「文楽」を観劇して感激した話

IMG_8561.jpg
「むすめ」のかしらの口元についているちいちゃなトゲ。
ここに布をひっかけて「よよよ」と泣き崩れたりする。
「むすめ」はまばたきができないが、その細工をすると顔つきがきつくなってしまうから。
まばたきできるのは「老け女形」と呼ばれるかしらなんだけど、
20歳以上の女性に使われるらしいんだけど、20歳以上で老けってどうよ。



タイトルにどうしてもこのダジャレを使いたくなってしまったわたくし。
オッサン化してきたのかしら。なんちて。どうもすみません。

実はわたくし、くまモンが好きである。

何が好きかと言われると、あのウツロな目と
キレた動きとふるまいが好きなのだが、
熊本県民にはデビュー当初、あのウツロな目が不評だったらしい。

あの目。全然つぶらじゃないし、どこ見てるかわからない目。
しかしなんとなくどこかで見たような気がしていた。

辻村ジュサブロー先生の「新八犬伝」「真田十勇士」を欠かさず見て、
犬坂毛野と霧隠才蔵のファンだったわたくし、
その後当然というか、お人形が好きになったけどお金はない。
骨董品屋ではジュモーや市松人形を見てはため息をついていた。

骨董品屋のお人形は、皆うつろな感じがする。
過去に持ち主にどんなに愛されていても、今はもうその主人はいない。
もう一度誰かに愛されることを待っている、うつろな感じ。

くまモンのウツロな目は、市松人形のうつろな感じに似ている。
ウツロなくせにキレるのがかわいらしいから好きなのだと気がついた。

なーんてことを、文楽見ながら考えた。

IMG_8584.jpg
バックステージで出番を待つその他大勢のお人形たち。
けっこう味のある顔してたりして、舞台に登場するシーンもすこーしだったりするけど、
この人たち見てるのも何気に楽しいのです。

IMG_8582.jpg
曽根崎心中に女中役で出てきたこの人、味があっていいよね。
なんとなく脇役の方が味があって生きてるみたいな感じがする。

IMG_8559.jpg
お人形が右手で何かを持つ時には、こうやって指を通して
人間がつかむんだけど、舞台の上ではまるで人形が持っているよう。
きせるや刀やかんざしを持ったりするのよね。手の平も人間みたいに動くのだ。
曽根崎心中の徳兵衛をちょいちょいと叩くお初の手がかわいらしくて。



文楽は現在ユネスコの無形文化遺産に指定されている、
日本の伝統芸能である。当然だが人間国宝の方もいらっしゃる。

文楽とは、舞台の上で人形を動かす人形遣い(1体に着き3人)と
舞台の横(床)で三味線弾く人、浄瑠璃を語る人(太夫)の
三業で成り立つ三位一体の演芸である。(三業で成り立つ~ウイキペディアより)

昔テレビで文楽を見たときには、後でお人形を動かす黒子が気になり
全然楽しめなかったが、ライブで見ると全く気にならない。
右手とかしらを動かす人形遣いの顔は頭巾をかぶっていないのだが、
それも全く気にならない。

三味線がベンベンと奏でられ、義太夫節が語られ始め、
何言ってるかよくわかんないので、舞台横にある字幕を見ながらでも、
人形が登場するとその人形の動きに魅入られ、物語のなかにすんなり入れた。

人形は全くしゃべらないのにいつのまにか頭の中で
お人形がしゃべってるように感じ始める。
人形遣いによって、人形に命が吹き込まれるのだった。

動きにも表情にも制約のある人形だからこそ、
かえって表現できることがあるのだなあと初めて知った。

わたくしの脳はあれやこれやかなり補足しながら見ていたのだろうが
「曽根崎心中」の心中の道行の場面や「一谷嫩(ふたば)軍記」で
わが子の首を見て泣き崩れる相模の様子を見ていると、
人形なんだけどとても人間が動かしている人形とは思えない。

人形がまるで意思を持って動いているようなのだった。

IMG_8597.jpg
床山さんというかしらの修理などをしているところを見せてもらった。
眉毛も目も口も動く男のかしら。このあたまの内部にくじらのヒゲが使われている。

IMG_8596.jpg
くじらのヒゲ、このひらべったい部分。なんとなく、糸的なものを
想像してたけど、平べったいのね。ちょっと驚いた。ここに三味線の糸を通して、
表情を動かす。今は調査捕鯨のくじらのヒゲを使っている。こんなとこにもくじら。

IMG_8557.jpg
かわいらしい「むすめ」のかしら。かわいらしさを損なわないよう
まばたきはできない。でも仕草だけで娘らしさが200%表現できるんだから、
やっぱり人形遣いってすごいのだった。まあでも、自分的には
まばたきできる老け女形の方がグッときちゃったなあ。



講演後、バックステージを見学させていただき、
「むすめ」を少し触らせてもらったのだが、あとで写真を見ると、
わたくしの持っている「むすめ」はうつろなお人形であった。
やっぱりお人形なんだなあとつくづく思ったのである。

