六本足の家畜「ミツバチ」と農薬について思うこと

ミツバチ
後足の花粉かごに大量の花粉をつけているセイヨウミツバチ。
この花粉は巣で内勤蜂が花粉パンに加工し、幼虫の食べものになります。
彼女は外勤蜂なので、おそらくあと少しで死んでしまうでしょう。
わき目もふらず花から花へ飛びまわり花粉を集める姿はかわいくて、いつまでも眺めていたくなります



「アメリカでミツバチが大量失踪!?」
2006年のある日、新聞の小さな記事が目をひきました。

果樹類の産地周りをしていた自分にとって、ミツバチは身近な昆虫。
飛んでいるのを見ると、必ず写真を撮るほど好きな昆虫でもありましたから、
その小さな記事を丹念に読みました。

これが、現在に至るまではっきりした原因がわかっていない、
「蜂群崩壊症候群(CCD)」の最初の報道だったように思います。

CCDになった巣は、働きバチがほとんど失踪してしまい、
巣には女王と幼虫とサナギ、何匹かの働き蜂が残っているという妙な状態で、
全滅しているわけではないのが特徴です。

現在ではアメリカのみならず、日本でもミツバチの失踪が始まっており、
農水省でも2009年から具体的な受粉昆虫対策を取り始めています。

CCDを深刻な問題と受け止めているのは、蜂蜜製造業界ももちろんなのですが、
どちらかというと、イチゴやメロンなどの受粉昆虫として利用している受粉産業界。
(これは送粉業と言われるそうです)

これらの受粉ができないということは、代替昆虫がいないことから
農家には大打撃を与えます。
そこで、国をあげて対策を取っているのです。

桃の花10
桃やすももの受粉は、人間が手作業で行っています。
これは自家受粉する品種とそうでない品種があり、確実に受粉させていい果実を作るための必須の作業。
ミツバチの不在は人工授粉している農家には、それほど影響ありません。




先日、このCCDに関する講演会2つに参加しました。

一方は農薬会社及び研究者の講演会、もう一方は消費者団体の主催するもの。
それぞれの立場で主張が違い、ミツバチを取り巻く問題の複雑さを考えさせられました。

CCDについては前述したとおり、はっきりとした原因が解明されていません。

ダニ・ダニ駆除剤・遺伝子組み換え作物・病気・ウイルス・異常気象・電磁波・農薬…
原因になりそうなものは多々あれど、特定できていないのです。

(CCDの原因と可能性、そしてミツバチの生態等、ミツバチとCCDの基礎知識が得られる
いい本があります。興味のある方は以下の本をぜひ読んでみてください。
『ハチはなぜ大量死したのか』 ローワン・ジェイコブセン著 文藝春秋刊)



R0011495.jpg
長野県のりんごや山形県のさくらんぼの受粉を担当している「マメコバチ」。
カヤなどの茎を巣にして、春先少しだけ活動してあとは翌年まで休眠する飼いやすいハチ。
ミツバチよりも低温で働くため、ミツバチへ依存すると不作になる場合もある
寒い土地の果物の受粉バチとして積極的に利用されています。写真提供・市川奏仙



この原因のひとつとして疑われている農薬「ネオニコチノイド系農薬」について、
日本では今「悪魔の農薬」という本が出るほど、過敏に反応している人たちがいます。

この農薬の何が問題なのでしょう。

ネオニコチノイド系農薬は、浸透性・残留性が高いこと、
また欧米各国と比較して日本の残留基準値が高い(緩い)こと、
フランスではこのうちのイミダクロプリドという成分の農薬が規制になったことなどが、
規制を求める声につながっています。

さて、ネオニコチノイド系農薬は、昆虫の神経系に作用し、死に至らしめる農薬です。

アセチルコリンという神経伝達物質に作用するという特性から、
昆虫のみならず、人間に対しても影響があるということがわかってきたため、
ネオニコチノイド系農薬が自閉症や多動症などの原因ではないかとも言われています。

ミツバチ2 煙
ミツバチの巣からミツを採っているようす。
煙で蜂を弱らせてから板を引き出し、遠心分離機で蜜をしぼります。
この時に一緒に採れる蜂の子とサナギのバター炒めは本当においしくて、ほっぺが落ちそうでした。
勤勉で繁殖力旺盛、性質がおだやかなセイヨウミツバチ(イタリア種)が、今世界中で私たちに
蜜や果物を与えてくれているハチ。家畜化された昆虫→六本足の家畜と言われるゆえんです。
写真提供・市川奏仙


