りんごの農薬について考えてみた

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果実のなり元の変色部分がサビ。赤くなるとここが茶色く目立ち、商品にならなくなります。
霜の被害や薬害などいろいろな原因がありますが、今年は4月の寒波が原因と言われています。
まだ蕾で花が咲いてたわけじゃないのに、どういう理由だか…皆よくわからないそうです。



安曇野に行ってきました。

長野県の中でも、安曇野界隈はりんごの一大産地。
このあたりのりんごは「長野産」ではなく「安曇野産」と銘打って売られるブランド産地。
普通に作っても糖度が他産地よりも1~2度は高いらしく、
おいしいりんごの産地として知られています。

今年はこの地域だけ、どういう理由かわからないけれど、
りんごにサビが出て大事になっています。

サビは見た目が悪いものなので、一般市場には出荷できません。
花の時期に寒波や霜が来た、年に一回のことで、
一年の結果が出てしまうのですから、果樹農家は大変です。

「今年は半作かもね」と淡々と言う農家…かえって切なくなりました。

さて、今回たまたまなのですが、全く農薬をまいていないりんご畑を見ました。
青森県の木村さんに触発されたのかどうか、
ある日いきなり農薬をまくのをやめてしまったという人の畑。

お会いすることはできませんでしたが、その畑は本当に悲しいものでした。

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下の写真と比較するとよくわかるかも…。葉の数が少なく、葉の色も薄く、樹が弱っている感じです。
あと木の高さの半分くらい草が生い茂っています。この草からダニが移り、この後大変なことに…。

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通常の状態のワイ性台のりんごの樹。
葉が茂り健全に元気にやってます!というエネルギーを感じます。



すでに枯れかけた木もあり、元気そうに見えても葉っぱには病気が出ていて、
小さなりんごの実は、樹が弱っているためにすでに赤く色づいています
地面は草ぼうぼう。もう草生栽培の域は超えています。

おそらくあと何年か後には、ほとんど枯れてしまうのじゃないかしら。
やはりりんご栽培に農薬は必要なのだなあと思ってしまいました。

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7月なのにもう斑点落葉病の症状がこんなに進んでいます。
おそらく9月ごろには落葉し、樹の生理が狂って花が咲いたり新芽が出たり…。
こうして来年はもっと樹が弱っていくのです。



世間では農薬がたくさんまいてあるものよりも、
少ないものの方が価値が高いとされています。

そして、一般的には「農薬は悪」という意見がほとんどでしょう。

確かに農薬の散布は、環境中に毒物を排出しているのと同じ。
ただこの農薬のおかげで、日本人がおなかいっぱい食べられるようになったのも事実なのです。

化学肥料が登場したことにより、米や野菜の収量が爆発的に伸びた昭和30年代。
昭和36年に施行された「農業基本法」により、大規模単作化が奨励され、
国をあげて食糧の増産に取り組んだ時代です。

この頃の話を農家に聞くと皆一様に「こんなに採れるのか!」と驚愕したと言います。

そもそも農民が自分の作った米を食べられなかった時代。
手に入るもので作る自家製肥料のチッソ分は、そんなに多くありませんから、
化学肥料は本当に夢のような肥料だったのです。

しかし、それまで有機物を土に還元し続けていた微生物叢の豊かだった土は、
化学肥料によってどんどん痩せていきました。

土壌病害や大量の害虫が出始めるまで、肥料分だけではダメだと
誰も気づかなかったのかもしれません。

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化学肥料と除草剤の併用により、土はどんどん痩せていきます。
除草剤の効かないコケだけが生えているりんご畑…うーん、こんな土でりんごがうまく育つのか…

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よく見かける樹の株元にだけ除草剤をまく草生栽培の畑。
株元は草刈り機が入りづらいので、省力化のために除草剤を散布しています。
これはダニが樹に上がるのを防ぐ目的もあります。

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上の2点と比較して命あふれる畑って感じがする、全く除草剤を使用していない畑。
通路は乗用草刈り機で、株元は手動の草刈り機で草を刈ります。
炎天下、手動の草刈りはツライのですが、それでも除草剤に頼らずがんばってます。



化学肥料への依存は、有機物の還元がなくなったために土壌バランスが崩れ、
大規模単作化による連作障害なども相まって、農薬の多投につながりました。

現在では、一部の有機農業を目指す農家を除き、虫や病気が発生した際には、
土づくりを見直すというようなめんどうなことはしないで、
対症療法として化学農薬で対応する農家がほとんどのようです。

さて、日本が農薬をどれぐらい使っているかご存じですか?

現在世界で4位(一位アメリカ、二位ブラジル、三位フランス)。
うっわ~! すっげえ使ってる!ってな数字です。
耕作面積のことを考えると自慢できる数字ではありません。

高温多湿で、病気の出やすいアジアモンスーン気候であること、
防除暦どおりまじめに農薬をまくという国民性(?)も相まって、散布量は増え続けています。

ただ、皆が忘れがちなことがひとつ。

農家だって、好きで農薬をまいているわけではないのです。
農薬をまいている農家自身が「まきたくないなあ…」と思っていると、あちこちで耳にします。

果樹農家に話を聞くと、親戚のなかに必ず過去農薬で障害を受けた人がいます。
農薬をまいたその日は酒を飲まないこと…そう言われていたのにお酒を飲んじゃって、
お風呂場で倒れて病院に担ぎ込まれたという話も聞きました。

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無風の日の早朝は農薬日和。というので、果樹地帯の早朝はSSのエンジン音が響きます。
果樹類はSS(スピードスプレイヤーの略)という機械で農薬を散布します。
りんごの葉一枚一枚全てに、またてっぺんまで農薬を行き渡らせるため、
農薬がけっこう高くまで吹きあがってます。
撮影した本人がびっくりするぐらい高く上がっている農薬…うーん、飛ぶもんだなあ。

P7196261.jpg
運転席にいる人間が見えますか?
ビニールの合羽を着て長靴、マスク、メガネと完全防備で農薬を散布しています。
こうしないと自分が死んじゃうのです。まいている農家が一番危険ってことがよくわかる写真です。



最近は強い農薬は敬遠され、残留性の低い農薬を選択する防除暦が多くなっていますが、
それでも果樹の殺虫剤には「有機リン系」「合成ピレスロイド系」などの
絶滅系農薬が必ずどこかに入っています。

これらはよく効く農薬ですが、そこにいる虫を全滅させます。
そして当然なのですが、まいている農家も安全ではいられません。

農薬はまきたくないけど、まかないとりんごは作れない。

環境や安全に配慮する農家であればあるほど、
この矛盾の中で苦悩しています。

そんななか、わたしたち消費者にできることは…?
安曇野から戻って、ずっと考え続けています。


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No title

ほんたべさん、こんにちは。果樹園の農薬散布、見たことがあります。ものすごい勢いで撒いていますね。できるだけ農薬を使いたくないけど、使わないと売れない・・・ジレンマだと思います。

そういえば、剪定の仕方なのですが。以前、川田健次さんという人が、面白い剪定をなさっていました。
http://www.ii-mikan.com/mikan/mikan1.htm
この人のお話をあるイベントで写真を見ながら聞きましたが、びっくりするほど大きな実がなっていました。少しでも、この技術が果樹園さんの力になれたらいいなぁと思います。

Re: No title

駆動さん、こんにちは。

SSでの農薬散布、撮影してみるとびっくり!って感じでした。
撮った本人(りんご農家)やそれを見たりんご農家も「飛んでるよね~」と感心してました。

川田さんのサイト、見てみました。
面白い取り組みをされていますね。ありがとうございます。

みかん類は二年枝に実をつける作物なので、りんごとはちびっと剪定方法が違います。
二年枝ってのは、去年伸びた枝に咲いた花に実をつけるってことです。
ちなみにりんごは三年枝、ぶどうは一年枝につけます。

二年枝につける作物は隔年結果になりがちなので、みかんは裏年とか表年とかよく言いますよね。
その隔年結果をなくす剪定方法が、みかん農家の技術みたいですよ。

私はかんきつ農家の担当をしていなかったので、かんきつ類は未知の世界です。
ますます勉強せねば。

No title

りんごの事で
検索しているうちにここにたどりつきました

突然のコメント失礼します

大変素晴らしい記事に感動しました

深くお話できたらいいなと思います

農家としてのジレンマ

私もその一人です。




Re: No title

Ryo-skさん

ご訪問ありがとうございます。
りんご農家の知り合いが多いので、ついりんごについて書きこんでしまいます。

畑作と比較して果樹は有機栽培は難しいですね。
果樹で低農薬栽培をしている人たちは必ず何かのジレンマを抱えてるようにも思えます。

その努力を評価できるしくみがあるといいんですけど、今の日本にはないですね。
食べる人たちが、もっと生産のことを知ってくれるといいんじゃないかと思ったりするんですが…。

ともあれ、今後ともよろしくお願いいたします。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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