有機農業のジレンマ

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関東の産地の人が見ると必ず驚愕する渥美半島の土。
「ジャリじゃん!」とわたくしの元担当産地の後継者が言ってた。
これに腐植入れたりとか、微生物増やしたりとか、どうすればいいのかな? 
きっと、師匠・西出さんにも解決できないだろうなあ。



渥美半島に行ってきた。

ここで農業を営んでいる天恵グループは、
わたくしの某D社時代の担当産地である。
有機JAS法が施行された後、わりと早くに有機JAS認証を取得し、
素人のわたくしに、いろいろなことを教えてくださった産地でもある。

さて、有機JAS格付け率は今何%になってるのかな?
調べてみたら0.24%だった。2006年に調べた際には0.17%。
1年にだいたい0.01%ずつ増えてる感じだ。少ないのう。

有機農産物の割合が常に微増なのは、
有機農産物が付加価値商品として扱われていないからである。

スーパーでは有機農産物はほとんど売られていないし、
有機農産物が何かをきちんと理解している人は少なく、
雑誌の紹介などで見る説明はしょっちゅう間違ってるし、
有機農産物よりも自然栽培のほうが安全だとか言う流通もいる。

慣行栽培のトマトには50成分の農薬がかかってるけど、
そんなことは皆知らなくって、だいたい3回から5回位だと思っている。
だから有機でも農薬を使うと知ると、優位性が全くないと勘違いする。

「有機」=単純に「安全」と思っている人が多いからこういうことが起きる。

有機の優位性は誰がどのように栽培したか履歴が追えることにある。
さらっと書いてるけどこれ、すごいことなんだよね。
使ってもいいものやそのルールがめっちゃ細かく決まってるんだから。

有機農産物のJAS規格
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/yuki_nosan_120328.pdf
こんなの守ろうとしたら大変だ。とくに畑作。なにしろ機械洗うんだからね。

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ほんたべ農園の土。典型的な火山灰土でCECは高く腐植分は多く、
微生物の食べものを入れればどんどん増えるよねという土である。
関東ってほんとに農業に向いてるいい土のところが多いのだね。



普通に売られているものは、誰がどんな農薬をまいて肥料に何を使ったかなど
全然わからない。うっかり失効農薬使ってるかもしれないが、バレなければ平気だ。
以前中国産の資材から農薬が出たこともあり、資材だからOKってな話でもない。

そういう意味で、有機農産物は確からしさが全然違うのだ。
そして手間も暇もかかるが、それに見合った価格はついていない。
手間暇かけて安いんじゃ、増えないのも当然なのである。

さて、天恵グループは3年ほど前に有機JASを継続するのをやめたらしい。
元同僚にその話を聞いて、担当時代にいろいろ話を聞いてたわたくしは
やめてせいせいしてるんだろうなーと少し思った。

なにしろ、化学肥料は「悪」ではないとわたくしに教えてくれたのは、
このグループの代表、津田敏雄さんである。

有機質肥料、とくに堆肥はさまざまな成分が入っているが、
継続して投入していくと、欠乏症や過剰が出やすい。
とくに鶏糞堆肥を使っているとリン酸の過剰が起きやすい。
リン酸の過剰はさまざまな障害が出る。また石灰も過剰になりやすい。

どうも畑の様子がおかしい。肥料が足りないのかなと思って土壌分析すると、
蓄積されたリン酸とカルシウムが悪さをしてることが多い。

しかしまあ、土壌分析を行って改善できることも多いし、
産地によっては、過剰になった表層部分を天地返しで地中に入れる等の
対策を取っているところもある。できないところもあるけどね。

有機農業を長年営んでいると、マグネシウム欠乏が起きたり
リン酸・カルシウム過剰になりがちというのは、ここ15年ほどでわかった話だ。
この特定の成分を土中に入れなきゃいいじゃん? と思うかもしれないが、
有機質肥料で単肥をやるにはお金がかかる。手間もかかる。

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渥美半島の先端は戦後の開拓地だ。大変苦労したそうだが設備は整っていて、
区画も四角いし大規模でやりますよ! 水もひいてあるしね!という土地だ。
夏はトウモロコシ、メロン、冬はキャベツ、ブロッコリー、大根の一大産地だ。
今これらが高いのは、ここの作柄があまり良くないからである。



規模が小さかったり、土壌条件が良ければやれるかもしれないが、
渥美半島の土は砂・礫質で、さらにチョー大規模、そして露地の産地である。
そう考えると北海道に少し似ているね。規模がでかいと改善が難しいのだ。

有機農業運動が1970年代にスタートして、すでに40年が経つ。
肥料分として近隣で入手できる堆肥を使っている産地は、かなり多いはずである。
微生物が増えて好調になっている畑もあるし、事実そういう畑をよく見てきたが、
ここのように障害が起きつつある畑もあると初めて知った。

知らないだけで山ほどあるのかもしれないなあ。もしかしたら。

過剰なものを作物で持ち出すには時間がかかるし、
リン酸は土と結びついているからこれを利用するのはかなり面倒である。
肥料を再考しないと過剰・欠乏症はますますひどくなるばかりなのだった。

解決策は化学肥料しかない。

有機農産物を栽培しているから収量が低くていいという農家には、
この問題は関係ない。あるだけ、採れるだけでいいという人もよくいるが、
それは農家の条件による。働き手の数が少なく小規模で別に収入があるとか、
また、土地が借地じゃないとか、機械の借金がないとかだ。

農業を職業として考え、慣行栽培に負けない
一定程度の収量を上げるためには肥料が必要である。

そしてその肥料の理想は、欠乏症が起きた場合、
少量の化学肥料を単肥として与えることだ。
有機JASではそれができない。そして土壌バランスが壊れていく。

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この土から石を持ち出すと栽培できる地面がなくなるんじゃないかと
以前冗談で言ってたことがあったけど、客土をする人もいるらしい。
またジャリを売る人もいたらしい。慣行農家はほぼ化学肥料で栽培している。
同じように収量を上げるには、肥料分(チッソ)入れないといけなくて、
その結果、過剰な成分が蓄積してしまっているのだった。



火山灰土などの条件の良い土地では有機JASを遵守した栽培が可能だが、
そうでないところでは難しいのだとしたら? 

ほんとうにおいしくて安全なものを作りたくてやってきたことが、
後継者にリン・カルシウム過剰の土地を残すことになってしまったと、
津田さんは嘆くのだった。

こういうの、他の産地ではないのかな?

というか、大規模で慣行栽培に負けない有機農業(露地ね、露地)ってのは
野菜の単価が上がらないとムリで、野菜の単価は上がらないから、
有機農業は慣行栽培より儲からない。つまり勝負できないってことなのかな?

「それはどうなのよ」と思うのは、わたくしだけではあるまい。
「有機農業推進法は何をしているのだ」と言いたいわたくしである。


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手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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