCDの原因と可能性、そしてミツバチの生態等、ミツバチとCCDの基礎知識が得られる
いい本があります。興味のある方は以下の本をぜひ読んでみてください。
『ハチはなぜ大量死したのか』 ローワン・ジェイコブセン著 文藝春秋刊)



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長野県のりんごや山形県のさくらんぼの受粉を担当している「マメコバチ」。
カヤなどの茎を巣にして、春先少しだけ活動してあとは翌年まで休眠する飼いやすいハチ。
ミツバチよりも低温で働くため、ミツバチへ依存すると不作になる場合もある
寒い土地の果物の受粉バチとして積極的に利用されています。写真提供・市川奏仙



この原因のひとつとして疑われている農薬「ネオニコチノイド系農薬」について、
日本では今「悪魔の農薬」という本が出るほど、過敏に反応している人たちがいます。

この農薬の何が問題なのでしょう。

ネオニコチノイド系農薬は、浸透性・残留性が高いこと、
また欧米各国と比較して日本の残留基準値が高い(緩い)こと、
フランスではこのうちのイミダクロプリドという成分の農薬が規制になったことなどが、
規制を求める声につながっています。

さて、ネオニコチノイド系農薬は、昆虫の神経系に作用し、死に至らしめる農薬です。

アセチルコリンという神経伝達物質に作用するという特性から、
昆虫のみならず、人間に対しても影響があるということがわかってきたため、
ネオニコチノイド系農薬が自閉症や多動症などの原因ではないかとも言われています。

ミツバチ2 煙
ミツバチの巣からミツを採っているようす。
煙で蜂を弱らせてから板を引き出し、遠心分離機で蜜をしぼります。
この時に一緒に採れる蜂の子とサナギのバター炒めは本当においしくて、ほっぺが落ちそうでした。
勤勉で繁殖力旺盛、性質がおだやかなセイヨウミツバチ(イタリア種)が、今世界中で私たちに
蜜や果物を与えてくれているハチ。家畜化された昆虫→六本足の家畜と言われるゆえんです。
写真提供・市川奏仙


この件については東京都神経科学総合研究所の
黒田洋一郎さんの講演で詳しく聞くことができました。

アセチルコリン受容体とは、自律神経や神経節接合部などの末梢神経において
主要な働きをしている主要な物質です。

有機リン系やネオニコ系農薬は、ざっくり言うとこのアセチルコリン受容体を標的にする農薬。

アセチルコリン受容体はヒトの脳内の大脳皮質や海馬など多くの領域に関係する物質で、
近年、記憶・学習・認知など高次機能に関与していることがわかってきました。

有機リン系・ネオニコ系農薬が子どもに摂取された場合、微量でも与える影響が大きく、
その曝露の時期によって、発達障害・多動性欠陥・自閉症などの原因となりうるというのです。
微量ならば安全という旧来の毒性学は、もう通用しなくなったということです。

トップページイメージ写真①
「高度に進化したヒトとミツバチの神経系にこれらの農薬が同じような影響を与えるというのは、
神経科学を研究するものにとっては理にかなっていること」と黒田さん。
ミツバチもヒトも進化の樹のてっぺんにいる生きものらしいです。



発達障害や免疫系(花粉症・化学物質過敏症)、生殖系(不妊症・精子減少)…
それらも微量の化学物質の複合的な影響なのではないかという、ちょっぴりコワイお話でした。

さて、ネオニコチノイド系農薬だけではなく、有機リン系も同じ作用をもたらすことがわかりました。
有機リン系は絶滅系農薬と言われ、非常に毒性が高い農薬ですが、
今でも農村では日常的に利用されています。

なのに、なぜ日本ではネオニコチノイド系農薬だけ攻撃されてるのかな?

その理由は、いまいちはっきりわかりませんでした。
WEBでいろいろ見てみましたが、やはりわかりませんでした。

さらに言うと、日本で言う「ミツバチの大量死」がCCDを意味するのかどうかも不明でした。

ひょっとしたら日本で大騒ぎになっているこれはCCDではなく、
ネオニコチノイド系農薬による薬害の話なのかもしれません。


gazou 008
趣味の養蜂家にいただいた自家製の顔の見える蜂蜜。
今回、ミツバチについて調べていたら、蜂蜜のコワイ話も知ってしまいました。
国産天然はちみつと表示されているもの以外の表示がややこしく、
例えばシロップが入ってたりするものがあったりします。
抗生物質やダニ剤の残留の可能性があることも、ちょっとビビりました。



「ミツバチの大量死」と「子どもへの影響」の話は、今、ひとつのパッケージのようになって、
いろいろなところで話題になっています。
ふたつの話題がごっちゃになって、聞く人に「よくわからないけど何かネオニコが危険らしい」
…そんな印象をを与えます。

ここから、ミツバチのことを切り離して考えてみてはどうでしょう。

ネオニコチノイド系農薬は、シロアリ駆除剤や、ペットの首輪などに使用されています。
有名な家庭用の殺虫剤はピレスロイド系農薬が使われています。

家庭内に入り込む化学物質は、きれいなパッケージに入って、
毒物とわかりにくい状態になっているものが少なくありません。

農薬だけではなく、家庭のあちこちで日常的に使われている化学物質、
それらの複合的な汚染が、子どもへの影響をもたらしているのだとしたら。


今まで、ミツバチが当たり前のようにもたらしてくれていた恩恵。
この小さな友人でもあるミツバチのために、CCDの原因がいつか解明できるといいと思います。

今回の件は、ミツバチという身近な昆虫をきっかけにして、わたしたちの生活を
いまいちど見直す必要があることを教えてくれているんじゃないでしょうか。


CCDは、人間の鈍感さ・傲慢さをむき出しにした、象徴的な事件…
そんな風に思えてなりません。



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りんごの農薬について考えてみた

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果実のなり元の変色部分がサビ。赤くなるとここが茶色く目立ち、商品にならなくなります。
霜の被害や薬害などいろいろな原因がありますが、今年は4月の寒波が原因と言われています。
まだ蕾で花が咲いてたわけじゃないのに、どういう理由だか…皆よくわからないそうです。



安曇野に行ってきました。

長野県の中でも、安曇野界隈はりんごの一大産地。
このあたりのりんごは「長野産」ではなく「安曇野産」と銘打って売られるブランド産地。
普通に作っても糖度が他産地よりも1~2度は高いらしく、
おいしいりんごの産地として知られています。

今年はこの地域だけ、どういう理由かわからないけれど、
りんごにサビが出て大事になっています。

サビは見た目が悪いものなので、一般市場には出荷できません。
花の時期に寒波や霜が来た、年に一回のことで、
一年の結果が出てしまうのですから、果樹農家は大変です。

「今年は半作かもね」と淡々と言う農家…かえって切なくなりました。

さて、今回たまたまなのですが、全く農薬をまいていないりんご畑を見ました。
青森県の木村さんに触発されたのかどうか、
ある日いきなり農薬をまくのをやめてしまったという人の畑。

お会いすることはできませんでしたが、その畑は本当に悲しいものでした。

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下の写真と比較するとよくわかるかも…。葉の数が少なく、葉の色も薄く、樹が弱っている感じです。
あと木の高さの半分くらい草が生い茂っています。この草からダニが移り、この後大変なことに…。

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通常の状態のワイ性台のりんごの樹。
葉が茂り健全に元気にやってます!というエネルギーを感じます。



すでに枯れかけた木もあり、元気そうに見えても葉っぱには病気が出ていて、
小さなりんごの実は、樹が弱っているためにすでに赤く色づいています
地面は草ぼうぼう。もう草生栽培の域は超えています。

おそらくあと何年か後には、ほとんど枯れてしまうのじゃないかしら。
やはりりんご栽培に農薬は必要なのだなあと思ってしまいました。

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7月なのにもう斑点落葉病の症状がこんなに進んでいます。
おそらく9月ごろには落葉し、樹の生理が狂って花が咲いたり新芽が出たり…。
こうして来年はもっと樹が弱っていくのです。



世間では農薬がたくさんまいてあるものよりも、
少ないものの方が価値が高いとされています。

そして、一般的には「農薬は悪」という意見がほとんどでしょう。

確かに農薬の散布は、環境中に毒物を排出しているのと同じ。
ただこの農薬のおかげで、日本人がおなかいっぱい食べられるようになったのも事実なのです。

化学肥料が登場したことにより、米や野菜の収量が爆発的に伸びた昭和30年代。
昭和36年に施行された「農業基本法」により、大規模単作化が奨励され、
国をあげて食糧の増産に取り組んだ時代です。

この頃の話を農家に聞くと皆一様に「こんなに採れるのか!」と驚愕したと言います。

そもそも農民が自分の作った米を食べられなかった時代。
手に入るもので作る自家製肥料のチッソ分は、そんなに多くありませんから、
化学肥料は本当に夢のような肥料だったのです。

しかし、それまで有機物を土に還元し続けていた微生物叢の豊かだった土は、
化学肥料によってどんどん痩せていきました。

土壌病害や大量の害虫が出始めるまで、肥料分だけではダメだと
誰も気づかなかったのかもしれません。

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化学肥料と除草剤の併用により、土はどんどん痩せていきます。
除草剤の効かないコケだけが生えているりんご畑…うーん、こんな土でりんごがうまく育つのか…

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よく見かける樹の株元にだけ除草剤をまく草生栽培の畑。
株元は草刈り機が入りづらいので、省力化のために除草剤を散布しています。
これはダニが樹に上がるのを防ぐ目的もあります。

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上の2点と比較して命あふれる畑って感じがする、全く除草剤を使用していない畑。
通路は乗用草刈り機で、株元は手動の草刈り機で草を刈ります。
炎天下、手動の草刈りはツライのですが、それでも除草剤に頼らずがんばってます。



化学肥料への依存は、有機物の還元がなくなったために土壌バランスが崩れ、
大規模単作化による連作障害なども相まって、農薬の多投につながりました。

現在では、一部の有機農業を目指す農家を除き、虫や病気が発生した際には、
土づくりを見直すというようなめんどうなことはしないで、
対症療法として化学農薬で対応する農家がほとんどのようです。

さて、日本が農薬をどれぐらい使っているかご存じですか?

現在世界で4位(一位アメリカ、二位ブラジル、三位フランス)。
うっわ~! すっげえ使ってる!ってな数字です。
耕作面積のことを考えると自慢できる数字ではありません。

高温多湿で、病気の出やすいアジアモンスーン気候であること、
防除暦どおりまじめに農薬をまくという国民性(?)も相まって、散布量は増え続けています。

ただ、皆が忘れがちなことがひとつ。

農家だって、好きで農薬をまいているわけではないのです。
農薬をまいている農家自身が「まきたくないなあ…」と思っていると、あちこちで耳にします。

果樹農家に話を聞くと、親戚のなかに必ず過去農薬で障害を受けた人がいます。
農薬をまいたその日は酒を飲まないこと…そう言われていたのにお酒を飲んじゃって、
お風呂場で倒れて病院に担ぎ込まれたという話も聞きました。

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無風の日の早朝は農薬日和。というので、果樹地帯の早朝はSSのエンジン音が響きます。
果樹類はSS(スピードスプレイヤーの略)という機械で農薬を散布します。
りんごの葉一枚一枚全てに、またてっぺんまで農薬を行き渡らせるため、
農薬がけっこう高くまで吹きあがってます。
撮影した本人がびっくりするぐらい高く上がっている農薬…うーん、飛ぶもんだなあ。

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運転席にいる人間が見えますか?
ビニールの合羽を着て長靴、マスク、メガネと完全防備で農薬を散布しています。
こうしないと自分が死んじゃうのです。まいている農家が一番危険ってことがよくわかる写真です。



最近は強い農薬は敬遠され、残留性の低い農薬を選択する防除暦が多くなっていますが、
それでも果樹の殺虫剤には「有機リン系」「合成ピレスロイド系」などの
絶滅系農薬が必ずどこかに入っています。

これらはよく効く農薬ですが、そこにいる虫を全滅させます。
そして当然なのですが、まいている農家も安全ではいられません。

農薬はまきたくないけど、まかないとりんごは作れない。

環境や安全に配慮する農家であればあるほど、
この矛盾の中で苦悩しています。

そんななか、わたしたち消費者にできることは…?
安曇野から戻って、ずっと考え続けています。


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果樹類の無農薬栽培は可能か?

桃の花10
4月上旬に咲く桃の花。樹の皮などで越冬した細菌は、すでに動き始めています。
桃の果実を腐らせる灰星病は、この花の残骸から果実に感染するのです。
■写真提供・市川奏仙



りんごや梨など、冬になると葉っぱを全部落っことして、
春に新芽をふき新たな生育を始める作物。
これらは「落葉果樹」と呼ばれ、無農薬(※注)で栽培するのが難しいと言われています。

とくに難しいのが、桃、りんご、洋ナシ、梨。

花が咲いてから収穫まで、果実が樹についている期間が長く、
そのぶん害虫や病気などの影響を受ける時間が長いことが理由にあげられます。

たとえば、9月上旬に出荷される早生りんご「つがる」や「さんさ」なら、
なんとか農薬は一切散布しないでできるかもしれないとりんご農家は言います。

「でもさあ、市場出荷できるようなきれいなりんごはひとつもできないよ。
それに収量も減っちゃうし。
無農薬で作った見た目の悪いりんごをさあ、一個1000円で買ってくれる? 無理でしょ?
食べる人にも作る人にも、それは現実的じゃないと思うよね」

一度早生りんごの「さんさ」を、資材だけで試験的に無農薬栽培してみた農家が
しみじみと言っていました。


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りんごの果実を腐らせるタンソ病(人間に感染するものとは違います)。
この病気にとくに弱い品種があり、そういう品種は淘汰されていきます。
おいしくても作りにくければ農家は作らない…そういうものなのですね。



彼の言うとおり、9月出荷の早生りんごなら無農薬でできるかもしれないけど、
11月中旬に収穫するふじを無農薬で栽培するのは、おそらく難しいでしょう。

9月から11月までの2カ月の間、害虫の世代交代が一回はあり、
雨でも降れば、果実についた病気が繁殖し、どんどん進みます。

畑作では、土壌バランスが整っていればある程度の病害虫防止はできますが、
樹の皮や枝で菌や虫が越冬する果樹では、土づくりだけではどうしようもない部分があります。

そもそもの原産地が冷涼で乾燥した土地柄の落葉果樹類を、
高温多湿の日本で栽培することに、無理があるのかもしれません。


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りんごのリンモン病。このまま置いておくと真中から胞子が出てきます。ひえ~。
こういう果実は早めに摘み取って廃棄処分。胞子が飛んで他の果実に感染するからです。



さて、一般的に果樹農家は、県の普及所などで考えた防除暦どおりに農薬を散布しています。
通常はこの防除暦どおりに農薬を散布していれば、
病害虫の被害をそれほど受けずにくだものが作れる…それが防除暦です。

では農薬を減らしている人たちはどうしているのでしょう。

彼らは、自分の畑に昨年いた害虫、発生した病気などの詳しい記憶を持っています。
それをもとに、独自の農薬体系を作り、日々観察をしながら散布時期を決めています。

特別栽培農産物のように、一般の半分の農薬でくだものを栽培するには、
病害虫の発生タイミングにバッチリ合わせて農薬を散布することが必要になるため、
畑にもまめに通って観察しなくてはなりません

「おいしいくだものを作るにはあなたの足音を聞かせること」と言われるほど、
畑に通う回数は、作るくだものの味にも影響するものです。


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殻をかぶっているので農薬が効きづらい害虫「カイガラムシ」。
防除暦には5月ごろに農薬をまけ!と書いてありますが、5月にずっとこの殻を観察していると
ある日、繁殖のため殻から出てくるタイミングがあります。
そのタイミングをきちんと見て農薬を散布しないと、後日もう一度まくはめになります。
これが必要とされる「観察力」。■写真提供・市川奏仙


IMG_0364.jpg
りんごを半分に切ると芯のあたりにカビが生えていることがあります。
これがシンカビ病。写真はシンカビが浸潤したもので、こういうシンカビは真中から腐ります。
ちょびっとカビが生えてるだけなので芯を取ればいいだけなのですが、
シンカビの出やすい品種は淘汰品種としてじょじょに減ってきています。
北斗とか、新世界とか…おいしいんですけどねえ…。



また、彼らに共通しているのは、剪定の技術が高いこと。
風通しをよくし、すべての葉にお日様があたるような樹形を作るには、
2年後、3年後の樹の形を想像する能力も必要です。

手間暇かかっているからこそ、また技術があるからこそ、
この人たちの作るくだものはおいしい…そんな風に思います。

でもなぜか低農薬栽培はあまり広がっていきませんね。

それは、その作物が再生産可能な価格で販売できないことが大きく影響しています。

明日どうなるかわからないような状況では、
農家は手間のかかる低農薬栽培には挑戦できないのです。

日本では、野菜もくだものも、市況によって価格が左右します。
つまり、作物が完成するまで価格がわからないということですね。
毎月固定の給与をもらえるサラリーマンには考えられない現実です。

そんな状況では、リスクの高い低農薬栽培になかなか挑戦できないのも当然という気がします。


落果
まだ収穫時期じゃないのですが、病気にかかっているものを落とした状態。
これはラ・フランス。全部捨てることになるのですが、せつないですね。
きっちり農薬をまいておけばこんなにロスは出ませんから、
低農薬栽培というのは収量が減るというリスクを背負わねばならないのです。



昭和30年代には、りんごは3反作れば一年食べていけるという儲かる作物でした。

昔は高価なものが多くて、食べられないくだものだってありましたから、
そう思うと、消費者にとっては、安くなるのはとってもうれしいこと。

でも「安ければ安いほどいい」というその風潮が、
農家は儲からないから後を継がせたくないと後継者不足につながり
農薬と化学肥料に依存した果樹栽培を継続させていることも事実。

食べものの価値が「おいしさ」や「安全性」よりも「価格」におかれている間は
低農薬栽培のくだもの(野菜も同じですけど)は、
一部の人たちのためのものでしかないのかなと思ったりします。

食べものは命を作るものだから、安全なもの、おいしいものを。
そんな風に思うのですが、まだ世の中はそう思っていないのだなあ…。

果樹類の農薬について考えるたび、いつも少し悲しくなります。



(※注)有機JAS認証を取得したりんごやぶどうは割合とあるようです。
有機JAS認証は、石灰ボルドーや石灰硫黄合剤などの農薬を使用することが可能なため、
「無農薬栽培」ではありません。
ここで言う「無農薬」とは、自家製の忌避剤などを利用していても、
一切の登録農薬を使用しない場合のことを言っています。


