シイタケはやっぱり原木栽培でなくっちゃ! 岩手県山形町

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1mくらいの長さの丸太に、シイタケがたくさん出ているのを見かけたことはありませんか?
これは原木栽培されているシイタケで、原木シイタケと呼ばれます。

日本ではシイタケ栽培の歴史は古く、江戸時代から行われていたという記録があります。

山から切り出した広葉樹をホダ木にし、使い終わったら薪にして最後まで利用する。
日本ならではのエコなしくみ…それが原木シイタケなのです。

さて昨今では、原木シイタケ以外に「菌床栽培」のものが増えてきています。

原木シイタケはナラやクヌギなどの広葉樹をホダ木にしてシイタケ菌を植え付けたもの。
菌床栽培は、広葉樹のオガクズ(オガコ)にふすまや米ぬかなどの栄養剤を添加し、
それを筒状(キューブ型)に成型した培地に植菌して栽培したもの。

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ちょこちょこシイタケが出てきているのが見えますか?
発生中のホダ木を積み上げてあるビニールハウス。原木シイタケはこんな環境で育っています。


原木栽培は植菌から発生までに1年かかるところ、菌床栽培はその1/4の約120日。
栽培期間が短く、ホダ木の移動などの手間がかからない菌床栽培は、
原木シイタケと比較して価格が安いのが特徴です。

昨今スーパーの店頭では、菌床栽培のシイタケに駆逐され、
原木シイタケをあまり見かけることはありません。

ひょっとしたら絶滅危惧種になりつつある? そんな原木シイタケですが、
味を比較してみると、原木シイタケに軍配が上がります。

ホダ木を一年かけて分解し発生するシイタケは、
じっくり育つことから食感がよく、食べた瞬間、まさに「木の子」と言いたくなる
木の香りがふわっと口中に広がります。

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ぽってりとしていかにもおいしそうなシイタケくん。
炭火で焼いてちょっぴりお醤油たらして…それだけでごちそうです。



自分のうまみを他の素材にも与え、料理全体の質を上げてくれる…
原木シイタケにはそんな力があります。

さて、山形町で原木シイタケを栽培している、苅間沢由広さんに話を聞きました。

岩手県山形町は、典型的な中山間地。
最近では短角牛という放牧主体の和牛で有名な町です。

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苅間沢由広さん・悦子さんご夫婦
「菌床栽培のシイタケを食べると、シイタケから培地のニオイがしますね。
シイタケ嫌いな人は、ひょっとしたら菌床シイタケ食べてるのかも…。
食感も香りも、原木シイタケは本当においしいです」…私も菌床のシイタケは苦手です。



山は売るほどあるのでホダ木の手配は割合と簡単なのですが、
冬場マイナス20度にもなる土地柄で、シイタケ栽培をするのは容易ではありません。

「シイタケの菌は夏用と冬用とで違うんですが、ヤマセが吹くことがあり、
夏用の発生が始まって温度があがんなくて出なくなり、あれこれ調整していたら秋になってた…
なんて笑えないこともあるんですよ」と苅間沢さん。

原木シイタケは植菌した後一年間山に寝かせ、その後冷たい水に浸けて発生を促します。
水から引き上げ、温度管理をしてシイタケが発生し始めたら収穫開始です。

発生が悪くなったらまた水に浸けて引き上げて温度管理して約一カ月、その後再び発生が始まります。
一本のホダ木から3回収穫できるそうですが、こまめな温度管理と環境の調整、
さらに水をかけてやったり、天地をひっくり返したり…。

「まめな人じゃないとなかなかできないと思うね」と苅間沢さん。


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ピンボケで申し訳ないのですが、水槽に浸けられたホダ木。
水は山からの湧水を使っています。冷たい水でないと発生が促されないそうです。

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ホダ木の切り口がこのように白くなったら、シイタケ菌がまん延した目印。
ホダ木を触るとちょっと柔らかくなっているそうです。この後、発生室に移動します。ああ…重たい…。

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今年の秋から発生するホダ木が寝かせてあります。
夫婦二人で常時10000本を手入れしなくてはならないのですから大変。
10000本は原木シイタケの専業農家では規模が小さい方らしいです。



