日本でIPMが普及しない悲しい理由

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しつこいようですが、セイタカアワダチソウの花粉を食べたテントウムシが
不妊化するという研究結果がありますから、畑の周りにセイタカアワダチソウが
咲いてるのを見たら引っこ抜いたほうがいいですよう。



IPMとは「Integrated Pest Management」の略で、
総合的有害生物管理のことである。

有害生物とは虫・病気・鳥獣も含めたものだが、
日本では「総合的病害虫管理」と呼ばれることが多い。

「全ての利用可能な病害虫防除技術を慎重に考慮のうえ、
病害虫密度の増加を抑え、かつ農薬及びその他の防御措置を
経済的に適正で、人の健康と環境へのリスクを軽減、
あるいは最小に維持する適切な手段のことを言う」
IPMの定義 FAO(国連食糧農業機関)
※ネオニコチノイド系農薬を使わない病害虫防除を探るフォーラム第一回
「農家が楽になる減農薬農業・天敵を利用したIPM」大野和朗さんの資料より

11月9日、宮崎大学・大野先生の上記タイトルの講演を聞いてきた。

有機農業界に長いこといたので「IPM」って何と聞かれれば
ある程度のことは答えられるわたくし。しかししかし。
有機農業をやってる農家に無条件で通じるかというとそうではない。

大野先生のような研究者が畑に来て、事細かに教えてくれれば別だが、
天敵の発生時期や、天敵を涵養するための植生なんてことになると難しい。
自分で勉強して応用できる人はあまりいない。

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オクラってネバネバした物質を分泌するでしょう? あれが天敵の食物になるらしい。
天敵を保全するために草植えるなんてムリ~という農家でも、換金できるオクラなら
圃場周りに植えられるかも。夏作に少しだけでもオクラ植えてみては?



小さな昆虫や菌類の協力を得て行われる農業ってとてもステキだと思うが、
そんなことやってられるかい! と言われたらそれまでって感じだ。
わたくしは当初、IPMは有機にこそ必要な技術だと思っていたが、
実はそうではないことを4年ぐらいまえに知った。

IPMは今ビシバシ農薬を使っている慣行栽培の農家が、
農薬を減らすためにある。
なにしろ世界一の単位面積当たり農薬散布量を誇る日本である。
(最近中国に抜かれたとかいう話だが数字が見つからない)

「何でそんなにまくの? 信じられない」と他国の人々に言われると、
数人の研究者(大野先生含む)の方に聞いたことがあるが、
世界に「1週間に一度作物に農薬を粛々とまく国」などないと言ってもいい。

日本人はそういう野菜や果物を、何も知らずに食べているのだった。

さて、その農薬をまいている慣行栽培の方々がIPMのことを知っているかというと
施設園芸の農家は知ってる人が多いはずだ。IPMより「天敵」を。
「天敵農薬」という農薬が存在するからだ。
「タイリク」とかね。一頭50円もするらしい。高いよう。

しかし露地栽培の農家はほとんど知らない。
天敵農薬を放飼しても飛んでっちゃうし、そもそも絶滅系の農薬まいてりゃ
天敵は生き残れない。まくたびに死ぬから畑に天敵はいなくなる。

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花が多くて段階的に次々咲いていくバジルは天敵保全にピッタリ。
天敵は食べ物が無くなったら死ぬかよそに飛んでいくかするため、天敵をいかに
畑で長期間働かせるかというのが生物防除のコツ。で、必要なのが食物。
それが植物の花粉です。バジル植えましょう。



天敵は農薬に弱く害虫は強い。これは農業界の常識である。
そして農業界(というか生物界)にはもうひとつの常識がある。
害虫には抵抗性がつきそのうち必ず農薬が効かなくなる。

天敵がいない畑に抵抗性がついた害虫が繁殖している状況を、農家は
「なぜ毎週農薬をまいているのに害虫がいるのだろう?」とは考えないらしい。
「毎週農薬をまいても虫が死なないからもっとまかなくては!」と思う。
これが現在の日本の慣行栽培でもある。

しかしここにIPMの一部を取り入れてみたらどうなるかな?

天敵にやさしい農薬を選択し、天敵温存のための作物を、
畑に少し植えてやるだけで虫害が減るかもしれない。
というか実際大野先生の研究では明らかに減っている。
農薬回数が減る。ということは当然だがかかる農薬の経費も減るのだった。

うーん。一粒で二度おいしい技術なのに。
なんでこの技術が一般に取り入れられないのか。不思議だ。
生物防除や天敵の話を聞くたびに毎回そう思っていたが、
今回その理由がわかった。理由は出荷規格にある。

たとえばナス。ヘタの部分は食味とは全く関係ないのだが、
ここが虫害で白くなると出荷できなくなる。
小さなキズや虫害があると、市場への出荷は断られる。
あるいは低い等級で売るしかなくなる。

IMG_9125.jpg
今年のほんたべ農園に非常に多かったナスのスリップス害。
この白いところ、ナスの果実部分をやられると硬くなり割れたりします。
農薬散布すればなくなるけど、天敵もいなくなります。
選択性の高い農薬と植生管理、適正な指導で農薬回数を減らせるのに、
その技術は研究者から農家に伝わらない。残念なことです。



そんなことが起きるよりは農薬をまいたほうがいい。
だって農業ってお仕事だもん。ちゃんと売上を上げないといけないのだ。
きれいな野菜を作らないと市場が受け入れない。
きれいな野菜じゃないと消費者が買わないからね。

ということで、週に1回農薬をまく世界一の農薬散布量の原因は
実は消費者にあるのかもしれないのだった。

おお、そういうことなら農薬の散布量が減ることはないだろう。
だって消費者は全ての作物に農薬は「3回しかまいてない」と思ってるからだ。
3回しかまいてない(と勝手に思っている)ピカピカの野菜が好きなのだ。

わたくしは農薬は必要なものだと考えているが、
現在の防除暦の回数は明らかに過剰であると思う。

トマトに50回ってどういうことだろう? ナスに49回って?
ネギに27回? ほとんど虫の出ない冬の小松菜や大根に10回?  
半分でも、100歩ゆずって最多でも3分の2くらいでできるのでは。

その「過剰分」は誰の責任? 農家だけではないはずだ。

スーパーの店頭で全ての作物の農薬散布回数を表示したらどうかな?
ピカピカでなくても野菜のおいしさは変わらない。

多少見目形が悪くなっても、農薬の散布回数が少ない方が
消費者も、経費が削減できる農家も、皆がうれしいと思うけど
わたくしの妄想なんだろうか。


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手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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