わたしたちは「いのち」を食べて生きている

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ジビエの王道「シカ肉のソテー」。鉄分たっぷりで女性にお勧め。赤身で意外と柔らかく、
おいしいんだけど時々獣のにおいがすることもあります。料理人の腕によるのかな。



かれこれ20年ほど前、某D社の社内研修で屠畜場の見学に行きました。

今はもう閉鎖された埼玉の屠畜場で、牛の屠畜を見学したわたくし。
牛の眉間にハンマーを打ちおろすという、チョー前時代的な屠畜方法で、
「えっ!こんな野蛮なやり方でやってんの!?」と驚く間もなく、
最初の一発が外れて牛の目の上に当たりました。

大きなホルスタインが悲鳴をあげて暴れるなか、もう一発。

それは眉間に命中し、大きな体がくたくたと崩れ落ちました。
あっと言う間の出来事でした。
(ここまで読んでご気分が悪い方はもう読まれない方がよろしいかと存じます)

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群れないと淋しくて死んでしまうという羊くんたち。思い切り群れで行動します。
モンゴルでは一滴も血を流さずに屠り、その血もちゃんと食べるのだそうです。
見てみたいけど、羊が苦手で食べられないからその血も食べられないと思いますです。



眉間を狙うのは気絶させるため。
心臓が動いている間に血抜きをしないと、肉に血が残り、
その肉は商品にならなくなるのだと、その時に知りました。

私が食べている肉は、最初からパックに入っているわけじゃない。
誰かが育てて、誰かが屠ったものを食べているのだとはっきりと認識しました。
「いただいている」というべきかもしれません。それは「いのち」なのだから。

私たちは肉を食べるという行為の背景を、普段考えることはありません。
店に並ぶまでの工程は「誰かがやってくれてること」だからです。

でもね、自分でやれって言われたらできないの。

わたくしが自分で狩って屠れる動物は、アジより小さい魚のみ。
小鳥も鶏も鴨も、ましてやシカや牛豚羊など絶対ムリなのでございます。

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この状態と生きている豚を結びつけたくない人もいるらしく、豚肉の販促に、
豚の生きている写真を載せてほしくないとか言われたことがありました。
それはいったいどうなんだろうと思ったりするのはわたくしだけでしょうか。



お肉が叫び声もあげずパックに入って店に並び、お金を払えば買えるなんて、
本当にありがたいこと、素敵なことでございます。
その反面「いのちあるものを食べている」という実感はどんどん薄れており、
それはどうなのか、いかがなものかと思ったりもしています。

さて、そろそろ狩猟シーズン、今風に言うと「ジビエ」の季節です。

野生動物の肉は、狩猟と密接にかかわっているため、
命を奪っているという実感は、スーパーの肉よりも感じます。

そもそも日本人は肉を食べていなかったと思っている人が多いのですが、
実は中山間地の農村部でシカやイノシシ、ウサギなどを食べる頻度は
けっこう高かったと言われています。

生類憐みの令のさなかでも、農業被害のためにシカ・イノシシを捕獲できるよう、
首長に申し入れ、「致し方なし」と許可された記録が残っている位ですから、
日本の農村部では野生動物を常食ではないにせよ、食べていたのでした。

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昔、長野の農家にウサギの委託養殖の話を聞いたことがあります。
委託するのは毛皮業者。成長したウサギの毛皮を渡し、肉をもらうというシステムで
肉が食べたい農家としては、肉もお金も手に入るし、けっこういい商売だったとか。
日本人にはウサギは一般的じゃないと勝手に思ってたけど、そうじゃないのかも。



野生動物の肉は、虫同様、貴重なたんぱく源だったということですね。
現代では、その肉は高級品・嗜好品の部類に入ります。

レストランで食べると基本的には「ひえ~」ってな価格。
ご家庭で調理するのは難しく、というより入手の手段がないため、
主婦にとってはあまり身近な肉ではありません。

しかし実は「もっともっと食べてほしい!」のがシカ肉なのです。

ネズミと同じ速度で増え、日本の山を丸坊主にしているシカ。
天敵がいないことに加えて、温暖化で冬に凍死しないこと、
狩猟人口の高齢化と激減により狩猟プレッシャーが減ったこと。
そういう複合的な理由で、今や日本の山はシカ天国(イノシシもだけど)。

IMG_0757s.jpg
北海道の電柵は広大な面積を囲うため、ものすごい経費がかかります。
この経費が農家や自治体の予算を圧迫しております。



山際で農業を営んでいる人には農業被害は死活問題ですが、
電柵しか対応策はなく、被害に甘んじているのが現在の状況です。

この農業被害と猟師の高齢化という問題を知り、何年か前に
「猟師の後継者に!」と銃免許を取得しようとしたわたくしですが、
前述のように、さばけるのはアジまでというへなちょこさ。

何もできぬまま、現在に至っております。

いつかほんものの食べものくらぶで、シカ肉を食べる会を開催する
…それ位しか思い浮かばないへなちょこなわたくしでございます。

さて、しかし。そんななか、元同僚がアクションを起こしましたのです。

シカ問題にご興味のある方、シカに作物を食われちゃった方、
これらの活動を、ぜひ一度ご覧くださいませ。

その①なぜ今ハンターが必要なのか、シカ問題を詳細に紹介している
アウトドアコンシェルジュ 腹ぺことらさんのHug!Hug!Nature
「ハンターになろう!」をご覧ください。

オオカミ1
北海道でオオカミを飼育している桑原さんのシンリンオオカミ。
絶滅した日本オオカミも、こんな風に戯れていたのでしょうかしらん。



その②日本ではもう100年も前に失われた生態系の頂点にいた動物、
「オオカミ」の再導入を検討している「日本オオカミ協会」のシンポジウム

◆シンポジウム◆
ドイツに見るオオカミとの共生-復活オオカミでシカをコントロール

■東京 10月6日(木)18:00~21:00 文京シビックホール(小ホール) 

オオカミと共生が進むヨーロッパ。
すでに28カ国に2万頭を超えるオオカミが生息しています。
ドイツの専門家に、この共生の実状を語ってもらいます。
会場では直接意見交換もしていただけます。

当日は、横綱・白鵬関が来場。白鵬関の生まれたモンゴルでは、
オオカミは聖なる存在。幸運を呼ぶ動物とも言われています。
そんなお話をしていただきます。

詳細はこちらから→http://japan-wolf.org/

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ピンボケの子豚ちゃん。大きくなったら食べちゃうのですが、かわいいですね。
このかわいさも含めていのちをいただくのですから、わたくしにできることは
大切においしく食べて、自分の血や肉になっていただくことかしらと思っております。


「いのち」を奪うこと、それを「食べる」こと。
この行為に是も非もないとわたくしは考えております。

他者のいのちを奪って生きなければならないのが動物だからです。

たまさかに、大脳という器官を持ち、その是非について
思い悩まねばならない、それが人間であるならば、
わたくしは、自分の食べているものがどういうものなのか、また、
それがどこから来たのかを、知るべきだとも考えております。

そんなことを考えながら今回書きましたです。自分に迷いがあるのかも。
ちびっと尻切れトンボになってしまいました。ご容赦くださいませ。


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No title

ほんたべさん、こんばんわー。牛の屠畜ってそんなことをするのでしたか!初めて知りました。合掌。

僕もスーパーでお肉を見ると、彼らたちの生前の姿を思い浮かべたりします。だから、「いただきます」というあいさつは「あなたの命をいただきます。」なのかなぁと思っています。

そして、「ごちそうさまでした」は、「あなたはとてもおいしいごちそう様でした」なのかなぁと。感謝の気持ちでおなかもいっぱいになりますね。

Re: No title

駆動さん

こんばんは。

> 牛の屠畜ってそんなことをするのでしたか!初めて知りました。合掌。

チョー前時代的な屠畜なので、今はたぶん電気ショックで気絶だと思います。
有機畜産的に、ハンマー振り下ろすってのはダメな行為だと思うので。

ハンマーよりもストレスなく、気絶していると思っています。
>
> 「あなたの命をいただきます。」なのかなぁと思っています。

そういう意味だと思いますです。
いただきますって言うのは日本人だけですもんねえ。
いい言葉だと思います。

ごちそうさまもおんなじですよね。
これらの言葉を言うたびに、日本人でよかったなあとすこし思いますです。

No title

ほんたべさんこんにちは。

>牛の眉間にハンマーを打ちおろすという、チョー前時代的な屠畜方法で

わなわな。思わず『地獄の黙示録』思い出しましたです。

そういえば昔タイに遊びに行ったとき、とある少数民族の村に滞在させていただいたことがありまして、高床式で床下に家畜がのどかにエサ食べてるというような建物にしばらく宿泊しました。
昼間いっしょに仲良く追いかけっこして遊んだイヌやブタを、夕方にはみんなで屠って御馳走として出されるという・・・。

あの時、「お肉をいただく」という行為の直接性を強烈に感じたのを覚えております。駆動さんじゃありませんが、まさに「あなたの命をいただきます」という感覚。
ここ数年、そういえば完全に忘れちゃってたなぁ・・・(反省)。

>そもそも日本人は肉を食べていなかったと思っている人が多いのですが

五千年前の青森県三内丸山の人々は、主食のクリや雑穀類以外にノウサギやムササビなんかをかなり頻繁に食していたであろうと言われております。
あ、こんなトリビアお呼びでないすかね。しかも大昔すぎ・・・。
しったかしてすんません。

>「オオカミ」の再導入を検討している「日本オオカミ協会」

色んな意味で賛否ありそうな、デリケートな問題だと思いますね。
シカをこのままほっとくわけにはいかないのは分かりますが。
正直、これについては「うーん」ですね、今のところ。
シカをたくさん食べましょうというのにはもちろん大賛成です!

ではでは v-45

Re: No title

Fuさん

おはようございます!
ビューティフルデイですね!


> 昼間いっしょに仲良く追いかけっこして遊んだイヌやブタを、夕方にはみんなで屠って御馳走として出されるという・・・。

あああ。遊んだ動物が食べものだったっていう…。

ベトナムに行った際に犬の養殖場(ベトナムは犬は食べもの)を見学しましたが、ささくれた顔してました。
日本でもほんの60年ほど前まで犬食べてたんですよね。猫も食べてたと聞いたことあります。

> 五千年前の青森県三内丸山の人々は、主食のクリや雑穀類以外にノウサギやムササビなんかをかなり頻繁に食していたであろうと言われております。

ムササビ食べてたんですね~。食べるとこなさそうだけど。

大きな動物を捕獲する能力がなかったのでしょうか…。
やっぱり大きな動物を狩るには飛び道具が必要ってことなのでしょうか…。

それはそれでいろいろ考えちゃいますねえ。
自分で狩れるのはやっぱ魚と小鳥位かなあ…とか。

>
> >「オオカミ」の再導入を検討している「日本オオカミ協会」
>
> 色んな意味で賛否ありそうな、デリケートな問題だと思いますね。
> シカをこのままほっとくわけにはいかないのは分かりますが。
> 正直、これについては「うーん」ですね、今のところ。

そうですね~。賛否両論です。
私自身は美しい夢だと思うけど、実際どうかというのはまだ考え中です。

でもこの問題を議論する際の素材にはなると思っています。
シカ害をきちんと認識している人、農業者と自治体、ハンター位ですもんね。

> シカをたくさん食べましょうというのにはもちろん大賛成です!

ジビエを食べる会、今年やりたいな~。
来月位かな~。

No title

こんばんは。
大学の学部が、そちら方面でしたので実習で経験しました。
牛も羊も豚も鶏もやりました。
動脈を切っての屠畜でしたので、命が消えていくのを見守りながらの方法でした。
残酷ですけど、自分達が生きるための生業の一つとして必要な事。
生活が便利になって、分業化が進んで、汚い部分や残酷な部分が見えなくなるに従って、人はいろいろな事に鈍感になってしまった気がします。

オオカミとの共生、興味津々です。
人間が意図を持って何かすると、必ず予期せぬ結果を招くことが多いので・・・。

Re: No title

スナフキンさん

こんにちは。コメントありがとうございます。

> 大学の学部が、そちら方面でしたので実習で経験しました。
> 牛も羊も豚も鶏もやりました。

うーん…すごいですね。わたくしにはムリっぽいです。
シカ猟についてって、目の前で撃ったシカがさばかれるのを見て,
自分にはできないと思いました。

> 生活が便利になって、分業化が進んで、汚い部分や残酷な部分が見えなくなるに従って、人はいろいろな事に鈍感になってしまった気がします。

いいことなのか、悪いことなのか。
それは人の仕事だから、私は知らなくていいと言ってる人もいました。
わたくしはそういうところ全部ひっくるめて、受け取らないといけないと思ってます。

>
> オオカミとの共生、興味津々です。
> 人間が意図を持って何かすると、必ず予期せぬ結果を招くことが多いので・・・。

そもそもオオカミも人が絶滅させたものだし、シカもしなくていい保護をして
急激に増えたものだし…。
人の介入がいいのか悪いのか、私はまだ考えがまとまっていません。
何か決意するためには、まだ知識が足りないと思っています。

ちなみに、オオカミの群れを1パック養うには、小豆島位の面積が必要らしいです。
意外と広い土地が必要なのですね~。日本の森林では生きていけないかもしれませんね。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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