とびっきりのぶどうを作る人たち―山形県・おきたま興農舎

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山形新幹線に乗っていると、赤湯からかみのやま温泉に向かう途中
車窓からこんな風景が見えます。

傾斜地に隙間なく建てられたぶどうハウスがお日様を浴びてキラキラ光り、
平地では稲穂が黄金色に輝いている…秋のこの時期だけ見られる美しい風景です。

平地には田んぼ、傾斜地にぶどうというこの風景を見るたび、
平地ではコメを、コメが作れない傾斜地にぶどうを栽培するという
日本人の勤勉さ、食糧増産の執念のようなものを感じて、少し切なくなります。

戦後、米もぶどうもものすごく儲かった時代がありました。

今は昔の物語ですが、ぶどうを2ケース売れば温泉で豪遊できたとか
大学卒の初任給の2倍ほどの収入があったとか、
昔語りに楽しげな農家の話を聞くことがあります。

確かに私が子どもの頃、巨峰はまだ高価なぶどうで、たまに食べられるとうれしかったものです。
今や巨峰は庶民派のぶどう。
それどころか、売れなくて困ったりしてるぶどうになってしまいました。

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全国的に売れなくてワイン用とか言われ始めたかわいそうなぶどう「マスカットベリーA」。
酸味も香りもあるおいしいぶどうなのですが、昭和の味を感じてしまうのが売れない原因でしょうか。



食糧増産という国の政策は成功したのだなとは思うけど、
儲かったねえ!と笑う農民の笑顔は、あんまり見ることがなくなりました。

もう一度そんな日が来るといいなあ…そんな風に思う今日この頃です。

さて、この置賜盆地は有機農業が盛んな土地でもあります。
この地域の特徴は、農家の経営の形態。
米や野菜、果物などの単作ではなく、必ず米と果樹、畑作と米などの複合経営を行っています。
この形態だと、何かが天候の具合でダメになってしまっても収入がなくて困ることはありません。

東北の内陸という厳しい地で農業を営む農民の知恵なのですね。
また過去に何があったのだろうといろいろな想像もしてしまいます。

そんな地域の、頑固でまじめな農民たちが集まった「おきたま興農舎」という団体があります。

「できるだけ農薬は使わないでうまいものを作る」という信念のもと、農家が集まり、
日々土と向き合い、土を耕して、食べものを生産しています。

このおきたま興農舎に、二人のぶどうづくりがいます。

そのお一人、佐藤淳一さんが作っているのはルビーオクヤマなどの欧州系ぶどう、
種ありのロザリオビアンコ、安芸クイーンなどなど。

佐藤さんは種無デラも栽培していますが、それとは別に上記の品種を作っています。
理由は「皮の柔らかいぶどうは栽培が難しいけど面白いから」

ぶどうが好きな方なんですねえ。

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「味が第一」。淳一さんと話しているとそんな執念を感じることがあります。
おいしいぶどうを作りたいっていう執念。スゴイなあ…と思う瞬間です。


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でっかい体でちまちまとぶどうの作業ををする大沼さんを見ると、
あのでかい指でよくあんな小さいハサミでちまちま作業を…と感心します。
作るぶどうの味と言ったら、それはもう驚きの味なのです。ちまっとした作業の賜物です。


ネオマスカットやベリーAなどの昔懐かしぶどうを作っているのは、大沼延男さん。
完熟のベリーAは巨峰よりもおいしいと言わしめるほどのベリーAと
「こんなネオマス食べたことない!」というネオマスカットを栽培しています。

お二人に共通しているのは「早採りをしないこと」。

ぶどうは貯蔵が割合と効くため、早く採って冷蔵庫に入れておくことが可能です。

畑で完熟させてしまうとそりゃもうおいしいことはわかっているのです。
しかし「販売する」という視点を考慮した場合、粒が落ちやすくなったもの、
店頭にあまり長い間置いておけないものは困ります。

そういう理由から、ほとんどのぶどうは早採りのものが売られているのですね。

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マスカット香の素晴らしいルビーオクヤマ。淳一さんの作る高級ぶどうです。
赤いぶどうは夜温が下がらないと色がつかないため、今年は大変な年になりました。
華やかな芳香とほんのりと感じる渋み…まさに大人の味。
やったことないけど、ワインとかリキュール類とか、そういったお酒に合いそうです。


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「そんな写真撮らなくていいよ~」と言われながら撮りました。
色のつかないルビーオクヤマ。この色合いでは売れません。
樹によって色が悪いものがあるとのことでしたが、出荷できないとはもったいない。
山梨などでも全く色がつかなかったらしいですから、
赤いぶどうは難しいぶどうになりつつあるのかもしれませんねえ。



早採りするということは、その品種の味が出ていないということ。
「誰もこのこのぶどうの本当の味を知らないのだなあ。本当はおいしいぶどうなのに」
店頭に並んでいるぶどうを見ると、いつも少し悲しくなります。

とくにそれを感じるのが、ロザリオビアンコとネオマスカット。

どちらも黄色いぶどうですが、店頭に並んでいるのはだいたい緑色のもの。
さらに、ロザリオはホルモン剤で種無処理をされているものが多く、
本当の味を見つけるのは容易ではありません。

しかししかし。

お二人のぶどうを食べると、目からウロコがボロボロと落ちていきます。

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もっと緑色の状態で売られていることが多いロザリオビアンコ。
山形県での収穫適期は9月15日過ぎ。これは9月26日の状態です。
ジベレリン処理した種無ロザリオはもっと早くから出てますが、なんだかなってな味ですよねえ。


