ミツバチの大量死から見える農業の問題

群馬 014
この娘はおなかのシマシマが黄色っぽいのでセイヨウミツバチ。
日本でセイヨウミツバチが野生化してるのは沖縄だけなので、
その辺を飛んでるのは誰かが飼ってるミツバチなのですね。
ニホンミツバチはおなかのシマシマが黒っぽいので、よ~く見るとわかります。



8月26日、「ミツバチと農業」という研修会に参加しました。

ミツバチの大量死(CCDではない)が起こっている原因は農薬の薬害である、
だからその農薬は規制すべきであると
一部の養蜂家、そして一部のメディアと識者が主張しています。

その真偽のほどはわかりません。

被害届(この5年で10件しか出ていない)や、大量死の記録(数字等が不明)等、
客観性のあるデータがそろっていないように思えるからです。

でもひとつだけわかったことがありました。

この問題は、単に農薬の薬害という話ではないということ。
根っこを探っていくと、農業政策や食育などにも波及する大きな問題であるということです。

さて、そのひとつ。
農薬について考えてみました。

P7196188.jpg
果樹産地での農薬散布風景。きれいな果物は農薬をまかないと食べられませんです。


一般的に消費者は、農薬は「悪」という捉え方をしています。

薬害やその毒性、環境負荷などを考えると、農薬はよくないものだと誰でも思います。
できるだけ農薬の使ってない野菜や果物を食べたいと、皆が漠然と思っています。

ただ、それぞれの作物にどれぐらいの農薬を使っているかはあまり知られていません。

以前、農業と全く関わりのない人に「りんごって農薬を何回使うと思う?」と聞いてみました。
「うーん、わかんないけど…3回くらい?」と彼女は言いました。
「りんごって、農薬を大量に使うよね?」

長野県の防除暦を見ると、30~35回(成分)、青森県では35回(成分)※1
「ええっ!本当!?…なんとなくだけど、多くても5回くらいかなと思ってた」

農薬は悪いものだと思っているけど、量的なものは実感できていない…そんな風に思いました。
農業の現場と消費者との間には大きな大きな溝があるということですね。

画像7
無農薬の畑で秋によく見かけるリョッキョウ菌にやられたヨトウムシ。
殺菌剤をまいていないとこの菌がアブラムシなどの害虫にも取りついて殺してくれます。
ただ害虫の大量発生時にはこの菌がいても追いつきません。やはり農薬にかなうものはないのです。



農薬のメリットを考えてみます。

虫や病気のないきれいな野菜を栽培できて、正品として売れること。
防除暦どおりに農薬をまいていれば、そんなに失敗なくできること。
ロスがそれほどない安定的な生産ができること。

慣行栽培の農家に無農薬でできないかと質問すると
「できるわけないでしょ」と言われます。「虫が出たらどうするんだ。売り物にならないよ」

それぞれの出荷先に規格があり、その規格から外れたものは売れない。
だから規格通りのものが作れるよう、農薬を使う…これが一般的な農家の姿勢だと思います。

消費者はどうでしょうか。

虫が食ってる野菜、病気が出てる野菜はイヤだから買わない。
でも農薬は悪いものだから、少なければいいなと思っている。

ううう、なんか矛盾してないっすかね。

キスジノミハムシ
キスジノミハムシの害。大根やカブを食害し、醜い姿に変えてしまいます。
有機栽培をしている農家の畑では、効く農薬がまけないのでよく発生しています。
一般では土壌消毒剤や粒剤を使用するので、ほとんど発生することはありません。
もちろん売り物にはならないので、消費者がキスジの被害を見ることはおそらくないでしょう。



例えばカメムシのかじった米。
お米の一部分がちょこっと黒くなるので、この米が入ると等級が下がります。

ただでさえ安い米価、これ以上安く売れるんじゃ食べていけない。
だったら農薬をまいてカメムシを退治しよう。これが農家の正しい姿勢でしょう。

それでミツバチの大量死を起こしていると言われるネオニコチノイド系農薬(※2)を夏に散布する。
見た目が悪くて売れなくなる=等級は低くなる=夏の農薬散布は絶対に避けられない。
これが作る側の主張。

食べる側としては、お茶碗に一粒この米が入っただけでイヤだから買わない。
これは食べる側の主張。そしてそして。
「私はきれいなごはんが食べたいの。だからきれいなお米を作ってね。
でも、ミツバチのためにネオニコを規制すべきよね」

…これ、少しおかしいような気がします。おかしくないですか。

「なぜ使わなければならないのか」、その議論をまずして欲しいなあと思います。
そして、なぜ使うのか。それを知ってもらいたいと思います。

食べものの生産現場を知っていれば、農薬がどれぐらい使われているかを知れば、
見た目よりも優先すべきものがわかってくると思うのですが、
日本の消費者はまだそこまで成熟していないのでしょうか。

くも
畑にクモがいるといろんな昆虫を食べてくれていいですね。
ネオニコ系農薬は有機リン系などの絶滅系農薬と違い、天敵であるクモを殺さないという一面もあります。




私個人は、農薬の使用は土づくりである程度減らせると考えています(果樹を除く)。
土づくりで無農薬栽培を実践している農家を知っていること、
虫や病気が発生する原因は土にあるという科学的な根拠があることがその理由です。

また、農薬に依存しない技術も様々な研究者から報告されています。
天敵の活用、コンパニオンプランツの利用などなど、最新技術はいくらでもあります。

でもこれらの情報は農民には全くと言っていいほど伝わっていません。
「IPMって知ってる?」と聞いても「なんじゃそりゃ」と言われたりするのですから。

農業技術の研究の場と、生産現場の農民が、うまくつながっていないのです。


gazou 007
エディブルフラワーにもなるボリジ。天敵を養成すると言われています。
雑草は害虫の住処となっていることが多いため、河川敷などの雑草を刈る際には、
作物に飛んでこないよう、時期に配慮するなどの対応をしている農家もいます。



生産の現場は現状維持で精いっぱいということなのかもしれません。

「農薬に依存しないと農業できない」という作り手も変わる必要がありますが、
食べる人たちも知る努力が必要なんじゃないでしょうか。
少なくとも、自分の食べてるものがどのように作られているかくらいは。

少しずつ無農薬栽培や有機栽培に取り組む人が増えてきていることを思うと、
作り手の意識は、いつか大きく変わる日が来るような気がします。

どこかにこの状況を打破できるスイッチがあるんじゃないかと思うのですが、
食べる人が意識を少しずつ変えていく、そんな地道な努力をするしかないんでしょうかしら。



※1 農薬のカウントは農薬成分数でのカウントであり、回数ではありません。
ひとつの農薬に成分数が2つある場合は、一回の散布で2成分のカウントになります。

各自治体の特別栽培農産物の基準については、以下URLで公開されています。
上記農薬成分数はここから調べました。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_04.pdf

※2 ネオニコチノイド系農薬
文字通りニコチンに似た化学物質という意味で、成分にも種類がいくつかあります。
有機リン系などの危険な農薬の代替として開発された殺虫剤で、
有機リン系が製造中止になりつつある中で一般的によく使われています。
ネオニコが規制されたら何を使えばいいの?と言う農家がとっても多いと思います


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No title

おもろい記事だ。

Re: No title

田中さん

ありがとうございます!
今後ともよろしくお願いいたします。

No title

うちの生活圏内、畑の周り、ここ10数年の間に蜂が本当に少なくなりました。カボチャ、スイカ、キュウリ、茄子・・・なりものが出来なくなっております。
お茶畑、キャベツ畑、ネギ畑・・・農薬の散布は尋常ではなく、散布後、1ヶ月以上農薬の匂いが周囲に漂います。吐き気微熱倦怠感・・・人間が悩まされるのだから、小さな虫たちはひとたまりもないと思います。これ以上、毒物を地球上に撒き散らさないでもらいたいです。お茶もキャベツもネギも要りません。きれいな空気と水があれば生きていけますから。

