大変驚いたぶどうの「鉢植え栽培」

IMG_6947.jpg
シャインマスカットの出荷時期は8月下旬。土耕よりも少し早い。
ってことは値段がいい。鉢植え栽培メリット多し。左のちんまりしたぶどうは
今年初生りのシャイン。右は5年目。大きさが全然違うのだね。普通もそうだっけ?



観光農園なんかで、いちごの培地が宙に浮いてるハウスに
入ったことがある人、たぶんいると思うけど、
ああいう風に土から栽培土壌が切り離されてる栽培方法って、
知らないだけでけっこうある。

いちごの場合は高設栽培という。わりとわかりやすい。

フツーのハウスにトマトが植わってるように見えるけど、
実はトマトと地面はビニールシートで切り離されていて、
トマトの根が大きく広がっていかないような水・肥倍管理をして、
高糖度トマトを作る方法もある。

また、ハウスの中のパパイヤの下にシートを敷き、
地中に設置したパイプから化成肥料の液肥を流し、
養分管理をするとかいう栽培方法もある。

これらのものが植わっている土は配合してあったり、
山の土だったりいろいろだけど、シートが敷いてあるので、
根が大きく広がることができない。

植物には負担を与えるが、環境を完璧にコントロールできる。
また、土を入れ替えられるので、土壌由来の病気が減る。
だから農薬が少なくて済むと言うメリットもある。

IMG_6933.jpg
下に敷いてあるシートを突き破って根が地面に広がることがあり、
そうなるとぶどうの樹が生育し始めるらしい。鉢植え栽培はこじんまりとした樹で
生育を早くし、熟期を早め、更新を楽にするってな技術なのだね。
りんごのワイ性台にちょっと似てるかな。



こういうの、正式名称はなんて呼ぶのか知らないけど、
便宜上、「鉢植え栽培」と呼ばれてるらしい。

一般的な、地面に栽培されているものは「土耕」と呼ばれる。
有機JAS認証は、土耕しか認められていない。
野菜工場で作られる野菜が無農薬だけど有機じゃないのは
法律的に決まりがあるからである。

だって、土づくりをするからこそ有機農業なのであって、
客土や溶液管理じゃ有機農業って言えないよね、理念的に。

ってのはおいといて。

先日「大豆の種まきから味噌作りまで」のオプションで、
八郷町のぶどう農家見学に行ったのだが、
そこのぶどう畑がまさに、この鉢植え栽培であった。

驚愕の鉢植え栽培。山梨に何十回も行ったのに、
山形でもぶどうけっこう見たのに、一度も見たことのない鉢植え栽培。
いいとか悪いとか別にして、いたく感心して帰ったのだった。

この方は、昔から農業をしてたわけではなく、
54歳の時に退職し、農業をすることを考えたらしい。

IMG_6941.jpg
ぶどう農家と話すたびに不思議に思うこと。皆、番線を握りながら話すの。
なんで握っちゃうのかなあ…っていつも思うが、聞いたことはない。
ほんたべ的七不思議のひとつ。しかしお若い方でした。もう70歳なんだって。



では、何を作るか。

彼はスーパーで高値で売られているものを観察し、
ぶどうが高いってことに気がついて、ぶどう栽培をすることにした。
実家は米を作ってたけど、果樹の経験は全くない。なのにぶどう。
すごいなあ、そこだけですごいと思ってしまう。

そして、茨城の農業試験場に行き、鉢植え栽培に出会った。
地面にシートをしいて客土し、ぶどうの苗を植えるこの栽培方法では、
定植後3年でぶどうがなり、5年もすればある程度の収量が上がるようになる。

土の分量が少ないからぶどうの生育が早く、
土壌由来の病気にならないので農薬が少なくてすむ。

雨よけハウスだが、周りは防虫ネットで囲ってあり、
環境のコントロールは通常のぶどうよりもかなり完璧にできている。

培地は有機質肥料と鹿沼土・腐葉土を毎年少しずつ足しているが、
3m×3m×60cm位の倍土に15kgの肥料一袋だけらしい。

うーん。不思議だ。しかもそのぶどうがおいしいのだ。

IMG_6949.jpg
ハウスの全景。こんな感じ。入った瞬間に「あれれ?」と思ったわたくし。
これだと下草管理がらくちん。水は棚に沿わせたホースから地面に直接流れる。
水分の調整も、肥培管理も、かなりの精度でコントロールできそう。
もちろん園主の観察力も並みじゃないでしょう。話を聞いてて想像できました。



好き勝手に根を伸ばすことができないため、木の寿命は早い。
しかし初なりが早く本格的に収穫するまでの期間が短いので、
おいしくないもの、うまく作れないものは簡単に更新できる。

更新しても惜しくないのだね。だから次々新しい品種を試している。

そんなことは、一般のぶどう農家にはなかなかできない。
植えたらそれなりに大きくして経費を回収しないといけないからね。
でも鉢植えではそれが可能だ。

栽培されてるのは、マスカット・オブ・アレキサンドリアを始め、
高級ぶどうと言われるものばかりで、主に欧州種を作っている。
欧州ぶどうってね。病気や虫に弱くてさ、農薬がたくさんいるものなの。
でも殺菌剤2回、殺虫剤2回しかまいてないんだって。

ええー、そんなことが可能なんですか!!!