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食べた瞬間、花のような芳香に圧倒されるネオマスカット。
初めて食べた時「ええっ!? これほんとにネオマスなのう!」とびっくりしました。
ネオマスなんて、フツーのなんてことない庶民的ぶどうと思ってた自分が恥ずかしくなりました。



ロザリオビアンコはあくまでもあくまでも甘く、高貴な味わい。
また、ネオマスは名前に恥じない芳香のあるすばらしいぶどうだということがわかります。

何がこんなに違うんでしょうか。

単に長い間樹につけておいたというだけではなく、有機質肥料を長年入れ続けた土と、
アミノ酸資材の葉面散布などの栽培があってこその味なのでしょう。

一般の半分程度の低農薬栽培も、高い技術なしには行うことはできません。

化学肥料や除草剤、農薬を多投している畑からは、生まれ得ない味だと思います。

惜しむらくは、そのおいしさを誰もあまり知らないこと。
だって本当のぶどうの味を知ってる人が少ないんだもの。残念なことです。

本当においしいものは店頭には並んでいないのだと、最近ますます強く感じています。
ちなみにですが、皮ごと食べるぶどうは低農薬栽培のものを選択した方がいいと思いますです。



おきたま興農舎のWEBサイトは以下になります。
果物以外にもおいしいものがたくさんあります!これからは新米がすんばらしいです

http://y-umaiya.com/message/index.html


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生物多様性年にオオカミについて考える

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北海道でオオカミを飼育している桑原さんのシンリンオオカミ。
飼育と言っても犬とは違いますから、桑原さんが彼らのアルファ(ボス)という存在になっています。
オスからしょっちゅうチャレンジを受けるので、アルファも大変なのだそうです。



まず、ご質問。

私たちの住む日本における、食物連鎖の頂点に位置している動物は?
「人間」と思った人が多いかもしれませんが、実は猛禽類なのですって。

えっ?そんなものが頂点なの?
なんとなく、違和感を感じませんか。

クマは? とよく聞かれますが、本州にいるツキノワグマの主食は木の実。
また、北海道にいるヒグマも雑食性の動物のため、
エゾジカを襲うところを目撃されたりはしていますが、頂点にいるわけではありません。

さてその猛禽類が襲う動物は、大きいものでせいぜいキツネくらい。
それ以上の動物を襲うことはありません。

ということで、日本の食物連鎖の頂点は100年ほど前から猛禽類、
あるいは空白になっているのです。


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草食動物だからと言って害がないわけじゃないシカの害。すでに下草は食べつくされた状態。
シカが増えすぎて食べるものがなくなってくると樹皮を食べ始めます。
禁猟区である知床半島には、冬季、シカが押し寄せ大量の樹皮を食べつくしています。
この一本がきっかけになり、森林が崩壊することになります。




明治以前はニホンオオカミという獣が日本の山々に君臨していました。

オスとメスのつがいを基本にした群れをなし、集団で暮らし、
人の世界に下りてくることなく、シカやイノシシを狩っていました。
野生動物は無意味な殺戮はしませんから、
オオカミがシカやイノシシの数量調整をしていたのでしょう。

日本の生態系はこの間、安定していたともいえます。

しかし、人間は違いました。

毛皮の需要と狂犬病などの心配、またヒトや家畜が襲われるのではという誤解なども相まって、
オオカミはずいぶん昔から嫌われ者だったようです。
ハンターたちによる殺戮と餌のシカやイノシシの激減などにより、結局絶滅してしまいました。

北海道にもエゾオオカミというオオカミがいましたが、これも絶滅。
日本人は生態系のバランスを整えていた獣をこの世から葬ってしまったのです。

そのツケは、現在に暮らす私たちが支払っています。

ニホンジカは現在山の木々を食い荒らし、いくつもの山々をはげ山にしてしまっています。
また農業被害も甚大なものになっています。


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奈良県大台ケ原の惨状。シカが下草を食べ、樹皮を食べた結果がこれ。
もう自然が修復することは不可能です。シカの被害は農業被害以上に、
このような目に見えないところで着実に増えつつあります。




イノシシ害も、秋になると「りんごを食ってた」とか「とうもろこしが全滅した」など
あちこちからいろんな話を聞きます。
丹精込めて作った作物を野生動物に食われてしまう気持ち…いかばかりでしょう。

「みんな地球に住む仲間なんだから、仲良くしようよ!」などとはとても言えない私です。


人間が森林を開発し、野生動物の住処がなくなったから。
勝手に山を切り開き、田んぼを作ってさらにそこを放棄しちゃったから。

そんな理由ももちろんありますが、野放図に増えていく原因はもう一つあります。

それは、ハンター人口の激減。
ヒトというプレッシャーがなくなったことが、シカ・イノシシ・サルの増加に拍車をかけています。


散弾銃を10年持たないとライフルを使えないという法的な縛りや、
殺生を嫌う若者たちが増えていることから、ハンターも高齢化が進んでおり、
シカ駆除に狩りだされるハンターの最少年齢が60歳ってなこともざら。