Re: No title

菊の助さん

ニオイがするってことは、有機リンかもしれませんね。
(ネオニコは無臭だから)
有機リン系農薬はものすごいニオイがするし、残留性も高いので虫は全滅するでしょう。

蜂など人間にとって有用なものがいなくなると気づかれやすいけど、
その他の昆虫は知らないうちに絶滅してるのかもしれません。

誰も気づかないうちに虫がいなくなってる…そういうのって恐いと思います。

農薬をまいたって、害虫はすぐに戻ってくるんです。
でも天敵は戻ってこない。だからさらに農薬をまく…悪循環ですよね。

農薬使用前提の農業…いつまで続くんでしょうね。

せっかく有機農業推進法が施行されても、有機の人は「自分が一番」なので技術の一般化が難しく、
再現性のある技術を持っている方もほとんどいらっしゃらないです。

でも有機農業だから、虫や病気が出ない土が作れるという人がいます。
有機だから味の良い野菜が作れると言います。
今度はそんな話も書いていきたいと思っています。

No title

数日前、盛岡青年刑務所に25歳のにーちゃんの面会に行った。
会った途端、あまりにいい顔をしているので、叫んだ。
「百姓をやれ。無農薬のどん百姓をやれ!」
受刑者の目がかがやいた。
かがやきつづけた。

おもろいと思ったのは、そいつを裏付ける何かが、ここの記事に、感じられたからだ。

そうしたら、コメントがあった。

毒をまき散らすなら「お茶も、キャベツも、大根もいらん」と。
とても感動した。

いいね。すごっく心強い。

「糞と泥にまみれて、百姓をやれ!」

その叫びが、ムショに行ったり来たりした、ばかなにーちゃんに通じたわけだ。





No title

本当におっしゃる通りですねえ。
農薬が無かった頃、ちゃんと作物は出来ていたんですからねえ。今以上に。
そして、害虫、益虫という区別すら、昔は無かったように思います。
益虫だって、害虫が居ないと滅んでしまうわけですから。害虫益虫という区別をしているうちは、農薬は無くならないと私は思います。すべての生き物は必要な役割を持ってこの地球にいるのですから。

Re: No title

田中さん

農業はいいです。
土と自分の間に何もないです。
土と自分と作物との関係を見つめ続ける仕事です。

ひたすらに土と向き合う仕事…うらやましいです。

でも、その仕事のことを伝える人間も必要だと思うので、
今こんなブログ書いてます。

Re: No title

菊の助さん

害虫を呼ぶのは、人間が無茶な施肥をするからだと私の師匠は言います。
農薬・化学肥料に依存する農業は、先が見えているといろんな人が気づいています。

でも大規模大量生産はコストを下げ、価格競争に耐えうる作物ができるという主張をしてる人もいます。
消費者が食べものの価値を値段ではかっているうちは、農薬を使わない農業って難しいと思います。

今年は生物多様年なのだから、多様な生き物を生み出す農業という仕事にも少し注目してほしいです。

No title

ほんたべさん、こんばんわ。消費者と生産者のギャップは、かなり大きいと感じています。
>農業技術の研究の場と、生産現場の農民が、うまくつながっていないのです。
そうですねー。研究者と農家が手を結ぶというのは、まだまだ機会が少ない気がします。
スーパーで並んでいる野菜たちは、とてもきれいですね。でも、その裏側を知っている人(生産者)は、その野菜を買って生でかじりたいかと思うと・・・矛盾していますね。

Re: No title

駆動さん

以前は自家用の野菜は分けて作ってるって人もいたらしいですから、
農薬の効果は農家自身は良く理解なさっているのだと思います。

一昨日から長野に行ってました。

りんご畑の横のネギ畑の農家が、一週間おきにネギに農薬まいてると聞いてぐったり。
ネギの葉を白くするスリップス対策だそうですけど…
いいじゃん!青いとこは食べないんだから白くても!と思ったワタシです。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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