鹿を食べながら日本の山のことを考えてみた

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下北沢のオーガニックカフェ「オルガン堂」をお借りして、一日だけのほんたべレストラン開催。
鈴木康太郎シェフのおいしい鹿料理をいただきましたです。鈴木シェフ、ありがとうございました。
写真撮影・提供 (有)空組・廣田修氏 廣田さん、きれいな写真をありがとうございます!



11月27日(日)、「ほんものの食べものくらぶ」イベント、
月一回おいしいものを食べる会「日曜倶楽部」を開催しましたです。

テーマはここ何年か害獣の代名詞ともなっている「鹿」。
講師は日本オオカミ協会の朝倉裕さんです。

日本の山を丸坊主にし、バンバン繁殖し農産物に被害を与え(推測400~500億円)、
各自治体から「電柵作るお金が大変」と悲鳴が上がっている鹿。
なぜこんなに増えたのか。どうして増え続けるのか。その原因は何なのか。

鹿肉をおいしく食べて、お勉強いたしました。

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オオカミに敬意を表して、ワインはオオカミラベルのものを選択したですよ。
ワインのチョイスは成城学園前駅前の玉井商店さんです。おいしゅうございました。



さて、熊以外に猛獣と呼ばれる動物が存在しない国、日本。
生態系の頂点にいる動物は、何でしょう。
よ~く考えて出てくる答えは「猛禽類」でございます。

…あれ?そんなもんだっけ? 

羽を広げると2mにもなるものもいるけど、猛禽類が襲うのは小動物。
鹿やイノシシなどの大型の野生動物を襲う猛獣は、
日本オオカミが絶滅して以来100年、空席のままなのです。

食べものの不足していた明治時代から昭和40年代ごろまでは、
各地にハンターが存在し、鹿・イノシシなどの野生動物を狩っていました。

日本に食べものがあふれるようになると、野生動物を狩る必要はなくなり、
さらにお店で安くお肉が買えるようになり、ハンターも減り始めます。

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一皿目「カツオのマリネと秋の茸のケーキ サラダ添え」  このドレッシングと、
きのこのケーク・サレがおいしいのなんのって!!
ちなみにサラダの野菜・ルッコラ、ベビーリーフはほんたべ農園産でござります。

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メイン「エゾ鹿のブルーベリー煮とローストの2種の料理 季節の野菜添え」
ローストはジューシイで柔らかく、ブルーベリー煮は甘酸っぱくお箸でも切れる柔らかさ。
獣肉が苦手なわたくしの鹿肉に対するイメージが変わりました。



とくに若年層では「殺生」を嫌う傾向が強いのか、ハンターの後継者は
現在ほとんどいません。各地で活躍してるのはじいさまハンター。
罠猟師も減少傾向。農業同様、高齢化が叫ばれております。

かてて加えて、温暖化により冬季に凍死・餓死する鹿が減り、
お腹をすかせた鹿が樹皮をはぎまくり、樹皮をはがれた樹は枯死し、
鹿によって日本の山が死につつあるというのが現在の状況です。

狩猟圧というプレッシャーが無くなった今、駆除するしかない状態だけど、
駆除するじいさまもどんどん減っている。
ではどうする? だったら昔、生態系の頂点にいた動物を導入すれば?

それが、オオカミ導入という考え方です。
グラフ
最盛期の1970年代と比較して、昨今のハンターの激減は恐ろしいほど。
散弾銃からライフルに行くまでに、10年かかることもネックになってるという噂が。
環境省・狩猟者統計から。資料提供・日本オオカミ協会 朝倉裕氏

日光前
実際の鹿被害を見てみましょう。
日光白根山におけるシラネアオイ群落の景観・1984年撮影。これがこうなった↓

日光後
シカが食っちゃったので群落が消失してしまいました。1994年6月25日撮影。
南アルプス・丹沢・伊豆半島・紀伊半島などで同様のことが起きています。



初めて聞いた時、何て理にかなっているのだろうと思ったわたくし。
陰ながら「日本オオカミ協会」を応援し、北海道にオオカミも見に行きました。

人を襲うんじゃないかという不安を持つ人が多いそうなのですが、
年に20例はある報道されないヒグマやツキノワグマの大暴れ情報や、
オオカミと共存している地域では全く人は襲われないなどと知ると
そこんとこは気にならないわたくし。だいたいクマの方がコワイし。

よく引き合いに出される赤ずきんちゃんの話は、
「ママの言うことをちゃんと聞かないから食われちゃったのよね」
という寓意を含む物語だと思っているので、
オオカミが悪者だとは思わないわたくし。

責められるべきは遊び呆けていて食われるきっかけを与えた
赤ずきんちゃんであろうと思ったりします。
(グリム童話の原本は赤ずきんちゃん食われっぱなし)

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デザート「かぼちゃのムースとゆずのコンポート」 お砂糖なしでもあまくって、
鈴木シェフが「これはいいかぼちゃですね。どなたのですか?」と尋ねたほどでした。

徳弘
さてその原料の坊ちゃんかぼちゃをご提供くださったのは、
北海道・富良野に新規就農した、某D社・元同僚の徳弘英朗さんと京子さんご夫妻。
徳弘さんはじゃが玉も提供してくださいました。ありがとうございました!!



しかし、100年という時間はとても長い時間です。
その間私たちの生活環境、とくに意識が大きく変わっています。
そこにオオカミが戻ってきたらどうなるか。

参加者のお一人の最後の言葉が印象に残りました。

「日本という国は、絶対安全と言いすぎる国。
危ないところには必ず柵を作る国。そこで何か事故があると、
県や国の責任にする国。そういった国では、自己責任という概念が
育つのは難しい。常に責任の所在を問われるから。

そこが個人主義の欧米とは違うところ。

オオカミを導入して何かあったら誰が責任を取るんだという話になるから、
導入側が慎重になる。これを説得するのはすごく難しいよね」

ドイツ
ポーランドからやってきたタイリクオオカミが定着したドイツのラウジッツ周辺。
森林地帯ではなく民家も多い田園地帯です。ここで共生できているという事実。
昼間人間が使っている舗装道路を、夜半にはオオカミが歩いているという画像を見ると
共生は可能なのだと思います。オオカミは本来、人目につかない臆病な動物なのです。



実は、ドイツではポーランドからオオカミが国境を越えて移動し、
オオカミが定着しています。そこでは人とオオカミが
互いの生活をおびやかすことなく穏やかに共存しています。

しかし、日本人がこの事実を受け入れるのは、少し難しいでしょう。

日本では、野生動物との付き合い方を勘違いしている人が多く、
平気で餌付けし、野生動物に襲われるきっかけを与えたりします
それで襲われたとしても、自分たちに責任があるとは思わない。

であれば、啓蒙・啓発活動がかなり必要であろうと感じます。

オオカミ
日本の山はこの100年の間に開発され、棚田なんかもできたのですが、
現在はまた100年前の状態に戻りつつあります。農村が荒れているからですね。
中途半端に残っている開発された部分で鹿・イノシシが増えているのです。
人間が捕食者でなくなった今、そもそもの捕食者によるプレッシャーが必要なのでは。



鹿とオオカミという切り口から、いろいろな問題が見えてきたこの日。
おいしく鹿を食べることが鹿を減らすことにはつながらないという
ショーゲキの事実も発覚し、鹿問題の解決策は現状では手詰まり=ない!
ってことがわかったのでございます。

皆さんも、鹿、さらにオオカミについて、あれこれ考えてみませんか?
 
反対・賛成、どちらにしても、不安があればテーブルの上に乗せ、
議論し双方理解することが、やるべきことであろうと思ったのでございました。

オオカミ導入についての詳細はこちらから→日本オオカミ協会


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No title

鹿肉は、フレンチレストランのジビエでも、捕獲したじーちゃんの妻が作る醤油たっぷり料理でも、大大好きです

こんな美味しいものがスーパーに並ぶようになれば
さまざまな問題が一気解決するのに、と思うことあります

無理やり家畜を育てずとも、旨い肉はありあまるほど畑の周りにいるんですからね

Re: No title

utinunoさん

> 鹿肉は、フレンチレストランのジビエでも、捕獲したじーちゃんの妻が作る醤油たっぷり料理でも、大大好きです

鹿肉お好きなんですね!
今回のイベントやって思ったのですが、鹿肉を食べたことない、または、一度食べたら臭くてそれ以来キライ、って人がほとんどでした。

若いの限定で臭みないからと言っても、やだって言う人が多かったです。

最初に食べた鹿肉のイメージを、いつまでも引きずるのだなあと思いました。
今回のが初体験だった方は、鹿肉=柔らかくておいしいってイメージを持ってくださったと思います。
(実は私もレストランのジビエで出てくるヤツ、苦手なんですよね、臭くて。
知床の猟師さんの家で食べるのはすごくおいしいんだけど…)


> こんな美味しいものがスーパーに並ぶようになれば
> さまざまな問題が一気解決するのに、と思うことあります

一般流通に乗らないってのがネックですよね。
最近、一般流通に乗らないってだけでマイナー商品になるしくみがわかってきました。
メジャーになり、人々に食べてもらうには、一般流通にのせる仕組みを作んなきゃダメってことですね~。

イノシシでも鹿でもタヌキでも小鳥でも、皆食べられるんですけどねえ。
まあ私は小鳥すらさばけませんが…(泣)

No title

こんばんは。
このままでは問題が解決しないという事が、よくわかりました。
農家の集まりでも、鹿問題は話題になりますが、
オオカミ導入論は議論されてませんね。
今度話題になったら、オオカミ導入論を語ってみます。

>日本という国は、絶対安全と言いすぎる国。・・・
いつからこんな国民性になったんのでしょうかね?
公園の遊具で子供が怪我をすると、安全対策だと言って遊具が撤去される。
池で溺れると、周囲に柵は設置していなかったと報道される。
コンニャクゼリーで窒息すると、商品に問題があるとされる。

絶対安全な世界など有る筈が無いのに、誰かがそれを保障してくれると思っている気がします。
自分の頭で考えて判断するという事が出来なくなってきている。
危ない宗教や投資詐欺の被害が後を絶たないのは、まさにそれではないでしょうか?

生きていく以上、色々なリスクや失敗が隣り合わせであるという事を忘れないようにしたいです。

美味しそうな料理の数々、寝る直前なのにお腹空いた。

Re: No title

スナフキンさん

こんにちは。

> 農家の集まりでも、鹿問題は話題になりますが、
> オオカミ導入論は議論されてませんね。

知らない人の方が多いと思います。

マジな話なの?と最初は皆が思いますが、マジな話です。
シンポジウムもあるそうですから、もしお近くで開催された際にはぜひ。

南アルプスでの鹿被害があまりにもひどいので、
議員さんでは知ってる人もいらしゃるみたいです。

今回イベントしてわかったのは、都市部の人たちは「鹿被害って何?」って人が
ほとんどだってことでした。皆農村に行って獣害の話なんか聞かないんですもんね。
そこかしこで電柵見て「鹿が食っちゃった」って話を昔から聞いてたので、
当たり前と思っていた私には少し意外でした。


> 公園の遊具で子供が怪我をすると、安全対策だと言って遊具が撤去される。
> 池で溺れると、周囲に柵は設置していなかったと報道される。
> コンニャクゼリーで窒息すると、商品に問題があるとされる。

そうですね~。
クレーマーと言われる人たちが急増してるのも、こういったことと無関係ではない気がします。
客商売は大変ですよねえ…。

そう言えば、アメリカでの食品衛生基準では、100Pのうちにハエが一匹入る程度はOK!
って法律で決まっているそうですが、日本では異物混入は絶対に許しません(消費者意識として)。
それで加工品メーカーは食品衛生ってところで大量に経費が発生しています。
(だからこそ日本の食品は安全って言えると思うけど)

余談ですが、某D社にいた頃、白菜か何かにちっこいアマガエルがくっついて
消費者宅に配送されたことがありました。
その消費者はとても喜んで、「子どもと面倒見てます」というメールが来ました。

ちょっと楽しい話なので会員情報誌に掲載したところ、怒りのお手紙がきました。
「カエルは異物混入。ノーテンキにそんな話を情報誌に掲載するなんて。
企業としてなってない」という激怒のお手紙でした。むひ~。

カエルは異物混入…なるほど~と思い反省した次第です。
入ってた消費者は怒ってないんだけど…なぜあんたが…と思ったりしましたが。

基本的にはちょっと笑って欲しかった話だったんですけどねえ。

>
> 絶対安全な世界など有る筈が無いのに、誰かがそれを保障してくれると思っている気がします。

放射能の件も同じようなことだと思うんですけど。
誰にも「安全だ」と言えない限り、自己判断するしかないんですよね。数値を見ながら。


> 生きていく以上、色々なリスクや失敗が隣り合わせであるという事を忘れないようにしたいです。
>

そうですよ。フツーに生きて行くのでも命がけですよ(笑)。
何が起きるかわかんないですもんね。

No title

こんばんは。
確かに都会にいると
「熊が出た!」はニュースになるけど、
「鹿が出た!」はニュースにならないですね。
自分も年に数回、「農作物の被害が・・・」位しか知らなかったし
深刻な問題だと認識していませんでした。

白菜とアマガエルの話は、悲しい話ですね。
アマガエルが異物ですか?
心に余裕が足りませんね。
アマガエル君、怒りのお手紙の方の所へ行かなくて幸せでしたね。

Re: No title

スナフキンさん

こんにちは。

> 確かに都会にいると
> 「熊が出た!」はニュースになるけど、

クマニュースも、意外と報道されていないみたいです。
大暴れするとけっこう全国ネットで出ますけど、人死にが出たりしてるのはあんまり。
なのでクマはかわいい動物と誤解してる人が多いですよね。

とくにヒグマなんかに遭遇すると、もう助からないって思った方がいいほどの猛獣
ってな認識は薄いみたいです。

> 「鹿が出た!」はニュースにならないですね。

なりませんねえ…。

そう言えば、知床半島では野良犬のように鹿がウロウロしていました。
禁漁区だから撃たれないこと知ってんですね。全く警戒してませんでした。


> 白菜とアマガエルの話は、悲しい話ですね。
> アマガエルが異物ですか?


「なるほど!確かに異物!」だとは思ったのですが、
悲しかったです。そう言われると、アオムシもヨトウも異物です。
正論ではあるんでしょうが、なんかこうもうちょっとさあ、くすっと笑って欲しかったんだけど…。

心に余裕がなくなるとギスギスしちゃうので、いつもアハハケラケラと生きて行きたいですね。
ほんと。

猪や鹿などの獣害対策に日本オオカミ協会ホームページの"Q&A"にあるように狼の導入を! http://japan-wolf.org/content/faq/ ここで大体の疑問は解消できる
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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