「安心して食べられるうまいぶどうが目標だから」と笑う彼。
ブランド地域でもない茨城県でぶどうを作ってる。
すごくいいのは、直売でほとんどのぶどうが売れてるってこと。

IMG_6942.jpg
ハウス周りの防虫ネット(っていうかなんだろ?)にくっついてたカマキリちゃん。
植わってる品種はマニキュアフィンガーとかロザキとか、高いぶどうばっか。
だから差別化がしやすく、珍しいからいい価格で売れてるらしい。そして低農薬。
なんだかなあ。すごいよね。



「地域の人はそんなに買いに来ないから、地元のぶどう農家とは
バッティングしないのがいいんです。東京からわざわざ人が
買いに来る。そういうぶどう作りをしてきたんです」と彼は言う。

うっとりするマスカット香がステキなアレキを買って帰りましたが、
そりゃまたおいしいアレキでしたよ。
しかも500g1,050円というお買い得価格(価格設定は100g210円)。

54歳から始めたぶどう栽培。
毎日ハウスに来るのが楽しみでたまらない。
夜もハウスに来て、懐中電灯でぶどうを見ては「きれいだなあ」とうっとりする。

きっとこの人、ぶどうが好きで好きでしょうがないんだな。
今まで何人もの農家と話したけど、こういう人ってほんとにおいしいものを作る。
しかも、人が真似できないことをやってのける人が多い。

すごいなあ。話半分に聞いても相当すごいなあと思いながら
おうちに帰ったのでございました。
(農園の名前を失念しました。すんません。わかったら書いておきます)

※ブログ読者の方からこの栽培方法は「根域制限栽培」というのだと教わりました。
スナフキンさん、H2さん、ありがとうございます!


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No title

こんばんは。
根域栽培って言葉を聞いたことがあります。
でもこれだけの規模で本格的にされている方は、
初めてお目にかかりました。
基本樹形は、H型仕立ての短梢栽培でしょうか?

殺菌剤と殺虫剤各2回とは、これも凄いですね。
ハウスにすると病気は減るけれども、
虫が増えると聞きましたが・・・

ポリシーもあって、
販売戦略もあって、

自分も美味しいブドウを作るぞ!

根域制限栽培

鉢植え栽培、ブルーベリーでは最近は一般的みたいですし、マンゴーの例もあるようですね。
本当の鉢植えの場合、重機で移動できることのメリットもあるとか。
で、鉢植えじゃないものも含めた名称は、「根域制限栽培」というそうです。
このキーワードで検索すると、結構技術研究が進んでいるらしいことがわかりますが、
従来の常識にとらわれない新規就農者の方が取り入れやすいこともあるかもしれませんね。

Re: No title

スナフキンさん、こんにちは。

> 基本樹形は、H型仕立ての短梢栽培でしょうか?


H仕立てがどういうものかわからないのですが、短梢剪定でした。
ピオーネと同じ、5葉残してその先を切ると言ってました。
だからまあ、ジベレリンはつけてます。

> ハウスにすると病気は減るけれども、
> 虫が増えると聞きましたが・・・

スリップスとダニがいるらしいですが、それ以外はほとんどいないそうです。
殺虫剤2回のうちの一回はスミチオンなのですが、それにしても少ないですよね。
殺菌剤はオーシャインとトリフミンって聞いた気がするけど、自信はありません。
でもまあ、ダイセンみたいな強いのはまいてないので、ちょっと驚きました。

> 自分も美味しいブドウを作るぞ!

がんばってくださいね!

Re: 根域制限栽培

H2さん、こんにちは。

> で、鉢植えじゃないものも含めた名称は、「根域制限栽培」というそうです。

ありがとうございます! ブログにも教えていただいたことを書いておきました。
ブログっていいですね~。自分が知らないことも教えてもらえるなんて。
なんだかちょっとそういうつながりがうれしかったです。

> このキーワードで検索すると、結構技術研究が進んでいるらしいことがわかりますが、
> 従来の常識にとらわれない新規就農者の方が取り入れやすいこともあるかもしれませんね。

ハウスとかの初期投資が大きいのでしょうが、いいですよねえ。
とにかく、目からウロコが落ちっぱなしでした。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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