腐る野菜、腐らない野菜

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ブロッコリー畑見てたりすると、目で見るよりも早く
鼻が軟腐病をかぎつけるんす。一度覚えると二度と忘れない。
それが軟腐病のニオイ。



先日、某D社で注文し忘れちゃったので、
とある直売所でキャベツを1個買って帰った。

この時期、玄関先に置いておけば
キャベツは常温でも3~4日は平気だ。
白菜なんか外側から使えば2週間くらいは平気だ。

そのへんに置いといても野菜は生きてるから、
腐ったり、溶けたりはあんまりしないもんだと思ってた。
なので、直売所のキャベツも少しの間置いといたのよね。

そしたらねえ。3日目だったかな。

某D社時代、倉庫でよくかいだニオイが玄関から漂ってきたのよね。
アブラナ科が溶けていくニオイ。軟腐病のニオイ。

うわあって思ってキャベツを見たけど外側は全然平気。
溶けてるようには全く見えない。でもこれ、軟腐のニオイだよな。
そして、一枚めくって驚いた。「あああああ、溶けたあ」

中身は半分くらいしか使えなかった。
キャベツは中から溶けてたのだった。
あああ、大失敗。

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カット白菜売ってるけど、どうしてあれ買っちゃうのかなあ。
一個丸ごと買って外側の葉から使って行けば、2週間は楽勝で持つのに。
ってことで、白菜、冬の間は必ず2週間に一度ペースで買ってます。



某D社のキャベツは1週間くらい転がしといても
一度も溶けたことがなかったから、安心してた。
だってさあ、冬だし。とか思ってた自分が甘かった。
一般の野菜って違うんだあ。

こういうことを経験すると、腐る野菜って何だろうと思う。

一般的にはチッソ分が多く、肥料を吸って急激に成長したものが
病気にかかりやすいと言われる。

でも、慣行栽培では病気は農薬で抑えるから平気だ。
症状が出てなけれは、ぴかぴかできれいな野菜だ。

それにだいたい普通の人は使う分量だけ購入するから、
カットキャベツを買って、冷蔵庫に保存し、
その日と翌日、少なくとも翌々日位には使い切る。

1週間置いて腐ってたら「ああ、もったいないことした」って後悔して、
カット野菜を食べきれなかった自分の責任だとか思っちゃう。

たぶん、一個丸ごと玄関先にほったらかしとく人なんて
いないんだろうなあ。わたくしが悪うございましたのである。

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ブロッコリーの葉っぱに出てる黒腐病(だったかな?)
土壌由来じゃなくて、この病気のように空気や雨で感染するものもあるから、
土壌菌では対抗できない。その場合はやっぱりチッソ量が問題なわけで。



さて、無肥料栽培の野菜が腐らないでしなびていくとよく言われるが、
無肥料じゃなくても腐らないでしなびていく野菜は多い。
施肥管理がきちんとしててチッソ過多でなければ、
野菜はそんなに腐らない、はずである。

たとえばほんたべ農園でできたトマトやナスなどは
野菜室で10日ほど置いておいても腐らない。
ちょびっとしわしわになるけど平気だ。

小松菜もほうれん草も、しんなりするけど溶けはしない。
ほんたべ農園はだいたいにおいてチッソが少ないからである。
さらに微生物とケイ酸がじゅうぶんに入ってるってこともある。

その代わり収量は良くない。ある意味致命的である。

チッソは収量を上げるための肥料だから、
少なめにしちゃうと量が取れない。だから皆多めに入れちゃうの。
「余分なチッソ分」は農家の「余分な欲」とも言えるかもしれない。

その「欲」が虫を呼び、病気を呼んで、
結果として農薬に頼ることになり、お家に連れて帰ったら
溶けちゃったりカビだらけになったりする野菜ができてしまう。

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こういう状態なのはチッソが多いんす。
昔は有機だからしょうがないとか言ってたけど、
今じゃそれは通用しなくなっちゃいました。



ほんとはね。土壌分析して必要なものを足して、
不必要なものは入れない施肥設計をしてね、
微生物を増やして硝酸態窒素を少なくすれば、
おいしくて農薬もいらない野菜ができるんだと思うわけ。

つまり土の物理性・生物性・化学性を整えるってことだ。

どうしてみんな、土壌分析しないのかなあ。
軟腐にかかったキャベツの溶けた部分をむしりながら
悲しくなってしまったわたくし。

ってことで全然関係ないけど今年も区民農園が当たりました。
ほんたべ農園Ver.2でございます。一から土づくりです。

再び土壌分析して微生物資材入れて、三相分布測って、
粛々と西出式微生物農法で野菜を作る所存です。

今回は収量をあげるようにがんばるぞ!


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日本一手間のかかる味噌を仕込んだ日

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14人分の大豆14kgをゆでるとこんな分量になるですよ。
初めて見たぞ。こんなにたくさんの大豆。写真提供・廣田修氏



2月17日(日)、石岡市で開催している
「大豆の種まきから味噌づくりまで」の最終回・味噌を作る、が、
粛々と楽しく終了いたしました。

6月の第3日曜に種をまいてから9カ月。
2kg余りの大豆が95kgに増えたです。
95kgの大豆のうち、14kgを皆の味噌に使ったです。
その大豆は、水浸して茹でてみたら1kgが2.3kgに増えたです。

これに麹と塩をまぜて、味噌がめに仕込んで約半年。
10月ごろには究極の手前味噌が完成するです。

イベントが無事終了し、くたびれが取れた昨日まで
全く思いつかなかったけど、よーく考えてみたらすごいことだって
しみじみしているわたくし。

だってさ。タネまくとこから考えたら、
完成まで1年と4カ月かかるわけ。
気の長い話というか、すごい手間暇。

たとえばわたくし、かれこれ20年ほど手前味噌作ってるけど、
大豆は人さまの作った大豆。麹も塩も自分じゃ作れない。
毎年2月の土曜に、大豆を水浸して翌日茹でてつぶして仕込んで、
翌年のだいたい3月くらいに味噌開きして食べ始めるわけ。

それでもたいそうな手間と暇だって思ってた。

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石岡市の2月16日土曜日は快晴。宿泊場所の空は
町の明かりもなく周囲はまっくら。だから星空がとても美しく見えました。
ってことは翌日放射冷却現象で寒いってわけで。わたくし相当飲んだくれましたが、
明け方寒さでスカッと目覚めたです。写真提供・廣田修氏

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味噌作り始める時間は10時。ってことで6時おきで大豆ゆで開始。
石岡市の予報は、シーズンで一番の寒さとかいう極寒状態。
晴れ女、マダム容子のおかげでしょう。

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あさごはんは幻の酒米「亀の尾」と石岡産平飼卵の卵かけごはん。
「亀の尾」ってもち米みたいな香りがして、もっちりとしたおいしいお米でした。
夏子の酒にも出てくるお米だよね。

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霜柱を生まれて初めてみた!という人続出。
10時過ぎでも日陰にはばっちり立ったままでしたよ~。



だって費用対効果考えると、某D社で買う方が割安なのだ。
でも作っちゃうの。それは単においしいから。そして、
自分が食べるものを自分で作るのが楽しいからなのだ。

でもその手前味噌と、今回仕込んだ手前味噌はちょっと違う。
自分たちで作った大豆で仕込んだ味噌だ。
しかも毎月茨城県まで通って作った大豆だ。
究極の手作り。日本一手間暇かかってる手前味噌だ。

「大豆の種まいて草取って収穫して選別して味噌作った」
この9カ月を文章にすると短い、でも実際はそうじゃない。

できあがった一粒一粒の大豆に、クソ暑いなかの草取りや、
熱中症で倒れそうになりながら食べたかき氷、
鈴木シェフが作ってくれたお料理、シャモのおじさん、羊、
食べ始めたら止まらなくなった枝豆、根本先生と虫、
じみーな脱穀、選別、たき火、たき火マスター、鹿肉、
まっくろになった焼き芋、焼きりんご、マダム容子のおひるごはん、
そんな思い出がたくさんのっかってる。

最初は知らない人同士だったはずなのに、
最後には妙に仲良くなって、
facebookでお友だちになっちゃったりして
ゆるーくつながった仲間の思い出ものっかってる。

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ゆで上がった麹と大豆を混ぜるみんなの手。絵的に面白いよね。
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その大豆を潰して、味噌玉にするのにまとめてる皆の手。
絵的に・・・・(以下同文)。

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味噌玉作ったら消毒した容器にベシッと投げつけて空気を抜くです。
ストレス発散に最適。でも力入れ過ぎて容器から外れるとストレスたまります。
写真提供・廣田修氏

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「この大豆、自分たちがタネまいたんだよなあ」とか、
味噌作ってる間はチラとも思わなかったけど、あとでじわじわ来たですよ。
皆さん、どうだったのかしら? 写真提供・廣田修氏

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容器に入れた味噌の素。これが嫌気性発酵して、
約半年後にはふくいくとした香りを放つ味噌になります。発酵の不思議。
一粒の大豆が何十個にもなる生命の不思議。そんなことを考えちゃうね。



すんごく愛しい9カ月の思い出。それは物語とも言う。
だからただの大豆じゃないんだよね。

その物語付きの大豆が、21センチ径の容器の中で
埼玉や茨城、神奈川、東京、それぞれの参加者の家のどこかで
粛々と醸されて、10月には味噌になる。

来月からはもう、第3日曜日に石岡にでかけることはなく、
東京水入れてったポリタンクや毎回忘れた救急箱、
電卓と‎名簿入れてた集金用のクッキー缶見たりすると
ちょっとさみしいんだろうなあと思ったりするわけです。

それにしても、楽しい体験だったなあ。

参加してくださった皆さま、本当に、本当にありがとうございました。
皆さまのおかげで、無事イベントを終了することができたです。

おいしいお味噌ができあがったら、また
石岡に集まりましょう。そしてまた、おいしいものを食べましょう。

またお会いするその日まで、お元気で。


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誰もがしあわせになれる「おいしい」というものさし

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むかーしこのイラスト書きながら思ったこと。
「桃太郎、桃のなかにどうやって入ってたんだろう?
タネのところに丸くなってたんかなあ」 絵を描いて気づくことって多いよね。



自然食品店の店長に聞いた話。

最近ね、レジって打ちこまないでバーコード読み取りでしょ?
あるお客さんがレジに持ってきた商品を
何気にバーコード読み取り機にかけたらね、そのお客さんが
「ぎゃああーーー何するんですかあ! わたしを殺す気ですか!」って
叫んだんだって。

驚いて目がまんまるくなる店長。取り乱すお客様。

よく聞いてみたら、バーコード-リーダーの赤外線が
健康に良くないと思ってらっしゃるお客様だったんだよね。だから、
「大変申し訳ありませんでした」って平謝りして、
商品を交換し、レジは手打ちにしましたとさ。

さて、このお話の教訓はなんでしょう。

人はそれぞれに「安全のものさし」があって、
それを評価することは誰にもできないけど、ときどきめんどくさい。
そんな感じかしら。

わたくしは、赤外線が食物にどのような影響を与えるか知らない。

知らないと言えば、食品添加物食べたらどうなるかとか、
内部被ばくが長期的にどんな影響を及ぼすかとか
そういうのも全然分からない。

すんごく気をつけてても、全く違う要因で、
体内にガン細胞は生まれるし、どこかで細胞が修復してくれないまま
増殖し始めてる可能性もある。何があってもおかしくない。
傷ついた細胞が修復できないのはたぶんに「運」も関係ある。

年を取れば肉体は老化する。

生きものならばしょうがない。いつまでも若々しくいたいと思っても、
10歳くらい若く見える、ってな感じが精いっぱいだろうし、
あまりにも若く見えるのも不気味だ。

だからあるがままでいいんだろうなあと思っている。
つまり「じねん」ですね。自分的自然農法である。違うか。

そうは言っても、食べものの安全性を担保するためにはものさしが必要だ。
「絶対に安全」はあり得ないが、
「一定程度の安全」のものさしは世の中にたくさんある。

国は法律で定めてるし、一部の流通も独自の基準を持ってたりする。

でも、このものさしだけで食べものをはかると、
大切なものが見えなくなることがある。

食べものを食べるってことは、本来は幸せな体験だ。
おいしいものを食べた時、自分のなかに喜びがあふれる。
命をいただいているのだと実感する。
めったに感じない感謝の気持ちがわき起こったりする。

でも数値などのきまりごとではかってしまうと、
おいしさがどこかに吹っ飛ぶことがある。
有機JAS取ってるけどおいしくない野菜や、
放射能の基準値以内でおいしいのに売れない野菜。
これらがいい例だ。

どちらも、とても不幸なことだ。
食べる人も作ってる人もしあわせになれない。

もちろん基準値がナンセンスだとかいう話ではない。

安全を担保するための基準は必要だが、その数値が独り歩きし、
この遵守が手段ではなく目的になってしまうと、こういう不幸が起こる。

わたくしは今、誰もがにっこり笑える
とてもわかりやすいものさしが「おいしさ」だと考えている。
おいしさには説得力があり、人を幸せにする力がある。

おいしいものを作る人は、そもそもがおいしいものが大好きで、
食べものはおいしくなきゃいけないと思ってる人が多い。
人さまが食べるものだから、きちんと作る責任があると言う人が多い。

そういう食べものを作るためには、技術だけでなく思想も必要だ。

味を良くするための手間を手間と思わず、
食べものの役割がちゃんとわかっていれば、
食べただけでしあわせになれるものが作れるだろう。

やっぱり「おいしいもの」が「ほんものの食べもの」だと思うわけ。
あいまいなものさしだけど大事なことじゃない?

最近ほんとにそう思ったりしておるのです。


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すっぱいりんごを愛してた原志朗さんのこと

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原志朗さん。享年50歳。ハーレーとロックとお酒と本が好きな人でした。
カメラ目線の笑顔を撮られるのが苦手で、撮影にはいつも苦労しました。
会えて楽しかったよ。ありがとう。


初めて原志朗さんに会ったのは、わたしが某D社に入社して2年目、
某D社恒例の、長野への夏の産地交流ツアーだった。
志朗さんのことははっきりとは覚えていない。
たぶん飲んだくれて二日酔いだったからだと思う。

次に会ったのは、産地担当になった2000年の秋だった。

落葉果樹という恐れ多い品目担当になり、
長野県でチョー有名なりんご界の巨匠、故・原今朝生さんちに
担当引き継ぎで訪問したら、同僚が道を間違えまくり、
6時の約束が8時半に到着した。ああああ、どうしよう。

「良く来たなあ」とにこやかに迎えてくれた今朝生さん。
次男の俊朗くんがいたかどうかは覚えていない。

長男の志朗さんはこたつの向こうで怖い顔をしてわたしを見て、
「んじゃ、仕事の話をしなさい」と言った。
「ひい~。迷ったのはアタシじゃないのにい~」と同僚を恨んだ。
作付の話をしたんだろうが、ほとんど記憶にない。

後で、ずいぶん前から顔は知ってたらしくて、
短期間に痩せたり太ったりしてるから、
会うたびに別人みたいだって思ってたって聞いた。

志朗さんとは同学年で、ロックが好きで酒が好きで、
読む本の傾向も似てたから、すぐに仲良くなった。
そのうち「しろちゃん」「ねえさん」と呼び合うようになった。

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紅玉は酸っぱくて、どうかするとパイなどの加工用と言われるけど、
志朗さんちの紅玉は、そのまま食べても味わい深くておいしくて、
パイにしようとつまみ食いしてたら全部そのまま食べちゃったとお手紙もらうほど。
悩みに悩んで一番いい状態で採ってたから。普通はそんなことしないのね。



さて、原家の二人、志朗さんと俊朗くんが作るりんごはおいしい。
おいしいから某D社では特別な売り方をしていた。
原さんのりんごだけを頒布する「りんご七会」という企画だ。

10月上旬にスタートする秋映から、千秋、紅玉、王林、新世界、
その他の中生種のりんご、ふじと7回つながるこの頒布会は人気で、
わたしが担当している間に、某D社の秋のメイン商品になった。

故・原今朝生さんはりんご界ではチョー有名人で、
今日本で一番作られてるふじの枝変わり品種を発見した人だ。
畑にはいろんな品種が植わっていた。
一度も出荷されずに切っちゃった品種もあった。

志朗さんが愛したりんごも、そのなかのひとつだ。

志朗さんの畑には「紅玉」と、
紅玉以上にすっぱいそのりんご、「グラニースミス」が植わっていた。
これは今朝生さんが畑に少しだけ持っていて、
「売れねえから切っちまおう」と言ってた品種だった。

志朗さんはこのすっぱい緑色のりんごを気に入って、
自分の畑にたくさん接いだ。

某D社の消費者も、このすっぱいりんごを愛した。
他の流通では入手することができない、すっぱいりんごだ。
どうしてこれが売れるんだ。今朝生さんはいつも不思議そうだった。

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「グラニースミスってさ、ビートルズのアップルレコードのレコードについてる
りんごなんだよ~」って教えてくれたのも志朗さんだった。
緑色だから葉摘みも玉回しも必要ない、省力化できるりんごだ。
確かにこれがたくさん作られ始めたら、りんごの世界は変わるだろうな。



今朝生さんが亡くなる一年前、
今朝生さんと2人で志朗さんの畑に行った。
志朗さんは畑にいなくて、2人でグラニースミスを見てたら、
今朝生さんがつぶやいた。

「こんなりんごが売れるなんて、俺は思いもしなかったなあ。
作る志朗もへそ曲がりだけど、D社の会員もへそ曲がりだなあ。
へそ曲がり同士で育てたりんごだわ。
このりんごがりんごの世界の常識を変えるようならおもしれえなあ」

この言葉を志朗さんが聞いたら喜ぶのにな。
そのとき思ったけど、志朗さんには言わなかった気がする。

言えばよかった。

今朝生さんの言うとおり、志朗さんはへそ曲がりで、こだわりが強くて、
りんごの出荷時期には毎日電話がかかってきた。

「なからいいじゃないかやあ」
今朝生さんや弟の俊朗くんはいつもそう言ったが、
志朗さんは「いや、まだちょっと渋い」「味がのってない」と
最後の最後まで出荷のタイミングに悩んでた。

りんごの収穫も人にまかせないで自分でやってたって聞いたのは、
こないだのことだ。たくさんあるりんごをほとんど自分で採ってたらしい。
どれだけの作業だったのか想像もつかない。
細くて鋼のような身体だった。働き者の身体だった。

行くたびに飲んだくれて、ある時ウイスキーを一本あけたこともあった。
翌日わたしは夕方まで起き上がれなかったが、
志朗さんはふらふらになりながら早朝に農薬をまきに行った。

泊りに行くたびに仕事の邪魔して迷惑かけてたんじゃないかと、
今になって思う。でもいつも連れ合いの明子さんと二人、
にこにこ笑って迎えてくれた。

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息子と同じ名前の「こうたろう」。「親バカじゃないからね」って言ってたなあ。
ほんのり不思議な芳香のするおいしいりんごになった。志朗さんの畑には
アキタゴールドとか新世界とか、マイナーな品種が植わってた。
へそ曲がりの面目躍如ってところかな。



ずっとずっと長野に行けば志朗さんがいるもんだと思ってた。

志朗さんがもう長くないんだってって聞いたのは、
10月のことだった。え、なにそれ。どういうこと?

そう言えば、4月に電話がかかって来て、
「りんごの受粉どうする?」
「花粉症になっちゃったからムリ~」って話したきり、
貧血やらなんやらで一度も連絡を取ってなかった。
いつも夏には電話してるのに。なんでしなかったのか。

最後に会っといた方がいいよ。そう言われて長野に行った。

何の話をしたらいいのかな。そうだ。楽しい話をしよう。だから、
楽しかった話をした。産地担当になって、出会って12年経ってた。
一年に3~4回は行ってたから、思い出は山のようにある。

会えてよかった。楽しかったよって言ったっけ?
言わなかったかもしれない。言えばよかった。
「ねえさん、良くなったんだよ」
そう言って笑う志朗さんの夢を何度も見た。
夢の中の志朗さんは少し太っててとても幸せそうだった。

でも、1月に志朗さんは逝ってしまった。

お通夜と告別式に行ったけど、なんだかよくわからなかった。
家に行けば、いつもと変わらない志朗さんがいて、
「ねえさん、ビール飲む?」って笑いながら言ってくれる気がした。

ワイ性台が主流のりんごの樹を、きょう木にするんだって、
5年くらい前から剪定方法を変えてた。
「大きな樹の方が、りんごがうれしそうだしさあ、気持ちいいじゃん?」

風が通り抜けてさ、りんごの葉っぱがさらさら音たててさ、
りんごの樹の下でお茶でもすると気持ちいいよね。
しろちゃんが作りたかった大きな樹のりんご畑で、
またBBQしたかったよ。

でもまた、どこかで会えるよね。

告別式で涙が出なかったのは、そんな気がしたからだよ。
いつかまたね。りんごの樹の下で会いましょう。


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有機野菜・有機農業は危険だという人たち

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海外から輸入した穀物。牛豚鶏が食べて肉や牛乳や卵になるのはいいけど
当然排泄物もたまって行くわけで。それは産業廃棄物だから畜産農家は困るわけで。
んで農業への有効活用をしてるんだけど、それが危険って言われるわけで。
どうしたらいいのよう。



先日農薬メーカーの顧問の科学者のおじさまと話してたら、
「有機ってのは本当は危険なのですよ」とおっしゃった。

おおっ? なんだなんだ! 何が危険なのかしら?
「硝酸態窒素」かな? 「寄生虫」かな?
わくわくしておじさまの次の言葉を待ったわたくし。

おじさまは「O157にね、感染する可能性があるからですよ」と
大変目新しいことをおっしゃった。おおお、さすが科学者だ。

O157とは腸管出血性大腸菌の代表的な細菌であり、
家畜などの糞便中にときどき見られ、糞便や糞便で汚染された水、
食物を介して、人の口に入りO157感染症を起こす、
場合によっては死んでしまうかなり怖い大腸菌である。

牛フン堆肥などを使った有機農業は、
畑にO157の菌をばらまいているようなものであり、
それがついた野菜を食べると感染して恐ろしいことになると
おじさまは言うのだった。

たしかに牛フン堆肥を使ってる農家はいるけど、
有機農家が全員必ず牛フン堆肥を使うわけではない。
それにさあ、よく洗えば取れるでしょ?
野菜洗わずに食べる人いないよね。もしかしているのかな。

そのへん突っ込もうと思ったら突っ込めたのだが、
そのようなことは言わず、にこにこと相づちを打ったわたくし。

大人になったものよのう。いやはや。

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ほんたべ農園の菜っ葉はうす~い緑色。チッソが不足しております。
でもアブラナ科ってチッソが少なくてもちゃんと生育してくれるから好き。
そもそもアブラナ科ににそんなにチッソたくさんいらないんだよねえ。



さてこのような有機野菜が危険だという話が
時折週刊誌などに載ることがある。
一番新しい危険ネタが、どうもこのO157なのだった。
以前は硝酸態窒素だった。

硝酸態窒素が危険だ!という根拠は、有機質肥料(主に鶏糞)を
大量に畑に投入した有機野菜は、硝酸態窒素の残留値が高いから、
人間にも危険だし、地下水を汚染して環境にも良くないというものであった。

確かに鶏糞堆肥を大量に投入し、
チッソ分が多すぎて虫に食われまくった野菜を、
「有機だからしょうがない」ってのはわたくしは違うと思う。

きちんと土壌分析診断もせずチッソが多いか少ないかも見ず、
カルシウム過剰の畑にアンモニア発酵した肥料を大量に入れてりゃ
硝酸態窒素の多い野菜ができるだろう。

でもさ、化学肥料の場合でも同じなわけ。
入れ過ぎりゃ、なんでも同じなのである。

有機農家でも土壌分析して施肥設計してる人はいるし、
土づくりがちゃんとできてて土壌バランスが整ってきて、
肥料を入れなくても野菜ができるようになってる人だっている。
有機農家が全員鶏糞堆肥を入れてるってわけでもない。

それに硝酸態窒素が問題になるのは菜っ葉だけ。

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菜っ葉の旬は冬である。有機だろうが慣行栽培だろうが、
どんな菜っ葉も甘くておいしいのは冬である。夏の菜っ葉は急激に肥料を吸って
ぐわっと成長するので硝酸態窒素の残留値が高くおいしくない。
だからさあ、ムリして夏に菜っ葉食べなくてもいいのになと思うわたくし。



植物は葉っぱでチッソ分を使って光合成し、でんぷんを作りだすので、
光合成がじゅうぶんにできない場合、また吸収したチッソが多い場合、
硝酸態窒素の残留値が高くなる。葉っぱにね。つまり菜っ葉だ。

でも菜っ葉をゆでれば問題ない。ゆで汁が緑色になるし、
硝酸態窒素の残留値が高いと糖度が低いからおいしくないけど。
冷静に考えたら危険ってほどの話じゃない気がするんだよなあ。

O157も硝酸態窒素も、有機農業のある一部分だけ切り取って、
危険だ危険だと言っているのだった。

その他「農薬はこうして落とす」という特集を見かけることもある。

野菜を洗わずに食べる人はいないと思うけど、
まあだいたいは洗えば落ちる。有機許容農薬のBT剤などは
雨が降ったら落ちるし紫外線で分解されたりするへなちょこな農薬だが、
なかには有機リン系農薬のように洗っても落ちない農薬がある。

浸透移行性の高い農薬は、洗ったくらいじゃ落ちない。

その場合は皮をむけばいいんだけど、皮をむけないものもある。
そういうの、どうするんだろうなあ。
「こうして落とす」特集には浸透移行性のことは触れられていない。
ゆでればいいんだろうか。ナゾだ。

これも農薬の一部分のみ切り取って
安全だ安心だと言っているのだった。

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トマトのように生育しながら収穫するものにはけっこう農薬かかってて、
でも皮むけないし生で食べること多いし、けっこう強い農薬使ってるし。
なんてことを知ってると、トマトは自分で作りたくなりますよ。



有機JAS認証のシールが張られた野菜は、法律で定められた通りに
きちんと栽培履歴をとって管理された圃場で採れたってことだ。
どのように作ったかちゃんとわかるってとこに優位性がある。
使える資材・農薬も限られているから、そういう意味では安全性は高い。

一般の野菜は有機野菜のように栽培履歴を追うことは難しい。
なんていう農薬をどれほど散布したか、消費者にはわからない。
ひょっとしたらまいちゃいけない農薬を使ってるかもしれない。

地域の防除暦を見るとびっくりするぐらいの散布数が書かれているが、
それが消費者に伝わることはまずない。

「有機野菜が危険だ!」も「農薬はこうして落ちる!」も
消費者がよく知らないことを前提に書かれているのだった。

日本国内の有機圃場の割合は0.2%だ(平成23年4月)。
危険だとかどうとかよりも、そもそもがほとんど増えてないのだ。
なのになぜ有機野菜は安全じゃないって言いたいのか。ナゾだ。

あっ、でもこれもしかして有機農業推進法違反になるのでは?

推進法に「有機農産物の販路拡大」って目標があるんだからさあ、
それの妨害とかでさ。

ならないかなあ・・・。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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