さらに、直径15~10センチの1mの長さの丸太をあちこち動かすことを想像してみてください。
機械は使うとはいえ、そりゃもう、重労働。
男手が必要で、誰にでもできる仕事ではありません。

苅間沢さんも、重労働が大変なので一度は菌床栽培への転向を考えたそうです。
でも原木シイタケを喜んでくれるお客様がいる限りは、続けていこう。
そう考えて現在に至っています。

温度が足りないと傘の色が薄くなったり軸が太くなったり、
傘の開き具合も大きいものや小さいもの、ぽってりとしたいかにもおいしそうなものなど、個性はさまざま。

菌床栽培のように一定した形にならないのが、原木シイタケの特徴です。

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ちっこいのや大きいの。軸が曲がったのやぽってりしたもの。
傘が薄かったり厚かったり…収穫したばかりのシイタケくんたち。
ほんと、個性的な形をしていますよね。こういうの多様性っていうんだろうか。


「菌床栽培は形がいいからねえ…原木シイタケはそういうふうにうまくできないんです。
だから、あの形だけで判断されてしまうと困るんだよね」

自然に近い生育方法、そして温度によって個体差が出る…
一定の温度管理ができる菌床栽培は、そういった品質のバラつきがないのがメリットです。

そして丸太を上げおろしする重労働も必要ありません。

1980年代に中国からの輸入が爆発的に増加し、価格が大暴落したシイタケ。
経費も手間もかかるため、原木シイタケ農家は高齢化も相まって、徐々に廃業しています。

そのうち日本のシイタケは、菌床栽培のものだけになってしまうのでは…。
菌床栽培のシイタケが食べられない私は、秘かにそれを恐れています。

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「今出てきました!」って感じのシイタケくん。
発生が悪くなるとホダ木をバシッとたたいたりすると、シイタケがびっくりして出てくるとか、
雷がドーンと落ちたりするとびっくりして出てくるとか…かわいいですね。
子孫を残そうとする菌の働きだとか…ウソのようなホントの話です。



ちなみに、干しシイタケは発生までに2年かかるというさらに手間のかかったもの。
生シイタケとは使う菌も栽培方法も違います。

じっくり木を分解しながら大きくなるので、味も濃くしっかりとした肉質になります。
その結果、えも言われぬ香り高い良いダシが出るようになるのです。

ときおり菌床しいたけを干したものを売っているのを見かけますが、
これはダシがほとんど出ない、ほんものの干しシイタケとは似て非なるもの。

安いからか、それがバンバン売れていくのを見るにつけ、
「シイタケのことを知っている人って、ほんとに少ないんだろうなあ…
かわいそうな原木シイタケ…そして干しシイタケよ!」と思ったりするのです。

店頭で原木シイタケを売っているのを見かけたら、ぜひ味を確かめてください。
菌床とは違う食感、そして食べたときの木の香りに驚くことうけあいです。




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ほんたべさん、こんにちは。同じキノコの栽培者としても、この原木栽培の辛さには頭が下がります。

キノコの発生も、マッシュルームとは違うのですね。叩いたり雷がなったりしないと出ないのかぁ・・・苦労が多そうですね。

今度、スーパーで見かけたら、その苦労を思い出しながら買いたいと思います。

きのこ仲間でよろしく!です

駆動さん

こんにちは。同じキノコ栽培でも、マッシュと原木は、菌床とまたひと味違いますよねえ。
どちらもけっこう手間がかかるし、難しいキノコだなあと思いました。

> 叩いたり雷がなったりしないと出ないのかぁ・・・

出なくなったら時々そんなことをするって笑ってましたが、普通は出てくれるみたいです。
雷が落ちた日の少しあとに山に行くと、けっこうシイタケとか出てるらしいですよ。

樹にめいっぱい繁殖した菌糸は全部つながってるんですが、
叩かれることでそのつながりが切れるそうなのです。

そこで「ヤバイ!」と思って発生するんだって…ほんとかな。でもかわいいですよね。



プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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