干し柿づくりで思い出した柿のいろんな話

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東京都世田谷区はあたたかいので生柿の重量が100g程度でないと、
腐ってぼとっと落ちてしまうです。蜂谷や百目柿は東京では干せないす。
よっぽど寒くて乾燥した年ならOKかもしれないけど。



わたくしが産地担当していたころ、干し柿は青果物扱いであった。
そして干し柿は売りにくい商材であった。

お正月用の市田柿が終了してから出てくる奈良の小さな干し柿は、
かわいそうなくらい売れなかった。
干し柿を売るなら年内なのである。干し柿はお正月商材なのである。
ということで、この奈良の産地は毎年作付消化ができなかった。

あるとき、売れなくて困るんだよねという話をしていてふと思いついた。
干し柿にして売れないなら、消費者に作ってもらったら?

そして、翌年。「干し柿つくろうセット」がデビューした。
割と売れたのよね。今でも人気商品である。
んで今年、そのセットを買ってみた。かれこれ10年前に
わたくしが作ったリーフレットが入っておりました。むふふ。

柿をむいたり干したり写真撮ったりしているうちに
産地担当時代の記憶が蘇り、気になることを調べてみたら、
柿とは意外に奥が深い果物であるとわかった。

ってことで、今回は柿のうんちくである。

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干し柿から渋が抜けるしくみは以下の様なものである。皮をむく→
柿が呼吸できなくなる→ピルビン酸が生成→アセトアルデヒドに変化する→
アセトアルデヒドがタンニンと結びつき不溶化される→渋を感じなくなる。
渋柿の脱渋を炭酸ガスやアルコールでするのも同じ仕組みだそうです。



あまり知られていないが、一般の干し柿は硫黄で燻蒸されている。

硫黄と言われても一般人にはピンと来ない。わたくし的には旧約聖書の
神が悪徳の町、ソドムとゴモラに硫黄の雨を降らせたってのが一番古い記憶。
神はどんだけ怒っていたのか。硫黄の雨、傘をさしてもかなり危険だ。

春先に殺菌目的で果樹類にまく石灰硫黄合剤が手についたらやけどする。
合剤をまくときには車の塗装がハゲるので道路に注意しなくてはならない。
また、硫黄の粉をうっかり吸い込むと気管支がやられる。

硫黄とは、かなり剣呑な毒物なのである。
その硫黄を、干し柿では殺菌目的に使う。

しかし以前市田柿の産地で話を聞いたら
「硫黄燻蒸してもカビって生えるんだよね、どっちかっていったら
きれいな色を保つためじゃないかなー」と
干し柿づくり何十年の農家のおじさまが言っていた。

先日NHKで山梨の枯露柿を作ってるところを放映していたが、
やはり「色を美しく保つために硫黄燻蒸する」と言っていた。
干し柿のあの美しいオレンジ色は硫黄燻蒸のおかげなのだった。

さて、柿という作物は、庭先にいくらでもなってるので、
なんとなく無農薬で作れそうだが、ちゃんとした商品にするためには
きちんと農薬をまかなくてはならない。

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10日めに大風が吹いて一気に乾き干し柿らしくなりました。
この時点で味見したら最高のおいしさで、しかも色合いも美しい。
来年はここんとこで全部食べてしまいたい。



庭先の柿が早々と葉を落としてしまうのを見て、人は「秋だ」と思うが、
実は落葉病という病気のことが多い。その病気にかかると
葉っぱがどんどん落ちてしまうため、柿がきちんと熟してくれなくなる。

また、早々と熟し柿になりぼとぼと落っこちてるのを見て
「今年は熟すのが早いな」と思う人がいるが、それは害虫のせいである。
ヘタ虫と呼ばれるその虫の本名は「カキノヘタムシガ」。ううう、そのままじゃん・・・。

てなこともあり、経営が成り立つよう美しい果実を収穫するためには
農薬が必要だ。調べてみたら和歌山県の防除暦で16剤だった。意外と多いね。

人は意識して分けて食べてないと思うのだが、柿には渋柿を脱渋したもの、
甘柿、甘くなったり渋くなったりする不完全甘柿の3種類がある。
渋柿は中国から渡ってきたようだ。しかし、甘柿・不完全甘柿は
日本で突然変異した日本原産の果物である。すごいじゃないか。

例えば、愛知県幸田市で栽培している筆柿は、不完全甘柿で、
タネが入らないとタンニンが不溶化しないという特徴がある。
(幸田市以外の土地に行くと渋柿になると生産者が言ってたがほんとうだろうか?)

この柿は、その形から別名珍宝柿といい(なぜ?とか指摘しないでください)
中国・台湾の方々に大変めでたいと喜ばれるため輸出も多い。
また鳥取には鳥取で突然変異した(らしい)花御所柿という柿がある。

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毎日観察してると何が変わったのかわかんないけど、
まとめてみるとわかるもんですねい。雨で取り込んだのは5日め一回だけ。
今年は干し柿に向いたお天気でした。



今回これを書くので柿の品種を調べたが、
聞いたことのない名前がわんさかあった。
おそらく、名も知らぬ甘柿や渋柿が日本全国にあるに違いない。

干し柿の大きさが各地で違うと気づいたのは東京に来てからだが、
その土地土地に地域の気候に適した柿があるのだろう。
柿は日本で一番地域性の高い果物ではないだろうか。

さて、人は柿が好きな人とそうでない人に分かれる。わたくしは後者である。

渋柿を脱渋した平核無柿は好きだが、富有柿などの甘柿は苦手だ
脱渋した柿は果肉がねっとりしてわりと好きなのだが、
甘柿はかりんこりんとした食感が頭蓋骨に響く気がしてなんかイヤなのだ。

さらに人は、干し柿が好きな人とそうでない人に分かれる。わたくしは後者だ。

干し柿が好きな人は熟し柿も好きなことが多く、嫌いな人は熟し柿も苦手だ。
あの食感、ベタベタした甘さに共通点があるのかもと考えている。
(わたくし的統計。サンプル数は10人)

しかし今回、自分で干し柿を作ってみて、9日めあたりの
まだ渋が少し残っている美しいオレンジ色の段階で食べるとおいしい。

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ひとつ約100gだった柿が20gになりました。糖度は測れない。
WEB検索すると40~70%で羊羹なみってこと。確かにそんな甘み。
干した期間は11日。渋みはなし、ってことでこれで完成なのかなー。



「ああっ、干し柿ってこんなにおいしかったのか! 
キライだったなんて自分のバカバカバカ!」なんて感動したのだが、
干し上がったのを食べたらフツーの干し柿で、魅力が消え失せていた。

どこでその魅力が失せたのか、このあたりの理由は不明だ。

9日めで食べるためには、皮をちゃんとむかないと皮が残ってると渋い。
これこそアセトアルデヒドとタンニンが結びつかなかった証であろう。
横着してヘタ周りの皮を残したのは失敗だった。
干し柿を食べるとヘタのところからごそっと取れるのをすっかり忘れていたのだ。

ということで来年に向けて、総括。

1.皮をヘタの周りまできっちりきれいにむく。
2.9日~10日めあたりで干しを終了。
3.カビないうちに全部食べる

これだとお正月まで持たないなと気がついたが、まあ、いっか。


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干し柿

干し柿って、黒っぽくて白く粉を吹いているイメージなんですが、
誰かが「オレンジの方がいいじゃん」とか言って硫黄で燻蒸しはじめたんでしょうね。

他のブログで、カビ予防には剥いた後で熱湯に10秒くらい浸けるとありました。

あと、奈良で「柿検定」ってのが行なわれているようですね。
過去問見ましたが、かなりマニアックで、合格率はかなり低いようです。

ちなみに、干し柿と熟柿は苦手です。堅い柿が好きです。

Re: 干し柿

> 干し柿って、黒っぽくて白く粉を吹いているイメージなんですが、
> 誰かが「オレンジの方がいいじゃん」とか言って硫黄で燻蒸しはじめたんでしょうね。

最初はカビ予防だったんだけど、色がきれいになることがわかって、
目的が変わっていったのかなーと思いましたね。話し聞いてて。

硫黄の匂いが残るとかで、味に影響するとも言われてます。
苦手だから食べないし、わかんないけど。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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