この件については東京都神経科学総合研究所の
黒田洋一郎さんの講演で詳しく聞くことができました。

アセチルコリン受容体とは、自律神経や神経節接合部などの末梢神経において
主要な働きをしている主要な物質です。

有機リン系やネオニコ系農薬は、ざっくり言うとこのアセチルコリン受容体を標的にする農薬。

アセチルコリン受容体はヒトの脳内の大脳皮質や海馬など多くの領域に関係する物質で、
近年、記憶・学習・認知など高次機能に関与していることがわかってきました。

有機リン系・ネオニコ系農薬が子どもに摂取された場合、微量でも与える影響が大きく、
その曝露の時期によって、発達障害・多動性欠陥・自閉症などの原因となりうるというのです。
微量ならば安全という旧来の毒性学は、もう通用しなくなったということです。

トップページイメージ写真①
「高度に進化したヒトとミツバチの神経系にこれらの農薬が同じような影響を与えるというのは、
神経科学を研究するものにとっては理にかなっていること」と黒田さん。
ミツバチもヒトも進化の樹のてっぺんにいる生きものらしいです。



発達障害や免疫系(花粉症・化学物質過敏症)、生殖系(不妊症・精子減少)…
それらも微量の化学物質の複合的な影響なのではないかという、ちょっぴりコワイお話でした。

さて、ネオニコチノイド系農薬だけではなく、有機リン系も同じ作用をもたらすことがわかりました。
有機リン系は絶滅系農薬と言われ、非常に毒性が高い農薬ですが、
今でも農村では日常的に利用されています。

なのに、なぜ日本ではネオニコチノイド系農薬だけ攻撃されてるのかな?

その理由は、いまいちはっきりわかりませんでした。
WEBでいろいろ見てみましたが、やはりわかりませんでした。

さらに言うと、日本で言う「ミツバチの大量死」がCCDを意味するのかどうかも不明でした。

ひょっとしたら日本で大騒ぎになっているこれはCCDではなく、
ネオニコチノイド系農薬による薬害の話なのかもしれません。


gazou 008
趣味の養蜂家にいただいた自家製の顔の見える蜂蜜。
今回、ミツバチについて調べていたら、蜂蜜のコワイ話も知ってしまいました。
国産天然はちみつと表示されているもの以外の表示がややこしく、
例えばシロップが入ってたりするものがあったりします。
抗生物質やダニ剤の残留の可能性があることも、ちょっとビビりました。



「ミツバチの大量死」と「子どもへの影響」の話は、今、ひとつのパッケージのようになって、
いろいろなところで話題になっています。
ふたつの話題がごっちゃになって、聞く人に「よくわからないけど何かネオニコが危険らしい」
…そんな印象をを与えます。

ここから、ミツバチのことを切り離して考えてみてはどうでしょう。

ネオニコチノイド系農薬は、シロアリ駆除剤や、ペットの首輪などに使用されています。
有名な家庭用の殺虫剤はピレスロイド系農薬が使われています。

家庭内に入り込む化学物質は、きれいなパッケージに入って、
毒物とわかりにくい状態になっているものが少なくありません。

農薬だけではなく、家庭のあちこちで日常的に使われている化学物質、
それらの複合的な汚染が、子どもへの影響をもたらしているのだとしたら。


今まで、ミツバチが当たり前のようにもたらしてくれていた恩恵。
この小さな友人でもあるミツバチのために、CCDの原因がいつか解明できるといいと思います。

今回の件は、ミツバチという身近な昆虫をきっかけにして、わたしたちの生活を
いまいちど見直す必要があることを教えてくれているんじゃないでしょうか。


CCDは、人間の鈍感さ・傲慢さをむき出しにした、象徴的な事件…
そんな風に思えてなりません。



★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

はじめまして

はじめまして

たいへん勉強になりました。

また来たいと思います!

Re: はじめまして

namiさん

ご訪問ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

No title

ほんたべさん、こんばんは。ハチ君たちが今日も飛び回って、蜜を集めているのでしょうね・・・ハチ君、お仕事おつかれさまー。

それにしても、CCDが結構昔から発生していたのは知りませんでした。情報が目に付くようになってから気づいた頃には、もう被害が広がっていたのですね。

これといった証拠がないときは、ほんたべさんのように、とにかく情報に翻弄されないことだと思いました。

Re: No title

駆動さん

ミツバチの大量死自体はずいぶん昔から何度も起こっている事象らしいんです。

今回はその事象に「蜂群崩壊症候群」とか「狂蜂病」とかいう名前がついたので不安をあおり、
かえって大騒ぎになってるんじゃないか…という研究者もいます。

何が真実かはわからないのですが、情報に惑わされてはいけないですよね。

そういう点で、本文でご紹介した本は非常に優れていました。

語り口と視点が冷静で客観的、その割に文章がユーモアにあふれていて、とっても読みやすかったです。
研究者の講演会でも「よく書けている」と絶賛されてました。

お暇なときにぜひ読んでみてください。

プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR