日本から化学肥料がなくなる日

gazou 013
昨今の野菜高騰と野菜不足で、注目をあびつつある水耕栽培(野菜工場)。
安定供給はできるけど今んとこ価格が高く過ぎて一般的ではありません。何十年か後、
技術と価格が安定したころに化学肥料がなくなるってな悲しい話になりそうです。



時折「悪」と呼ばれ、一部の人に嫌われている化学肥料。
パラパラと根元においときゃビシッと効いて、収量が増える化学肥料。
たくさんやると虫を呼び、病気にかかっちゃう化学肥料。

むか~しこれは「金肥」と呼ばれていました。
「金」の意味は、金・銀の金ではなく、お金の「金」です。

化学肥料が主流になるまでの日本の肥料材料は、
主に人糞、その他畜糞や植物残さなどで、全て自給自足でした。
お金を払って買う肥料なんて、ものすご~く特別なものだったのです。

70歳くらいの農家のおっちゃんに昔話を聞くと、必ず出てくる肥料の話。

米づくりに使ってた肥料はイワシの干物(稲の間に一本ずつ刺してったとか)、
戦後に肥料の配給があったけど、一反で1kgのチッソ肥料だったから、
全然収量が上がらなかったとか。とりあえずいつもおなかがすいてたとか。

白い飯を腹いっぱい食べるのが夢だったという話は必ず聞きます。

gazou 066
ワラや雨水などの天然供給量で5俵は採れるといいますが、昔はもう少し少なかったのでしょう。
昔話を聞くと「稲妻」の意味がよくわかりますよ。稲光は空気中のチッソを固定するため、
光ったところの下にある田んぼでは稲の生育がよくなります。見てわかるほどだそうです。
だから稲の妻なのですね。それほどにチッソ分が欲しかった、稲作農家の思いがしのばれます。



上記の肥料では収量は相当良くなかったでしょうし、
その少ない米を、食管法で全て国に供出してたのですから、
(米が作れない地域では芋を出してたらしい)
米農家はほとんど米を食べることができなかったのですね。

しかし、そんなある日、化学肥料という夢の肥料が日本にやってきました。

使ってみると爆発的に収量が上がり、びっくりするほど米が採れました。
化学肥料を使い始めた当初は、病害虫はほとんど出ず、
収量が上がるばかりでいいことづくめでした。

しかし3年ばかり経ったころ、イモチ病が出始めました。
チッソが多かったのでしょう。今なら私でもその理由はわかりますが、
当時はどういうことかわからなかったため、農薬で対応しました。

で、その後は知恵がつき、いろいろ研究もされてるはずなのに
農業自体にはそれほどの変化なく、現在に至っているわけです。

IMG_5498.jpg
とっても便利な化学肥料。でも資源は底をつきつつあります。
日本の土壌には、土と結びついていて使えないリン酸が大量にあるといわれています。
このリン酸は、微生物が食べて排出すれば吸える状態になります。
リン酸入れまくり状態から、貯金を使う体質に持っていかないといけないってことです。



以上が華々しい化学肥料の歴史。

最近では化学肥料の使用量は減ってきているようですが、
それは単に農地が減ってるからってことで、有機農家が
増えてるからってわけじゃないのが悲しいところ。

今でも肥料と言えば、農家にとっては基本的に化学肥料なのでした。

さて、平成20年ごろ、原油価格の高騰に合わせ、農業資材が値上がりして
大騒ぎになってたことがありました(農業関係者のみですが)。

重油代がかさむので、ハウス栽培の慣行のトマト農家が設定温度を低くし、
極力ボイラーを焚かなくてすむようにしてるって話を聞いて、
そりゃあ相当大変なのだろうと想像したことを覚えています。
(もちろんCO2削減が目的じゃなくて、あくまでも経費削減)

同時に化学肥料の原料が高騰し始めていました。

グリーンマーク
リン酸は果実をならせる肥料なので、果菜類や果樹農家では必須の肥料です。
有機質肥料ではバットグアノなんかがよく使われます。
配合肥料には絶対に入ってて欲しいリン酸。でも一番早く資源がなくなるリン酸。
中国が輸出禁止にしたらもうダメなリン酸。



実は化学肥料原料は100%が輸入。
日本は主に、中国・マレーシア・カナダなどから、
リン鉱石・尿素・塩化カリを輸入し、化学肥料に加工しています。

自給率「0」。それが化学肥料。

これらの資源はもう底が見えており、
リン鉱石であと90年、カリであと230年と見積もられています。
石油と同じで、今後確保することが必要になります。

さて、高騰の原因はというと、需要量が増えたこと。

現在爆発的に人口が増え続け、高度成長期に入っている国、
中国・インドで、日本が過去そうであったように、
農産物・穀物・畜産物等の食料増産を行っています。

ものすごい人口を抱えるこの2国で化学肥料の需要が増していること、
バイオエタノールでの穀物生産に拍車がかかっていることなどから、
化学肥料の原料価格が高騰を始めたのでした。

IMG_0477.jpg
牛肉1kg作るのに必要な穀物は25kg(肉牛の写真がないので乳肉兼用牛で代用)。
新興国の人々が肉を食べ始め、飼料の穀物需要が増え、穀物は2008年ごろから高騰中。
穀物作るのには肥料が必要。さらに効率がいいので化学肥料使わなくちゃってので、
化学肥料需要が増えて高騰中。自分たちも通ってきた道なんですけどね…。



当時「そのうち有機質肥料がスタンダードになるかもね」などと
冗談混じりに話したりしていましたが、これがけっこうマジな話。

1990年代後半、米国がリン鉱石の輸出を停しました。
現在では米国からのリン鉱石の輸入は「0」。資源囲い込みです。
平成20年には中国が100%の関税をかけ、実質輸出禁止に。

さあ困った! じゃあどうする?

農水省では平成21年度予算で「施肥体系緊急転換対策」を打ち出し、
化学肥料の使用量を減らし地域資源を活用し、施肥コスト削減にむけた
新しい施肥技術体系への転換を推進しました。
下水汚泥からのリン酸の回収なども検討されています。

しかし、その後中国のリン鉱石の輸出禁止は撤回され、
現在肥料価格は安定しているようなので、とりあえずは安心。

gazou 085
活用されてない粗大有機物を生のまま有機質肥料とする技術は
相当構築されてるはずなんですが、意外と知られていません。堆肥化などの手間が省け、
そのものが持っている肥効がそのまま使え、作物の味もよくなるという
非常に有効な技術だと思うんですけどね。まあ微生物資材が必要ですが。



でもね。いつかはなくなるのよね。あるいは、
ものすご~く高くなるかもしれないの。ガソリンみたいに。

化学肥料が再び「金肥」(今度は金・銀の金)になる日ももうじき。

それまでわたくしは生きてはいないけど、
有機質肥料を使った技術体系が完成してるかもしれません。
それはちょっと見てみたいと思ったりするのでした。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

元素レベルで

元素レベルで見れば、地球上で増えたり減ったりはしてないですよね。
分子化合物の形態はいろいろ変わっても。
(核反応で別の元素に変わる分と、宇宙空間とのあいだでの多少の出入りの分を例外として)

自然の力によって濃縮されているものを採取し、
精製するなどしてから使って、あちこちに散らばらしている。

有機体による回収・濃縮の機能を利用するのは伝統的ですが、
有機農業であれば平衡しているかというとそうでもないんじゃないかと。

下水汚泥からのリン回収はここ最近話題になっていますけど、
それ以外にも、浄水場の汚泥、ダムや川の堆砂、港の浚渫土砂、ゴミ焼却灰、
食品加工で出る各種廃棄物など、
人間の生活や経済活動で必ず出るものを処理して、
必要な要素をうまく回収する研究ももっと進める必要はあるかと思いますね。
肥料分を多く含みながら活用されていないものも多いと思いますし。
詳しくないですが、重金属類の除去がポイント/ネックなんですかねぇ。

有機農業にせよ、化学肥料の利用にせよ、
土壌分析よろしく、肥料分および元素の流れを意識しないといかんかと。
もちろん使う場面も含めて。

No title

はじめまして、
私は、里山で有機自然農法で野菜や果樹を育て、それらを加工して
自分の店のお客さんにお出ししています。
自分で作らなければ「無農薬」って信用できませんものね。。。
偶然、目にして・・・タイトルが気になりましたから~おじゃまさせていただきました。
店のお客さんや、講演などを通していろいろ説明していますが、まだまだ~理解や、認識は浅く・・・ですね。。。
スバラシイ解説!!これからもどんどん皆さんに伝えていって下さいね!

Re: 元素レベルで

H2さん

> 有機農業にせよ、化学肥料の利用にせよ、
> 土壌分析よろしく、肥料分および元素の流れを意識しないといかんかと。

おっしゃるとおりです。
農業には土壌分析が必要だと思います。

常識になって欲しいです。

Re: No title

喜撰坊のおかみさんさん

はじめまして。
コメントありがとうございます。

> 私は、里山で有機自然農法で野菜や果樹を育て、それらを加工して
> 自分の店のお客さんにお出ししています。

いいですね~。
自分の店、いいですね~。


> スバラシイ解説!!これからもどんどん皆さんに伝えていって下さいね!

ありがとうございます。
今後ともよろしくお願い致します。

中国が輸入禁止にしたらもうダメなリン酸。

「中国が輸入禁止にしたらもうダメなリン酸。」

中国がリン酸を輸入禁止にしたら中国の農産物が生産不足になって穀物市場が混乱する。それとも、中国がリン酸を輸入禁止にしたら、リン酸が暴落して、各国が過剰使用して環境悪化が加速するのどちらでしょう?

Re: 中国が輸入禁止にしたらもうダメなリン酸。

bbzk39さん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

> 「中国が輸入禁止にしたらもうダメなリン酸。」

これは大変な間違いをしてしまいました。
正しくは「中国が輸出禁止にしたらもうダメなリン酸」でした。

修正しておきます。
ご指摘ありがとうございます。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR