「援農」について思うこと

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9月21日、本庄市の瀬山明さんのところへ行ってきました。
冬作の作物の種まき、育苗、定植が行われておりましたよ。これは大根。
省力化のためシーダーテープに入れて一人で作業できる工夫がしてありました。



某D社には昔、年2回「合宿」という行事があった。

春と秋に一泊二日でどこかに出かけ、何かをしてから
大酒を飲むと言う大変楽しい行事で、各部署幹事持ち回りで行う。
部署ごとの個性が如実に現れる大変楽しいイベントだった。

合宿では毎回いろいろなことがあった。

宴会場で花火を加えて駆け回る人(わたくしの上司)、
旅館の玄関先でばったり倒れて寝ちゃった同僚、
たき火の周りでゲラゲラ笑いながらボヘミアンラプソディを歌う人々(私含)、
浴衣をはだけて廊下を走り回り人を噛む人、噛まれる人など
中学生の修学旅行のようなレベルの低い愉快なことが次々に起こり、
その旅館には二度と泊れなくなることが常であった。

しかし、分別のついた賢い新入社員が増えて行くにつれ、
だんだんつまらなくって、そのうち参加するのをやめてしまった。
「分別くさい人は立派だけどおおむねつまらない」
わたくしの持論である。

それはともかく。

わたくしが産地担当になった年、産地担当が合宿の幹事をした。
農家周りを仕事とする産地担当らしく「援農」がテーマで、
埼玉・茨城の農家に社員がまとまって援農へ行くという合宿であった。

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ほんたべ農園産のかぶですが、これ、一般的には規格外品っす。
某D社の友人におすそ分けした際に「これS産地のB品?」って言われたわたくし。
C品って言われなくてよかった! うれしいような悲しいような気分でございました。



某D社の社員だから農業が得意かっていうとそうではないから、
もたもたする社員に一から教える農家はイライラしただろう。

わたくしはそのとき、鶏卵農家の手伝いに行ったが、
他の女子社員が優雅に「たまごひろい」をしている間、
どういうわけが30日齢の鶏をつかまえて鶏舎を移動するという
素人には大変ハードな仕事を新入社員二人と担当した。

作業後の、鶏糞まみれになって鶏の羽が髪の毛についてるほこりっぽい我々と、
にこやかにたまごを拾ってた同僚との姿かたちの差は相当なものであった。
わたくしはこれで靴をひとつ捨てることになった。
マジな援農とは大変なことなのである。

さて「援農」というのは、都会の人々に人気があるイベントである。

某D社社員も、近隣の産地にお手伝いに行くことがあった。
「ほんとは来てほしくないけど取引先が来るというので断れない」
実はこれ、農家のホンネであった。
都会の人々の作業は農家的にはちゃんとした仕事ではないからである。

以下は社員が援農に行った後に農家から聞いた話の一例だ。
悪気のない笑い話なのだが、なぜ来てほしくないかがよくわかる。

gazou 021
これ、シナノゴールドの正品。美しくぴかぴかなものがそろってます。
選果は園主しかできません。判断基準がブレてはいけないからです。

gazou 018
こちらが規格外品。一個ずつ見れば「なるほどね」だが、
自分が手に取って見てると「これぐらいいいんじゃない?」と思うから不思議。
プロのものさしは厳しいってことですね。



・かぶの調整(出荷できる状態に整えること)をしてもらったんだが、
あとで見たらほとんど規格外品。全部やりなおした。

・桃の袋かけを手伝ってもらった後大風が吹いて
某D社社員がかけた袋が全部飛んでったのでやり直した。

・摘果を手伝ってもらったが甘いので全部見直してやり直した。

どういうわけだか人々は、自分ちに来た商品を見る目と、
自分が出荷する際の商品を見る目というのが違うらしい。
「これぐらいいいんじゃない?」という自己判断をしすぎるため、
素人の選荷はどんどん甘くなる。だから出荷前調整は無理。

摘果も同様の理由で、どれを選んでいいかわからないからムリ。

トンネルを張らせるとのちのち風でぶっ飛ぶ甘い張り方しかできないし、
難しい作業をしてもらうのは説明する時間がもったいないからダメ。

なんてことを考えると、素人ができる農家の手伝いというのは、
ほぼ、草取りしかないのであった。
(でも草取りって援農的には一番つまらない作業なのよね)

日常的に農業をしていない人たちができるマジな農作業など、
この世に存在しないのだ。
「援農」とは受け入れ側の農家に余裕があるときしかできない、
わりと難しいイベントなのであった。

IMG_5566.jpg
トンネル張りやマルチ張りもそれぞれにコツがあり、技が必要なの。
素人2人でやると風でぶっ飛ぶマルチやトンネルが量産されて、
結局全部やり直しなんつーことになったりするのよね。



これをうまいこと解決する方法がひとつある。
「援農」ではなく、「援農体験」でお金をいただくことだ。
私が以前勤務していたNPO法人では一人一回5,000円もらっていた。
その代わり、宿舎と食事は提供する。何日いてもかまわない。

5,000円の理由は、農家が作業を教える手数料のようなものだ。
これを聞いた時、うまく考えているなと感心した。

農家は無償で作業を教える手間のことをもったいないと思う。
手伝う側は「お手伝い」なのだから農家のためになってると思う。
だから、気分的には「教わる」という気持ちでやっては来ない。

この温度差が積もり積もると双方の負担になり、
そのうちやめたいと思うようになり、なんとなく不幸な結果に終わる。

「お金を支払う・いただく」というハードルを設けることで、
お互いの意識を同じくすることができ、ストレスがたまらない。
大変合理的な方法なのであった。
しかも、「援農」ではなくあくまでも「援農体験」ってところがミソ。

農業ってのは単純なようだが、実は大変複雑な段取りが必要な仕事だ。
各農家、それぞれにめいっぱい省力化を図って作業をしている。

素人がそこですぐできる作業などないってことに(草取り以外は)、
なんとなく気づいた今日このごろなのであった。


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No title

収穫の秋ですね。

No title

こんばんは。
どんな仕事でも、経験者でない限り、
手伝いにはならないですよ。
自分も近所の先輩農家さんに手伝いに行きますが、
1年目なんて、役立たずどころか
足を引っ張っているのが分かりました。
それでも2年目からは、マシな仕事ができるようになりました。

前の職場で「中学生の職場体験」の受け入れをしていましたが、
その日は、生徒さんに仕事を教える人が仕事が出来なくなりました。5人も送り込まれた日には、現場は大変でした。
どこの地域でもやっているみたいですが、先生たちがまず職場体験をして欲しいと思いました。

援農体験でお金を頂く、
良いかもしれませんね。
それでも度々来られたら、大変だろうなぁ。

Re: No title

スナフキンさん

おはようございます。

> どんな仕事でも、経験者でない限り、
> 手伝いにはならないですよ。

その通りなのですが、農業に関してい言うとそれが「援農」という
わりと上から目線の言葉で成り立ってるってのが不思議ですよね。


> どこの地域でもやっているみたいですが、先生たちがまず職場体験をして欲しいと思いました。
>

ほんとですね!
それ、目からうろこです。

> 援農体験でお金を頂く、
> 良いかもしれませんね。
> それでも度々来られたら、大変だろうなぁ。

消費者の受け入れをうまくやっている農家は、
何がしかの工夫をしているところが多いです。
何度も来てくれればおたがいなんでも言える関係になって
うまく回ってる例もあります。

要はお互いの意識と忍耐力と信頼関係ってことなのかも。

プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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