「作ること」と「売ること」は両立できるか

新規就農者のためのイメージ
ひたすらに作物と向き合い、おいしいもの、安全なものを作る人。
そういう人がわたくし大好き。でも「上手な人」は「売ること」が不得手だったりします。
流通任せでもいいんだけど、独自の販売ができるともっといいですよね。
写真提供・市川泰仙氏



某D社で産地担当になった2000年。

当時は「有機農産物」(有機JAS施行前だからね)なら売れる時代…
でもなく、すでに「安全な野菜」の勢いはなくなりつつありました。

一時的に某D社では作付減という事態に見舞われ、
産地訪問して作付を減らす交渉をした際によく言われたのがこれ。

「何を作ればいいんだい?」
「もうこれからは作れば売れるって時代じゃないんだね」
「消費者や流通が欲しいってものを作んないと」

「作れば売れる時代ではない」とその時農家の方々は認識したのでした。

そしてわたくしは「戦略とか無く、ただ作ってたのか!」と多少の驚きをもって
この言葉を聞いたのでした。

tomato.jpg
昨年リサーチに出かけた直売所「セレサ川崎」で感動したPOPがこれ。
一般ピープルには全然わかんないトマトの品種名を紹介しています。さらに。
常連らしきお客さんが「桃太郎が欲しいの」と品種名特定で買ってったのにもびっくり。

gazou 007
もっとすごいのがこれ。じゃがいもの品種ごとにお勧めの料理名が書いてあります。
消費者は品種名なんかわかんないだろうという思い込み、ダメですね。
要は「何を伝えるか」「消費者にどうしてもらいたいか」を考え、さらには、
そのことで消費者に満足を与えることができるかどうかだと思います。



「マーケティングを行い売れ筋のものを考えてうまいこと売る」
当たり前だと思ってたことは農業の世界では当たり前ではなかったのでした。

生きていくの必要な食べものだから? 嗜好品じゃないから?
そんな風に思ったことを覚えています。

この言葉は、10年経った今でも割合とよく聞きます。
「何が売れるかわかんないから教えてほしい」

産地に行くと「あそこんちは今年ブロッコリーで儲かった」とか
「カリフラワーが良い値だったから御殿が建った」ってな
噂話をよく聞きます。

自分で取引先を持ってる人たちは関係ない話だけど、
資材屋さんや種屋さんの話で情報は入ってくるのですね。
こういう噂話は主にJAや市場出荷の慣行農家のお話です。

gazou 009
今朝のNHKニュースの話。
トウモロコシの代わりに米を食ってる鶏の卵の黄身が白いのを逆手にとり
「真珠卵」とかで売り出してる栃木県の事例が紹介されてました。なるほど!
別物として考えて販促すればよかったんだ!と自分の来し方を振り返り反省したです。



で、何が起こるか。

噂になった作物を、翌年皆が作っちゃうのです。
皆が作れば値段は下がるだろうになあと思うのですが、
どういうわけだか作っちゃうのです。

この傾向を見るたびに、儲かるためには人がやってることを
そのままやってちゃだめなんだという商売の基本が見えてきます。

でもね、でもね。JA・市場に出し続けているとたぶん、
販売戦略とか考える必要なくて、ただモノを粛々と作り出荷して
それなりの収入を得られるのだとも思えます。

「アタシは作るから売って頂戴」ってことなのかもしれませんね。
ところが最近、ちょっと状況は一変しております。

販売も栽培もできる農家。こういう人々が必要とされています。
代表的なのが「農村漁村の6次産業化」という政策です。

ぶどう畑三森さん
勝沼でぶどうを作ってる三森さん。さまざまな品種のぶどうを栽培しています。
自家製の干しぶどう、ブロックワイン工場で作った地域限定ワインなどで六次化を推進。
ぶどう畑にホルスタインを放して草を食べさせ、消費者イベントを開催するなど、
地域の資源を利用してさまざまに仕掛けを作り、地域活性を実現しています。



これは「雇用確保と所得向上のため」というお題目で、
けっこうな額の助成金が準備されています。

農水省のHPを見てみると平成23年度の事業が全部書いてありました。
知ってる農家が何軒か採択されてましたが、「やり手」といわれる人ばかり。
やっぱりなあ。

農山漁村の6次産業化
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika.html
六次産業化法に基づく認定事業計画一覧
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/nintei/pdf/110531-03-2.pdf