趣味のハンティングはもう年なのでやめとくかというおじいさま方が
山を越え谷を渡り、シカやイノシシを駆除しているのです。

農業や林業者の高齢化が話題になりますが、ハンターの高齢化はあまり話題になりません。
今や人間も食物連鎖の頂点にはいないのかもしれませんね。


オオカミ5
北海道のシカ猟の見学をさせてもらった時のエゾジカの足跡。
それまで私は散弾銃の免許を取り、ハンターの後継者になろうと思ったりしていましたが、
ハンターは自分の獲物をさばかなくてはならないのです。「ム、ムリムリムリムリ…」
私の中の農耕民族の血が激しく反発し、そこで心が折れました。




さてそんななか、オオカミを海外から導入してはどうかと提案している人たちがいます。

ニホンオオカミに良く似た大きさのオオカミを導入し、生態系を元に戻す。
増えすぎたシカやイノシシは適量まで減り、安定した生態系で山が復活する。

これは実現までにどういう手続きがされるのか想像もできませんが、
初めて聞いたとき、なんて理にかなった方法かしら!と思ってしまいました。

こういう話を聞くと、ハブ駆除にマングースを導入したのにハブを全然食わず、
在来種のアマミノクロウサギとかをどんどん食べちゃった等の
失敗例を思い出す人が多いかもしれません。

オオカミの導入はそもそも日本に存在しなかった「種」を日本に入れるのとは違い、
昔いたけど絶滅したものを元に戻すという考え方。

中国からトキを連れてきた例と同じなので、マングースとは少し違います。


オオカミ1
たくさんの種がいる世界は美しいと思いませんか。
オオカミが再び日本の山々を駆け巡る日が訪れれば、そのぶんだけ私たちの世界は
豊かになると思うのです。またオオカミ見学ツアーとかできそうですね。地域活性の要になるかも。




この考え方には賛否両論あるでしょう。
オオカミは人や家畜を襲うのではないかとか、生態系が本当に安定するのかとか。

ただ人間の身勝手で絶滅したオオカミの群れが、
日本の山々でシカやイノシシを狩りながら、人目につかずに暮らしているという夢は
個人的にはなかなか素敵な夢だなあと思うのです。
(オオカミはヒトを恐れるので、ヒトの前に出てくることはないようです)

オオカミ導入はすでにアメリカのイエローストーン国立公園で実現しており、
増えすぎていたエルク鹿のバランスが整い、オオカミの獲物を横取りできることから
減りつつあったグリズリーが増加したという結果を導き出しているそうです。

人間が生態系に介入することの難しさはありますが、日本でも実現する日が来るかもしれません。


この話に興味をもたれた方、ぜひ、日本オオカミ協会のWEBサイトをご覧ください。
http://www.japan-wolf.org/
何名かの方は、旭山動物園のオオカミ展示にも協力したということです。

※エゾジカの足跡以外の写真はオオカミ協会理事・朝倉裕さんからの提供です。

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新規就農のりんごづくり―長野県・廣瀬祥寿さん

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廣瀬祥寿さん。栃木県出身。東京でサラリーマン生活後、長野県安曇野市に就農。


2001年の冬、長野県に一人のりんごづくりが生まれました。

それまで全くりんごを栽培したこともなく、親戚や親がいるわけでもない土地で、
一人で5反の畑を借りて始めたりんごづくり。

この土地で知り合った女性と結婚し、家を買い、現在3人の子どもと幸せに暮らす廣瀬さん。
5反から始まったりんごの面積は、今では1.5町。
りんご農家の息子でも難しいりんごの栽培に一から取り組み、
売上もきちんと上げている、その秘訣を聞きました。

「安曇野に通うようになったのは、1998年の秋ごろからだったかな。
りんごの頒布会企画の商品を開発して、その企画のために状況の確認も含めて、
年に数回、土曜日に来て月曜の早朝に長野から会社に行くって生活してました。
もともと農業に興味はあったけど、当時はりんごなんか作れるわけないじゃんって思ってた」

頒布会のりんごは、りんごの世界でとても有名な故・原今朝生さんのグループもの。
この原さんの中生種のりんごを、品種ごとに届けるという企画でした。


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原今朝生さんのお友達が育種した品種「秋映」。
りんごの頒布会「りんご七会」のスタートを切る品種になりました。
当時は市場にはほとんど出荷されていない珍しい品種でした。




今ではよく見かけるりんごの頒布会ですが、当時はそんなにありませんでした。

特徴は、りんごと一緒に届く、原さんご一家の情報がびっしりと書き込まれたリーフレット。
台風の被害や、日々のことなど、りんご農家の暮らしが書きつづられていました。

このリーフレットを作成するため、安曇野に通っていた廣瀬さん。
2年経った2000年の秋、「ここでりんごを作ってみたらどうだ」と今朝生さんに言われ、
ちょうど5反のりんご畑を貸したいという人が現れました。

原さんという先生はいるにしろ、全く血縁のない土地に引っ越すことや、
農業、それも難しいりんごに挑戦することに、迷いはなかったのでしょうか。

「あんまり迷わなかったというか、実家に帰る気もなかったし、農業は好きだったしで、
まあやってみるか、もう35歳過ぎてるし、やるんなら今しかないって感じで。
ひとり者だったのでどうにでもなるし、それなりに貯金もあったので、大丈夫だろうと」

そう決めたら、あれよあれよと言う間にことが進みました。
2001年の1月に安曇野に引っ越し、2月後半から剪定作業を開始しました。
廣瀬さんのりんごづくりが始まったのです。


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果樹類の農器具は、スピードスプレイヤーは高額で必須アイテムですが、
その他の機械は畑作ほど揃えなくても良かったりします。
草生栽培だと乗用の草刈り機も必需品。これは100万円くらいする性能のいいもの。




