「農薬をまかなきゃ作れない」と言う理由

momo 036
山梨県の露地の桃の慣行防除回数(成分数)は27回。わたくしの知り合いは8回。
この差はなんだと思うでしょう。技術と手間の差だとわたくしは思っております。
そういう技術があるからこそ、おいしい桃もできるのだと思っております。



以前農業のことを何も知らない人に、
「りんごって何回くらい農薬まいてると思う?」と聞いた。
「うーん。3回くらい?」と彼女。ぶっ飛ぶわたくし。

実際には、青森県の慣行防除暦で36回(成分)である。
長野県では30~34回(成分)である。

昨今の農薬はお高いが、農薬代はどれくらいなのかしら。

高原のレタスが好きで、よく買うというおじさまに
「レタスの防除回数ってどれぐらいだと思う?」と聞いた時には
「うーん。3回くらい」と言った。

実際は17回~19回。キャベツでは20~23回(長野県)。
相当虫や病気が出るに違いない。まく方が大変だ。

きゅうり・トマトの回数も聞いてみたことがある。
やっぱり「3回くらい?」という答えだった。

gazou 186
これは米ナスだけど、フツーのナスだと埼玉県で48~53回(成分)。
ナスは栽培期間が長いから多いのだろうけど、ちょっとびっくりしたぞ。


gazou 020
栽培期間が50日程度の菜っ葉でも平均して10回だ(埼玉県防除暦)。
種まきから収穫まで50~60日しかない菜っ葉に10回。うーんと考えてしまうなあ。



福島のハウス栽培のきゅうりで24~30回。
トマトなら24回位(どちらも成分)。

果菜類の場合は大きくなりながら実をつけるので、
ひとつの実にこれだけかかってるわけじゃないが、回数を聞くと驚く。

わたくしの驚きは、食べる人が農薬回数を漠然と
「3回位」って思ってるってことだ。

3回…多くもなく少なくもない、なんとなく落ち着く数字。
落ち着くと言うのは、たぶん自分が落ち着くための数字なんだろう。
これ以上多いと「なんとなくイヤ」なのだろうと考える。

農家が聞いたら「うひっ」と笑っちゃうかもしれない。

某D社で働いていたころは、このようなべらぼうな回数
まいてる人がいなかったので、慣行栽培ってすごいなあと驚く。
時期にもよるが、高原キャベツで多くても5回位だ。
無農薬で作ってる人もたくさんいる。

gazou 002
農薬散布量が一番多い、虫にも病気にも弱い洋梨。山形県では36回。
これらの数字はこの通りにまいてない可能性もある、マックスこれだけって数字。
でもまいてるでしょうね。貯蔵中のロスが怖いからね。



わたくしの師匠・西出隆一さんは、6月から11月までのトマトを
無農薬で作っている。・・・ってことはですね。
農薬まかなくても作れるよねと思うでしょ(果樹は違うけどね)。

しかし「農薬まかなくちゃ作れない」と言う農家のおじさま方は
世の中にたくさんいる。わたくしは会ったことがないが、
「そう言われたけどほんとに作れないの?」と聞かれたことは何度かある。

「なんで決めつけるのかな~?」

有機農業運動の歴史を知り、近代農業の弊害を知り、
有機農家の努力を知ると、「なぜ?」という疑問しかわかない。
「努力が足りないんじゃないの?」などと
傲慢なことを思っていたが、最近は考えが変わった。

おっちゃんたちが「作れない」というのは
「作り方を知らない」だけなのだ。ず~っとず~っと長年の間、
化学肥料と農薬を使って作ってきたのに、それなしで
どうやって作ったらいいのかわからないのだ。

gazou 019
雨よけハウスの種なし巨峰(というか欧州種以外)で28回(山梨県)。
昨年はベト病が猛威をふるい、今年も相当出そうってことなので、殺菌剤は必須でしょう。
ぶどうは洗って食べましょう。



さらに、そんな作物が売れるのかどうかすらわからない。

近所に新規就農した「有機農業する若い人」たちが、
自分たちが大嫌いな草ぼうぼうの畑で作ったり、
虫に食われたものを作ったりしていると「やっぱりダメだ」と思う。

「野菜はピカピカじゃなくちゃ」売れないからね。

あともうひとつ。農薬を減らしても高くは売れない。
これはすごく影響力がある。だって評価されないってことだもの。
使っても使わなくても売値が同じなら、誰も試さないよね。

かくして、慣行栽培の防除回数は大きく減ることもなく、
進歩しているようでいまだに前時代的な技術のまま、
単位面積当たりの農薬散布量が世界一という日本の農業。

わたくしは農薬をまくことはしょうがないと思うし、
そうでなくちゃ作れないという人々の気持ちも理解できるし、
たぶん慣行栽培がなくては日本の野菜はまかなえないと思うけど、
もう少し減らす努力をしようよと言いたい。

紅秀峰だけど
山形県の慣行防除暦ではさくらんぼは雨よけハウスで27回。
さくらんぼはミバエが入るので殺虫剤が必須。けっこう出荷ぎりぎりまでOK。
観光農園で洗わずに食べる人の気がしれない。



技術指導をすべき機関があるのだから、ちゃんとしようよと言いたい。

さらにもうひとつ。減農薬の野菜が少しばかり高くても
それを選択して買う消費者と、流通が育たないとダメなのね。
減らした農家の努力を受け入れる器がないと、行く先がなくなっちゃうから。

なんてことを考えると、現状の数少ない器である大地を守る会とか、
らでぃっしゅぼーやとかが大きくなって、マイナーじゃなくて
メジャー産業になることが大切なのかなあと思うのだった。

※注 本文中の防除暦の農薬カウントは、わかりやすく回数と表記していますが、
実際は成分数で散布回数ではありません。


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No title

こんばんは。
日本の農業の問題点というか
都市集中の便利な生活と弊害というか

日本人の価値観が変わらないと変わらないでしょうね。
その為には食べ物のことをもっと知る必要があると思います。
(ほんたべさんのブログを読んでいると、自分も知らないことが多いですが)

成分数と散布回数という意味すら
おそらく理解できない人が多いのでは?
農薬っていうと
殺虫剤と除草剤はイメージするけど
殺菌剤は知らないかも?
自分がそうでした。

農薬と化成肥料が当たり前の農業世代
何となくわかる気がします。
機械化と大規模化が進み
今農業をしている世代は、
農薬と化成肥料を使う事が普通なんですね。
綺麗で成長のそろった野菜が出来ますもんね。
もう一世代か二世代前の人たちが、
きっと当たり前のように有機農業のしてきた人たちなんでしょうね。

Re: No title

スナフキンさん、こんばんは。

> 日本人の価値観が変わらないと変わらないでしょうね。
> その為には食べ物のことをもっと知る必要があると思います。

知ってもらえると何か変わるかもしれないなあと楽観的に考えています。
なにしろ「農薬」をテーマにするとものすごくアクセスが上がるのですが、
それは「興味がある」ことの裏返しなのでしょうから。

> 成分数と散布回数という意味すら
> おそらく理解できない人が多いのでは?

これ、説明するのが難しいので、今回はスルーしちゃいました。
除草剤で言うとわかりやすいのかなあ。

「除草剤を一回散布とよく言われるけど、実はその除草剤には
農薬成分が3つ入ってるから、成分カウントすると3剤になる」
これでどうでしょう?


> 殺菌剤は知らないかも?
> 自分がそうでした。

そういうもんですか。
知らなかった頃の自分を思い出せないけど、私もそうだったかも。


> 農薬と化成肥料が当たり前の農業世代
> 何となくわかる気がします。

今60歳くらいのおじさま方にそういう方が多くいらっしゃいます。

その上の世代になると、化学肥料初体験世代になります。
たくさん取れて感動しまくった方々、戦後肥料の配給とか受けた方々です。

この人たちの話を聞くと、化学肥料と農薬がなければ
食糧増産できなかったんだなあとよくわかります。


> 機械化と大規模化が進み
> 今農業をしている世代は、
> 農薬と化成肥料を使う事が普通なんですね。

有機農業運動を始めた人たちもすでに60~70代に突入しています。
複合汚染をリアルタイムで体験してる人たちの一部が、
有機農業を始めたのだと認識してます。
(某D社の社長の受け売り)

それ以外の人たちは、化学肥料と農薬に依存した農業を
そのまま継続されているのだと思います。

> きっと当たり前のように有機農業のしてきた人たちなんでしょうね。

有機農業なんて呼び名もなく、意識せず、粛々と堆肥を入れてたのでしょうね。
今70代の人たちです。
今のうちに聞ける話を聞いとかないとと多少焦り気味です。


No title

成分数と散布回数の違いの説明ありがとうございます:D

Re: No title

ゆうこさん

コメントありがとうございます。
お役に立てて良かったです。

もう少しお待ち下さい

宮城県で炭素循環農法を実践している管理食養士、大槻さんの田んぼ、畑を見学してきました。
https://picasaweb.google.com/tanjun5s/eIwvtH
モミガラと木質チップだけで無農薬の野菜ができています。
また、田んぼを深水にすることにより、無農薬の米作りを確立しています。
これからこの方法を徐々に拡げて行こうと画策中です。
とりあえず主食の米とある程度の野菜が無農薬でできれば良いでしょう。
果樹も炭素循環農法で作られている方がいますので、もうすぐだと思います。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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