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シイタケはやっぱり原木栽培でなくっちゃ! 岩手県山形町

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1mくらいの長さの丸太に、シイタケがたくさん出ているのを見かけたことはありませんか?
これは原木栽培されているシイタケで、原木シイタケと呼ばれます。

日本ではシイタケ栽培の歴史は古く、江戸時代から行われていたという記録があります。

山から切り出した広葉樹をホダ木にし、使い終わったら薪にして最後まで利用する。
日本ならではのエコなしくみ…それが原木シイタケなのです。

さて昨今では、原木シイタケ以外に「菌床栽培」のものが増えてきています。

原木シイタケはナラやクヌギなどの広葉樹をホダ木にしてシイタケ菌を植え付けたもの。
菌床栽培は、広葉樹のオガクズ(オガコ)にふすまや米ぬかなどの栄養剤を添加し、
それを筒状(キューブ型)に成型した培地に植菌して栽培したもの。

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ちょこちょこシイタケが出てきているのが見えますか?
発生中のホダ木を積み上げてあるビニールハウス。原木シイタケはこんな環境で育っています。


原木栽培は植菌から発生までに1年かかるところ、菌床栽培はその1/4の約120日。
栽培期間が短く、ホダ木の移動などの手間がかからない菌床栽培は、
原木シイタケと比較して価格が安いのが特徴です。

昨今スーパーの店頭では、菌床栽培のシイタケに駆逐され、
原木シイタケをあまり見かけることはありません。

ひょっとしたら絶滅危惧種になりつつある? そんな原木シイタケですが、
味を比較してみると、原木シイタケに軍配が上がります。

ホダ木を一年かけて分解し発生するシイタケは、
じっくり育つことから食感がよく、食べた瞬間、まさに「木の子」と言いたくなる
木の香りがふわっと口中に広がります。

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ぽってりとしていかにもおいしそうなシイタケくん。
炭火で焼いてちょっぴりお醤油たらして…それだけでごちそうです。



自分のうまみを他の素材にも与え、料理全体の質を上げてくれる…
原木シイタケにはそんな力があります。

さて、山形町で原木シイタケを栽培している、苅間沢由広さんに話を聞きました。

岩手県山形町は、典型的な中山間地。
最近では短角牛という放牧主体の和牛で有名な町です。

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苅間沢由広さん・悦子さんご夫婦
「菌床栽培のシイタケを食べると、シイタケから培地のニオイがしますね。
シイタケ嫌いな人は、ひょっとしたら菌床シイタケ食べてるのかも…。
食感も香りも、原木シイタケは本当においしいです」…私も菌床のシイタケは苦手です。



山は売るほどあるのでホダ木の手配は割合と簡単なのですが、
冬場マイナス20度にもなる土地柄で、シイタケ栽培をするのは容易ではありません。

「シイタケの菌は夏用と冬用とで違うんですが、ヤマセが吹くことがあり、
夏用の発生が始まって温度があがんなくて出なくなり、あれこれ調整していたら秋になってた…
なんて笑えないこともあるんですよ」と苅間沢さん。

原木シイタケは植菌した後一年間山に寝かせ、その後冷たい水に浸けて発生を促します。
水から引き上げ、温度管理をしてシイタケが発生し始めたら収穫開始です。

発生が悪くなったらまた水に浸けて引き上げて温度管理して約一カ月、その後再び発生が始まります。
一本のホダ木から3回収穫できるそうですが、こまめな温度管理と環境の調整、
さらに水をかけてやったり、天地をひっくり返したり…。

「まめな人じゃないとなかなかできないと思うね」と苅間沢さん。


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ピンボケで申し訳ないのですが、水槽に浸けられたホダ木。
水は山からの湧水を使っています。冷たい水でないと発生が促されないそうです。

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ホダ木の切り口がこのように白くなったら、シイタケ菌がまん延した目印。
ホダ木を触るとちょっと柔らかくなっているそうです。この後、発生室に移動します。ああ…重たい…。

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今年の秋から発生するホダ木が寝かせてあります。
夫婦二人で常時10000本を手入れしなくてはならないのですから大変。
10000本は原木シイタケの専業農家では規模が小さい方らしいです。



さらに、直径15~10センチの1mの長さの丸太をあちこち動かすことを想像してみてください。
機械は使うとはいえ、そりゃもう、重労働。
男手が必要で、誰にでもできる仕事ではありません。

苅間沢さんも、重労働が大変なので一度は菌床栽培への転向を考えたそうです。
でも原木シイタケを喜んでくれるお客様がいる限りは、続けていこう。
そう考えて現在に至っています。

温度が足りないと傘の色が薄くなったり軸が太くなったり、
傘の開き具合も大きいものや小さいもの、ぽってりとしたいかにもおいしそうなものなど、個性はさまざま。

菌床栽培のように一定した形にならないのが、原木シイタケの特徴です。

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ちっこいのや大きいの。軸が曲がったのやぽってりしたもの。
傘が薄かったり厚かったり…収穫したばかりのシイタケくんたち。
ほんと、個性的な形をしていますよね。こういうの多様性っていうんだろうか。


「菌床栽培は形がいいからねえ…原木シイタケはそういうふうにうまくできないんです。
だから、あの形だけで判断されてしまうと困るんだよね」

自然に近い生育方法、そして温度によって個体差が出る…
一定の温度管理ができる菌床栽培は、そういった品質のバラつきがないのがメリットです。

そして丸太を上げおろしする重労働も必要ありません。

1980年代に中国からの輸入が爆発的に増加し、価格が大暴落したシイタケ。
経費も手間もかかるため、原木シイタケ農家は高齢化も相まって、徐々に廃業しています。

そのうち日本のシイタケは、菌床栽培のものだけになってしまうのでは…。
菌床栽培のシイタケが食べられない私は、秘かにそれを恐れています。

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「今出てきました!」って感じのシイタケくん。
発生が悪くなるとホダ木をバシッとたたいたりすると、シイタケがびっくりして出てくるとか、
雷がドーンと落ちたりするとびっくりして出てくるとか…かわいいですね。
子孫を残そうとする菌の働きだとか…ウソのようなホントの話です。



ちなみに、干しシイタケは発生までに2年かかるというさらに手間のかかったもの。
生シイタケとは使う菌も栽培方法も違います。

じっくり木を分解しながら大きくなるので、味も濃くしっかりとした肉質になります。
その結果、えも言われぬ香り高い良いダシが出るようになるのです。

ときおり菌床しいたけを干したものを売っているのを見かけますが、
これはダシがほとんど出ない、ほんものの干しシイタケとは似て非なるもの。

安いからか、それがバンバン売れていくのを見るにつけ、
「シイタケのことを知っている人って、ほんとに少ないんだろうなあ…
かわいそうな原木シイタケ…そして干しシイタケよ!」と思ったりするのです。

店頭で原木シイタケを売っているのを見かけたら、ぜひ味を確かめてください。
菌床とは違う食感、そして食べたときの木の香りに驚くことうけあいです。




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低農薬の桃をつくる若い人たち 山梨県 久津間紀道さんと仲間たち

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ふわふわの産毛のかわいらしい桃は、くだものの中でも特別なもののひとつ。

甘い香りとジューシーな果肉、少し冷やすととろけるような食感も相まって、
食べる人を至福へと導いてくれる、そんなくだもの、桃。

ただこの桃、店頭で並んでいるもので、おいしい桃に当たるのは至難の業です。

桃という作物は、他のくだものよりも作り手の技術が反映される、おいしく作るのが難しいくだもの。
作り手が特定できない店頭販売では、
おいしいものにあたる方がまれと思った方がいいかもしれません。

そんな桃ですが、山梨県にとびっきりの桃をつくっている若者たちがいます。

その一人、久津間紀道さんは、約15年前に桃農家の後継者となりました。

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桃農家だけど桃の花粉アレルギーの久津間紀道さん。受粉の季節にはいつもつらそうです。

お父さんの範彦さんは、出荷先の大地を守る会の産地担当に
「桃の精」とあだ名されるほど、桃づくりの上手な人。
「桃農家の仕事はおいしい桃をつくること」と、桃づくりに一切の妥協を許しません。

久津間さんの畑は、長年ボカシ肥を与えてきた微生物のたくさんいる畑。
毎年、久津間さんちの桃の開花が、同地域の他の人より2~3日早いのは、
どうもこの微生物が大活躍しているもようです。

ご近所の桃農家が不思議に思い「どうなってるの?なんで早いの?」とよく聞かれるとか。

「微生物がたくさんいると、地温が1~2度高くなるんだよね。
地温が高いから、桃の樹のスタートが他よりも早くなるんだと思うよ」と紀道さん。
スタートが早いことが、その後の作業の効率化にもつながります。

微生物が豊かな理由は他にもあります。

久津間さんの桃畑は、除草剤を一切使わず樹の下に草を生やす草生栽培。
一般的には樹の株元だけに除草剤をまく人が多いのですが、それもやりません。

mmohatake.jpg
一面の下草がいい風を呼ぶ久津間さんの桃畑。
他の人の畑に比べて、桃の樹の間がじゅうぶんに取ってあります。
この風通しの良さが低農薬栽培を可能にしています。もちろん剪定も上手なんですけど。


昨今では、高齢化のため、除草剤を使わざるを得ない果樹農家がどんどん増えていますが、
そういった畑では微生物が死んでしまい、土はどんどんやせていきます。

土がやせてくると樹に必要な肥料分がなくなるので、どうしても化学肥料を使わざるを得なくなり、
その結果、農薬も防除暦どおりきちんと散布しないといけなくなる…悪循環ですね。

ただ、桃の価格が市況に左右される現状では、そういう栽培もしょうがないのかもしれません。


草生栽培には、刈った草が炭素の供給源となり、
草の根が土を柔らかくしてくれるというメリットがあります。

また、微生物が有機物を分解する際にできる植物ホルモンやアミノ酸は、
くだものや野菜の味を良くすることがわかっています。

それ以外にも、すべての枝にお日様があたるように剪定したり、
日々の情報収集とこまめな観察力で、病害虫対策をきちんとできることなど、
久津間さんならでは技術が、おいしい低農薬の桃栽培を可能にしています。

一般では早生・中生品種で25回、晩生種で27回の農薬散布があるところ、
久津間さんはその約3分の1以下の農薬で桃を栽培しています。まさに技術の成果です。
(一般では25回もまいてるんですねえ! 調べてみてびっくりしました…)

momoman.jpg
山梨県の桃はおおむね袋をかけて栽培されています。
農薬をしみこませてある袋もありますが、久津間さんの桃は無農薬袋を使用しています。
これは二重袋の外側の袋をはずして、おひさまにあたったところが赤くなったもの。
桃まんじゅうのようでかわいいので、思わず撮影しちゃいました。


果樹の農薬を減らすためには、かなりの技術と自信がないとできません。
ただ減らすだけなら誰でもできますが、きちんと収量を上げられるのは至難の業。

「おいしいくだものをつくるには、あなたの足音を聞かせなさい」と言われるように、
畑にまめに通い、樹の状態や虫の状態を観察するからこそ、少ない農薬で桃の栽培が可能になります。

ていねいな日々の作業の積み重ねが、低農薬栽培の基本です。
桃の精と呼ばれるほど桃を愛している久津間さんの桃がおいしいのは、当然という気がします。


さて、紀道さんには同じ地域に何人かの仲間がいます。

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タイトル「明日の山梨の果樹を背負う男」→丹澤修さん。
マイナー品種だけどすごくおいしいネクタリンを主に栽培しています。
丹澤さんの桃ジュースは、香りがあってあま~くて濃くて、まさに「ネクター(神の飲みもの)」という味。


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さくらんぼを栽培している大沢澄人さん。その食感、糖度、「うーん、これは素晴らしい!」というおいしさ。
しかも低農薬栽培なのですから、驚きです。


彼らはお父さんから引き継いだ桃やぶどう、さくらんぼ畑を、
慣行栽培から低農薬でおいしい果樹づくりに切り替えて、
日々、努力しています。


畑作にも増して高齢化が叫ばれ、剪定など特別な技術が必要とされるため、
後継者不足が深刻な落葉果樹業界。
このままでは、先人が培ってきた現在の栽培技術が、継承されない危険性をはらんでいます。

そんななか、元気に桃やぶどう、さくらんぼを栽培している久津間さんたちには、
ぜひがんばってほしいですね。


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無農薬のすももを作る人 山梨県南アルプス市 古郡正さん

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古郡さんの無農薬すもも。品種名はレッドエース。
赤い色合いがきれいなのですが、写真ではうまく表現できません。



「俺がすももを作ってるんじゃないよ。俺は見てるだけ。
すももはすももの樹が作ってるだから」

古郡さんに会うといつもこう言われます。

南アルプス市ですももを栽培している(と言うと違うと言われますが…)古郡正さんは、
10何年か前に農薬をまくのをやめ、無農薬ですももを育てています。

農薬をまくのをやめて少しの間は剪定もしていましたが、
今ではあまりにも混みあった枝以外は切っていません。

肥料も全く与えず、すももの畑に生えている雑草のみで
肥料分の供給をしています。

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すももの樹の下はライ麦やその他の雑草などで草だらけ。
この草が炭素分を供給し、微生物の繁殖も助けます。
「チッソ飢餓になるんじゃないのかな?」
「どうだろう…畑作なら影響は大きいけど、果樹だからなあ」
古郡さん、後ろ姿でのご紹介です。



古郡さんのすももは、甘くて果実がしまっていて一度食べたら忘れられない味。
ほかのすももはもう、食べられなくなる味。

すももの樹がなりたいようになった結果? もしかしてそれが技術?
どうなのでしょう…でも、おいしいことは事実としてはっきりわかります。

以前、「栄養周期」という農業技術を勉強していた古郡さんは、
樹の生理を見極めること、樹や果実の生育がコントロールできること、
収量や食味の向上が自分の力で可能なことが、ものすごくおもしろかったと言います。

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「何もしない」とは言え、食味を向上させるための「摘果」は行います。
適正な数にすることで、光合成をした糖分を果実に行き渡らせられます。
果実をならせればそれだけ収量が上がりますが、味は…「?」
ならせる数は果樹農家の良心(欲?)っていうんでしょうか。



栄養周期はそもそもぶどう栽培から始まった技術。

古郡さんは以前巨峰というぶどうを栽培していました。
一年枝(その年に出た芽)に果実がつくぶどうは、とくにコントロールが容易く、
いろいろなことを試せて、さらに、樹が思い通りになることが楽しかったのだそうです。

しかしある時、このようにコントロールすることが本当に樹にとっていいのかどうか、
そんな疑問を感じ、栄養周期の技術を果樹に対して使うのをやめてしまいました。
樹がやりたいようにさせてやるのがいいんじゃないか…今でもその方針は変わりません。

「でもなあ、樹を見てると、あっ、今この時期ならこうやればいいだろうな~と思うことがあるよ。
だけどやらない。見てるだけ。そう思う自分がまだまだだと思うだけ」

私はこの話を聞いた際、牛を探しに行き、最後に牛のことも自分のことも忘れてしまう
「十牛図」という悟りへ至る道が書いてある絵のことを思い出しました。

高い技術を持っているにも関わらず、それをあえて使わない。
古郡さんはまるで求道者のようです。

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すごくわかりやすい「除草剤をまいてある畑」と「そうでない畑」を見つけました。
一般的には下草を刈る作業が大変。管理しやすいので、樹の下に除草剤をまきます。
草を枯らしてしまう除草剤は、畑の微生物も殺します。それがどんな影響を与えるのか。
私にはわかりませんが、除草剤をまいた畑で採れた果物は食べたくないかも…



「無農薬・無肥料栽培」と言うと、青森県の木村さんを思い出します。
でも少し違うような気がします。

木村さんは無農薬の果樹栽培に取り組んでいらっしゃいますが、
「取り組んでいる」という言葉では、
古郡さんのしていることは表現できないなあ…と思うのです。
(花が咲いてから果実が収穫できるまでの期間が長いりんごと、
りんごに比べて2カ月も期間の短いすももを、単純に比較してはいけませんが)

古郡さんの畑でも、木村さんのりんご畑と同じように、
農薬をやめてから何年か、カイガラムシの被害が多く出ていました。
でも、最近では畑でカイガラムシ自体を見なくなりました。

畑の環境が整ってきたせいか…
古郡さんは「樹に矛盾がなくなったからかも」と言います。

gazou 009
この病気は灰星病。すももや桃によく出る病気です。
枝の隙間などで越冬し、花の残骸で繁殖します。
殺菌剤をまけば抑えられるんですけど…まかないからよく出ます。



ただ、シンクイムシという果実を食害する虫の被害が年々ひどくなり、
早生品種はそれほど問題ないのですが、7月下旬の「ソルダム」、
8月出荷の「太陽」という品種の出荷がなくなることがあります。

一般的なすもも農家の農薬散布回数(成分数)は、
山梨県で12回(早生品種)~15回程度(その他)。
シンクイムシ対策では、一般ではほぼ一週間~10日に一度、殺虫剤をまいています。

農薬をまけば、シンクイムシ被害はなくなります。

シンクイムシにやられて出荷数が減ってしまっても、ただ
「今年はシンクイが多くてすももが少なかったじゃんね」という古郡さん。
「こんな少ないんじゃあ、困っちゃうじゃんね」…それで終わりです。

すもも2
すももは過熟になりやすい果物のため、一般ではまだ青い状態で収穫することが多い果物。
市販のすももがすっぱいだけだったり、ボケたような味だったりするのは、早もぎが理由。
畑で食べるすももの味を知ってしまうと、店頭のすももは食べられなくなります。
ほとんどの人がおいしいすももを食べたことがないのは、そういう理由なのですね。



出荷が少なくなることは収入も減ること。

何年も前、桃は農薬をまくのが嫌だから切っちゃって、
農薬をまかずにいたら、ぶどうの樹は枯れてしまいました。
(糖度が20度もあるおいしい巨峰だったです)

でも何もしないという方針は変わりません。

すももの樹がなりたいようにならせているのだと。
自分は少しお手伝いしているだけだと。
そんなことをさらりと言い、笑う古郡さん。

う~ん、絶対誰にも真似できない。
(「そんなこと、しなくてもいいさよ~」と古郡さんに言われそうですけど)

今年のすももは、ひょっとしたら7月末で終わってしまうかもしれません。

シンクイムシの被害ができるだけ少なく、少しでもたくさん収穫できるよう
東京から願っている私です。



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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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