農家の常識が通じない栽培技術「切り上げ剪定」

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植物ホルモンの動きが大変わかりやすい梅の木。ナナメにかしいでいるので、
傾いた上部の枝が優勢になっている。これがオーキシンのしわざ。まっすぐ伸ばし、
開いている枝をぎゅっと縛り、成長を早めるのが初年度の梅の剪定。



某D社で産地周りをしていたわたくし、
担当していた産地は落葉果樹と冬場の大型野菜の産地。
一時期は全国で50産地ほど担当していた。

果樹類は出荷ピークが2カ月ほどで、次々に産地が変わるので
6月にすももが始まり、中生種のりんごが終わるまでは大変忙しい。

11月、落葉果樹が貯蔵ものだけになると全ての気力を使い果たし、
渥美半島のキャベツが出荷ピークを迎えるまで、
ゾンビのようになるのが常だった。

さて、そもそも農薬がないと作りにくい落葉果樹で
低農薬栽培をしている方々というのは、農業界での先駆者が多い。

つまり栽培技術が相当なレベルであり、思想も徹底しており、
「先生」と呼ばれ技術指導をするような方々がほとんどなのだった。

このようなツワモノのおじさま方と話ができるようになるためには、
農薬・栽培・品種などについて知らなくてはならなかった。

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本当は地上部70センチに切り詰め、台木のつなぎ目から30センチまで
新芽を全部かいておかなくてはならないのだが、できていなかった。
なので、これを切り詰めて、勢いのいい枝だけを残すと・・・・

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こうなりました。なんか清々した感じで梅がうれしそう。


本を読んでも頭にちっとも入らないし、実践とは違う。

わたくしの知識は産地で農家のおじさま方に聞いた話を
自分の頭の中でいろいろと補完しながら積み上げたものだ。
なので「農家の常識」はある程度理解できる。

この常識を覆す技術を持っている人がいる。
詳しい記事は過去ログから→http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-34.html

道法正徳さんは「切り上げ剪定」という、
真上に伸びる枝を意図的に残すことで植物ホルモンを活性化し、
無肥料・無農薬栽培を可能にする技術を構築している。

道法さんの柑橘類での成功例を目の当たりにしたわたくし。

それ以来、気になるけどいまいちわからんというのが
正直なところ。だってNPK必要ないってどういうこと?
微量要素必要ないってなぜ? 全然わかんない。

ということで、今年大豆プロジェクトを開催しているさちこさんが
梅の苗木を植えたので、初年度の梅の指導に来ていただいた。

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勢いのない枝を実際に欠いてみて、残す枝を選択している。
枝は、手で下に向けてむしってしまうといいと道法さん。



道法さんの話はとても興味深い。
「そう言えばそうだよね」と思うことの方が多い。

しかし、これは農家が聞いても納得できないだろう。
今まで普及所や指導員が言ってきたことと真逆だからだ。
でも少し考えてみて「あっ!」と思った。

栄養周期でも同じこと言ってたぞ。それに初めて聞いた話じゃない。

長野で日本初のふじの「着色系品種」を発見した原今朝生さんは、
普通なら切ってしまう徒長枝をわざわざ残す剪定をしてたから、
枝変わりがよく出たのだと息子の俊朗さんに聞いた。

さくらんぼを徒長枝につけている奥山博さんは、
最初近所の人たちに「何やってんだ」とバカにされてた。
今では皆がその剪定方法の真似をしている。
おいしいさくらんぼがなり、摘果の手間が省けるからだ。

なあんだ。元気よく伸びる枝を残す技術を、
すでにわたくしは知ってたのだった。
「人のしないことをする人」をすでに何人も知っていたのだ。

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欠いたところは枝を残さず、完全に切り取ってしまう。
こうするとオーキシンとサイトカイニンが傷口をうまく修復し、成長も妨げない。
枝が少しでも残るとジベレリンが分泌され、根の動きが止まり成長が抑制されるそう。



小難しい話になるので説明は控えるが、今回詳しく聞いて、
道法さんのやり方は理にかなってると思えた。

道法さんは、青果連時代に土壌分析をさんざんやり倒し、
データを集めまくり、あれこれ試してみた結果、
それでも解決できないことがあるという経験を持っている。

そこで植物ホルモンに気づいた。

土壌分析もしないで「そんなの農業に必要ない」という人がいるが、
そういう人の言うことをわたくしは信じない。
やらないのになぜ「必要ない」と言えるのかがわからない。

だから、さんざんやってみて解決できず、新しいことを発見した
道法さんの言うことは信じるに値すると思う。

先日古郡正さんと話をしていたら、肥料を入れるのをやめた後、
土から肥料分が抜けるのに、果樹だと5年かかると言った。
道法さんは8年かかると言う。畑作だともう少し短い。3年ぐらいだ。

IMG_6232.jpg
ちなみにこれ、ほんたべ農園の今年のナス。施肥はしていない。
冬の菜っ葉とカルスNCRをすき込んだだけだが、肥料に気を使った去年より
数段出来がいいのよね。出ている枝を全部上向きに支柱にくくりつけただけなのに。



だから無施肥にして3年間は無肥料栽培とは言えない。

その間は残肥でいいものができている可能性があるからね。
評価はその後に現れる。良くなるか、悪くなるか。

道法さんは「そこから本当においしくなる」と言う。
指導を始めたばかりだから、まだそこに到達している人はいない。
でもこれからたくさん生まれる。
いつか、肥料を使わずに無農薬でできる果物が
日本中にあふれる日が来るかもしれないのだ。

それはとても美しい夢。楽しい夢じゃない?

さて、今回道法さんと話していて気づいたことがあった。

わたくしは農家のおじさま方に育ててもらった。
彼らの思想や知識を知らない間に吸収し、
それを基盤にして「今の自分」ができあがっている。

もうお亡くなりになって会えない人もいるけど、
その人に教えてもらったことが自分の中に生きている。
だからいつでも思い出せる。彼らがわたしの一部になっている。

なんだがそれが、少しうれしかった今日。


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No title

ほんたべさん、おひさしぶりです。こんばんわ。台風の被害はありませんでしたか?

道法正徳氏のお話は、以前お聞きしたときに、正直驚きました。「本当なのか?」と。

でも、結果はちゃんと出されている。僕の考えですが、常識と言うのは、今まで誰かがその方法でうまくいったから広まった方法なのではないかと。

そうすると、道法正徳氏の方法も、いつかは常識となるのではないでしょうか?という期待もあります。

せっかくだから、本でも出してくだされば、買うのですけどねぇ・・・

Re: No title

駆動さん、こんばんは。

台風はほんたべ農園のトマトを一本ぽっきり折って行きました。
道法さんに教えてもらった「折れたトマトの対策」の通り、
折れたところからごっそり取って、新しい芽がふくのを待つことにしています。
>
> 道法正徳氏のお話は、以前お聞きしたときに、正直驚きました。「本当なのか?」と。

そう思いますよねえ。
でもちゃんとできてるんですよ。すごいなあと思います。

> そうすると、道法正徳氏の方法も、いつかは常識となるのではないでしょうか?

そうなるといいですね。
それにまあ、道法さんは人に物事を教えるのがとてもお上手なのです。
あんなに上手な方を、私はあまり見たことがありません。
スカッと頭に入ってくるって感じです。
>
> せっかくだから、本でも出してくだされば、買うのですけどねぇ・・・

川田健次というペンネームで本出されてますよ!
「切り上げ剪定のなんちゃら」というタイトルでした。
でも本読んでもわかんないです。
実際に目の前で見た方が理解しやすいです。

切り上げ剪定

 切り上げ剪定に関して、2点、教えて下さい。
 
 1.切り上げ剪定で残した上に伸びる枝(立ち枝、直上枝、徒長枝)にも、多数の実が成るのでしょうか?

 2.通常の剪定だと、残した枝の先端を切り詰めますが、切り上げ剪定で残した上に伸びる枝(立ち枝)も先端を切り詰めるのしょうか?

Re: 切り上げ剪定

こんにちは。メッセージをありがとうございます。

>  切り上げ剪定に関して、2点、教えて下さい。
>  
>  1.切り上げ剪定で残した上に伸びる枝(立ち枝、直上枝、徒長枝)にも、多数の実が成るのでしょうか?
>
>  2.通常の剪定だと、残した枝の先端を切り詰めますが、切り上げ剪定で残した上に伸びる枝(立ち枝)も先端を切り詰めるのしょうか?


どちらのご質問もわたしは実際に果樹を栽培しているわけではないので答えることは難しいです。
道法正徳さんに直接お尋ねになることをおすすめします。

道法さんは現在自然栽培関係の果樹農家に指導されています。
ご近所にいらっしゃる機会があったらご参加されるといいかと思います。

道法正徳さんのWEBサイトは「グリーングラス」で検索すると出てきますから、そこからコンタクトを取ってみてはいかがでしょうか?

Re: 切り上げ剪定

 御返事、有難う御座いました。

 その後、
 「高糖度・連産のミカンつくり―切り上げせん定とナギナタガヤ草生栽培」(川田建次著)
 を購入して読んで見ました。

 立ち枝を残すと、立ち枝に発育枝(春芽:春に発生し花を着けていない枝:花芽分化すると翌年は結果母枝になる)が発生し、同時に花芽も着き、翌年は、有葉花(ゆうようか)が多く咲くそうです。
 鉢植えや露地植えの柑橘類を剪定する際に、参考にしようと思っています。

 有難う御座いました。

Re: Re: 切り上げ剪定

こんにちは。川田さん(道法さんのペンネーム)をご購入されたのですね。
それをお知らせすれば良かった。すんません。

>
>  立ち枝を残すと、立ち枝に発育枝(春芽:春に発生し花を着けていない枝:花芽分化すると翌年は結果母枝になる)が発生し、同時に花芽も着き、翌年は、有葉花(ゆうようか)が多く咲くそうです。

あの本は難しくてわかりませんでした。
また道法さんのお話を聞きたくなってきました。

少しでもお役に立てて幸いです。

御返事、有難う御座いました。

 川田建次(本名:道法正徳)氏の
 「高糖度・連産のミカンつくり―切り上げせん定とナギナタガヤ草生栽培」
 は、アマゾンで売っていたので、購入しました。
 内容的には、合点が行く点が多かったです。
 
 立ち枝と、徒長枝の相違が、今ひとつ解からないですが、花梅の見驚(ケンキョウ)は、徒長枝にも、遅れて開花して来ています。
 徒長枝を剪定するかしないかで、専業農家の人達の間で、議論や異論があるようです。

 有難う御座いました。
 
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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