農薬の散布回数をわかりやすく考えてみた

P7196261.jpg
ブルーの合羽、目にはゴーグル、鼻と口にはマスク、ビニール手袋、長靴。
真夏のクソ暑い日でも農薬散布は完全防護しないと危険です。
早朝の無風の日。りんご産地ではSSのエンジン音が響き渡ります。
どんなに二日酔いでもその音で目が覚めてたなあ。産地担当時。



「農薬ってさあ、どれ位まいてると思う?」と一般ピープルに聞くと
「3回?」と答える人が、10人中8人はいる。どんな作物でも同じだ。
あとの2人は「わかんなーい」と答える。

「3回ぃ?」と聞くと、死ぬほど考えて「5回?」と答える。
7回でも10回でもなく、必ず5回である。3の次は必ず5である。

これを「一般人が考える農薬散布回数に関する法則」と名付けたわたくし。
とくとくと友人に説明してたら、彼はこう言った。

「人間ってさあ、想像できる数って片手分なんじゃない?
1、2、3、4、5のあとは【いっぱい】なんだよね。きっと」

おお、確かにそうかもしれない。

人が想像できる数は「5」までなのだ。
狩猟採集時代とそんなに変わらないのだ。

さて、農薬の散布回数を3~5回だと思い込んでいれば、
有機野菜の優位性、ましてや特別栽培農産物の優位性など
わかろうはずもない。3回なら別にいいじゃん?って誰しもが思うだろう。

農薬についての消費者の評価は「0」か「それ以外」しかない。
有機農産物が広まらないわけだよね。んで、ちょっと考えてみた。

gazou 001
農家の高齢化に伴って作業の省力化が図られるのは当然。
除草剤なんかもそのひとつって思うと、しょうがないのかなあって気もする
(ようになりました。某D社退社してからね)
だからこそ除草剤使わずがんばる人たちを応援したいわたくし。



例えば今店頭に並んでいるすんごく高い(らしい)レタスは、
長野県の慣行栽培防除回数では19成分である。

ちなみに農薬ってひとつの農薬に2成分とか入ってることがあって、
そういう場合、その農薬は2とカウントする。
この数は散布回数じゃないから要注意だ。間違えないでね。

19成分。

昨日農業のことを全く知らない人にこの数を言ってみたら、
全然わかんないって顔をしていた。19という数が想像できないのだ。
そりゃそうだよね。数を量に換えて想像するのはとても難しい。

んで今朝、すごくいいことを思いついた。
片手で数えられる数にする方法を発見したのだ。

例えば長野県のレタスの定植は、3月中旬である。
育苗期の農薬ってレタスってどれぐらいまくのかな?

わかんないからそこは無散布って考えて、定植後で計算してみる。

キスジノミハムシ
キスジノミハムシ害は農薬をきちんと使ってる農家にはあんまり関係なくて、
低農薬の人に出ちゃう難防除害虫。やられると商品にならない。
だから基本的には「出る前にたたく」。これ日本の農業の常識です。



まずここから除草剤分の1を引く。残り18である。
だいたい殺虫剤と殺菌剤を一緒にまいたりするので、
18を2で割って9。この9を3月中旬から7月中旬までに散布する。

出荷直前の散布はたぶんしない。また定植前に必ずまいてると考える。
(この防除回数は定植直前の数は含まないらしいから) ってことで、
前後から2週間ひいて、ちょっと乱暴だけど3カ月で9回まくとする。

おお、わかりやすいじゃないか。ひと月に3回だ。
1週間おきに一度まいてるって感じだ。

テキトーに計算したけど、たぶんそんなに間違ってないはずだ。

この要領で計算すると、種まきから45日で出荷できる
チンゲンサイなんかはだいたい6日に1回の農薬散布である。

りんごは5月から8月までの4カ月で14回だから、
ひと月に約3回。10日おきにまいてるってことになる。

1週間~10日おきに農薬をまくんじゃ大変だあ。このクソ暑いのに、
その都度機械洗ったり、合羽着たり脱いだりしなくちゃいけない。
合羽着ないでまいちゃったって人がいるのもうなずける話である。

