柑橘の自然栽培・有機栽培の話を柑橘農家に聞いてきた

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子どものころから絵描きになるのが夢だったという池田道明さん。
自然からインスピレーションを受けて書くことが多かったことから
農業でも自然を守っていると胸を張れる栽培をしようと
自然栽培に切り替えました。温州みかんや清見を栽培しています。



わたくしNPO法人「有機農業参入推進協議会」の理事をしております。

そのお仕事で「有機農業を始めよう! 第17回有機農業公開セミナー」
(於・熊本県阿蘇郡ホテルグリーンピア)に参加してきました。
まかされたのは「柑橘分科会のコーディネイター」です。

うひー、柑橘?

わたくしは落葉果樹担当が長かったこともあり、落葉果樹については
ちょびっとだけですが、病害虫・農薬・木の生理などがわかります。

春に花を咲かせ、夏から秋に果実を実らせ、収穫後は
晩秋にばっさりと葉を落とし、冬季に休眠する落葉果樹。
生育にメリハリがついているためわかりやすく、花芽も確認しやすいため、
「あー去年なんか失敗したのかなー」なんてのもわかることがあります。

こういうのがわかると農家と話をするとき詳しい話が聞けます。
わかるようになると農家はより詳しい話をしてくれます。
その結果、出荷時期や品質の話が具体的にできるようになるのです。

しかし柑橘類は、一年中葉を茂らせている常緑樹です。
わたくし的にはいったいいつ休眠してるんだって感じです。
さらに、去年の実がついてるのに花が咲きます。さらにさらに、
レモンなどは四季咲きとか言って春から夏までだらだら花をつけたりします。

いったいキミの交代期はいつなのかね? というか
どの時点で栄養成長から生殖成長に切り替わっとるのかね?
なんつー疑問が頭にわいて柑橘の生理のことを考えると夜も眠れません。

なんちて。ウソです。

ということで、ほぼ知識ゼロで熊本県に到着したわたくしは、
分科会のパネラー・池田道明さんのみかん園を見学に行きました。
事前にちっとは知識を仕入れておかないと、と焦っておりましたが
池田さんの話が大変とてもわかりやすく、あることに気づくことができました。

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知識なくぼんやりと写真を撮ってることがよくわかる温州みかんの写真。
なんかもー木の見どころとか全然わかんないし、
次に行ったときにはちゃんと質問できるようになっとかなくちゃ。



それは、柑橘も落葉果樹も基本的な部分は同じってことです。
なぜならふたつとも畑作や米などの単年度作物ではなく、
一度植えたら数十年そこにある永年作物だからです。

そして永年作物ならではの共通項が「土」なのでした。

さて、池田さんは玉名郡で自然栽培のみかんを栽培しています。
現在では収量もあがりようやく経営が安定してきたところですが、
ここに至るまでには木が枯れたり虫が大発生したり、
全く収穫できる果実がなかったりなどの大変な経験をしています。

その経験が大変とても興味深く、これから果樹というか柑橘の
自然栽培・有機栽培に取り組む方への助言として、
今まで聞いたなかでベストである、とわたくしは思ったのであります。

「自然栽培を始める際は農薬と肥料を一気にやめたくなるけど、
先に変えるのは肥料。肥料を少しずつ減らすと3年ほどで切れるから、
それから農薬をやめること。また全ての園地を一気に変更せず
少しずつ変えてようすを見ること」by池田道明。

大変とても有意義なアドバイスではありませんか?
そしてこれは有機栽培に切り替える際にも当てはまるようです。

単年度作物と違い、果樹類は3年前の施肥やら剪定やらの影響を
当年度も持ち越しています。過去ずーっと化学肥料を与えられている木は
園地の微生物相の影響もありますが、有機質肥料をすぐに吸わないのです。

やってる方は「肥料をやってるから吸ってる」と思っていても、
おもに2年間ほど過去の残肥が効いていることが多いようです。
除草剤などをまかれていた園地では微生物がほとんど死滅していますから、
有機質肥料を分解してくれる善玉菌がほとんどいないとも言えます。

その結果、転換して3年めに病害虫が一気に、しかも大量に発生します。
このタイミングで木を枯らしてしまうと資源がなくなりますから
柑橘栽培から撤退せざるを得なくなります。貯金もなくなります。

つまり、まず「以前の土を変えること=土づくり」が大切なのです。

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ルビーロウカイガラムシ。自然栽培に切り替えたらだんだん小さくなってきたそう。
切り替え当時ぐわっと発生したカイガラムシが数年後にはいなくなった。
天敵が食べているのかも、と池田さん。肥料が切れてから起こったことが
非常に興味深く、肥料とはなんなんだとか考えてしまったわたくし。



池田さんの園地で肥料を減らし始めたのは2000年。
自然栽培を始めたのは2008年で2015年に全園に広げました。

準備期間を入れると現在までになんと17年もの年月がかかっています。
それでも大変なことがいろいろと起こったのです。
これぐらい時間をかけないと自然栽培はむずかしいということでしょう。

とは言え、無施肥です。作物は何を吸って生育しているのでしょう。

池田さんのみかん園は草を刈り取らない草生栽培です。
「草を刈り取らない」のはわたくしの知り合いの自然農のすもも農家も同じで、
草を刈り取らない=青刈りしない=総炭素供給量を上げる、ことができます。
これにより、微生物相がより豊かになるのかもしれません。

北海道農研機構の共生微生物の研究者・池田成志さんにこの話をしてみたら
「微生物の菌体だけでも相当量の肥料成分になると思います」と言われました。
自然栽培の人に共通する話ですが、肥料分は微生物が供給しているのでしょう。

この後、柑橘類分科会でその他のパネラーの方の話をお聞きし、
有機でも一年目から一気に転換するのは無謀ということがよくわかりました。

その前の持ち主がどのような栽培をしていたのかよく聞いて、まず土づくり。
農薬を減らすのはその後。最も大切なことは
「木を枯らさないこと」「全滅させないこと」。

ムリをしてはいけませんよということですね。

落葉果樹に比べると、柑橘は有機JAS取得が比較的容易と言えます。
有機JASではマシン油やボルドーがまけますから、自然栽培でなければ
転換する際にも心の余裕が若干持てるような気がします。

わたくしは10月には有参協の仕事で果樹栽培について書かねばならないのですが、
心おきなく書ける気がしてなりません。喜ばしいかぎりです。
今回お話を聞かせていただいた農家の方々、ほんとうにありがとうございました。

今度行ったときは花芽がいつどこにできるのか教えてもらわなくっちゃ。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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