農業分野でのCO2削減について考えてみた

IMG_1343.jpg
あるトマト農家の自家製資材「酵素液」。余った果物や野菜とお砂糖でできた
あま~いエキスです。こういうのお金もかからないし、CO2も排出しないエコな資材。
だから農業ってエコなのよ!と思われがちなのですが、いえいえ、そうではないのです。



ブロ友「おいしい果実ができるまで」さんのリクエストで
農業はエコかどうかについて考えてみることにしました。
おいしい果実ができるまで

実は某D社退社後、10カ月ほど働いたNPO法人で、
農業分野のCO2削減という事業を担当し、
数字や考え方について、ある程度の結論が出ております。

それは「大規模化農業の方が野菜一個あたりのCO2量は削減できる」です。
農業の大規模化ってのは効率がいいので当然ですね。

ちなみにCO2削減を見える化したカーボンフットプリント事業ってのがあり、
イオングループが国内初のカーボンフットプリント付野菜を販売しています。
今も継続しているかどうかは不明です(近所にイオンがないもんで)。

希望としては自然によりそう有機農業の方が
CO2排出量が少なくあって欲しかったので、すごくがっかりしたです。

具体的な数字については、わたくし算数が苦手なので、
数学ができる別の担当者が算出しました。

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関東の平地でのほうれん草露地栽培。ビニールのトンネル・マルチが必須なのは、
雑草対策と温度管理のため。こういった資材を使わず作ると、皆の出荷が一気に揃い、
無くなる時は一気に無くなるという恐しいことが起こります。いまや石油を使った
農業資材なくては、農業は営めないのです。ちなみのこのビニールの寿命は3年。



その数字のもとになったのは、以下の資料です。

「LCA手法を用いた農作物栽培の環境影響評価実施マニュアル」
(独立行政法人農業環境技術研究所,平成15年)
http://www.niaes.affrc.go.jp/project/lca/lca_m.pdf
産業連関表による二酸化炭素排出原単位
http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d016/co2.html

LCA手法マニュアルには自分の使用した資材・農薬・ガソリン等を書き出し
どれぐらいのCO2を排出したか、また作物でどれほど吸収したかを
計算するための手法がわかりやすく書かれています。

ご自分の農業のCO2排出量について知りたい方はぜひやってみてください。

LCAマニュアルは非常に懇切丁寧にシステム化されてますので、
データさえあれば、計算しやすいと思いますです。

霜で焼けた
春先の遅霜で焼けちゃったりんごのめしべ。これでは実がつかないため、
畑で重油を焚く人がいます。防霜ファンがあるところは電気で防霜ファンを動かします。
水をまいて凍結させる人や霜防止の資材をまく人や、人それぞれ。
昔はタイヤを焼いてた人がいたそうですから、いやはや、それはどうなのよってな世界です。
しかし、背に腹は代えられない。作物を守るのが第一なのだから。



さて農業という職業は、非常にエコな印象を与えるものですが、
基本的には全くエコじゃありません。

なぜ? 自然によりそってるんじゃないの?

うんにゃ。自然によりそってるような気がする露地栽培でも、
全くの露地なんて最近はありません。
基本的にはマルチ・トンネルなどの被覆資材を使っています。
そのほうが品質のいいものが取れるし、時期がずらせるからです。

で、それらの被覆資材は石油が原料です。

使い終わったものは回収されて各自治体で燃やされてます。
以前は塩ビの資材をそのへんで燃やす「野焼き」が行われてましたが、
2000年ごろ、ダイオキシン問題で禁止になりました。

さらにハウスのビニール資材、加温に使う重油、
トラクター・その他管理機のガソリン、化学肥料、農薬、出荷用段ボール、
畑に通うKトラの燃料などなど。CO2は出すわ環境を汚染するわ、
農業は「エコ」という視点で見ると、かなり立ち遅れているのです。

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ハウス内の温度管理でボイラーを使わずに太陽熱を利用する人もいます。
ちょっと見づらいのですが、トマトの向こうに見える黒いビニールの中には水が入っていて、
昼の間に太陽熱で温められお湯になり、夜は保温するという手作りの保温資材。
まあ、こんなめんどうなことをしてる人はまれですが、効果はあるようです。



日本では、工業製品のCO2削減は非常に順調に行われたのですが、
農業分野は置いてきぼり。ある意味アンタッチャブルなのかもしれませんね。

農業の開始とともに、森を切り開き山を崩し、農地を増やして来た人間。
安定的な食料供給により、人口はどんどん増えました。

そのうち、管理部門と単純な生産部門に分かれて効率化がはかられ、
集落は集まって国になり、ますます農地は増えました。

20世紀に入り、何度かの戦争を経たのち、農業は機械化し、
大規模になり、さらにグローバル化とかで
食べものが大量の燃料を使って飛行機で飛んでくるようになりました。

お金さえ払えば何でも手に入り、余ったら惜しげもなく捨てられ、
真冬にトマトやきゅうりが食べられる素敵な世界。それが今。

画像 050
美しいパプリカちゃんたち、実は飛行機に乗って異国から届いたもの。
国内で航空機を使った物流は目玉が飛び出るような運賃がかかりますが、
なぜか外国から来るのは安いのです。どんだけ燃料費がかかってるんだか…。



ふと気付けば温暖化とかで、わあ!大変。でもいまさら昔には戻れないし、
バナナやパイナップルは食べたいし、冬にトマトも食べたいので、
そこんとこ改善しないで原発動かしちゃえ! それがこないだまで。

でもまあ、いまや原発は止めたい人が多いわけで。

CO2排出量が多い代替エネルギーをしばらくは動かす必要があり、
CO2削減は当面、以前ほど人の口に上らなくなる気がします。

しかし、社会全体はどうでも個人で排出量を減らすことは可能です。
当時考えた、農業分野でCO2排出量を減らすためのいくつかを転載します。

1. 農薬・化学肥料の使用をできるだけ減らす
2. 近隣で入手できるものを利用して有機質肥料を作る
3. ハウス栽培の場合は、ボイラーのみの使用でなく太陽熱を利用する

IMG_5499.jpg
実は化学肥料の原料、リン鉱石・尿素・カリは100%輸入です。平成21年ごろ、
原料価格が高騰したため、農水省から「施肥設計の見直し」という指令が出てたらしいです。
でもそれは「高騰」が原因で、CO2削減が原因じゃなかったんですね~。なんかびっくり。



さらには、消費者が今一度自分の生活を見直すべきでしょう。
とりあえずすぐにできるのは、食べものを捨てないってことですかね。

なんて言ってたら、本日トマトが売れに売れているというニュース。
なんだかトマトには痩せる効果があるとかどうとからしいです。

今の時期のトマトは、ボイラー炊いてる促成栽培ですから、
CO2削減ってのはやはし、農業分野では
あえて「語られないこと」なのかもしれません。


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No title

さいきんテレビで坂本龍一の出ている車のCMを見るにつけ
やーーな気分になります
坂本氏の露出で気持ちよくなり、車の購買を考える人は
車の購入こそCO2の削減に貢献できると思うのでしょうけど

シンガポールでは国のクリーンさを守るために日本のちっちゃな車を
700万とか1000万とか信じられない高値で売っている
本気で環境を守ろうとする国に比べたら
日本のエコなど、ただただイメージ、うわっつら

CO2まき散らしながら、剪定枝を焼いてます
剪定枝チップにするマシンを買える余裕は地方の農家にありませんバイオマスも考えるけど、実現にはまだまだ時間がかかりそう

おいしさ第一
安全第二
家族、第三
経済、第四
第五があるなら、地球環境・・・・

エコを第一にしていては農業などできないと気づいたロハス大好きな都市生活脱出者が
農業はシュミで、というのを聞くのは、むかつきます


それでもエコでできる、と考える農家はその試行錯誤をちゃんとマーケティングに生かしている

このたくましさこそが日本の農業を変える!

Re: No title

uchinunoさん

こんばんは。

> さいきんテレビで坂本龍一の出ている車のCMを見るにつけ
> やーーな気分になります

坂本隆一のCMってどんなんでしたっけ?

以前、某D社で田中優さんという方の講演を聞いて、皆が今ある旧式の冷蔵庫や洗濯機を
省エネ家電に買い換えるべきだみたいな風潮が漂ったことがあるのですが、
買い換えた後のゴミ処理のこと考えたら、壊れるまで使うべきじゃないのか?と
思ったようなもんでしょうか。

> CO2まき散らしながら、剪定枝を焼いてます
> 剪定枝チップにするマシンを買える余裕は地方の農家にありませんバイオマスも考えるけど、

薪ストーブで剪定枝焼きまくってる桃・りんご農家を知ってます。
りんごの木のほうが長持ちするらしいです。
剪定枝の処理って大変なのですね。
そのあたり、勉強不足でよく知りませんでした。

>
> エコを第一にしていては農業などできないと気づいたロハス大好きな都市生活脱出者が
> 農業はシュミで、というのを聞くのは、むかつきます

uchinunoさん、文章から毒がこぼれ出ています(笑)
そういうの好きですけど。

> それでもエコでできる、と考える農家はその試行錯誤をちゃんとマーケティングに生かしている

この記事を読んだ大潟村の米農家が、できるだけ触れてほしくないネタですよね…と
fbにコメントくれました。
農家は農業がエコじゃないという自覚があるのですね。

書きながら思ったのですが、本当にどこから手をつけたらいいのかわからないほど、
改善は難しいことだと思います。

でもいっぺんにできなくてよくて、一軒ずつ少しずつ何かやれば、
全体で大きく改善できるのではとあとで思いつきました。

私、実は今回全く落とし所が思いつきませんで、とりあえず生活を見直すということしか
書けなかったのですが、でもそれでいいのだと思います。

気づけばいいんです。気づけば。
そして皆がちょっとずつ変えれば。

No title

ほんたべさんこんにちは。

確かに単純に必要な資材だけ考えても、農「業」はエコじゃないすよね。輸送・流通の話も含めて、それこそ資本主義そのもというか。

僕も園芸やってて梱包資材とかビニール袋とかポリポットとか、「こんなに塩ビ系プラ系ゴミばっかり出して園芸って非エコだよなー」って思っておりました。
まあポリポットとかはできるだけ再利用するとか気にはしてるつもりですがやっぱり出ますよね。

でも徐々に石油由来じゃない資材も増えてきて、しかも耐久性も遜色ないものもぼちぼち出てきてるみたいに感じます。
「土に還るポット」とか「布製植木鉢」とか(それ自体がエコかどうかは不明ですが)。

輸送の問題にしても、もっとフードマイレージの考えとかが浸透してくれば、買う側の意識とかも変わるんじゃないでしょうかね。いっそのこと売り場での表示を義務化すれば、なんていうのはムリなんですかね。

ではでは

Re: No title

Fuさん

こんばんは。


> 確かに単純に必要な資材だけ考えても、農「業」はエコじゃないすよね。
輸送・流通の話も含めて、それこそ資本主義そのもというか。

そもそも物を運ぶってことからしてエコじゃないんですよね。
地産地消が理想なのはわかってても、遠くから物運んじゃうんですよね。


> 輸送の問題にしても、もっとフードマイレージの考えとかが浸透してくれば、買う側の意識とかも変わるんじゃないでしょうかね。いっそのこと売り場での表示を義務化すれば、なんていうのはムリなんですかね。
>

某D社さんと生活クラブさん(だったか)はフードマイレージ取り入れて
確かCO2排出量を表示して売ってた時期がありました。

POCO(ポコ)というCO2排出量の単位を考えて、それが請求書に表示されたりしてます。
フードマイレージのHPもどこかにあって、
なんだかんだ食材のCO2排出量が計算できるようになってたと思います。

そういえばしばらく見てなかったのは、自給自足生活を始めたので、
計算する必要がなかったからかも。

この記事を書いてから少し考えたのですが、農業分野でCO2削減ができないのは、
目標値の設定ができないこととペナルティが与えられないってなことがあるんじゃないでしょうか。

No title

ほんたべさん、おはようございます。CO2削減が、もっと目でわかるといいのになぁと思ったりします。たとえば、風船何個分とか・・・

今年の冬は、雪が多いので。どこの農家でも暖房代がものすごいことになっていると思います。出来れば、お金もCo2もかけたくない。何とかならないものかと、毎年思うところです。

息でも止めたら少しは減りますかねぇ・・・(はぁ。)←ため息。あ、またCO2が。

「酵素液」

はじめまして ほんたべさん。
ぶーたと申し上げます。
ちょっと気になったのですが、
あるトマト農家の自家製資材「酵素液」って
これを散布するってある意味違法ですよね。
特定防除資材として認められていないはずです。
いかがでしょうか?

Re: No title

駆動さん

こんにちは。お久しぶりです。

> 。たとえば、風船何個分とか・・・」

いいですね。この単位。
>
> 今年の冬は、雪が多いので。どこの農家でも暖房代がものすごいことになっていると思います。

相当雪が降ってるみたいですね。
高畠の知り合いが、除雪の予算がなくなってて、果樹農家の目がつりあがってきたと言ってました。
剪定が全然できなくて大変そうです。

3月上旬に銀山温泉で会議があるので、行く予定です。
凶暴な冬の山形内陸部の雪を体験してきます!

> 息でも止めたら少しは減りますかねぇ・・・(はぁ。)←ため息。あ、またCO2が。

ははは。そのぶん余分に出てきますよ、きっと。

Re: 「酵素液」

ぶーたさん

はじめまして。
ご訪問ありがとうございます。


> あるトマト農家の自家製資材「酵素液」って
> 特定防除資材として認められていないはずです。

特定防除資材は現在指定されたものは「重層」と「酢」のみ。
話題になった当時、木酢についてどうすると騒いでいましたが、
結局検討継続ってことで、保留になったと思います。

その他のテントウムシや除草目的のアイガモ等も、保留です。

http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/tokutei_list.html
上記サイトをご検証ください。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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