限界集落、離農、高齢化、失業率の上昇、人口流出…
農村における問題は山積しています。

農村の未利用資源(バイオマス・農産物等)を発見し、
それらを活用した産業を興し、雇用を発生させ人口の流出を止め、
販路を拡大して農村に利益を還元するしくみを作る。

調理室
地方によくある補助金で立てられた立派な箱モノには、立派な調理室があったりします。
こういうのあるとイベント作りやすいし農産物加工もやりやすいんだけどなあ。
やりたい人がいる地域にはなかったり、ある地域ではやる人がいなかったり。
うまくいきませんね~。



ざっくり言うとこれが六次産業化。
縮めて「6次化」とも叫ばれてたりします(地デジカじゃないよ)。

「補助金とりあえずもらって加工場作っちゃえ!」とか
「六次化って何すんですか?」的な人もまだたくさんいますが、
これがうまく機能すれば、農村が活性化するんじゃないかと
最近思うようになりましたのです。

「作物と向き合っていいものを作る」のはとても尊くて大切なこと。

わたくしはそういう農家が大好きなのですが、何軒かに一人は
「売ること」に特化した戦略を立てられるような人が必要なのだろうと思います。

「地域全体が元気になる」ためには、
個別の農家が調子良くてもダメなのですから。

gsazou 006
昨今流行のマルシェですが、地方から出店しても費用対効果を考えると基本的に赤字。
結局安売り競争になるようなマルシェなんかには出すだけ無駄だけど、
意識が高い人々がよく訪れるマルシェなら出す意味ありそう。しかしそういうとこほど
出店料が一万円くらいしそうよね。100円の人参を100個売っても元が取れないぞ。



今回、六次産業化についてきちんと取材したわけではないので、
とりあえず今ネットと伝聞情報のみでこれを書いていますが、
ご興味のある方は、農水のHPにわかりにくい詳細が書いてあります。

また、具体的にアイディアがあり実現したいという方には、
以下のような事業があります。

中小企業ネットワーク強化事業
(平成24年も予算化されたかどうかは未確認)

地元の商工会議所に行って相談してみてください。
懇切丁寧な無料のコンサルが受けられます。
商工会のメンバーでなくとも相談に乗ってくれるそうです。

補助金ありきでものごとを考えるのはちょっとなあって気もしますが、
これからの農家は、どこかで意識を変えることが必要になってきそうです。


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No title

この問題とても興味深いです

新規就農のひとには、
目的は自給自足で、不思議なくらい売ることには興味ない(または消極的な)人多いと感じます

自然農、有機農の周辺をうろうろしながら、マーケティングにも戦略的な農家が増えると、日本の農業はもっと太く強くなると思います

いま新規で農業をやろうと考える人は、貨幣経済に翻弄されたくないと考える人が多いようで

翻弄されないために戦略的になるのも方法だと思うのですが

どっちにしても農業は、天候や社会や経済に翻弄されまくる宿命にありますもの

「いいもの作って、ちゃんと売る」は、クルマでも服でも大根でも必須の命題ですよね~

大根だけ経済圏外にもっていくのは、農業に失礼だと思うんですよね~


「わたしはお金を儲けるために農業したことはありません」

って、某有名講師は言ってましたが、この勢力は大きいですね




Re: No title

uchinunoさん

こんにちは。

> 新規就農のひとには、
> 目的は自給自足で、不思議なくらい売ることには興味ない(または消極的な)人多いと感じます

uchinunoさんもそう感じてらっしゃいましたか。
割合と多い気がしますよね。
私の知ってる人たちは「売れないでどうする!」的な人が多いですが、
あまり知り合いじゃない人(どういう知り合いだ…)は「儲けることが悪」みたいな感じ。

> 自然農、有機農の周辺をうろうろしながら、マーケティングにも戦略的な農家が増えると、日本の農業はもっと太く強くなると思います

新規就農する人は、何年間か社会人としての経験があったりするので、
農村に入っていくと非常に有利だと思うんですけど。

都会で培った知識や経験で、農村のことわりも理解できてってのが
地域活性や販売に必要とされる人材だと言われています。
そういう人たちが地域に信頼されて活躍できるといいんですが。

