大きなりんごと小さなりんごの木の話

RIMG0062.jpg
最近スーパーでも見かけるようになった「秋映」というりんご。
10月上旬に出荷されます。以前はここは千秋というりんごの出荷時期でした。
おいしいけど作りにくいので、千秋を作る人は減ってきています。
品種構成を変更するのも「改植」の役割。いいりんごに植え換えるのですね。



例えばわたくしがりんご農家だったとする。

年老いた両親と自分、そして夫の4人でりんご栽培をしている。
両親が植えた木は、昔たくさんりんごをならせたが、
今では両親と同じように年老いて、収量が上がらなくなってきた。

品種も一昔前のものばかりだ。
つがる、千秋、王林、ジョナゴールド、ふじ。

昨年母が脚立から落っこちて、幸いけがはなかったが、
もう大きなりんごの木の作業は難しくなっているのだと実感した。

年老いた大きな木。今まで自分を養ってきてくれた木。
これを新しいものに更新しなくてはならない。
新しい木、新しい今風の品種構成にして、
次世代につなげるために、わたくしは「改植」を考える。

というように、昭和の時代にりんごを栽培していた人々は、
どこかの段階で上記のようなことを体験する。
そして、りんごの木を新しく植え換える。

gazou 089
これが「大きな木」のきょう木栽培。カメラのフレームにおさまりません。
もう60歳以上になるおばあさんのふじ。でもまだ実をならせています。

gazous 039
ワイ性台につなれたワイ化のりんご。ティーンエイジャーって感じ。
この2倍位の大きさにはなりますが、小づくりで作業が楽そうでしょ。
りんごの実も大きな木と比べて、早くなり始めるという特徴もあります。



そして、ほとんどの農家が「作業を楽にしよう」と思う。
りんごの作業とは、春から秋までのさまざまな作業を
全て脚立に乗ってやらなくてはならない。

脚立を上がったり降りたりするのはすごく大変だから、
落ちるし滑るし危ないし、できるだけ脚立を使いたくない。
そうすると、新しいりんごの木は「小さい木」にしようと思う。

この小さい木が「ワイ化」と言われる
クリスマスツリーのようなこじんまりした木である。

ちなみに上記の大きな木は「きょう木」と言われる大きな木のことだ。

大きな木は体力があり、なり始めると収量もいいし、
ワイ化と比較して味もよく(と言う人が多い)、天候や
いろいろな悪条件にも耐え忍んでくれるというメリットがあるが、
なにしろ作業が大変。

一番の問題は、植え換えるとなり始めるまでに
何年もかかることだ。その間はりんごが採れない。

gazous 011
ワイ化で調子が上がってきたシナノゴールドの木。植えて8年位かな。
もう収量も上がってきて相当りんごが収穫できるようになっています。



ワイ化にすると4年程度である程度採れるようになり、
計画的に改植すれば経済的なダメージが少なく、
とにかく作業が楽になる。木の寿命は短いけどね。

脚立に登らずいろんなことができるようになる。

というので、現在の主流はワイ化栽培である。
昭和の時代に植えた現在まだ残っている大きなりんごの木は、
そのうち切られ、小さな木に更新される。

いつか大きなりんごの木がなくなる日が来る。

それはそれで少しさみしい気がするね。大きなりんごの木の下で
風に吹かれるのはとても気持ちがいいものだから。

さて、りんごの作業ってほんとにいろいろあるのだが、
そのあたりも技術によって省力化が図られている。

gazou 057
木のてっぺんでも脚立の上から2段目くらいで手が届く、これがワイ化のいいところ。
若いうちはまだしも、年とってから脚立から落っこちるとおおごとです。
骨でも折れたらもっとおおごとです。低い位置での作業って大切なんですよ。



まず花を減らす摘花。その後受粉。なった実を減らす摘果。
さらに摘果。さらに適正な数にする仕上げ摘果。

その間に袋かけ(青森に顕著)。大きくなってきたりんごに
きれいな色がつくよう、りんごの周りの葉を摘む葉摘み。
その後、まんべんなくお日様がりんごにあたるよう、玉まわし。

こういった作業の合間に農薬散布、草刈などがある。

現在では受粉は蜂にまかせて人間はやらないという農家も多いし、
摘花や最初の摘果は農薬で間に合わせている人がいる。
長野県では袋かけはあまり行われていないし
JA・市場出荷でなければ葉摘みもそんなにしない人もいる。

そして、脚立に登らなくても作業ができるようになった。

まあしかし、ワイ化と言ってもてっぺん近くは3m以上になるので、
脚立のてっぺんに手放しで乗らないといけなかったりするけど、
大きな木に比べたらほんとに楽だとりんご農家は言う。

gazou 062
りんごの中心花にひとつひとつ花粉をつけてく作業は、そりゃもう大変。
蜂に任せず人間がやった方がいい実がなるからと今でも受粉する人もいますが、
それは個々の農家の判断。この作業があるとないとでは春先の仕事量が全然違います。



なんてことが、消費者の知らないうちに進んでいるのだった。
作業性を上げ面積を増やさないと、食べていけないってこともあるけどね。

なぜこんなことを書いてるかと言うと、
無肥料栽培のりんご畑を見て、思うところがあったからだ。
無肥料(無農薬)である程度できるのは、
たぶん木が大きいってことの影響も大きい気がする。

環境・天候の影響を受けにくく、安定している大きな木は
多少の変動には動じない。かんばつ後の急な大雨でも
りんごの実が割れたりしないし、葉っぱが黄色くなったりもしない。

そういう意味で大きな木の栽培は安定している。
青森県の木村さんの無農薬りんごの畑も、大きな木だった。

木村さんに影響されて無農薬にしたワイ化の畑を見たが、
たった一年で惨憺たる有様になってしまっていた。
これが大きな木であれば、影響が目に見えるまで2年はかかる
木の大きさでずいぶん違うのだなあと思ったものである。

gazou 094
りんごも60歳を過ぎるとあちこち病気になって、枝が折れたりするもんです。
老体にムチうって実をならせてる木を切るのはせつないもんですが、
自分も、子供たちも食べてかなきゃいけないですから。



さて、りんごの木を大きな木からワイ化に改植し、
経済的に困らないよう、4年後に一反4トン収量が上がる技術。
これを考えたのは長野県の故・原今朝生さんだ。
原さんの記事は過去ログから
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-35.html

原さんはりんご栽培の省力化に尽力し、年をとっても、
りんごの木が古くなっても、農家が困らない技術をいろいろと研究し、
その技術をおしみなく人に与えた方である。

原さんが今生きていたら、無肥料・無農薬栽培のりんごのことを、
なんて言っただろう。最近よく考える。

「すごいことする衆がいるわなあ」って言うだろうか。
それとも? 

もうじきお盆。原さん、夢でもいいから遊びに来てくれないかなあ。
聞きたいこと・伝えたいことががたくさんあるのに。


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No title

ほんたべさん、お久しぶりです。お盆になりましたね。ほんたべさんの夢の中で、原氏とお会いできていると信じております。

りんごのワイ化の話を初めてお聞きしました。どうりで最近、木が小さくなったものだと思っていました。

改良は、次の世代のための愛情なんだろうなぁと。そんなことを思いました。

Re: No title

駆動さん、お久しぶりです。

原さんに遊びに来てほしいんですけど…自分で墓参りに行った方がいいかもなと思い始めました(笑)。
いけないけど・・・。


> りんごのワイ化の話を初めてお聞きしました。どうりで最近、木が小さくなったものだと思っていました。
>

山形はまだ大きな木で作ってる人がいますよね。
ブログのなかの大きな木は、高畠町の方の木です。
若い人が始めると、小さい木にする傾向があります。
後継者がいるかどうか、木でわかったりします。


> 改良は、次の世代のための愛情なんだろうなぁと。そんなことを思いました。

そうですね~、りんごの場合はとくにそれを感じます。
やっぱり「愛」ですよね!
必要なのは!
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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