「最初の年の売り先は、前職の職場関係の人たちや地元の直売所、
原さんに紹介してもらった人たちとか。
贈答用に贈られた人から翌年注文が来たりして、だんだんお客さんが増えていきました。

昨年の売上は約1,100万円。加工品の経費や出荷用の段ボール代が高くて
利益は400万くらいかな(笑)。

あと、農薬代は36万です。慣行栽培の半分くらいなので、一般よりは安いと思います。
除草剤はまかないけど、草生栽培だから草刈り機のガソリン代もかかります。

りんごの作業は家族だけではムリなので、パートさんを雇いますが、
その経費も相当かかります。税金とかそういったものを引くと、純利益はもう少し少ないです」


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このりんごはシナノドルチェ。長野県期待の早生りんごです。
つがる同様収穫間際に落ちるという性質があるので、全部ネットをかけています。
(ネットの理由は後述)




現在の廣瀬さんのりんごの9割は個人への直送です。

売値が自分でつけられるため、農協に出荷するよりははるかに売り上げはあがります。
もちろん昨年買ってくれた人へのDM送付など、販売促進も怠りません。

また、売れなかったりんごはハイビスカス入り・人参入り・ネクターなどのジュースや、
ジャムやシードルに加工。一昨年からりんご酢を、さらに低温乾燥の干しりんごなども作り、
それらは主に直送販売と、地元の直売所などで売っています。

個人のりんご農家でここまで加工品に凝る人もいないでしょう。
経費がかかるという理由がよくわかります。


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写真左からリンゴネクター、風干しりんご、シードル。風干しりんごは冷風乾燥で乾燥させた干しりんご。
高温乾燥だと酵素が失われてしまうので、酵素をそのまま摂取できるようこだわった一品。
そりゃもう、ものすごくりんごの風味が残っていておいしい干しりんごです。



この怒涛のような商品開発力もさることながら、
本当においしいものを作りたいという執念が半端じゃない廣瀬さん。

その例が「つがる」という収穫直前に落果してしまうりんごです。

落果してしまうので落果防止剤(ホルモン剤)をまくのが普通のりんご農家。
しかし廣瀬さんは、自然に落っこちても大丈夫なよう、ヒモで縛ることを思いつきました。

「最初の年、隣のおじさんが栽培している花卉にホルモン剤がかかると困るって言われて。

隣接部分の一通り、まくのをやめて、ひとつずつヒモでしばったんだよね。
そしたら翌年、去年のは硬かったけど今年のは柔らかいというお客さんもいて、
ホルモン剤をまくと、熟度や進み方が違うことに気がついたんです。

それで落果防止剤をまくのはやめて、つがるを全部ヒモで縛るようになった。
しばらくヒモを使ってたけど、4年前、マンゴーに使うネットを見つけた。
これが再利用できるし、しばんなくていいから簡単だし、とっても便利なんだよね。
それ以来ネットでやってます(笑)。これをつける時間? 1時間平均100個かなあ」


ヒモ
最初のヒモはりんごの樹の誘引ヒモ。これが二代目の紙製ヒモ。
細くて縛りやすいけど雨に弱く、雨の多い年に結べませんでした。
困ってWEBで色々調べ、マンゴーのネットに変更しました。

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りんごにネットをかけて洗濯バサミで枝に固定します。
この洗濯バサミ、安曇野近辺のホームセンターで買い占めても足りなくて
結局メーカーに発注したそうです。でも何度も使えるのでヒモよりはるかにいいとのこと。

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落っこちるとこんな具合にネットにひっかかります。
ネットを付ける時、落ちたりんごが探しやすいよう先端を10センチほど余らせています。
こうなったりんごを拾い採りしていきます。

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「あっ、落ちてる」 ネットに落ちたりんごを毎日見回って採るのも一苦労。
落ちたりんごの数がそろわないと出荷できなかったりもするので、それも大変。
ただ、ホルモン剤をまかずに勝手に落ちたつがるは、手間のぶんだけやっぱりおいしいのです。




つがるだけでなく、廣瀬さんのりんごは熟度を重視した味がのったもの。
とことんおいしいものを作る姿勢が固定客をがっちりつなぎとめ、新規の顧客も増えています。
「ほんもの」が売れると言う、いい例のような気がします。

私は長年りんご農家担当でしたから、りんごの味には相当うるさいのですが、
元同僚というひいき目なしに、彼のりんごの味は就農当初から一度も落ちていず、どころか、
どんどんおいしくなっています。

ていねいでまじめな仕事。廣瀬さんのことを考えると、まずこの言葉が思い浮かびます。


ワタマコト
ネットを枝から外した収穫後のつがる。
このネットを全部はずして箱詰めします。畑が遊び場の息子ちゃんたちもうれしそう。



「農業がやりたいと思ってはいましたが、始めたのは、たぶんそれがりんごだったからです。
自分の中でりんごは何か特別なものだったから。
そもそもの始まりは、「一つのりんご」でした。

ある日、倉庫でかじったそのりんご。噛みしめたら涙が溢れてきました。
悲しいことやつらいことを思い出したわけでもないのに、
とまらぬ涙にしばらく倉庫から出ていけなくなって・・・

と、あまり人前で言うにははばかられるような話ですが、そんなりんごとの出会いが、
りんご七会だとか、りんご農家になる、とかいうことにつながっていったんです。

なんかわかりにくいですかね(笑)」


ひとつのりんごとの出会いは一度。

あなたのテーブルの上にあるのは、病気にも虫にもやられず育った、
りんご畑のたくさんのりんごの中のひとつなのですね。

そんなこと、あまり考えたことはないのですが、言われてみれば確かにそう。
そう思うと、愛おしくて「よく来たね」とでも声をかけたくなります。

そんな思いを大切にして作った廣瀬さんのりんご。
ひとつひとつ某大な手間をかけてネットをかけた「つがる」、まだまだたくさんあります。

以下のメールアドレスからご注文できますので、廣瀬さんのりんごをぜひ食べてみてください。


hirose-ringo★gray.plala.or.jp
※★の部分を@に変更して送ってくださいね。


つがる5kg箱3,300円(送料別)
※つがるの販売は9月24日までとなります。
シードル6本入4,500円(送料別)



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収穫間際に落っこちる「つがる」というりんご

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9月9日の店頭で見つけたつがる。緑色の部分が多くてびっくり。
「柔らかくなりやすいので注意」と注意書きがついていました。
お店もわかっているのですねえ。



早生りんごが店頭に並んでいます。

この時期のりんごはあっさりさっぱり味が多いですね。
そのあっさり味の代表格が「つがる」。

その名のとおり青森県で品種登録された「つがる」は、ゴールデンデリシャスと紅玉のこどもです。

ちなみにゴールデンは昨今出回っているほとんどのりんごの親になります。
栽培している人はもうほとんどいないゴールデンデリシャス、
子どもたちが大きく羽ばたいているといったところでしょうか。

つがるは酸味がなく色づきもそんなによくないのですが、最近では着色系のつがるが出てきて、
色のまわったきれいなつがるを見るようになりました。

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9月5日に撮影した「さんさ」。真っ赤なかわいらしい色合いのりんごです。
(まだちょっと早い感じ。ピンクが強くなったような、かわい~い赤が特徴です)
柔らかくなりやすいつがるの代わりに、このりんごを栽培する人が増えてきました。
でも作るのが難しいみたい。土地によって樹勢が弱くなる場合があるようです。




さて、つがるというりんごは、収穫直前に生理落果することが知られています。
(食べる人にはほとんど知られていませんけど)
落果対策として、8月に落果防止剤(ホルモン剤)を散布します。
これにより、つがるは落っこちるりんごではなくなりました。

このホルモン剤を散布しないと、8月下旬にぼとぼと落ちるため、
つがるを作っている人は必ず8月にホルモン剤を散布しています。

しかしこの「つがる」。最近いろいろと困ったことが出てきました。
暑さのため、着色しないのです。

何年か前からこの傾向が見受けられるようになり、
赤く色づいて見た目が良くなってくると、内部はもう柔らかくなっていることが多くなりました。

「また内部先行しちゃってるみたいよ。つがるを作ってる人は大変だわ」
りんご産地でここ何年かよく聞く言葉です。

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「わっ!何この色、このりんご!」と驚かれることの多い「秋映」。
9月下旬から店頭に出てきますが、売られているのはサワヤカな赤色をしていると思います。
本当に熟すまで樹においとくとこんな色になるんですね~、初めて見たときはびっくりしました。
パリパリした食感で酸味と甘みのメリハリがはっきりした秋映、最近注目され増えてきています。
このりんごから「中生種」になるんじゃないかなあ。




りんごは収穫後の持ちの良い品種と、そうではない品種があります。
早生りんごほど保存が効かない傾向があり、つがるもそんなに持たないりんごです。

冷蔵庫にラップでぴっちりくるんで保存すれば2週間ほどはおいしく食べられます。
しかし内部先行というのは、収穫時にすでに柔らかくなってしまっていること。
収穫時に柔らかくなってしまっていると、保存性が悪くなり味も落ちます。

その結果、お尻がまだ青いような状態で早採りすることが多くなりました。

スーパーで見かける「つがる」の下半身が緑色なのはこのせい。
完熟直前のりんごは色が全体的に回り、お尻の部分の青みが抜けてきます。
こうなって始めて、その品種の味が出てくるものなのですが、
暑さのせいで、色が回るまで樹につけておくことができなくなってきたのです。

道の駅などで格安で売られているお尻が緑色のつがるも、チョー早採りされたもの。
「りんごの味がするんかな? でも売れてるみたいだから、まあいっか」と思ったりして。

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「大きいことはいいことだ!」だった日本のりんご界。
しかし消費者の果物離れが進み、昨今では「丸かじりりんご」の登場が待ち望まれています。
大きく作って正しい味なのですから、急に小さく作ってと言われても困るわけで…。
その要望にこたえた新品種「シナノピッコロ」。かわいいですねえ。




10年ほど前は、長野県では9月上旬に収穫するりんごだった「つがる」ですが、
最近では8月下旬には収穫し、店頭に出回るようになりました。

そんなに早くては着色もままならないため、着色を促進させるアミノ酸資材などを散布し、
色をつけるなどの技術も開発されているようです。
(昔は人工着色などもやってたみたいですけど、今もやってるのかなあ?)

果物というのはおおむね早出しにはいい値がつきますから、
基本的には早く出荷したいものなのです。
しかし早採りは味が乗っていませんから評判が悪くなり、その品種が売れなくなることもあります。

りんごは色合いである程度熟度がわかるため、着色していることが前提なのですが、
最近のつがるはお尻の青いものが正々堂々と売られているのを見かけることが多くなりました。

産地では「色がつかないから、もうこれで良し」と判断しているのでしょう。
大変なことが起きているんじゃないかと思ったりします。

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今年の暑さで日焼けしたつがる。まだそれほどでもない軽度の日焼けです。
通常は色を回すために葉っぱを摘みますが、葉摘みをしちゃうと日焼けで商品にならなくなるので、
今年はほとんど葉摘みをしなかったそうです。
この日焼け果は、日焼けした部分から傷んだり、内部に蜜みたいなものができたりします。
もちろん商品にはならないです(このりんごにネットがかかっている理由は次回)。




科学的な根拠はないのですが、つがるを作っている人に聞くと
ホルモン剤を散布すると柔らかくなるのが早く、内部先行しやすい気がすると言います。

ホルモン剤を全く散布しないで作るとバンバン落っこちます。
だから落っこちる前に早採りしなくてはなりません。
それはそれで味が乗っていないので、どちらがおいしいかと言われると微妙なところなんですけど。


今、東京でつがるを食べている人は、つがるの本当の味を知らないかもしれません。

まだでんぷんが糖化していない粉っぽい味のりんご。
つがるはそんな味のりんごと思われているのかもしれませんね。

ちゃんとしてればおいしいのに。かわいそうなつがる。

しかしおそらくこれからも、状況が改善することはないでしょう。
日本が寒くなったり、ホルモン剤を使わない栽培が主流になることはないからです。

しかししかし。
そんななか、ものすごく手間をかけ、落下防止剤を使わずにつがるを作ってる人がいるのです!

その人のご紹介は次回また。
(すみません。長くなっちゃったので)


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巨峰畑で新発見―巨峰収穫体験記

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「うまいっ!」食べたとたんに叫んだ参加者、瑞季ちゃんが感想を送ってくれました。
「ブドウすごくおいしかったです。丹沢さんの携帯の着信音が天津木村でかなり嬉しかったです。
一面ブドウブドウブドウブドウ…で驚きました」
…天津木村って何だろう?



9月4日、山梨市の丹澤修さんの畑で、巨峰の収穫体験をさせていただきました。

暑い日には38度にもなる甲府盆地での収穫体験。
ぶどう棚の下、日陰とはいえその暑さはいかばかりか。

「ド貧血の私は倒れてしまうに違いない」と凍らせたちっちゃい蓄冷剤を首にまき、
いざ巨峰収穫へ。

ふんわりとぬるい風の吹く巨峰畑は意外と涼しく(というか暑くなく)、
クソ暑いことで有名な甲府盆地がこの心地よさとは…びっくり。
東京の灼熱地獄は何か他の理由があるのだと感じ入った次第です。

さて、たくさんの巨峰がぶらさがる棚の下で「おいしい巨峰の見つけ方」を教わりました。

「枝の先の方になっているもの」「登熟した枝についているもの」
「粒がぎっちりと密集していないもの」。この条件を満たしているものを探します。

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ぶどうのなってる元の枝が茶色い…これが登熟した枝。
このぶどうは粒が密集しているのでみっつの条件は満たしてないんだけど
枝先と、登熟を満たしているので、かなりおいしいはず…というぶどうでした。
でも食べ忘れた。



棚に広がる巨峰の枝を先まで辿っていくのに約2分。
途中でよくわかんなくなり、さらに登熟してる枝ってのが見つかりません。

目の前にあるみっしりと粒のついている美しい姿の巨峰に目がくらみ、
何もかもどうでもよくなり「もうどれでもいいもんね」てな感じになったあたりで
「俺が選びましょうか?」(丹澤さん)…「そうしてください」(私)

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やっぱり園主。どれがおいしいか、どこにおいしいものがあるのかご存じです。
って当たり前か。とにかく素人では見つけられませんですよ。



「ついでにこのきれいなのも取ってみて、味比べましょうか」
目がくらんだ美しい巨峰と、粒が密集していないもの、ふたつ食べ比べてみました。

「おおお…! 本当に味が違う!」

おそらくそれだけ食べてれば「美しい形のおいしい巨峰」なのでしょうが、
密集していないものと比べると、姿形の美しさとは裏腹に意外に味が乗っていないのでした。

うーん、でもお店でどちらを選ぶかと言われたら、絶対にこの美しい姿のもの。
本当においしいものは、作ってる現場で食べないと食べられないんだわ…。

今さらながら、しみじみとあま~い巨峰を食べながら感じたのでした。

gazou 019
「こうあるべきぶどうの姿」という私のツボにはまった巨峰。
粒のそろい方といい、房の形といい、官能的なぶどうです。でも味を比べると何かが足りないのでした。
美しさと味の良さは正比例しないのですね。そう言えば他の果物でもそういうの多いかも。



さて、丹澤さんの今年の農薬散布回数は11回。(慣行栽培は23回)
殺菌剤は有機許容農薬でもあるボルドー液がほとんど。

今年は雨が少ないのに全般的に病気の発生が多く、晩腐病やベト病などが見られました。
山梨県では、ベト病に弱い「かいじ」が全滅している園もあるそうです。

「感染時期と病気の発生時期は違うんで、発生しちゃったらもうダメなんですよね」

晩腐病は、低農薬栽培を目指すぶどう農家にとっては悩みの種。
感染時期は6月下旬ごろから雨によって感染します。発生時期は収穫直前です。
ぶどうから酸が抜け、糖度が上がってきたころに症状が出るので、腹立たしさもひとしおです。

一般では5月中旬と、感染時期の6月上旬によく効く殺菌剤を使います。
その農薬をあえて使わないのは、丹澤さんが農薬のことをよく知っているから。

弘前大学で農芸化学を、山梨の果樹試験場で農薬について学んだことから、
農薬については本当に詳しい丹澤さん。
回数をただ減らすだけでなく、危険性なども考慮して農薬を選択しています。

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ベト病にかかった葉っぱ。
畑の葉っぱがかなり落ちてて、ぶどう棚の下にしては明るいのはベト病のせい。

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果実に出たベト病の症状。しなびた果実は食べられなくはないけど
食べたら苦いそうですよ。食べない方がいいと思うけど。

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見ただけで不愉快な晩腐病にかかった果実。大発生時には全滅します。


そして今年。ぶどうにはベト病などの病気が発生。
さらにメインの作物であるネクタリンは半分くらいしか商品になりませんでした。

「昔からある農薬は、何にでも効くんですよね。それをまいときゃ病気は出ないってのがある。
で、そういう農薬は安いんで、経費もそんなにかからないんです。
だけどそれはまけない。残留性も高いし毒性も強いから、使いたくない。
で、病気が出ちゃった。

来年は初期に少し強めの農薬を入れようかと思ってるんですよね。
それを一回入れるとたぶん今年みたいには病気は出なくなる。

でもどうかなあ…それでいいのかな。でも待ってくれてるお客さんがいるし。
注文もらって出荷できないのでは申し訳ないし…」

低農薬栽培を実践する農家ならではの悩み…低農薬栽培というのは農家の思想です。
でも現実的には収入にも関わるのですから、難しい話です。

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種ありならではの食べた後の軸。これがしっかりと種と軸をつないでいます。
あえて種ありぶどうを作るという、種なしぶどう全盛の時代に逆行するのも農家の思想。
おいしいもの・安全なものを作りたいという気持ちをちゃんと伝えたいと思うです。




環境負荷の少ないもの、毒性の低いもの、選択性のあるもの、
そんな農薬は最近開発されたものが多く、お値段も高いのが特徴です。

「まいときゃ出ない」式の昔の農薬はどんな虫や病気にも効き、
残効が高く、さらにお安く、農薬の散布数を減らすことが容易いもの。

何年か前大騒ぎになった「ダイホルタン」という失効農薬は、
6月に一回まくとその後の殺菌剤は全く必要なかったと言います。
どころか、収穫時にも肌の弱い人はかぶれてしまうほど、残効が高かったそう。

残留農薬の数値はいかばかりだったか…恐ろしい話です。

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雨よけのビニールのない露地栽培では、ぶどうに傘をかけて雨をよけます。
ぶどうは乾燥した土地の出身。高温多湿の日本では病原菌の感染が容易いため、雨よけをします。
ぶどうの露地栽培ってのは難しいんですよね。



農薬の散布数をただ減らすだけではなく、その質をも考えて果樹栽培するには
虫や病気の発生時期やその性質を知り、自分の畑ではいつ頃出てくるかという観察力、
またそれぞれの農薬の特性を知ることなどが必要です。

そんなにしても収量が追いつかないときはどうしたらいいんでしょう。

丹澤さんに選んでもらった甘くておいしい種あり巨峰を食べながら、
果樹栽培の難しさを考えてしまった収穫体験でした。


丹澤さんの巨峰が食べたい方は、9月11日までならご注文可能だそうです。
osamu-tan□fruits.jp ※□を@に変更してメールを送ってください。
2kg箱 3,500円(送料込)



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ミツバチの大量死から見える農業の問題

群馬 014
この娘はおなかのシマシマが黄色っぽいのでセイヨウミツバチ。
日本でセイヨウミツバチが野生化してるのは沖縄だけなので、
その辺を飛んでるのは誰かが飼ってるミツバチなのですね。
ニホンミツバチはおなかのシマシマが黒っぽいので、よ~く見るとわかります。



8月26日、「ミツバチと農業」という研修会に参加しました。

ミツバチの大量死(CCDではない)が起こっている原因は農薬の薬害である、
だからその農薬は規制すべきであると
一部の養蜂家、そして一部のメディアと識者が主張しています。

その真偽のほどはわかりません。

被害届(この5年で10件しか出ていない)や、大量死の記録(数字等が不明)等、
客観性のあるデータがそろっていないように思えるからです。

でもひとつだけわかったことがありました。

この問題は、単に農薬の薬害という話ではないということ。
根っこを探っていくと、農業政策や食育などにも波及する大きな問題であるということです。

さて、そのひとつ。
農薬について考えてみました。

P7196188.jpg
果樹産地での農薬散布風景。きれいな果物は農薬をまかないと食べられませんです。


一般的に消費者は、農薬は「悪」という捉え方をしています。

薬害やその毒性、環境負荷などを考えると、農薬はよくないものだと誰でも思います。
できるだけ農薬の使ってない野菜や果物を食べたいと、皆が漠然と思っています。

ただ、それぞれの作物にどれぐらいの農薬を使っているかはあまり知られていません。

以前、農業と全く関わりのない人に「りんごって農薬を何回使うと思う?」と聞いてみました。
「うーん、わかんないけど…3回くらい?」と彼女は言いました。
「りんごって、農薬を大量に使うよね?」

