今さらだけど、硝酸態チッソの話

gazou s038
硝酸態チッソの残留に注意しなくてはならないのは基本的には、
生育期間が短い菜っ葉です。大根や白菜を気にする必要はありません。
また春から秋にかけての葉ものに残留値が高いことがわかっています。
冬、地べたにへばりつくように育つ菜っ葉の残留値を気にする必要はありません。



「有機農業の方がキケンだ!」と言われる硝酸態チッソ。

地下水を汚染し、牛は死に、赤ちゃんはブルーベビーになるという
恐怖の物質、硝酸態チッソ。
ひょっとしたら農薬よりもコワイと皆が言う、硝酸態チッソ。

で、硝酸態チッソって何?と尋ねられて明確に答えられる人、
何がどう悪いのかきちんとわかっている人が何人いるか。

わたくし思うに、10人のうち、1人いればいい方かなと思います。

ざっくり言うと、硝酸態チッソとは、チッソ分が植物に吸収される際の物質。
前段階はアンモニア態チッソ。と、ここまで書いて、夫ちゃんに
「全然わからん」と言われました。そうか…もっとわかりやすく書けと。

うーん。あとひとつだけ、理屈を書きたい。

gsazou 075
河原の草だけを積んだ上里の須賀さんの堆肥。こんな感じの粗大有機物のみの堆肥なら
「有機農業の方が危ない」とか言われることはありません。チッソ分の高い鶏糞堆肥を
何トンも畑に入れてると硝酸態チッソの残留値が高くなり地下水の汚染にもつながります。
っていうか、堆肥の成分分析しなくちゃダメでしょう。1万円位でできるんだから。



土壌中ではアンモニア態チッソが硝酸化性菌という微生物に分解され、
硝酸態チッソという物質に変化します。
非常に水に溶けやすい物質なので、雨などで地下に流れます。
それで、地下水を汚染していると言われるのですね。

では、チッソについての基礎知識です。

その①植物は硝酸態チッソという物質でチッソ分を吸収する。
その②土壌中にチッソ分があると、植物はどんどん吸ってしまう。
その③吸収後、植物は光合成でチッソをたんぱく質に変える。
その際、C(炭素)、O(酸素)、H(水)が必要。

で、植物体内に硝酸態チッソが残る理由は

①お日様が出てなくて光合成がじゅうぶんにできなかった。
②炭素(C)が足りなくて、余分なチッソ分が体内に残った。
③そもそも大量に入っていたので何をしても消化できない。

つまり、硝酸態チッソの残留や地下水汚染の条件は、
土づくりのできてない畑にチッソ肥料が大量にあるってことですね。

IMG_0631.jpg
お茶のうまみってアミノ酸。なので、チッソが大量にないとうまいお茶ができません。
ってので、10aあたり100kgもチッソを入れてた時代がありました。地下水汚染が問題になり、
現在は60kg位に減ってます。普通の菜っ葉は15kg入ってれば普通に生育できますから、
お茶栽培にどんだけチッソ肥料が使われてるかってことですね。



ではどうするか。

チッソ肥料は収量増のもと。ですから、農家としては、
ちょっと余分に入れたくなる肥料でもあります。

土壌分析をして入れられる分のチッソを入れればいいのですが、
それがなかなかできません。

現状では土壌分析をしない農家がほとんどなので、
それぞれが経験とカン、そしてJAの指導通りに肥料を入れてます。
硝酸態チッソの残留や地下水の汚染がなかなか減らない理由です。

とか言っても、現在日本の法律では硝酸態チッソの残留値は
定められていませんのですね。
したがって、消費者も「あまり気にしてない」って感じです。

煽られると不安になるけど、ふだんは気にしない。
最近全く話題にならないのは、放射能の方がコワイから。
しかしチッソの流亡は続いているし、地下水の汚染も続きますから、
よくないことはよくないのです。

gazou 130
ほんたべ農園の菜っ葉類。緑色が薄いのでそれほどチッソは多くないと思いますが、
あったかかったので徒長しています。2000ppm位の残留値でしょうか。
でもま、ゆで汁はうすい緑だったしおいしかったしで、大したことない感じです。



ほんたべ的には、硝酸態チッソの残留が多い菜っ葉はおいしくない
そういった切り口で硝酸態チッソについては一家言あります。

チッソ残留と糖度には相関関係があるため、残留値の高いものは
苦い・味がしない・甘くないという三重苦のものが多く
全く食べる気がしませんです。

しかし面白いのは、残留値が低けりゃいいかというと
決してそうではないってこと。

以前チッソの残留値を調査してた結果を見たら、100ppmという
べらぼうに低い数値のほうれん草がありました。
食べたら全く味がしないのです。

チッソは毒にもなるけど、光合成のもと=うまみのもとでもあるため、
全くなくてもダメだということがわかったのでした。

害虫が栄養過多と栄養不足の葉にやってくるのは
これと同じ理由。つまり健康に育ってないものに寄ってくるのですね。

gazou 020
成分もわからず鶏糞堆肥を大量に投入し、土壌分析もしないで施肥設計していれば
「有機農業の方がキケン」と言われても返す言葉がありませんのです。
その言葉はどうかと思うし、なぜそんなことを言うんだとも思うけど、ある意味正しくもある。
自分のやっていることを数値で見せる努力も必要かなあとよく思うわたくしです。



野菜に虫が大量にいたり、べったりと横に寝る樹形をしてたりしたら
チッソが多い証拠ですから、施肥設計を考え直す必要があるのです。

さて、11月に入り朝晩冷え込んで来ました。
これからは葉ものの季節です。
どう作ってもこれからはチッソの残留は少なくなります。

寒いので急激に生育できない=大量のチッソを吸えない&
野菜が自分の体を守るために体内の糖度を上げるからです。

ってことは、甘い、おいしい菜っ葉が食べられるってことですよ。
菜っ葉の旬は秋から春まで。自然が準備してくれたおいしい季節に
たくさんの菜っ葉を食べて、健康になりましょう。


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こんばんは

以前ある農家にお邪魔した時のこと。
そこの農家の親父さんは数ヶ月前にガンの手術をしたばかりで、聞けば近隣の農家の方々はほとんどガンで亡くなっているとのこと。
何かおかしいと思い、飲み水について尋ねたところ「このあたりでは地下10メートルくらいから美味しい水があがるんだよ~」と得意げに教えてくれました。

…大農業地帯で地下10メートルの井戸水って完全に硝酸態窒素の地下水汚染(´ヘ`;)
出していただいたお茶には手をつけられず!

井戸水を水質検査に出すよう勧めました。

農業者の間で硝酸態Nの認識はまだまだ甘いと感じます。
北海道だけなんでしょうか??

No title

ほんたべさんこんばんは。

硝酸態チッソなるものについて、恥ずかしながら初めて耳にしました。
よく「有機農業だってそれなりに危険だよ」なんてしたり顔で言ったり書いてる人いますが、このこと言ってるんですかね。

>現在日本の法律では硝酸態チッソの残留値は定められていませんのですね。

要はバランスを考えた施肥を、ということでしょうけれど、
有機農業がより一層市民権を得るためにもそこいらのこともっと厳しく管理したほうがいいんじゃないですかねぇ。
いろいろ難しいのかな。

ではでは

土壌分析

多品目栽培の畑の場合、畝ごとに土壌が違ってくると思うんですが、土壌分析しようと思えばそれぞれで採取して個々に検査する必要があるわけですよね?

分析機関に出すのではなく、基本的な内容くらいは自分でできる安価な装置があるといいんですけど。

Re: こんばんは

大作農園さん

> 何かおかしいと思い、飲み水について尋ねたところ「このあたりでは地下10メートルくらいから美味しい水があがるんだよ~」と得意げに教えてくれました。

ひ~。コワイですねえ。

北海道って土壌の性質もあり、地域によってはものすごく流亡してそうです。
富良野の有機農家に聞きましたが、化学肥料使うのが前提って話で、やっぱりチッソ分が大量に入ってるんでしょうねえ。
うひいって感じです。

> 井戸水を水質検査に出すよう勧めました。

井戸水って硝酸態チッソは調べないんでしょうか?
大腸菌だけなのかなあ。

>
> 農業者の間で硝酸態Nの認識はまだまだ甘いと感じます。
> 北海道だけなんでしょうか??

4年ほど前の現代農業に載ってましたが、静岡のお茶農家が
チッソ60kgじゃお茶作れねえ!みたいに言ってました。
硝酸態チッソよりも、水質汚染よりも、収量なのかなあと思った次第です。

おそらく、どこも変わりないと思います。
っていうか、自分の作物の残留値をご存じない方がほどんどだと思うです。

Re: No title

Fuさん

こんばんは。

> よく「有機農業だってそれなりに危険だよ」なんてしたり顔で言ったり書いてる人いますが、このこと言ってるんですかね。

そうそう、そうなのでございます。
科学的な根拠を持って反論できるんですが、反論するすべがないと言うか…。
「そういう人もいるよね」ってのは事実ですから。
>
> >現在日本の法律では硝酸態チッソの残留値は定められていませんのですね。
>
> 要はバランスを考えた施肥を、ということでしょうけれど、

ヨーロッパ諸国の基準値ってのが2000~4000ppmの間が多くて、
でもこんなの日本ではざらに出ちゃうのです。ハウスのミズナなんか7000ppm位出ます。
乾燥した冷涼な気候であるヨーロッパと、高温多湿の日本とでは気候条件が違うので、
基準値を定めるのがことさらに難しいんですよ。

出る理由ってのも割とわかってて、雨が降り続くと光合成できないので、
一時的に高くなっちゃったりもするしで。
なので、現状基準値を決める段階にはまだ至っていないのだと思います。

だからって野放図にチッソ入れていいかっていうとそうじゃないんですが。

難しいんですよね~。

Re: 土壌分析

H2さん

> 多品目栽培の畑の場合、畝ごとに土壌が違ってくると思うんですが、土壌分析しようと思えばそれぞれで採取して個々に検査する必要があるわけですよね?

腐植分とかCECとかは、畝ごとに違うってことないと思うので、
「ならしてこれぐらい」っていう数値でいいと思うんですよ。
なので、圃場の四方と中央からサンプル取って混ぜ合わせるっていうのが、
土の採り方で、それでいいと思うんです。

とにかく一度自分の畑の状態を知っておくことが必要だと思います。
腐植やCECなんて、1年や2年で大きく変わる数値じゃないので。
>
> 分析機関に出すのではなく、基本的な内容くらいは自分でできる安価な装置があるといいんですけど。

あるんですけどねえ。5万位だったかな。
でも色合いでチェックするので、誤差が大きくて。
年に一度でいいからちゃんとした分析機関できちんとした数値を出してもらうのがいいと思います。

あと土壌分析する先生たちがよく言うことですが、
一度出したところに継続して出すことが大切らしいです。
分析機関によって数値が変わることがあるのだそうですよ。

硝酸態チッソだけなら簡易検査キットみたいなのがあって、
それはたぶん非常に安いと思います。
あと、ECメーターでもいいと思います。
ちょっと高いですけど、チッソ量がおおまかにわかるので。

Re: 土壌分析

なるほど、簡易なものはあるんですね。
でも数値的にわかった方が、継続的な記録として役に立ちそうですよね。

土壌分析関係はまだほとんど知識を仕入れていなくて疎いんですが、
可能なら把握しておきたいデータ、を全部計測しながら農業をする、
ってのはどの辺りまで可能なんですかね。
水耕ハウス栽培なんかはその辺は進んでそうな気がしますけど、どうなんでしょう。

露地栽培でも、土壌の養分、肥料、のほか、
温度、湿度、日照、地温(水温)、などの変化も自動で記録とって、
それらをコンピュータで管理しながら行なえたら、
今まで気づかれていなかったことで見えてくるものもあるかも。

Re: Re: 土壌分析

H2さん

> でも数値的にわかった方が、継続的な記録として役に立ちそうですよね。

数値で管理した方が確実だし、変化がわかるのでいいと思います。

> 水耕ハウス栽培なんかはその辺は進んでそうな気がしますけど、どうなんでしょう。

普通のハウスでも、水分計・PH・ECメーターなどは使われてますので、
ある程度は数値的な管理ができると思います。
でも露地は難しいですよね。

ECメーター(=チッソ量)位じゃないでしょうか。

> それらをコンピュータで管理しながら行なえたら、
> 今まで気づかれていなかったことで見えてくるものもあるかも。

なんか変数が多すぎてデータにならない気がします。
環境をコントロールするためにハウスがあるので、そういうのはハウスに向いてますよね。
データすら取っていないハウス栽培してる人も多いようですが。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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