人形遣いだけでは文楽は完成しない。セリフが個々についてたら
違和感があるだろう。三味線と義太夫節があってこそ、
悲哀も喜びも、時々は笑いもじゅうぶんに表現できるのだ。

人形遣いの動きと三味線と義太夫節が合わさって初めて完成する、
文楽ってすごいのだった。もう、今まで見たことなかったなんて、
すんごく損した気分なのだった。失敗したぞ。

まだ見たことのない方、文楽を見ることで人生がより豊かなものになるでしょう。
ぜひご覧いただくことをお勧めいたします。

新八犬伝を見てた人なら、たぶん、人形遣いを全く意識しないで、
物語に入れるでしょう。子どもの頃に我々の脳は、
NHKによってすでにそうなってしまってるはずでございます。
(プリンプリン物語見ててもそうなってるかも)

文楽について知りたい方、以下の本が入門書としてお勧め。
文楽に対する愛が満載、イラスト満載で、初心者でも楽しく読めます。
わたくしこれを読んでから見に行き、大変役に立ちました。

『熱烈文楽』中本千晶著 三一書房 1,890円


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

こんにちは。

制約があるからこそ表現できることがあるって、ほんとそうですね。文楽、子どものころ一度観たきりです。いいなあ。はまりそうですね。
たまにはこういう話題も新鮮です。

あ、自分プリンプリン物語世代です。妹と一緒に観てたっけ...(遠い目)

ではでは [腟究–‡絖—:v-22]

Re: No title

Fuさん

こんばんは。
遅レスすみませんでした。
カッパ見に行ってたもんで。。。
>
> 制約があるからこそ表現できることがあるって、ほんとそうですね。文楽、子どものころ一度観たきりです。いいなあ。はまりそうですね。

はまりました。
次の機会があったら見に行きたいっす。

> あ、自分プリンプリン物語世代です。妹と一緒に観てたっけ...(遠い目)
>
私も妹と見てました。
意外にルチ将軍が好きだったっす。

あれはあれでかわいいお人形だったっすよね。

No title

こんにちは。

文楽とか、歌舞伎…僕も大好きです。

最近の映画やゲームは、3DCG全盛で
リアルさを求めて突っ走る一方で
こうした古典芸能は、衰退の一歩をたどっていますが

さて、そうしたリアルさの追求は
観客側の理解力や想像力をどんどんと
スポイルしていくような気がしてなりません。

もちろん、いい事も一杯あるとは思いますが
この進歩にも、GM食品と同じような
おかしな結末が待っていなければいいな?
…と思うのが、僕だけであればいいのですが

たとえば、僕の商売である「企画書」なんてのは
以前は<手書き>が当たり前で
僕達は、その「企画の中身」で勝負したものでしたが

昨今は、パワーポイントにスライドショーで
中身よりも「演出」が重要になり
クライアントも、一緒に考え、一緒に作るパートナーから
単なる「観客」に下落して、しかもそのことに気付いていない

なんて現象もそこここに見られ
そんな小手先のテクニックに明け暮れていたら
日本の将来なんて、あるわけがない…

などと、ちょっと思ってみたりするわけですね。

調理もまたしかり…で
子どもにもわかりやすい味を追求するあまり
栄養を犠牲にした、食べる価値の低い野菜が主流…

「文化」も「ビジネス」も「食物」も
すべて「お子さまテイスト」に成り下がったこの国に
果たして未来はあるのでしょうか?・・・

・・・と、失礼いたしました(苦笑)

Re: No title

癌ダムさん、こんばんは。

> 文楽とか、歌舞伎…僕も大好きです。

大阪は本場ですもんね~。
いいなあ~。

>
> 最近の映画やゲームは、3DCG全盛で
> リアルさを求めて突っ走る一方で
> こうした古典芸能は、衰退の一歩をたどっていますが
>
>
こないだスターウオーズ一気に見たのですが、やっぱ
エピソード4.5.6って、初めてみた時の衝撃ってすごかったわけで。
なのに、デジタルリマスターとかで付け足してるの見て、
余計なことしなくていいのになあと思ったのです。

エピソード1~3はCGが使えてる分、なんとなくつまらなくって、
やっぱ手づくり感のある方が、多少稚拙でもすばらしいと思った次第です。


> クライアントも、一緒に考え、一緒に作るパートナーから
> 単なる「観客」に下落して、しかもそのことに気付いていない
>

おお、そういうこと、あるかもしれませんね。
CGで作った人相の指名手配よりも、手書きの方が検挙率高いみたいな。
確かにパワポ資料って参加型ではない気がします。


> 「文化」も「ビジネス」も「食物」も
> すべて「お子さまテイスト」に成り下がったこの国に
> 果たして未来はあるのでしょうか?・・・
>

ううう。ものがなしいじゃないですか。
若い世代にも土臭い人たちがいると信じましょう!
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR