卵を食べるということ

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平飼養鶏でよく飼われている「ネラ」という品種。群れにオスを入れるかどうかは、
養鶏農家それぞれに考えがあって、入れない人もいます。
メスにつつかれてかわいそうなオスも多いとか。真中のモヒカンくんがネラのオス。



先日取引先のおじさまが、視察で行った直売所の卵を
「味見してみたら」と買ってくださいました。10個入180円でした。

フツーのなんてことない卵でした。

「フツーの卵…フツーの配合飼料食べてるケージ飼いの鶏の卵
…もしかしたらウインドウレス鶏舎かも。やだなあ」と思いつつ、
「いりましぇん」とも言えず、ありがたく持ち帰りました。

いただきものにこういうことを言っては失礼なのですが
予想通り、おいしくありませんでした。

何がって? ニオイです。配合飼料のイヤなニオイがするのです。
他の食材の香りも味も、何もかもを台無しにするニオイでしたのです。

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大地を守る会の平飼卵。黄身が白いのはトウモロコシを食べてないから。
緑餌が多い季節は黄色くなります。黄身の色はエサの種類によるのですね。
カロチン分を食べさせれば黄色い色がつくですよ。色は栄養価とは関係ないですよ。



わたくし普段は大地を守る会の「平飼養鶏の卵」を食べております。

地面のうえでのびのび育った鶏が好き勝手に産んだ「平飼卵」。
その平飼卵を食べ続けて20年。とうとうわたくしも
卵の味がわかる女になったか…と感慨深い出来事でございましたよ。

それはさておき。
ニッポンの卵ってどのように作られているかご存じでしょうか。

鶏卵生産現場の実情は、ほとんどの消費者が知らないと思います。
でも、卵は安いものであるという認識は、ほとんどの人が持ってますね。

スーパーの卵、1P200円として卵1個20円です。
某D社の平飼卵は1P450円。一個45円です。うわ!高い!
よく言われます。約2倍の売り値の差。その違いは何なのでしょう。

まず鶏卵の生産現場のことを考えてみます。


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窓のないぺったりした建物の横にこういうエサの入れ物があったら、
それはウインドウレス鶏舎。鶏がみちみちに詰まって卵を産んでると思ってください。
埼玉県・群馬県あたりにたくさんありますですよ。



鳥インフルエンザ流行時、閉鎖系の建物がニュースに何度も出てきました。
工場みたいなあの鶏舎は「ウインドウレス鶏舎」と呼ばれ、窓がありません。

内部では、全て自動。給餌も採卵も、人工的な照明も、温度管理も
全てが自動です。人件費がかからないってことですね。
養鶏の大規模化。すんばらしい技術らしいです。

その中で、卵を産む鶏たちがどうしてるかというと、
60cm×40cm×高さ40cmのケージ(檻)に7羽程度入ってます。
 
そんな狭いところに入れられたらストレスが溜まりますよ。
なので、鶏たちは他者をつつけないよう、くちばしを切られます。
くちばしの先がなくとも、エサは食べられるのですね。

ケージは何段にも積まれ、鶏舎の中で何千羽もの鶏が卵を産んでます。

IMG_0095.jpg
平飼の鶏たちを見てると、あんたたち幸せでしょ!と言いたくなります。
人をつつきに来たり、オスをいじめたり、なんでそんなとこに卵産むのってとこに産んだり。
ケージ飼いの鶏にだけは生まれ変わりたくないわたくし。あと乳牛もヤだ。


身動き取れない狭いケージで、おひさまを一度も見ることなく、
延々とエサを食べては卵を産み続け、約1年。

産卵率が落ちてくると、約1週間~10日程度水だけ与える絶食を行い、
羽を抜け変わらせる強制換羽(※1)で、さらに1年採卵を延長します。

飼料は主にアメリカから輸入した遺伝子組み換え作物を主にし、
病気予防のための抗生物質(※2)が添加されたりしてる配合飼料。
採卵率が再び落ちてくると更新され、その後は肥料等になります。

「平飼卵」とわざわざ書いてない卵は、ほとんどこういったケージ飼いのもの。
日本の卵は、ほぼこの方法で生産されてます。

どうでしょう。わたくしはこういう卵は食べたくありませんです。

カキガラ
平飼養鶏農家は、市販の配合飼料を使わず自家配合で飼料を作ってる人が多いです。
毎日配合してやんないといけないので、ものすごく手間暇かかります。
これは卵の殻を作るためのカキガラ。カルシウム分ですね。

コメヌカ
コメヌカ。その他モミガラ燻炭や魚粉などを、日々混ぜてやってます。
ジャンボかぼちゃを食べさせてる人もいます。食べると黄身がオレンジ色になるんだって。

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毎日毎日エサづくり。午後はエサやり。自家配合って大変なんすよね~。
購入する配合飼料を使えば簡単なんだけど、自分の鶏に合ったレシピで、
生育具合に合わせてたりします。養鶏農家は長期間のお出かけはできないんですね。


そして某D社の平飼養鶏はというと、こんな感じです。

開放された鶏舎で、他の鶏をつついたりして好き勝手にふるまい、
時には人を追っかけたりして、時折卵を産むのをサボり、
農家が自分で配合した飼料や土を食べ、採卵率が落ちてくるまで
健康に過ごし、一生を終えます。その後は肉になったり肥料になります。

この差が25円の差。
これは、鶏の幸せ度の差? おいしさの差?

EUではアニマルウェルフェアの観点から、このバタリーケージ飼いを
2012年で廃止すると決議しています。

アメリカでも同様に見直しの動きが進んでいるそうですが、
限られた土地で、穀物を肉に変え安定価格で供給しなくてはならない
ニッポンの畜産は、まだそこまでに至っていません。

なぜ至らないのか。やっぱ消費者の無知によるものじゃないのかな。
安いことと引き換えに、何かを失っていると思うのはわたくしだけ?

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取材に行った際に産んでた卵を採らせてもらいました。卵って、ぬくいんです。
鶏から出てきた!今産んだばっかり!「命!」って感じなのでした。



昔、卵は病気になんないと食べられなかった貴重なものでした。

今では一日ひとつ以下にしろとか言われるほど安いもの。
だから、養鶏技術の恩恵は皆が受けているのですよ、でも、でもこれは、
豊かになったってことなのでしょうか? 本当に豊かなのかな?

とりあえず、安い卵を作るために何が行われているのか。
知ってる方が絶対にいいと思うわたくしなのでした。

そのうえで選ぶのは自由なんだもんね。


(※1)鶏は秋から冬にかけて大体2~4カ月間卵を産まなくなります。
その間、古い羽毛が抜け落ち新しいものに換わる「換羽」が行われます。
これを人工的に行うのが強制換羽。鶏の更新を行わずに済むので、
経費減・効率UPの目的で行われているようです。うひい。

(※2)卵の抗菌性物質の休薬期間は出荷前最低7日ですから、
それまでは抗生物質が入っててもいいわけなのでした。
抗菌性物質は豚・牛・鶏の成長促進のために使われてる場合もあり、
耐性菌登場の温床になってたりもするそうです。コワイよう。


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No title

ほんたべさんこんばんは。

なるほど卵ひとつとってもちがうんですね。
普段ウチもまちがいなくその「ウィンドウレス」版の卵をいただいているんだと思います、
よく知らないですが。
慣れちゃっててなんにも感じないんですかね。

ほんと、卵って「安くてなんぼ」の食べ物の代名詞みたいすよね。
で、よくチラシの目玉商品になってる。
目玉商品で目玉焼き作ってるという・・・。

確かにこうやって比べて見せられると、
後者(平飼い)は値段が高いだけあってすごく手間がかかってるんですね、
っていうのがよーく分かったですよ。
ってか逆か、手間かかってるからお値段が張ると。

あとは、もっとこういう製法(?)とおいしさが広く認知されて需要が増えれば、
価格もグッと抑えられるんでしょうか。

そういえば子供のころ、茨城の田舎の庭で放し飼いされてた鶏の卵、
よく捕ってきて目玉焼きとかにしてもらって食べたの思い出しました。
確かに完全ストレスレスの卵、すっごくおいしかったように記憶してます。

ところで飼料の材料、カキガラ、米ヌカ、モミガラ燻炭や魚粉などって
みんな「良い土づくり」に必要なものばかりってのも面白いなー。

ではでは

Re: No title

Fuさん

こんにちは。
今日もあっついです。

> で、よくチラシの目玉商品になってる。
> 目玉商品で目玉焼き作ってるという・・・。

わはは。

スーパーに於ける卵は客寄せ品目なので、ひょっとしたら大した粗利取ってないかもです。
だから卵は常に目玉なのですね~(笑)
こないだ1P、87円っての見ましたよ。やす~。

> ってか逆か、手間かかってるからお値段が張ると。

あと一羽あたりの面積もお値段にのってると思います。

ケージ飼いの場合は3次元で鶏が飼えるけど、
平飼は3次元方向は止まり木しかありませんから(笑)


> あとは、もっとこういう製法(?)とおいしさが広く認知されて需要が増えれば、
> 価格もグッと抑えられるんでしょうか。

下がらないかもです。一羽あたりの経費は変わらないと思うので。
そのあたりが平飼が広まらない理由かもしれませんね。
かける経費の割にもうからないから、ケージ飼いが主流なのです。

でも、栄養添加の卵とか1P600円位するのもありますよね。

あれもウインドウレス鶏舎で飼ってるんでしょうが、付加価値商品なので600円。
何かわかんないビタミン剤を添加されてるのより、平飼でちゃんとした飼料を
食べてる方が健康にはいいと思うんですけど。


> 確かに完全ストレスレスの卵、すっごくおいしかったように記憶してます。

わたくしは26歳のときにバリ島で食べた卵がおいしくて驚きました。
今考えるとそのへんで飼ってる鶏の卵だったんだろうなあと思います。
で、やっぱ黄身が白かった。

卵のおいしさって黄身に凝縮してるんっすよね~。
やっぱ大切なもの(その後の生育に必要なもの)が詰まってるからでしょうか。

>
> ところで飼料の材料、カキガラ、米ヌカ、モミガラ燻炭や魚粉などって
> みんな「良い土づくり」に必要なものばかりってのも面白いなー。


あっ、そう言えばそうですね。
大豆の粉とかも入りますもんね~。

No title

こんばんは。
少し前までは、「価格の優等生」などと言われ、
「おひとり様1パック限り」とか、「先着何名様」とか、
スーパーの特売商品の代表格でした。

一昔は、卵の黄身を黄色にする為に餌に合成着色料を混ぜていた事もあったらしいですね。黄色い方が、新鮮で栄養価が高いように見えるから。

レタスが250円で高騰と言われ、卵や牛乳が200円を超えると高いと言われ、一方で牛肉やマグロが大量に売られ、化粧品やサプリメントが売れる。ちょっと待って、良く考えてみませんか?と言いたくなります。

平飼いの卵、美味しいですよね。
農業が軌道に乗ったら、庭先で鶏を飼う予定です。

白い黄身

そうだったんですか!

病気になって以来、卵は生活クラブで買うようにしておりますが、黄身の色が白いので不思議でした。
美味しいからいいやと追求しませんでしたが、トウモロコシを食べていないからなんですね。

病気になるまでの50年間、たまごは黄身の色が濃いほど良い卵だと勝手に思ってきましたが、間違いでした。

知ると知らぬでは雲での差ですね。
また1つ勉強になりました(^^)v
ありがとうございます。

Re: No title

スナフキンさん

こんばんは。
今日も暑かったですね~。

> 一昔は、卵の黄身を黄色にする為に餌に合成着色料を混ぜていた事もあったらしいですね。

ビタミンナントカを添加してたって話は聞きました。
カロチンかもしれませんね。ほんとに赤くなります。
あっ、パプリカだったかも。

> レタスが250円で高騰と言われ、卵や牛乳が200円を超えると高いと言われ、

レタス250円。
いいじゃないですか。って思いますが。
高いのかな~? 野菜って何か、高いと許せない的なところがあるんでしょうね。

牛乳なんて冷静に考えたら牛の血ですよ。
それが水より安いなんてよくわかんないですよ。
人間の血っていくらぐらいすんのかって考えちゃいますよ。


一方で牛肉やマグロが大量に売られ、化粧品やサプリメントが売れる。

こういうのは嗜好品だからお金かけていいのだと思います。
たばこやお酒にお金かけるのといっしょなのでは。


> 農業が軌道に乗ったら、庭先で鶏を飼う予定です。

おっ、いいですね、
有畜複合農業ですね。

いつか庭先で鶏飼って、卵産まなくなった鶏をしめて
カレーを作るってのが夢です。その前に鶏をしめる練習が必要だと思いますが(笑)。

Re: 白い黄身

ポポカさん

こんばんは。

> 美味しいからいいやと追求しませんでしたが、トウモロコシを食べていないからなんですね。

とうもろこし食べるとフツーにオレンジ色になると聞きましたが、
一般的には色がつく飼料を添加してる可能性もあります。

生活クラブさんの卵のことはよく知らないのですが、
非遺伝子組み換え作物の飼料を与えている鶏の卵だと思いますです。

> 病気になるまでの50年間、たまごは黄身の色が濃いほど良い卵だと勝手に思ってきましたが、間違いでした。

色が濃いとおいしそうなんですよね。
黄身の色が白いといって激怒して電話かけてくる会員もいますから、
色って大事なんだなあと思うんです。

黄色くない卵焼きができて子どもが食べなかった、
どうしてくれるみたいなクレームもよくありましたよ。

何が大事なのかよくわからないですよね~。

こんばんは

先日はコメントありがとうございます!
ほんたべさんの祈りが通じたのか今日は雨が降らず、周りの農家は稲刈りを昼飯抜きで頑張ってました。


僕は以前“役目を終えた鶏が最終的に行き着く場所”に行ったことがあるのですが、あの独特の雰囲気が忘れられません。

Re: こんばんは

大作農園さん

おはようございます。

> ほんたべさんの祈りが通じたのか今日は雨が降らず、

それは良かったですね~。
地域によって栽培作物によって、北海道もいろいろなのでしょうけど、
長雨は困りますもんねえ。

でも今日からまた雨みたいですね。
北海道は気温も急に下がって来ましたよね。
もう秋すっ飛ばして冬支度でしょうか。

> 僕は以前“役目を終えた鶏が最終的に行き着く場所”に行ったことがあるのですが、
あの独特の雰囲気が忘れられません。

鶏の屠畜場は見たことはないのですが、牛豚は取材しました。
某D社は以前、新人研修で屠畜場の見学ってのがあったのです。

研修の時には牛の屠畜を見ました。
前時代的な屠畜場で、ホルスタインを屠る場を見ましたです。
確かに独特の雰囲気でした。

取材時には豚の屠畜を見ましたが、機械化されててとても「屠る場」に見えませんでした。
工場みたいだったです。

鶏はブロイラーの話しか聞いたことないのですが、
やっぱりベルトコンベアで機械化されてたのを見たと同僚が言ってました。

私は前時代的な屠畜場で、牛の屠畜を失敗したのを見て
「成功するまでもう一回見たい」と口走ったところ、
「屠畜の現場をもう一回見たいと言った女」と上司にいつまでも言われてました。

皆気分が悪くなったりして早く帰りたがるのにそんなこと言ったので、
どういう奴だと思われたらしいです(泣)。

肉って最初からパックに入ってるわけじゃなくて、
誰かが命を奪って食べられるようになるまで加工してくれてるってことを、
我々は命をいただいて生きているってことを、
忘れがちなんですが、忘れてはいけないのだと思ってます。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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