画像9
農薬バンバカまいてると畑にいる土着天敵も殺しちゃって、
ますます農薬まかないとダメになるんだけど、まかざるを得ない。
虫害が少し出た後に天敵が来てくれるのはいいんだけど、菜っ葉なんかは
初期の虫害だけで商品にならなくなるから、やっぱまかざるを得ない。
こういうの負のスパイラルっていうんだよね。



低農薬栽培をしている人は、これが2週間おきとか、
全く散布しないとかになる。農薬をまく労力はかからないが、
農薬をまかない代わりにいろいろとしなくてはならないことがある。
スペースがないから書けないけど。

だから有機農家は大変なのである。有機野菜は割高なのである。

それにしても、自分で計算しといてちょっと今さらびっくりなんだが、
スーパーに売ってる野菜・果物はもしかして、
ほぼ1週間おきに農薬をまいてるってこと?

むう。農薬メーカーが儲かるわけだよなあ。

こんなにたくさんまかなくていいのになあと思うのだが、
リスク回避のための予防防除という習慣を変えるのは難しい。

変わるには、消費者も流通もJAも農家も変わらなくてはダメなのよね。

世界一農薬をまいてる国からの脱却は、まだまだ先のことである。
※2005年のデータで日本は単位面積当たりの農薬散布量が世界一。
その後も変わってないって話。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

1日の食事の回数は3回

農薬の散布回数の数え方を知ったのはわずか3年前くらいなんですが、
一般の人から見てわかりにくいと思いますね。
1日の食事の回数は3回じゃなくて品数で数えるんだ、みたいな話で。
誰が決めたのかわかりませんが、用語の改善が必要な気もします。

農薬については詳しくないのですが、
減らすためには個々の用途に意識を当てる必要がありませんかね。
例えば、連作をするがために発生しやすくなる病気の予防で使う農薬って、
単一品目の大規模産地だと結構ありますよね。
うまく輪作をすれば避けられるでしょうし(経営的においしくない?)、
あるいは上手な土づくりをすれば連作をしても大丈夫という人もいますよね。
連作をしてタネを取り続ければ強い品種になるという考えもあるみたいですが。
諸外国ではどんな感じでやってるのかという情報も知りたいとこですね。

Re: 1日の食事の回数は3回

H2さん、こんばんは。

> 農薬の散布回数の数え方を知ったのはわずか3年前くらいなんですが、
> 一般の人から見てわかりにくいと思いますね。

わかりにくいですよねえ。

でも特別栽培農産物のガイドラインで決まってるのです。
理由がわかると、これしかないなあってカウント方法です。

「地域の防除暦の農薬の50%以下」が特別栽培農産物。

農薬の薬剤カウントだと2成分入ってたらどうするわけ? 50%って!
みたいな感じ。確かに成分カウントだと平等でわかりやすいのです。
消費者というよりも管理する側に向いたカウント方法ってことですね。

> うまく輪作をすれば避けられるでしょうし(経営的においしくない?)、
> あるいは上手な土づくりをすれば連作をしても大丈夫という人もいますよね。
> 連作をしてタネを取り続ければ強い品種になるという考えもあるみたいですが。

土づくり・輪作・タネ取り・・・これ、有機農業の人がやってることなんですよねえ。
一般栽培の人はなかなかそういう感じにはならないのだと思います。

一般栽培の人でも土づくりしててものすごい収量あげてる人もいますから、
いちがいに言えませんけど、やっぱり農家の意識の差なんでしょうか。

> 諸外国ではどんな感じでやってるのかという情報も知りたいとこですね。

天敵の先生が言ってましたが、100ヘクタール同じ作物が植わってると、
日本では路地ではなかなか効かない天敵を放飼して、効果が上がるんだそうですよ。
なるほどな~と思いました。

用語

>でも特別栽培農産物のガイドラインで決まってるのです。

「回数」ではなく「のべ成分数」とすればいいんじゃないですかね。
決めた人がなぜそうしなかったのかわかりませんが。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR