わたしたちの知らない畑のなかの虫の世界

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オクラの葉についていたケムシを見つけ、うれしそうな根本先生。
お持ち帰りで同定されるとのことでした。虫を見つけると子どものように喜ぶ
根本先生は、偉い人とはとても思えないチャーミングな方でございます。



茨城県のさちこさんの畑で、天敵観察会を開催した。
講師は保全生物的防除研究会代表。根本久さん。

根本先生は埼玉県農林総合研究センター水田農業研究所の
元研究所長で、天敵についての著書も多数ある、
いわば「害虫と天敵博士」なのでございます。

根本先生の目を通して畑を見ると、
なんてことない普通に生育している畑の風景が
全く違うものに見えてくるから、大変驚く。

畑の、小さな虫たちの世界。

人間があずかり知らぬところで
食ったり食われたりの攻防を繰り返しているのだった。

農薬をまいていない畑には、虫がたくさんいる。
人間の都合で「害虫」「益虫」に分類されているが、
どんな虫にも天敵がいて、ある虫が増えてくると
天敵もやってきてそれを食べるということが必ず起きる。

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なすの新葉にぎっしりついている葉ダニ。オレンジ色のぽつぽつは、
ほこりにしか見えないけど、実は全部ダニ。ちっこい手足が生えてます(泣)。
葉の葉緑素を吸い取り同化できなくするので、通常は農薬で退治します。



これを邪魔するのが農薬。

だから、畑作の場合はまかない方がいいのよね。
せっかくの土着天敵が活躍できなくなっちゃうから。

さて、さちこさんのなす畑にいたのは、まずダニであった。

乾燥するとどこからともなく飛んできて、繁殖する。
乾燥しない環境づくりをしてやると、ダニはあまり繁殖しない。

なすの株元にワラのマルチなどがおいてあると、
そこで天敵が繁殖したり、隠れたりできるのでダニが減る。

黒マルチで乾燥が助長されるとダニが増えて行くので、
通路にワラや除草した草などを置くといいらしい。

ダニはまず下葉につき、だんだん上に上がって来る。
下葉で樹液を吸いつくすと、新葉に展開する。
新葉がダニ天国になると、ほそ~い糸をはいて隣に移動する。

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カメムシの卵からちびカメムシが大量に孵化したところ。見つけ次第捕殺!です。
肉眼で見てもちゃんと見えなかったんだけど、画像にはバッチリ写ってました。
これが大きくなるとちびきゅうりの樹液を吸い、変形果・スの原因になるのでした。


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これがカメムシの卵、あちこちにけっこう産みつけられてます。
見つけたら全部つぶしましょう。何しろカメムシと言ったら難防除害虫。
被害がどんどん大きくなりますからね。



ダニは水分に弱いので、弱い水流で水をまいてやるといい。
ダニの幼虫は水に流されて全部下に落っこちる。
落っこちたダニは地面近くにいるさまざまな虫に食われてしまう。

うまく循環しているのだね。

姿は見えなかったが、ナスの葉にマメコガネの糞があった。
この糞を葉につけたままにしておくと、新しいマメコガネを呼ぶ。
糞を見つけたら取り除くことが大切と根本先生は言う。
糞のにおいに釣られてさらにマメコガネが飛来するからだ。

さちこさんの畑にはいなかったが、なすの葉を食害する
ニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ)は、
成虫で越冬し、まずじゃがいもの葉を食べにくるらしい。

じゃがいもが終わったらなすに移動して葉を食害する。
その生態を知っていれば、じゃがいもとなすの圃場を離すことで
なすへの食害を防ぐことができる。

また、ニジュウヤホシテントウはイヌホオズキの葉が大好きなので、
イヌホオズキが畑にあるとそれを食べに飛んでくる。
そこからなすに移動されて被害が大きくなる可能性がある。

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益虫の代表格「ナミテントウ」の幼虫。さなぎになるまでそこにいて
アブラムシをがっつり食べてくれます。見つけたら大切にしましょ~。

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これがナミテントウのさなぎ。つぶしてはいけません。
通常7月ごろにはナナホシテントウ・ナミテントウは暑くなるのでどこかにいなくなり、
ヒメテントウが登場するらしいです。ヒメテントウは2mmくらいの小さなテントウムシ。
甲虫だと思ってつぶしてはいけません。

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ナミテントウ成虫。よく見かけます。さちこさんの畑には
いろんな状態のテントウムシがいるのでした。畑で繁殖してるんでしょうねえ。



であれば、イヌホオズキはさっさと抜いてしまうのが賢明だ。

このようなほんの少しの知識で、虫害を防ぐことができる。
しかしその知識を持っている人はあまりいない。

天敵の研究者が畑に来てくれればいいけど、
そんな機会はめったにないし、本を読んでもあまり書いてない。

根本先生は以前、埼玉県の瀬山明さんの畑で
有機圃場における天敵の研究をしたことがあった。

その際、お隣の慣行栽培のなす農家にいろいろとアドバイスをし、
70回(成分散布)ほどまく農薬の数を10回くらいに減らしたらしい。

農家はとても喜んでた。経費と手間がかからず、肉体的にも楽で
収量が変わらなかったから。

発生している害虫に対する的確に指示による理想的な減農薬。
誰にでもできるわけじゃないけど、することは可能だ。

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「雑草」としか認識してなかったけどこれがイヌホオズキ。
けっこうあちこちで見かけるよね。ニジュウヤホシテントウの被害はよく聞くので
この草を取るだけで少しでも減らせるならと思ってしまいましたです。



こんな風に研究者と農家の間をとりもつ立場の人っていないのかな。
小さなことだけど、知ればとても大きな力になるのにな。

なんてことを、再度考えた天敵観察会でありました。


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「大豆の種まきから味噌作りまで」第二回・草取りご報告

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草取り前。通路が緑色。これ全部草ざんす。
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草取り後。通路の土が見えてきました。あああ。よくやったわ~って感じ。
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取った草は畑の外に持ち出します。また根が着いちゃうから、強いから。
積み上げてみると「やった感」がありますよ。



7月22日(日)、小雨のぱらつくなか、茨城県のさちこさんの畑で、
「大豆の種まきから味噌作りまで」第二回・草取りを行ったです。

熱中症予防の事前告知をしまくったわりに、
関東は涼しくて、朝なんか肌寒いほど。

暑さ対策でお願いしてたかき氷屋さんのかき氷が
ちょっと魅力半減だねと、参加者全員が口にするほど、
涼しくて、草取り日和だったのでした。

やはし主催の雨女二人の雨女ぢからが影響したのでしょうかしら。

さて、約1反(10a)分の草取りは意外と大変。
主な草はシロザ・ツユクサ・スベリヒユで、夏草と比較すると
これらの草はわりあいと抜きやすいもの。

引っ張れば抜けるからね。

しかし、来た道を振り返っては「ああ、まだこんだけ」、
これからの道をみては「まだ、あれだけ」と1反の一辺の長さを痛感。
草取りとは目の前だけをひたすら見つめる作業なので、
「すっごくやった!」感のわりには距離が進まないものなんす。

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いちごといちごミルク味しかないかき氷屋さんがやってきた!
自家製いちごジャムはおいしくて、氷はさらさらのやわやわで、幸せの味でした。

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キャンドルサービスに群がる人々のようにかき氷屋さんに群がるカメラマン。
やっぱし珍しいんだよね~。かく言うわたくしもかぶりつきましたが。

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しあわせそうにいちごミルクを食べるスイーツ男子の方々。
かき氷って、人を幸せにする力があるのかも。

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お昼ごはんのおかずはさちこさんの畑で採れた夏野菜のラタトゥイユ、いもまめサラダ、
水分補給にもろきゅう、お漬物など。スタッフの皆さま、お疲れ様でした。
参加者の皆さま、ありがとうございました!



脳裏をちらちらとよぎる「除草剤まいたら一発なんだろうなあ」、
「管理機で通路をごっそり中耕したら一発だよな」的な邪念は
いずれも、「除草作業」の大変さをしみじみ感じたあげくの妄想なのでした。

いやはや。大変です。草取り。

関東のこの規模でこの大変さなのですから、
一枚が1町(ha)てな畑ばっかの北海道の
大豆やら人参やらを手除草している人たちの大変さは
推して知るべし。かかる経費も推して知るべし。

アメリカ人が除草剤耐性大豆を作りたくなる気持ち、
反対だけど、なんとなくよーくわかった次第でございました。

次回の草取りは8月26日(日)。

19日の予定でしたが、変更させていただきました。
ご参加希望の方は、左記のメールフォームからどうぞ。

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かき氷を自分で削る最年少参加者みうちゃん。楽しかったかな。
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そしてこれがいちごミルクだ! 来月もかき氷屋さんには来てもらう予定です!


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「作ること」と「売ること」は両立できるか

紅秀峰だけど
ものすご~くおいしいくだものを作ってる人って強いなあと思う。
なぜならくだものは嗜好品であり、高くても買う人は必ずいるからだ。
野菜だとそうはいかない。単価の安い野菜の販売は、だから難しい。



某D社で産地担当になった2000年。

当時は「有機農産物」(有機JAS施行前だからね)なら売れる時代…
でもなく、すでに「安全な野菜」の勢いはなくなりつつあった。

某D社では一時的に作付減という事態に見舞われ、
産地訪問して作付を減らす交渉をした際によく言われたのがこれ。

「何を作ればいいんだい?」
「もうこれからは作れば売れるって時代じゃないんだね」
「消費者や流通が欲しいってものを作んないと」

「作れば売れる時代ではない」とその時農家の方々は認識したのだ。
そしてわたくしは「戦略無く、ただ作ってたのか!」と多少の驚きをもって
この言葉を聞いたのだった。

「マーケティングを行い売れ筋のものを考えてうまいこと売る」
当たり前だと思ってたことは農業の世界では当たり前ではなかった。
生きていくの必要な食べものだから? 嗜好品じゃないから?

グリーンマーク
野菜の中ではおいしいトマトを作る人が強いなあと思う。
高糖度トマトってすごくいい値段で売れるからね。熊本の「塩トマト」なんて
びっくりするぐらいの値段がついてるすでにブランド品。
ブランディングは農家がしたのか流通がしたのか不明だけど、とにかく上手。



この言葉は、10年経った今でも割合とよく聞く。
「何が売れるかわかんないから教えてほしい」

産地に行くと「あそこんちは今年ブロッコリーで儲かった」とか
「カリフラワーが良い値だったから御殿が建った」ってな
噂話をほんっとによく聞く。

自分で取引先を持ってる人たちは関係ないんだけど、
資材屋さんや種屋さんから情報が入って来るのであれこれ教えてくれる。
こういう噂話は主にJAや市場出荷の慣行農家のお話である。

で、何が起こるか。

噂になった作物を、翌年皆が作っちゃうのだ。
皆が作れば値段は下がるだろうになあと思うのだが、
どういうわけだか作っちゃうのだ。

この傾向を見るたびに、儲かるためには人がやってることを
そのままやってちゃだめなんだという商売の基本が見えてくる。

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おいしいものを作っててそれがちゃんと売れてれば加工なんてしなくていいんだけど、
ハネ出し品や出荷できないものを有効活用しようとすると、加工品が作りたい。
でも作り始めるとそっちに手を取られて本業がおろそかになる…ってのが問題。
そのために六次化政策がある。産業が生まれれば雇用が発生するからね。でもね。
農家ってうまいこと人を使えないのよね、職人だから。そこらへんが今後の課題かも。



でもね、でもね。JA・市場に出し続けているとたぶん、
販売戦略とか考える必要なくて、ただモノを粛々と作り出荷して
それなりの収入を得られるからいいのかな~とも思うの。
「アタシは作るから売って頂戴」ってことなのかもね。

ところが最近、状況は一変してきたようだ

販売も栽培もできる農家。こういう人々が必要とされているのだった。
その方向性が見えるのが、「農村漁村の6次産業化」という政策だ。

これは「雇用確保と所得向上のため」というお題目で、
けっこうな額の助成金が準備されていた(昨年度の話)。

農水省のHPを見てみると平成23年度の事業が全部書いてあったが、
知ってる農家が何軒か採択されてた。皆「やり手」といわれる人ばかり。

やっぱりなあ。以下ご参考まで。

農山漁村の6次産業化
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/pdf/6jika_suisin.pdf
六次産業化法に基づく認定事業計画一覧
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/nintei/pdf/110531-03-2.pdf

gazou 003
始めて噂を聞いたのは2004年ぐらいだったシャインマスカット。その後
いっせいにぶどう農家が作り始め、最近スーパーでよく見るようになってきた。
2007年くらいに出荷した人はたぶん儲かってる。今もまだ高値。もうじき落ちる。
これが新品種の運命なのね。新品種は「最初に作ることが肝心」なのだった。



限界集落、離農、高齢化、失業率の上昇、人口流出…
農村における問題は山積している。

農村の未利用資源(バイオマス・農産物等)を発見し、
それらを活用した産業を興し、雇用を発生させ人口の流出を止め、
販路を拡大して農村に利益を還元するしくみを作る。

ざっくり言うとこれが六次産業化。
縮めて「六次化」とも叫ばれている(地デジカじゃないよ)。

補助金もらってとりあえず加工場作っちゃえ!とか
六次化って何すんですか?的な人もまだたくさんいるけど、
これがうまく機能すれば、農村が活性化するんじゃない?
最近そう思うようになった。

「作物と向き合っていいものを作る」のはとても尊くて大切なこと。
わたくしはそういう農家が大好きだが、何軒かに一人は
「売ること」に特化した戦略を立てられるような人が必要なのだろうと思う。

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山形県のブランド米「つや姫」。確かにおいしいんだけど、やっぱり
魚沼コシヒカリには勝てない。一昨年デビューだからブランドとしても定着してない。
消費者の米の需要ってほんと読むのが難しいから、ブランドになるのが一番。
でもねえ、そこまでが難しい。だからブランディングでお金儲けができるわけ。



「地域全体が元気になる」ためには、
個別の農家が調子良くてもダメなのだから。

具体的にアイディアがあり実現したいという方には、
「中小企業ネットワーク強化事業」を利用するって手もある。
(WEB検索すると地域ごとにいろいろ出てきます)

某D社では9月に農業後継者の会議を行うらしい。

テーマは「販売」なんだって。いろんな事例が聞けると楽しいな。
中には面白いことを考えてる子が絶対にいるだろう。
そういう人たちが中心になり、農村が元気になるといい。


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産直提携という名の地域活性

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短角牛の子牛ちゃんと母牛。5月に山あげされ里に下りてくるのは10月。
その間に自然交配してて、1月ごろから子牛がうまれます。生まれた子牛は
翌年の5月から約半年間、放牧されて大きくなります。



わたくしが以前働いていた大地を守る会ではむかーし
「夏の産地交流ツアー」ってのをやってた。

夏休みに、全国各地の産地に出かけ、生産者のフィールドで、
食べもののことや農業のことを考える体験型ツアーで、
新入社員が入社2年目くらいにこのツアーを担当する。
(しない人もいる)

集客・情報提供・旅行代理店、産地とのやりとりなど
盛りだくさんの実務があり、思い通りにはなかなか行かず、
大変イライラする楽しい仕事であった。

わたくしもある年、徳之島の産地を訪問するツアーを担当した。
遠隔地。しかも高額であるため消費者が集まらないツアーなのに
未だかつてない参加者数を集客することができたのが自慢。

その時のやりとりはほんとうに勉強になった。

現在でもそのスキルは生きており、イベントをするにしても
農業体験ツアーをするにしても、段取り等その他もろもろ、
仕事の進め方が体に染みついているので、全く苦にならない。
今のわたくしがあるのは、本当に某D社のおかげなのであった。

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当然ですがツアー初日はBBQで短角牛食べ放題。赤身のお肉は
話題のダイエット物質カルニチンが多いらしく(草食ってるから)、
霜降りのお肉なんかと比較してかな~りヘルシーなのでございます。



さて、作り手のところに出かけると、本当にいろいろな発見をする。

パックされてる商品からは学べないことがたくさんある。
どんな人が作ってるのかわかると、ほんとに不思議だけど安心する。
ツアーでは生産者の家に泊めてもらうことが多かったが、
その後、農家と消費者が親戚みたいな付き合いをする例もあった。

食べる人が作り手のところに出かけるってのは、
とても重要なことなのだ。お互いにとって。

その先駆けになった産地交流ツアーは、現在でもまだ開催されている。

今年、30回目の「山形村べこツアー」が行われた。
山形村=現・岩手県久慈市山形町。市町村合併で名前は変わったが、
大地を守る会の社員や消費者の間では、いまだに「山形村」だ。

このツアーの成り立ちから追いかけてみると、
夏休み、年に一度開催されていた産地交流ツアーが、
地域活性につながったという物語になることに最近気付いた。

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口蹄疫の嵐が吹き荒れてた年、放牧場に行ってみたけど牛見られず。
どこか山の中に入ってたんでしょうねえ…。一般人は牛舎の近くにも寄れず、
口蹄疫ってほんとに恐ろしいのだなと実感したです。



現在あちこちで行われている地域活性の取り組み。
大地を守る会では30年も前からやってたのだった。

そもそも大地を守る会と山形村のお付き合いは
「短角牛」という肉牛から始まった。

夏の間放牧で育ち、自然交配で繁殖し、
サシ重視ではない牛肉本来のうまみを追求した
赤み主体の肉づくり、無理な肥育をしない短角牛は、
大地を守る会の理念にぴったりだった。

岩手県山形村は地名に「荷軽部(※)」なんて名前のある、
岩手県の山奥の村である。

中山間地の集落にありがちな、過疎になりつつある村だった。
※山道が平坦になり荷が軽くなるので皆が
「荷~軽いべ~」というのでそういう名前がついたとか。

この「短角牛」という商品を軸にした都会の人々との交流は、
30年前に始まった。

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わたくしが唯一口にできるしいたけは、山形村の原木しいたけなのでした。
菌床しいたけなんか食べられないし、味もないしで、しいたけはやっぱし原木。
これも短角牛がきっかけで取り扱いが始まった商品なのでした。



最初のツアーのとき、村の人々は都会から人を招くのに
都会の食べものを準備しようとした。その方が喜ばれると思ったのだ。

意に反して都市生活者たちは、地元のものをとても喜んだ。
美しい自然、きれいな水、牛がいる景色を喜んだ。

自分たちには当たり前の食べもの。当たり前の自然。
これに価値があることを、村の人たちは初めて知った。
過疎の村、自分たちの村に、価値があることを発見したのだった。

最初は「都会からたくさん人が来てるけど何してるんだ」と
やっかみの声もあったらしい。しかし皆が楽しそうにしてる。
なぜだろう? だんだん人が集まるようになった。

最初は短角牛だけだったお付き合いが、山菜やしいたけ、
工芸品、養殖ヤマメの商品化につながった。

そのうち「短角牛」は大地を守る会を通じて、
東京のレストランに出荷されるようにもなった。
赤身主体の肉、決して主流になりえないと思っていた肉が、
「牛肉らしい味、うまい肉」と、評価されるようになった。

こうして「山形村短角牛」はブランドになった。

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冷涼な気候を利用して、夏場にはほうれん草を出荷。誰が思いついたのかな。
こうして村の産業が少しずつ活性化して行きました。都会の消費力ってすごいからね。



30年の間に、大地を守る会とともにさまざまな取り組みを行い、
現在では100%国産の飼料で短角牛は育っている。

国産100%の飼料。

一般の市場相手ではたぶんできない。
消費者がそのことを理解し、多少高くても買い支えないと
リスクが高すぎてこんなことはできない。

消費者と生産者と流通がそろって初めて可能になる取り組みだ。
ただ肉を買って食べるだけではない、山形村を知ることで、
夢のようなことが可能になったのだ。

これこそが地域活性っていうんじゃないだろうかと思う。

都会から人が来ることで、村や村の人たちが元気になる。
自分たちの価値を再度発見する。
産直提携は地域活性にもつながるのだった。

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ホルスタインみたいに友好的じゃない短角牛。でもとっても元気。
オス牛にはハーレム状態なんだが、交配が終わるとものすごく痩せてて、
オスって大変なのよね、と生産者が言ってました。大変だよね(遠い目)。



スーパーの陳列棚からは決して見えてこない生産地。
自らが訪問し、見て、話して、いろいろなことを知って、
それから食べることがとても大事だと思う。

そのことだけで人生が豊かになると思うんだけど。
食べるって、そういうことじゃない?


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暑いし、もうじき夏だから、スイカの話

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某D社のスイカ農家直伝のスイカの正しい切り方。
まんべんなく真ん中の糖度の高い部分が皆に行きわたる、すんばらしいカット方法。
ぜひお試しくださいませ。小さくカットすれば食べやすいので婦女子にも人気です。



わたくし、スイカが大好き。
小玉スイカは食べた気がしないしへにょっとしてるし
味が薄いしシャリ感がないしで、大玉スイカが好き。

小さいころは台所のすみっこにころんと転がってたスイカを
母がいつ切ってくれるのかわくわくして待っていた。
そう言えば、そんなに冷えてなかった気がする昔のスイカ。
冷蔵庫に入れてなかったのかなあ。

ひょっとしたら、ぬる~いスイカを食べてたのかもしれない。
でもぬる~いスイカでも全然平気だった。
庭に向かってぷぷぷぷと種を吐き出し、手と口をべとべとにして
終わりがないように思えた夏休み、ほんとにスイカをよく食べた。

楽しかったなあ。

平成のこどもたちは、冷房の利いた室内で
冷蔵庫から出したばっかの冷たいスイカをカットしてもらって、
種をちまちまとほじりだしてスプーンで食べてるのかしらん。

千葉畑・畑のスイカ大玉
スイカの表面を触ってみると、でこぼこしてるの知ってます?
しましまの部分が凹んでて、緑の部分が盛り上がってるのが
ちゃんと熟してる証拠らしいっす。あれ? えーと。反対だったかな??



いやはや。人生の楽しみがひとつ失われているわよね。

さて昨今、大玉スイカが売れなくなってるのは周知の事実、
(っていうか知ってるのは流通関係者だけ?)
当然だが、冷蔵庫に丸ごと入る小玉スイカが人気だ。

甘いしそれなりにおいしいけど、
味も食感も大玉にはかなわないと思うわたくし。

なにしろわたくし、「大栄スイカ」というブランドスイカを擁する
鳥取産(っていうか鳥取生まれ)である。
スイカにはけっこうあれこれ言いたいのである。

シャリ感、甘み、充実感。全て大玉の方が優っているが、
冷蔵庫に丸ごと入らないので、最近とんと買わなくなった。
大栄スイカなんかは大変バカでかいので、
全部食べきるのに2週間ぐらいかかったりする。

2週間、冷蔵庫がスイカで満杯。

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ご近所のスーパー巡りをしてみましたが、カットスイカしか発見できず。
ラップピッチリ。エッジバッチリ。まさにカット用のスイカっぽいスイカでした。
ちなみに山形県のスイカ、露地トンネル栽培で農薬は18~22成分でした。
病気に弱いから、スイカの防除回数けっこう多いんす。うひ~って農薬も使います。



リスのように食材を備蓄する性質があるわたくしとしては、
スイカに場所を取られると大変である。
ということで、どうしても食べたいときはカットスイカを買う。

ほとんどの主婦の人々も同じことを考えているらしく、
都内のスーパーではどこでもカットスイカが売っている。

さて、ラップでぴっちりまかれて、エッジが立ってるカットスイカは、
切り口で手が切れそうなほどバキッととがっているが、
これはそういう品種だからということはあまり知られていない。

むか~しながらのおいしい品種は、熟度が上がると
まんなかの部分がへにょへにょになったりぼそっと落っこちたりする。
このへにょへにょ、丸ごとなら気にならないが、
カットされた場合は売り物にならない。なんか古そうだからね。

なので、昨今のスイカは繊維の多い、
どうかするとジャリッとするようなスイカが多いのだった。

この品種はいつカットしてもバキッとエッジが立つので、
スーパーのバックヤードでひと月ほど転がってても全然平気だ。

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なんと鳥取産のスイカ発見。しかも真ん中がぼそっと割れてる。
これはおいしそうだなあ。さすが成城石井。おいしいもん売ってますね。だがしかし。
鳥取のスイカ、トンネル栽培で育苗時合わせて農薬32成分。…買うのやめよかな。



でもね。スイカ独特の頼りないシャリ感を感じることができないの。

「最近のスイカは味よりも見た目だね」と某D社と取引のあった
何人かのスイカ農家が言ってたが、たしかにそうなのだった。
消費者と流通のニーズが、最終的には品種を決定する。
現在ではカットに向いてるスイカが主流である。

そういうことは消費者には知る由もない。

でも「昔のスイカっておいしかったよね」と思ってる人は多い。
ノスタルジーでもなんでもなく、それはたぶん真実である。

さて、スイカが実は貯蔵商品であることも、案外知られていない。

スイカのブランド産地は西から熊本、鳥取、長野、山形と移動する。
(どこかが抜けてる気がするけど・・・・思い出せない)

その間、相場が上がったり下がったりする。だから、
スイカの相場を作ることができるブランド産地では、
貯蔵して相場のコントロールをしているらしい。

と、ブランド産地じゃないスイカ農家が悔しそうに言っていた。

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スイカ販売の最終形。カットスイカ。
これを買う位なら、フツーのカットスイカの方が味も鮮度もお勧めです。



古いスイカを見分ける方法はひとつだけしかない。
つるが枯れているかどうか。でもスーパーに行ってみても、
このつるがついたまま売ってるスイカはほとんどない。

ぽろんと取れちゃうからね。取って売ってるの。
取っちゃうと鮮度なんかわからないのよね。

なんてことがわかると、うまいスイカを入手するには
けっこう努力が必要なんじゃないかって気がするのだった。

ブランド産地の産直商品を買うか(その場合は鳥取産だ)、
おいしいスイカを作ってる農家に送ってもらうか。
たかがスイカ。されどスイカである。
しかも2週間、冷蔵庫が満杯になるのだ。

今年はどうするか、思い悩むわたくしであった。


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「自然農法」という言葉についての考察

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自然農法の実験圃場で粛々と大きくなってる枝豆(大豆かも)。
大豆や菜っ葉はある程度できるだろうなと思うけど果菜類はまだ難しいみたい。
ここは以前、草がぼうぼうに茂ってたが、炭素分だけでは作物はできないのだね。



ほんたべ農園(というか区民農園)のご近所に
自然農法の実験農場がある。一見草っ原のようだが、
よーく見るとトマトやきゅうりがこぢんまりと生育している。

愛しすぎる女としては、作物の自主性を尊重し、
環境との調和を目指すこの農法は自分に向いてないと考えており、
距離を置いておきたい感じだったのだが、
考えなきゃならなくなったので考えてみた。

「自然農法」とは福岡正信さんが提唱した思想であり、
その系譜を継ぐ川口由一さんという方がいらっしゃる。

上記の実験農場は、川口さんの圃場で研修をした人が
作業担当をされているのだった。

へなちょこなほんたべ農園と比べても、かな~りな状態のその畑で
「ずいぶんよくなりました。これからですよ」と笑う彼と話し、
思想というのはすごいなあとつくづく思った。

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埼玉県上里町で自然農法を営む須賀さんの畑では堆肥を使っている。
動物性のものは含まれない、河原の草を積み上げたもの。なので草の形が残ってる。
須賀さんは有機JAS認証を取得しているけど、自然農法なのだった。



自然農法は、基本的に「不耕起」「無肥料」「無農薬」だ。

福岡さん、川口さんの自然農法は本を読んでいただくとして、
岡田茂吉氏も自然農法の本を出しているので、それを見るとして、
その理念を継承して栽培を行っているMOAの自然農法には
あれこれ決まりごとが定められている。

MOAの基準は基本的には無農薬で、有機質肥料を使う。
福岡さんの言う厳密な自然農法とは少し違っている。
これ有機農業って言っちゃダメなの?とも思うのだが、
あくまで「自然農法」なのだ。思想だから。

最近では木村正則さんも「自然農法」の系譜に組み込まれている(らしい)。

木村さんの栽培は本とNHKの番組で推測してみたのだが、
チッソ固定に大豆の根粒菌を利用している。さらに葉面散布も行う。
それは無肥料じゃない気がするが「自然農法」なのだった。

「自然農法」の基本は「思想」だ。
思想以外にはっきりとした決まりごとはない。
思想を継承していれば自然農法なのであろうと考える。

gsazou 074
須賀さんの水菜はハウスのなかで栽培されてた。経済性を考えた場合、
当然だけど露地だけではけっこう厳しい。自然なのにハウス? このへんが
わかりにくさの理由なのかもしれないなあ。



バチッとわかりやすく知りたい自分としては、
あいまいさの残る「自然農法」という表現を見ると
頭が混乱してしまう。そして必ず疑問に思う。

「この人は何をもって自然農法って言っているのだろう?」
福岡さんとMOAのことは理解できる。明文化されてるから。

自然農法ならまだしも、都内のレストランのメニューに、
「当店の野菜は自然栽培の野菜です」と書いてあるのは
何の事だかちっともわからない。

スタッフに聞いたってわかりゃしない。
「無農薬なんです」とか言われるだけだ。

「んで、肥料は? 購入ですか? 堆肥ですか?
もしかして無肥料? 無肥料って何をもって無肥料って言ってるの?」
とか根掘り葉掘り聞きたくなるわたくし。

この気持ち、「有機農産物」という表現に縛りを加えたくなった
農水省と同じなのかもなあとしばらく前からよく考える。

gazou 068
須賀さんの畑は無施肥でもホウレン草ができる。分析してもチッソは残ってない。
炭素分だけの供給で微生物がたくさんいるからなんだろうと推測するけど、
新しい畑がこの状態になるには10年はかかるから、新規就農で自然農は難しい。



確かにこの言葉はとてもいいイメージを与えることができる便利な言葉だ。
わたくしですら、何かの販促のときにはうっかり使いたくなってしまう。
法的な縛りがないから使うのは自由だ。
だから気持ちは理解できるけど、いつかは「優良誤認」と言われるよね。

これらの言葉には決まりごとがないため
現在のところ、使ったもん勝ちである。

さて、わたくしのいた某D社には「こだわり農産物」という基準があり、
取扱商品について事細かくあれこれと決まりごとがある。

さらにその通りに栽培してるかどうか、ちまちまと細かく確認し、
さらにさらに客観性をもたせるため第三者機関の監査を受けている。

「基準通りに栽培している」と胸を張って言えるしくみが作ってある。
客観性が常に担保されているしくみだ。

決まりごとには客観性が必要。あたりまえのことだ。

gazou 049
有機JAS認証は客観性の最たるものだ。畑だけでなく、伝票・日記・作業場、
有機の圃場でできたものを一般栽培ときちんと分けるしくみができてるかどうか
なんてことまで検査される。ここまでしてやっと「お墨付き」がもらえるのだ。
いいか悪いかは別にして、しくみとしては正しいと思うわたくし。



そう信じている自分にとって、言ったもん勝ちの表現を使われると、
有機リン系農薬を一回使って「ほとんど無農薬」って言われるのと同じで
困惑してしまう。それだけでなんだか疑ってしまう。性格悪いから。

有機農産物が法律になり「無農薬」表示に農水の指導が入る昨今、
わかりやすい、そして優位性のある言葉が見つからない。

だからあいまいで法的な縛りがなく、なんとなくいい感じがする
「自然栽培」「自然農法」を使う人(流通)が増えているのかもしれない。

優良誤認への第一歩を踏み出した感のあるこれらの言葉。
本当に取り組んでいる人と、そうでない人を見分けることができない。

それは全体的にはマイナスみたいな気がするんだけど、どうでしょう。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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