おひさまと雨と土で育った、無農薬のすももの話

gazou 020
仙人の後ろ姿。畑は草ぼうぼう。「草はさあ、若いうちに刈り取るより
大きくしてから倒した方が炭素の供給になるじゃんね」と前に言われた時は、
何の事だかさっぱりわからなかった私。今なら立派に理屈を答えられます。



山梨に行って仙人に会ってきた。

仙人とは、某D社の産地担当が、山梨県のすもも農家、
古郡正さんにつけたあだ名である。
古郡さんの記事は過去ログからどうぞ↓
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-14.html

上記記事は「ほんたべ日記」を始めた年の7月に書いたものだ。
今読みかえし「何もわかっとらんな、自分」と思ってしまった。
さらに、文章が某D社の販売促進調から抜け出せていない。
あああああ。何考えてたんだ自分、全く、もう。

まあ、いっか。

さて、今年も古郡さんのすももは、
無施肥・無農薬栽培で粛々と育っていた。

古郡さんは、わたくしが産地担当になった年まで
ソルダムという品種にだけ石灰硫黄合剤をまいていた。
その翌年から全てのすももに農薬をまくのをやめた。

すもも1
「味はさあ、前、肥料入れてた時の方が甘かったような気がするね。
糖度は高かったと思うなあ」と古郡さんは言う。肥料が入らんとおいしくならんと。
うーん、そうかなあ。いつも夢のようにおいしいけど。とくにサンタローザが。



肥料はしばらく前からやってなかったので、
下草の炭素と、雨などのチッソ分の天然供給だけで、
すももは大きくなっていた。

夏に行くと毛虫はいるし、病気の果実があちこちにあるし、
フツーのすもも畑では、絶対に見られない光景をよく見た。

そのうち、彼は剪定もやめてしまった。

「剪定ってのは施肥だからね」と古郡さんは言う。
上記記事を書いたときには理解できなかったが、今ならわかる。

剪定をすると木の生理が変わる。

道法正徳さんが指導している切り上げ剪定は、
無肥料の果樹栽培の技術のひとつだが、
剪定をして上向きの枝を伸ばすことで優位になるホルモンを利用する。
剪定によって施肥をしなくていい状況を作り出す技術とも言える。

剪定もされない古郡さんのすももは
「そこにあるもの」だけで大きくなる。

gazou 009
すももにも桃にもかかる灰星病。慣行栽培では灰星病防除で
4回ほど殺菌剤をまくらしい。菌は樹皮などで越冬し、春先に花から果実に移行、
梅雨でぐわっと広がるイヤな病気。菌の総体数が減らないといつまでも出続ける。



すももの木はボロボロで、中には枯れたものもある。

灰星菌でぽつんぽつんと穴があいた葉は、おしなべて小さい。
そして、数が少ない。剪定をしないし肥料分もそれほどないから、
新しい枝がびゅうっと伸びることもなく、こぢんまりと生育する。

遠くから見ても他の畑と木の様子が違うことがわかる。
すももの木が、そこにあるものでなんとかしてる。

奇跡のリンゴの木村さんのように、大豆などは植えてないから、
すももたちは本当に「そこにある何か」で毎年実をならせている。

農薬をやめてしばらくの間、カイガラムシがよく果実についていた。
ある年から少なくなり、最近ではつかなくなった。
「生態系が安定したのかもね」と古郡さんは言う。

灰星菌は根絶できない。でも農薬はまかない。
なぜそうするのか、産地担当になったころよく話した。
「あるがままが大事だから」と、古郡さんは毎回言った。

IMG_6191.jpg
一般栽培のすももの木。葉っぱが大きくてだらっとしてるのは、
チッソがまだ効いてるせい。枝も太くて元気がいい。肥料をちゃんとやってるからね。

IMG_6200.jpg
古郡さんちのすもも。枝は細くてこぢんまりした樹形。
葉がV字型になってるのはチッソが切れて炭水化物が果実に移行している証拠。
栄養周期を勉強してると、こういう木の生理がわかるようになります。



「栄養周期」という優れた技術をもっていて、
それを使うことが楽しくて、それこそ西出隆一さんが言う
「高品質・多収」を実現していたのに、今ではそれを使わない。

ただ見てるだけ。

一般的な果樹栽培では、年に数回肥料を与える。

余った肥料分が徒長枝という形で初夏から夏にびゅっと出てくる。
徒長枝の分、肥料が余分なんじゃないかと皆言うが、
無肥料にする人はあんまりいない。

毎年徒長枝が出て、それを切り、肥料を入れる。この繰り返しだ。

肥料分が多いと、果樹は生理上、果実の味が必ず悪くなる。
慣行栽培ではいまだに化学肥料を使っていて、
水っぽい大玉のすももがたくさんなる。そしてすぐ腐る。

スーパーに売ってるのはこういうすももだ。
おいしくないに決まってる。

IMG_6196.jpg
植えたときから肥料ゼロ・農薬ゼロ・剪定なしで大きくなった5年生の木。
5年もするとすももはもっともっと大きくなるのに、肥料がないからとても小さい。
ここまで大きくなれなかった木は全部コスカシバという害虫が入って枯れた。
この畑にあるものだけで大きくなったすももの木。枯れてないのが奇跡のよう。



何も与えられない古郡さんのすももの木は、毎年
こぢんまりとした小さな実をつける。

おいしいすももにするために、古郡さんはそれを摘果する。
灰星にもふくろみ病にもかからず、シンクイムシも入らず、
無事に生育できたものだけが、某D社に出荷される。

産地担当をしてた頃、この事実を見てはいたが理解していなかった。
少しずつ知識が増え、古郡さんの言ってることがわかるようになり、
今では、「ああ、すごいなあ」と思う。ただ、「すごいなあ」と。
すももの木が、そこにあるものだけでならせたすももの実だ。

そして思うのだ。
「自然栽培」ってのはこういうことじゃないのかしらん。

すももの木が自分とおひさまと雨の力で実をならせる。
そしてわたくしはそれを食べる。なんとなく、奇跡のよう。

わたくしは、古郡さんのすももと一緒に自然の力をいただく。


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No title

おいしいという言葉のほんとうの意味で
おいしそうです

Re: No title

emiさん

確かにおいしいです。
細胞も、酸味もぎゅっと詰まった感じです。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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