「化学肥料」は「悪」か?

gazou s038
栽培期間の短い葉物類は、チッソ分が初期に必要なのですが、
たくさんあるとあるだけ吸ってしまうので、虫や病気を呼んでしまいます。
で、農薬が必要になるという理屈。足りなくても生育不良で虫はやってくるんだけど。
小松菜なんかはバカっぽいから、前作の残り肥料でも大きくなる気がするけどなあ。



むか~し、有機JAS認証を取得した農家に言われたことがあります。

「化学肥料と農薬をセットにして悪いものって言っとるけどね、
理想は95%が有機で、あとの5%が化学肥料だと思うね。
そうすると、絶対にいいもの、おいしいものができるだよね」

ちょっと待って。

農薬と化学肥料ってセットで「悪」って言われてませんでしたっけ?
素朴な疑問を持ったわたくし。

その後、知識が増えるにしたがって、
その農家のおっしゃることはごもっとも!と思うに至りました。

化学肥料は適正な使い方をすれば悪にはなり得ないのです。
(有機JAS認証は取れないけどね)

gsazou 076
上里町の須賀さんが使っている堆肥。堆肥と言っても原料は河原の草だけ。
チッソ分はほとんどないと思うのですが、畑には長年の蓄積で微生物が多いので、
無肥料でも作物が栽培できる土ができているのでしょう。一朝一夕にはできないことですが、
こういうお話を聞くと「循環」という有機農業のすばらしさを感じます。



戦後、そしてそれに続く高度成長期。
とにかくたくさん食べものを作って
国民がおなかいっぱい食べられることを目標にしていた時代。

有機質肥料では効率が悪く、収量も低いため、
大量の化学肥料を使うことが奨励されておりました。

化学肥料を多投する→軟弱な野菜になる→虫害や病害が発生する
→大量の農薬を使って病虫害を無くす。

ざっくり言うと、これが当時の農業。近代農業とも言われていました。

その農業に疑問を持った人々が、対極のものとして位置づけ、
自分の畑で始めたのが、有機農業でございました。

当時は「農薬&化学肥料」はセットで「悪」だったのです。

IMG_5499.jpg
ホームセンターに行くと売ってる化学肥料。チッソ分の硫安とカリ成分の硫酸カリ。
それぞれ裏面を見ると何%含まれてるか書いてあります。これは有機質肥料でも同じです。



さて、有機質肥料のネックは、その遅効性にあります。

なにしろ、一度微生物が分解して有機質を無機質に変えないと
野菜は吸ってくれません。
パラパラとまくとすぐ効いてくれる化学肥料とは違います。

畑に微生物がたーくさんいて、CECも腐植も高く、
地温がひとんちの畑よりも2~3度位高くて有機質の分解が早く、
さらに土壌分析を毎年ちゃんとやっててバランス取れてる畑なら、
即効性云々気にしなくてもOK! 微生物がちゃんとやってくれるから。

でも皆の畑がこんなんじゃありません。

たとえば高原産地。雪が溶けてすぐ、すっごく寒い時期に
キャベツやレタスの苗を定植します。

これら巻物は初期生育でその後の大きさが決まりますので、
最初に外葉を大きくしておきたいわけです。

IMG_5498.jpg
ホームセンターで見つけた配合肥料(化学肥料)。成分を見ています。
チッソ8%、リン酸8.5%、カリ8%。NPKがバランス良く含まれていますね!
チッソ分はアンモニアの形で含まれています。この肥料を散布すると、土壌中の
硝酸化性菌が硝酸態窒素に分解し、それを作物が吸うのでございます。



ここで有機質肥料を使うと、寒くて微生物がじゅうぶんに働けず
効きが遅いので、初期の効いてほしいときに効いてくれません。
初期生育が悪く、ちっちゃいものしかできなくなっちゃいます。

また、あったかくなると分解が進み、急激に効いて虫を呼んだりします。
なので、初期のみ即効性のある化学肥料を使いたい人がいるのです。
これは北海道なんかでも同じかもしれませんね(露地の場合)。

そしてもうひとつ。

特定の要素の欠乏症が出ている場合も困ります。
必要なのはカリとか苦土だけ。「それだけ欲しい!」のに、
有機質肥料だとそれだけじゃなく他のものが入ってたりします。

「今これだけ効いてほしいの!今すぐ!」って時に使えない。
おいしいもん作りたいと思ってる人ほど、ストレスがたまるようです。
(最近は有機JASで使える単肥の資材も増えてますけど)

上記の農家は、この部分を5%の化学肥料と言ってたのでした。

IMG_5500.jpg
これが硫酸カリの裏面。水溶性のカリだけが50%入ってます。
カリを有機資材で賄う場合、通常草木灰等を利用しますが、灰にはカルシウムが存在します。
しかもカリ分7%くらいなのにカルシウムが20%もあったりして、
カルシウム過剰の畑には入れたくないわけです(石灰過剰の畑、すげえ多いから)。
そういう場合に単肥としての化学肥料は便利なのですね。



法律で決められた資材しか使えない有機JASってどうよ?

考え抜いておいしいもん作ろうと思ってる農家にプラスにならないなんて、
取得する人が増えないのは当然って気がしたりします。

結局この農家は10年ほどで有機JAS認証を辞めてしまいました。
心の重荷がとれたようなすがすがしい顔をされてました。
無理してまで有機JAS認証を取ることない。とってる人はスゴイけど、
ちゃんと評価されるべきだけど。されてないけど。

わたくしナイショですが、今でもそう思っております。

しかし、高度化成をバンバン入れて、病害虫が出たから農薬まく
なんて場合の化学肥料は「悪」としか言いようがありません。

そして有機質肥料の場合も、大量に投入すれば「悪」になりえるのです。

gazou 031
大量の虫が発生している畑には、通常チッソ分がたんまり入っているものです。
「有機栽培だから虫が出る」のではなく、施肥設計を間違ってるから虫が発生するのです。
多少の虫害は虫の取り分。でも大量発生には理由があるもんです。



「チッソ」という肥料分は、有機も無機も最終的には硝酸態窒素になり、
作物に残り、吸収されなかったものは雨に流れて地下水を汚染します。

そこが農業の難しいところ。
そして「有機だから安全とは言えない」といわれるゆえんです。

要はほどほどということでしょうか。というか、必要分だけ入れる、
あるいはアンモニア発酵しちゃった堆肥ではなく、ボカシを作り、
チッソ分を硝酸態窒素ではなく、アミノ酸で効かせる…というのが
理想の有機農業。わたくしの目指す有機農業なのでございます。

※今回有機農業の「思想部分」については言及しておりませんです。
書くと長くなっちゃうので書きませんでした。


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No title

ほんたべさんこんにちは。

今回の記事、数字がたくさん出てきてちょっと難しかったですがおっしゃることはだいたい理解できました。
〇〇農業は良い農業でそれ以外は悪い農業、みたいなとらえ方は逆に「有機JAS法」みたいに教条主義に陥いる危険性がある、ということかと理解いたしました。

>化学肥料を多投する→軟弱な野菜になる→虫害や病害が発生する→大量の農薬を使って病虫害を無くす。

こういうサイクルってなんか他でもありそう。例えば
「お手軽で高カロリーのものばかり食べる→太って軟弱になる→いろんな病気にかかる→結局薬を飲むハメになる」
とか、
「原発つくる→やたら儲かる→有象無象が群がって隠蔽体質になる→事故る」
とか。
ん、ちょっとちがうかな。

ではでは。

No title

あ、上のコメント投稿したのは私です。失礼しました

No title

 有機肥料も化学肥料も多投すれば悪。
 うちのジャガイモには硫安を幾分使っています。早期に成長を図り、地上部分が完成するころには肥効が無くなり、あとは地力と完成した地上部分が太陽光を澱粉に変えて蓄積してくれます。
 効率と味のバランスをとりながら、どちらも高いレベルを目指すのならば、むしろ化学肥料をいくぶんは使った方がいいような気がします。もっとも、品目で随分違うでしょうが・・・

Re: No title

Fuさん

こんばんは。

> 今回の記事、数字がたくさん出てきてちょっと難しかったですがおっしゃることはだいたい理解できました。
> 〇〇農業は良い農業でそれ以外は悪い農業、みたいなとらえ方は逆に「有機JAS法」みたいに

いろいろ情報があふれているけど「ほんとかな?」ってなものもありますもんね。
気をつけねば…っていうか惑わされないように気をつけてね!と思います。

> 「お手軽で高カロリーのものばかり食べる→太って軟弱になる→いろんな病気にかかる→結局薬を飲むハメになる」

あっ、これ、まさしくチッソ入れすぎ、
そしてカルシウム過剰で塩基飽和度が100%とかになっちゃってる畑です。

入れすぎてて取り返しがつきません。持ち出すのに何年もかかります。
私の師匠は「メタボな畑」と呼びます。
人間と同じですよね。


> 「原発つくる→やたら儲かる→有象無象が群がって隠蔽体質になる→事故る」
> とか。

最後「事故る」ってのがうひい!って感じです。
二号機、大丈夫なのかしら…。

Re: No title

議長さん

コメントありがとうございます。

>  有機肥料も化学肥料も多投すれば悪。

ほどほどが大事です。

>  うちのジャガイモには硫安を幾分使っています。

じゃがいもは意外に初期生育が大切な野菜みたいですね。
後半に肥料が残ってると、梅雨時なんか(とくにメークイン)は二次成長したりしますもんね。
芋が大きくなりすぎて中黒出してる人とか見ると、チッソ入れすぎと思います。

>  効率と味のバランスをとりながら、どちらも高いレベルを目指すのならば、むしろ化学肥料をいくぶんは使った方がいいような気がします。

そうですね~。
効いてほしくないときに効くような有機質肥料の入れ方は、かえって良くないと思います。
どかーんと一発堆肥!みたいな。チッソ垂れ流しみたいな。

化学肥料は「悪」っていうイメージが定着してるのも、ちょっと変だなとは思います。

本来は、粗大有機物を入れて微生物を育て、団粒構造ができていけばきっと、
有機質肥料だけでもうまくできるんでしょうけど。

No title

ときどき『誰もが農薬・化学肥料を悪く言うのに、なぜこれだけ浸透してるんだろう?』と思っていました。しかし高度経済成長期という時代背景を考えるとうなずけます。

Re: No title

嵯峨青果食品さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

> ときどき『誰もが農薬・化学肥料を悪く言うのに、なぜこれだけ浸透してるんだろう?』

あっ、そうですか。意外です。
農薬・化学肥料のことを悪く言うのは、消費者と一部の流通だけだと思ってました。

新規参入で有機農業やってる農家も悪く言うかもしれませんが、むかーしからの農家や農協、スーパー、JAなどは悪く言いませんです。

化学肥料については、有機農業をやってる農家でも、多投はダメだけど一部ならいいんじゃん的なことを言います。
一部の流通では有機質肥料(おもに堆肥)を危険だと言ってる人たちもいます。

皆よく知らずに言ってるんだと思いますのです。

基本は、きちんと土壌分析をして自分の畑の状態を把握して肥料を大量に入れず、どの作物には何kgチッソが必要かなんてことを知っていて、適切な施肥設計でつくれば農薬は要らないと思います。
(果樹は別)

でもやみくもに農薬やめて大量に堆肥入れて虫出して「有機農業は我慢だ」はないよなあと思ったりもするのです。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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