長野県の防除暦を見ると、30~35回(成分)、青森県では35回(成分)※1
「ええっ!本当!?…なんとなくだけど、多くても5回くらいかなと思ってた」

農薬は悪いものだと思っているけど、量的なものは実感できていない…そんな風に思いました。
農業の現場と消費者との間には大きな大きな溝があるということですね。

画像7
無農薬の畑で秋によく見かけるリョッキョウ菌にやられたヨトウムシ。
殺菌剤をまいていないとこの菌がアブラムシなどの害虫にも取りついて殺してくれます。
ただ害虫の大量発生時にはこの菌がいても追いつきません。やはり農薬にかなうものはないのです。



農薬のメリットを考えてみます。

虫や病気のないきれいな野菜を栽培できて、正品として売れること。
防除暦どおりに農薬をまいていれば、そんなに失敗なくできること。
ロスがそれほどない安定的な生産ができること。

慣行栽培の農家に無農薬でできないかと質問すると
「できるわけないでしょ」と言われます。「虫が出たらどうするんだ。売り物にならないよ」

それぞれの出荷先に規格があり、その規格から外れたものは売れない。
だから規格通りのものが作れるよう、農薬を使う…これが一般的な農家の姿勢だと思います。

消費者はどうでしょうか。

虫が食ってる野菜、病気が出てる野菜はイヤだから買わない。
でも農薬は悪いものだから、少なければいいなと思っている。

ううう、なんか矛盾してないっすかね。

キスジノミハムシ
キスジノミハムシの害。大根やカブを食害し、醜い姿に変えてしまいます。
有機栽培をしている農家の畑では、効く農薬がまけないのでよく発生しています。
一般では土壌消毒剤や粒剤を使用するので、ほとんど発生することはありません。
もちろん売り物にはならないので、消費者がキスジの被害を見ることはおそらくないでしょう。



例えばカメムシのかじった米。
お米の一部分がちょこっと黒くなるので、この米が入ると等級が下がります。

ただでさえ安い米価、これ以上安く売れるんじゃ食べていけない。
だったら農薬をまいてカメムシを退治しよう。これが農家の正しい姿勢でしょう。

それでミツバチの大量死を起こしていると言われるネオニコチノイド系農薬(※2)を夏に散布する。
見た目が悪くて売れなくなる=等級は低くなる=夏の農薬散布は絶対に避けられない。
これが作る側の主張。

食べる側としては、お茶碗に一粒この米が入っただけでイヤだから買わない。
これは食べる側の主張。そしてそして。
「私はきれいなごはんが食べたいの。だからきれいなお米を作ってね。
でも、ミツバチのためにネオニコを規制すべきよね」

…これ、少しおかしいような気がします。おかしくないですか。

「なぜ使わなければならないのか」、その議論をまずして欲しいなあと思います。
そして、なぜ使うのか。それを知ってもらいたいと思います。

食べものの生産現場を知っていれば、農薬がどれぐらい使われているかを知れば、
見た目よりも優先すべきものがわかってくると思うのですが、
日本の消費者はまだそこまで成熟していないのでしょうか。

くも
畑にクモがいるといろんな昆虫を食べてくれていいですね。
ネオニコ系農薬は有機リン系などの絶滅系農薬と違い、天敵であるクモを殺さないという一面もあります。




私個人は、農薬の使用は土づくりである程度減らせると考えています(果樹を除く)。
土づくりで無農薬栽培を実践している農家を知っていること、
虫や病気が発生する原因は土にあるという科学的な根拠があることがその理由です。

また、農薬に依存しない技術も様々な研究者から報告されています。
天敵の活用、コンパニオンプランツの利用などなど、最新技術はいくらでもあります。

でもこれらの情報は農民には全くと言っていいほど伝わっていません。
「IPMって知ってる?」と聞いても「なんじゃそりゃ」と言われたりするのですから。

農業技術の研究の場と、生産現場の農民が、うまくつながっていないのです。


gazou 007
エディブルフラワーにもなるボリジ。天敵を養成すると言われています。
雑草は害虫の住処となっていることが多いため、河川敷などの雑草を刈る際には、
作物に飛んでこないよう、時期に配慮するなどの対応をしている農家もいます。



生産の現場は現状維持で精いっぱいということなのかもしれません。

「農薬に依存しないと農業できない」という作り手も変わる必要がありますが、
食べる人たちも知る努力が必要なんじゃないでしょうか。
少なくとも、自分の食べてるものがどのように作られているかくらいは。

少しずつ無農薬栽培や有機栽培に取り組む人が増えてきていることを思うと、
作り手の意識は、いつか大きく変わる日が来るような気がします。

どこかにこの状況を打破できるスイッチがあるんじゃないかと思うのですが、
食べる人が意識を少しずつ変えていく、そんな地道な努力をするしかないんでしょうかしら。



※1 農薬のカウントは農薬成分数でのカウントであり、回数ではありません。
ひとつの農薬に成分数が2つある場合は、一回の散布で2成分のカウントになります。

各自治体の特別栽培農産物の基準については、以下URLで公開されています。
上記農薬成分数はここから調べました。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_04.pdf

※2 ネオニコチノイド系農薬
文字通りニコチンに似た化学物質という意味で、成分にも種類がいくつかあります。
有機リン系などの危険な農薬の代替として開発された殺虫剤で、
有機リン系が製造中止になりつつある中で一般的によく使われています。
ネオニコが規制されたら何を使えばいいの?と言う農家がとっても多いと思います


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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