もしかしてこれからが正念場なのではオーガニック

gazou 025
大地を守る会の最後の総会が先日行われたようであります。
以下の例にならって考えると、現在の敵はOisixなのではないか、と
しみじみ感じた次第です。


昔、大地を守る会の規約には「人の悪口を言わない」と書いてあった。
今はどうか知らないが、この小学校の学級目標のような言葉が
わたくしはずっと不思議であった。

大地を守る会の機関誌を制作していた2006年、
会長の藤田和芳さんのインタビューを企画したことがある。
藤田さんは学生運動の闘士だった、と知っている人も多いと思うが、
このとき、藤田さんは以下のような話をした。

「学生運動がうまく行かなかった理由を最近よく考えていて、
ああ、そういう理由だったのかなと気づいたことがあった。
わたしたちには大きな敵があったのに、お互い協力することなく、
自分たちの主義主張の違いが許せず、結局内部崩壊してしまった。
多様性を許せなかった。これが失敗の原因ではないかと思う」

大地を守る会発足当時、集まった農家同士がよく批判し合っていた。
これでは前に進まない。だからお互いを批判しないという文言を
規約に入れたのだとそのときわかった。

実際の農家がどうだったかと言うと「あの人の大根どーなの、あれでいいの」
とかの毒は非常にしばしば聞いたが、悪口は言わなかったように思う。
小学生みたいな決まりごとでも効果はあったのだ。

しかし、有機農業のエライ農家の人たちは悪口を言い合う。
そしてお互いの思想の違いを許さず何かと言えば分裂する。
まるで学生運動の人たちのように。

なぜ仲違いするのか。
それは「敵の不在」によるものである。と最近気がついた。

1975年、有吉佐和子さんの『複合汚染』をきっかけにして、
有機農業運動は大きく広がりを見せ大地を守る会も設立された。

このとき、農村で有機農業を営む少数の農家は、
JAからは取り引きを停止され、地域から孤立した。
農水省は有機農業などありえないなどと言い、
有機農家は四方を敵に囲まれている状況だった。

孤立しながらもやっていけたのは強固な「思想」があったからだ。
「思想」は自らの軸であり、核であり、アイデンティティである。
思想は盾になり自分を守る武器にもなった。

農家の産物を買い支え支援した消費者にとっても農家の敵は敵である。
消費者も「子どもたちの未来のために」とか「環境を守るために」などの
非常にストイックな、しかも利他的な美しい思想で武装する人が多かった。
これは大地を守る会などの流通も同じである。

消費者と農家と流通は敵(JA、農水省、国、慣行栽培)に向かって拳を振り上げ、
いつか有機農業があたりまえになる日を夢見て一丸となった。

1980年代後半に「食の安全」がブームになり、思想を持たない人々も
有機野菜が欲しいと思うようになった。わたくしはこの世代である。
有機農業はブームになり、なんちゃって有機等の優良誤認が問題になり、
農水省が有機農産物の表示の法律をつくろうと動き始めた。

「理念なき表示制度では有機農業の振興にならない!」と、
有機農業関係の人々は農家も流通もこぞって反対した。
わたくしは大地を守る会のなかでこの反対運動を見ていたが、
実は何を反対しているのか当時ほとんどわかっていなかったと思う。

結局有機JAS法は成立し、その後大地を守る会でも有機JASの取得を推奨した。
あの反対は何だったのか。とわたくしたち産地担当の多くは思った。
わたくしは反対の理由がなんとなくわかる気がする。農水省は「敵」だ。
敵がつくる制度など許せるはずがなかったのだった。

そして2006年12月、議員立法で有機農業推進法が定められ、
有機農業は国の方針となった。有機農業者皆が夢見た瞬間である。
と同時に、目の前の敵がいなくなった。振り上げた拳の行く先は?
目の前にいるのは仲間だ。今までいっしょに運動してきた農家だ。

かつての敵の補助金で夢見ていた有機農業推進事業を始めてみたが、
なぜかほとんどうまくいかなかった。

敵を失い目を凝らしてみると自分たちの小さな違いが鼻につく。
武装した思想はもう必要ないのに武装解除できない人々はお互いを攻撃した。
有機農業推進法ができて10年経つのに、農水省の
「有機農業を巡る現状」に書いてある課題は全く変わっていない。

しかしおじさまたちが仲違いをしている間に
「有機楽しいよね」と新しく参入してくる若者たちが増えていた。

若者たちは自分なりの思想、というか有機農業に取り組んでいるうちにできた
軸や核のようなものをそれぞれが持っているが、とくに武装はしていない。
しなやかに自分と他人の違いを受け入れ農業を粛々と楽しんでいる。

彼らの野菜を買う消費者も「子どもたちの未来のために!」などと
とくに拳は振り上げていない。有機の野菜はおいしいし、
畑に行くと楽しいし、有機って農業っていいよね、くらいの感じだ。

拳を振り上げていた人にはこれが不安だ。このままでいいのか! いや、よくない。
苦労してきたオレがちゃんと有機の思想を伝えなければ! などと考える。

消費者も「なんとなく良さそうだから」と買う人々のことが不安だ。
このままでいいのか! もっと環境問題に目を向けて! などと思ってしまう。

そして今年、オーガニック専門スーパーができた。
とある人によると今年は「オーガニック元年」なのらしい。

しかしわたくしはふと思う。有機業界が思っているよりも早く
オーガニックはあたりまえになっており、すでに
「数ある選択肢のひとつ」になっているのではないかと。

成城石井にもサミットの売り場にもオーガニック食品は並んでいて
大地を守る会のようなクローズドな会員組織に入らなくても手に入る。
オーガニックは普通になり、特别なものでなくなっているのでは。

夢見た目標に到達してみたら、存在意義がなくなってしまったのでは。
しかし一般化するというのはそういうことである。

振り上げた拳の行先はどこにもなく、共通の敵はもう存在しない。
同じ思想を持っているからわかってくれるということもない。
そうなると評価されるのは純粋につくるものの品質や発信する情報となり
慣行栽培同様「高く売れる人」「そうじゃない人」に分かれていく。

有機農業界はすでに「有機は普通」という前提に立つべきではあるまいか。
そこから何をすべきか、何を変えていけばいいのか考えるべきなのでは。

わたくしはまだ何も思いつかないが、これからが正念場のように思える。

頭のいいおじさま方は今こそ出番ではないでしょうか。
武装解除して、よろしくお願いいたします。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR