有機農業の技術体系構築はほんとうにできるのか

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10月25日、山梨県で開催された
「有機農業試験研究交流会」(日本有機農業学会主催)に参加しました。

タイトルの通り、有機農業関連の研究結果発表が主たる内容で、
わたくしの目的は、宮崎大の大野和朗さんの基調講演
「地域天敵資源を活用した環境と人にやさしい農業」。
大地を守る会でも何度か講演をしていただいた天敵の研究者でございます。

大野さんの発表は、「土着天敵の活用」がテーマでございました。
植生管理、天敵が好む植物、天敵の餌になる植物などが報告され、
大変有意義な、興味深い内容でしたよ。

その他の研究成果も、いずれも興味深く面白かったのですが、
全体的に「農業の現場に反映されていない」という印象を受けたのでございます。

例えば、土着天敵の活用ひとつとってみても。

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ヒラタアブ♀ 幼虫はアブラムシの天敵ですが、成虫を呼びこまないと幼虫は増えません。
で、この成虫は花粉を食べるので、圃場周りにハーブを植えるといいようです。
ヒラタアブは成虫がやってきてから17日で幼虫がアブラムシを食べ始めるので、
早く呼び込んでやると被害が少なくて済むというお話でした。好き、ヒラタアブ。



慣行栽培では、作物に害虫被害が見えると、もう商品になりません。

天敵昆虫は必ず、害虫が一定程度の数になるまで増えないため、
その間は作物が食われ放題に食われるわけでございます。

実際には、その初期の被害で規格外になってしまうため、
天敵の活用は現実的ではないと慣行農家に判断されてしまいます。

土着天敵という資源があり、活用方法もある程度わかっていながら、
農薬会社が販売している施設園芸向けの天敵製剤以外、
例えば慣行栽培の露地農家で天敵活用がされない理由は、
上記のようなものなのでした。

であれば、初期の被害が発生しない土づくりがあって
その後土着天敵を活用するために植生管理などを行うとか、
そういったアプローチができそうなのですが、
天敵研究と土壌学とは分野が違うので、
「双方を俯瞰してみて技術を構築する」ということはできないのですね。

画像9
アザミウマ類の天敵、ヒメハナカメムシ。こういった天敵類は、有機の畑で増え、
慣行栽培の畑で殺されています。慣行栽培の人たちが
「有機圃場から害虫が飛んでくる」というのは実は逆。
「慣行圃場で天敵が死んでいる」が正しいのです。そう言うとケンカになっちゃうけど。



分野ごとの横のつながりがあれば、あるいは農業普及員などが
総合的な知識を持ち、農家に指導できれば違うのかもしれませんが、
そういうことは全くないようです。

っていうか、そもそも普及員に有機の知識がある人いないみたいだし。
そんな人ばっかじゃないとは思うけど。

また、それぞれの分野ではオーソリティがいるけど、
全体を俯瞰して見る人がいないというこの構造では、
結局科学的で再現性のある有機農業技術を作るなんてことは
かなり難しいのではないかと暗澹たる気持ちになったのでございました。

さても悲しい現実。わたくしの夢見る世界はまだまだ遠いのでございます。

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アブラムシの天敵アブラバチ類。日本にはこのアブラバチ類がたくさんいて、
同定できないものがほとんどだそうなのです。まさに天敵天国日本。なのに活躍の機会ナシ。
自然植生が豊かな畑であればあるほど天敵はいるのですが、農家的に言うとそれは下農。



さて、2010年農業センサスが発表されました。
http://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/index.html

細かい数字があれこれ出ております。非常に興味深いです。
とりいそぎ、以下のデータを調べてみましたです。

          平成22年    平成17年
総農家戸数(戸) 2,527,948  2,848,166   -32万戸
耕作放棄地(ha)  395,981   385,791     +1万ha

平成17年と比較すると農家がずいぶん減っていますね。
平成17年と言えば2005年。農業ブームが始まる少し前。

2008年頃から農業がやたらとメディアに取り上げられてました。
新規就農者が増え、農業人口が増えるような錯覚を、おそらく
テレビを見ている人たちは皆、持っていたのではないでしょうか。

全く増えてません。これが現実。

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今回大野先生に聞いたなかで一番興味深かったのが、このオクラの話。
オクラって先端部から透明な分泌物を出すのですが、これが天敵の餌なのですって。
食べもの(害虫)がいない時期、ヒメハナカメムシがこれを食べて命をつないでいる。
オクラは花も咲くし、天敵温存植物にもなるのですね。いいじゃない、オクラ。



有機農業関連の調査報告では、新規就農者の有機農業志向率が高く、
有機農業の未来は明るい的な話でした。うーん、どうなのかな。
この減り続けている農家戸数の中で、新規就農者が増えているのかどうか。
その数字は見つかりませんでした。

農業センサスの中に「農家面積による後継者の数」という数字もあります。

大規模農家に後継者が多いという結果は、当然の結果でしょう。
食っていけなければ後継者などいないはずですから。
大規模農家は儲かっているのか、後継者がいるから大規模化したのか。
どちらが先かわかりませんが、そういうことなのだと推測します。

耕作面積についての数値を見ると、小規模農家は減っており、
100ヘクタール以上の面積を保持している経営体が増えているようです。

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その他天敵温存植物として圃場から天敵を逃がさないために有用な人参の花。
ヒメハナカメムシがこれで大量に増殖したという結果があります。
スイートコーンの花粉もOK。オクラと同じく天敵温存にもなり換金作物にもなります。
お金にならない作物は植えたがらないのが農家なので、こういうデータは役立ちます。



この結果からは、政府の政策通りの農業の大規模化という現実が見えてきます。
なので、農家戸数が減ったようでも大規模化によりそう見えるだけかもしれません。
うんにゃ、そんなことないか。

まあ、全体的には減ってることは事実でしょう。

とくに有機農業などを営む農家は、大規模経営はムリですから、
有機農業やってる農家は、そんなに増えてないってことなのでしょうね。

さて、そこで、有機農業推進法以後、有機農業の技術体系が
構築されてるかどうかって話になります。
何しろ国が有機農業を推進するって法律で定めているのですから、
早急に技術体系を作り上げ、有機農家の比率を高めねばなりません。

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この程度の虫食いは某D社などの低農薬野菜を扱う流通ならOKですが、
JAに出してたら論外なわけで。そんな規格が運用されている限りは、有機農業など
広まるはずもなし…。技術以前に体制や意識の転換がないとムリなのかな~。



で、なんとなく上記の研修会の結果を見ていると
できないんだろうなあ…と、ひしひしと感じるわけでございます。

タテ割りの弊害か、有機農業という思想含みの難しい業種のせいか。

「有機の人って難しいんだよね~」と言っていた、ある農家の顔が思い浮かんだ、
秋の山梨での悲しい1日でございました。

※2011年農業センサスの数字は先日出たばっかりなので、
今後よりわかりやすいグラフや分析等での発表がされると思います。
今回のはとりあえずの数字ってことでご了承ください。


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No title

こんばんは。
万が一、体系作りが出来ても、普及指導するのは難しいかなっと感じます。
地域性や気候風土、土壌や生態環境が異なる中で何をもって技術体系とするのか?想像もできないです。
慣行栽培と言う言葉自体????
地域のJAの栽培指針に従って、必要があるかどうかも分からない農薬や肥料を播くのが、慣行栽培って納得いかないです。

オクラの分泌物、来年じっくり観察してみます。

今年は、アブラナ科の花を春先に咲き放題にしてみたら、アブラムシが発生して、てんとう虫がたくさんやって来ました。結果、夏野菜のアブラムシは大発生しませんでした。
他の要因があるかもしれませんが、そう感じました。
それ以来、雑草(我家では敬意をこめて野草と呼びます)を徹底除草しないで適度に生やしながら野菜を作りましたよ。

Re: No title

スナフキンさん

こんばんは~。

> 地域性や気候風土、土壌や生態環境が異なる中で何をもって技術体系とするのか?

農業って地域によって土目が違うとか、気候が違うとかで、
技術体系が作られにくいと言われていますが、基本は同じだと思っております。

基本というか、基礎。

誰がやっても再現性のあるもの、それをベースにしないと、
何百年たっても技術体系作りはできないと思うのです。

で、再現性のあるもの=科学的なもの=数値 というのが西出さんの考え方で、
彼の指導を受けていると、地域・気候がそれぞれ違っても、皆一律に
高品質・多収が可能になってんですよねえ。

できている人があれだけいるってことは、可能だってことだと思います。
ただ、それが全体に広まらないだけ。

広まらない理由は、20個ほどならすぐに挙げられます(笑)
某D社勤務時・その後で山のように聞きましたから。

基礎の上にその土地ならではの経験が積み上がるのだろうと考えています。

例えば、北海道では、腐植を増やそうとしても表土が雨のたびに流れたりとか。
それぞれの土地にいろいろな事象があるので、そこに応用が必要なのだろうなあと思うのです。


> それ以来、雑草(我家では敬意をこめて野草と呼びます)を徹底除草しないで適度に生やしながら野菜を作りましたよ。

これ、まさに天敵を養殖する植生管理ってことですよね。
実感としてできているってスバラシイと思います。

でもまあ、農家のプロの人が見ると「畑貸さない」とか言いそうですよね。
そのあたりが天敵の植生管理等で非常にやりづらい部分があるようです。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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