そうすると農村も元気になると思うんです。

>
> いま新規で農業をやろうと考える人は、貨幣経済に翻弄されたくないと考える人が多いようで
>

そこに嫌気がさして農業を目指した場合は、
「自分と作物と環境」いう関係を大切にされるのかしらんと思ったりします。


> 大根だけ経済圏外にもっていくのは、農業に失礼だと思うんですよね~

あっ、これ名言ですね~。
その通りだと思います。
農産物だけ安くなくちゃダメ!みたいな(あっ、牛乳や卵もですけど)のは
作ってる人に失礼だと思います。


> 「わたしはお金を儲けるために農業したことはありません」

うーん。
立派だけと本当かしらと思うのは、わたしの根性が曲がってるからでしょうか(笑)

やっぱり儲からないとだめですよね。

でも農村の体質にも微妙に問題があって、
「儲かった」と言うとねたまれるから、基本的にどんなに儲かっても
常に儲かってないふりをするんだそうです。

根は深いっす~。

独立事業者

つくることに専念して農協や市場に出荷する、というのは言わば下請け、
価格決定権すら無いかたちでの下請けではどの業界でも立場は厳しいですよね。
製造業にせよ、ソフトウェア業にせよ、その他の業界にせよ。
独立事業者である以上は、自らの製品・サービスを持ち、
自ら売っていかないことには発展はなかなか期待できないですね。

ところで、ほんたべさん、
家族で農業をやっている農家(非法人)の経理事情の細かいことってご存知ですか?
昔は主人(旦那さん)が個人事業者で、奥さんはそれを手伝うかたちで、
営農の通帳名義は主人のもののみ、という感じが多かったと思うのですが、
(実際にその口座を管理しているのは奥さんかもしれませんが)
最近は女性の自立の意識も高まってきて、
奥さんも自分名義の営農口座を持ち、
それぞれの責任作物を分けて自分の収入を得る、
というかたちが徐々にですが増えてきているようです。
(子どもが手伝うようになった場合も同様に)
もちろんお互いに作業を手伝うことは普通にありで。
税金的には、各種控除額を超える所得が無いと得にはなりませんけども、
望ましいかたちだと思っています。
償却資産を購入する上手なタイミングとか、
経理事情もそれなりに知っておく必要があるなと思います。

そのあたりの諸々の事情とか参考になるような情報とか、
何かご存知であれば教えていただけると幸いです。

Re: 独立事業者

H2さん

イベントやったりしてて返信が遅れました。
すみませんです。

> つくることに専念して農協や市場に出荷する、というのは言わば下請け、

その通りだと思います。
でも農業ってそういう形にされたのかもしれませんね。
食管制度とか、闇米とかの話を聞くと、そう思います。


> 家族で農業をやっている農家(非法人)の経理事情の細かいことってご存知ですか?

うーん、そういうの聞いてもあんまり教えてくれないので、
経理のことはほとんど知りません。


> 最近は女性の自立の意識も高まってきて、
> 奥さんも自分名義の営農口座を持ち、
> それぞれの責任作物を分けて自分の収入を得る、

生産者団体などを組織しているところでは、婦人部という口座があって、
女衆が作った加工品を売った場合はそこにプールするなんつー話を聞いたことはあります。

でも通常では、流通側が一戸の農家との取引口座は一か所って決めてるので、
個別に入金なんかはしないんじゃないでしょうか。

一家のうちの入金先が二か所とかだと、経理事務が煩雑になるので通常はそういうことはやりません。
というか、お願いしても断られます。

また、個人産地と付き合わないって方針のところが多いので、
一度団体の口座に入ったものを、農家ごとに入金するってとこがほとんどでしょう。

その際に一戸にふたつ口座を許すかどうかですが、事務作業の煩雑さを考えると
「自分ちで分けてよ」と言われそうですよねえ。

また、給料という形で、妻・子に支払ってる例は知っていますが、
そのへんは詳しくありません。

個人事業開業届

>その通りだと思います。
>でも農業ってそういう形にされたのかもしれませんね。

民衆を支配するには、
自立させずに依存させるのが為政者にとって好都合ですからね。


>うーん、そういうの聞いてもあんまり教えてくれないので、
>経理のことはほとんど知りません。

そうなんですかぁ。
意識して分けてやってる人をみつけられれば、
その理念みたいなところを語ってくれる人もいるかなと思うんですが、
まだ少ないかもですね。

旦那さんが野菜で、奥さんが花卉、とか、
米と野菜で別々とかって時々見聞きしますけども。

税務署的には、
実体が完全に一体なのに名目だけ分けるのはダメだが、
実体が分かれていればOKとのことです。
もちろん個人事業開業届は別々に出す必要がありますが、
特に資材管理とかきちんとしとかないとですね。


>でも通常では、流通側が一戸の農家との取引口座は一か所って決めてるので、
>個別に入金なんかはしないんじゃないでしょうか。

例えば夫婦や親子で同じ職場に勤めていたとしても、
給与振込先が同じ口座だったらおかしいわけで、
農業に限って「戸」で考える必然性って本来的には無いのですが、
取引先にそこんとこの認識や理解があるかどうかで大きく違いそうですね。
意図を説明して理解してもらえればOKですが、
理不尽に断られたとしても、その取引先には一方しか取引しなければOKですね。
野菜セットに両方のものを入れるとかになると、
経理上案分して取り扱うことになるので手間になりますが。

生産者団体を通す場合も、そこの理解次第ですよね。
実家の地域の農業法人では確か分けられたような...
女性部で共同作業する分も口座を分けて独立管理になってますね。


>また、給料という形で、妻・子に支払ってる例は知っていますが、
>そのへんは詳しくありません。

青色申告の専従者給与、白色申告の専従者控除の説明を読んでいただくとわかるのですが、
控除を踏まえて給与形態で払うのって、
収入変動が大きい場合がある農業だと結構シビアな感じなんですよ。
青色事業専従者給与は事前に額を届けないといけないし、
白色申告の事業専従者控除は低額です。
もちろん控除を気にせず給与を払ってもいいですけど、
お手伝い程度ならともかく、しっかり専従する場合は、
別々の個人事業者とした方が経理上スムーズに思えるんですよね。
複式簿記もソフトを使えばそんなに難しくないですし。

専従者給与と専従者控除
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2075.htm
事業主と税金
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/shoto316.htm
夫婦と税金
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/shoto301.htm

Re: 個人事業開業届

H2さん

こんばんは。


> 意識して分けてやってる人をみつけられれば、
> その理念みたいなところを語ってくれる人もいるかなと思うんですが、
> まだ少ないかもですね。

相当仲良くならないと経理のことなんか教えてくれないすよ。
かまどのことは、聞くのが難しいです。


> 取引先にそこんとこの認識や理解があるかどうかで大きく違いそうですね。
> 意図を説明して理解してもらえればOKですが、

私の知ってる流通は大手じゃないので、JAなんかはOkなのかもしれませんよ。
そのへんは全く無知なのです。

小規模であればあるほど計算間違いとかありますから、
煩雑になると事務局がやりきれないみたいなことはあるんじゃないでしょうか。

経理

>相当仲良くならないと経理のことなんか教えてくれないすよ。
>かまどのことは、聞くのが難しいです。

相当がどの程度かってものありますが、
ほんたべさんが経理に特別な関心が無かったこととか、
ほんたべさんの立場の影響とかが大きいのではないですかね。

別に数字を聞くわけじゃなくて、経理にやましいことが無ければ、
(どんぶりの農家さんも多いとは聞きますが...)
ある程度面識があれば、どういうやり方をしているかはしゃべってくれるでしょう。
何でも秘密主義の人は別ですけど。
あと聞く側もそれなりの情報を持っていた方が聞きやすいでしょうね。
使いやすい経理ソフトの情報とか、
こうしたら節税になるよっていう知識とかも。

独立事業者にとって経理って必須の素養の一つですから、
ちょっとマルシェとかでリサーチしてみますね。

Re: 経理

H2さん

> 独立事業者にとって経理って必須の素養の一つですから、
> ちょっとマルシェとかでリサーチしてみますね。

ぜひぜひ。
うまいこと聞けたらぜひご報告お願いいたします!
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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