豚の話

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鳥取はカレールウの消費量が日本一だとかいうので、一時期「カレー県」と
宣言し、観光客に鳥取市内のカレー屋さんリストを配ったりしていた。しかし
「カレー県」を宣言したその年、佐賀県に一位を奪われた。んー、残念。
ということでチョー有名な「ベニ屋」のカツカレー。鳥取市民、皆大好き。



わたくしは、スターバックスもセブンイレブンもないけど
日本一のスナバがあると知事が自慢する鳥取県の出身である。

結婚して東京に引っ越すことになった時、
東京にはチキンラーメンがないとか、うどんのつゆが真っ黒だとか、
うまかっちゃんが売ってないとかいう数々の噂話を聞き、
そんな野蛮なところで暮らしていけるだろうかと思った。

なにしろ大阪で4年暮らしていた間に、東京の人やモノについては
ナナメに見るくせがついていた。「だからさあって。何なん? さあって」って感じだ。

引っ越してみると、うどんつゆも湘南の海(というか砂)も真っ黒だし、
スキー場には日帰りで行けないし、歩いて温泉に行けないし、山もない。
ちくわぶとかいう意味不明の食べものはあるが、モダン焼きはない。
餅は四角く、すぐに日が暮れる。

しかしまあ、人々は礼儀正しく、おおむねいいところだと思った。

さてある日、友人の家に遊びに行き、肉じゃがをごちそうになった。
何気なく食べようとしたら、なんと、肉じゃがの肉が豚肉だった。

「ななな、なんで豚肉?」 

わたくしの実家では、肉じゃがの肉は常に牛肉であり、
豚肉が入っているのは牛肉が買えなくなる両親の給料前のみであった。

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違うといえばすき焼きの食べ方も違うのよね。なんか「割り下」とかいう
醤油と何かが混ざったものをじゃーっと入れるのだ。西日本は砂糖と醤油と酒だ。
砂糖と醤油と酒じゃダメなのか、東京!と毎回思うわたくし。



わたくしは豚肉がキライだったが、肉じゃがに豚肉が入っていると
子ども心に「おお、いまうちはびんぼうなのだな」と思っていた。
んで、「この友人の家は今貧乏なのだろうか」と考えた。
そんなときに晩ごはん食べに来て申し訳なかったかも、と思った。

しばらくして違う友人のところでカレーをごちそうになったら、
やっぱり豚肉が入っていた。ななな、なんでカレーに豚肉

わたくしの実家では、カレーの肉は常に牛肉であり、以下同文。

まさか、東京の人が皆貧乏なわけじゃないだろう。
さすがにちょっとおかしいと気がついた。んで、尋ねてみた。

そしたら、びっくり。東京では肉じゃがにもカレーにも豚肉を入れるのだ。
「牛肉なんて入れないよねー」。そういう彼女たちの顔には
「あんた、野蛮人でしょ」的な空気がただよっており、
わたくしはなんとなく野蛮人になったような気がした。

理由はわからなかったし考えもしなかった。
東京では肉じゃがもカレーも食べられないなと思っただけである。
なぜならわたくしは豚肉がキライだからである。

しかし、某D社に入社し、豚の取材で宮城県に行ったとき、
全く偶然にその理由がわかった。養豚家にカレーの話をしたら、
「牛肉、食べられないよねー」と皆が言うのだ。「食べるなら豚だよねー」

DSC00854.jpg
某D社の牛肉は岩手県の短角牛である。和牛の一種である日本短角種は
昔は使役用の動物だった。頑健な性質を持ち粗飼料で育ち自然繁殖する牛だ。
赤身のおいしい肉であると評価が高いが、肥育している農家は
やっぱりあんまり食べない。このあたりが養豚家と違うところである。



よくよく聞いてみたら、東北の人はそもそも牛を食べないと言うのだ。
なぜか。牛や馬は家族であり、食べものではないからだ。

農村では牛は人と同じ屋根の下に住み、使役動物として大切にされている。
人は牛の世話を毎日し、朝も晩も一緒にいる。だから食べるなんてとんでもないと
養豚農家とその関係者は口をそろえて言うのだった。

西日本でも牛は使役に使ったはずだが、そういうの関係なく食べるのかしら。

親戚の家の土間の続きに飼われていたホルスタインのことを思い出し、
わたくしはますます野蛮人になったような気がした。

そして以下のような仮説を立ててみた。
東京には東北方面から移住している人がたくさんいる。
豚肉文化にはそういうことが影響しているのかもしれない。

さて、今回これを書くので、豚肉と牛肉の消費量を検索してみたら、
農水省のサイトにぴったりの図があるのを発見した。

これを見ると、北海道・山形県を除く東北、新潟、関東では茨城まで、
豚肉の消費量がほぼ100%で牛肉は0~20%である。

関東から中部までは豚肉が70%程度。ちょうど餅が四角くなるあたりで、
牛・豚の消費量が半々、あるいは逆転するのだった。

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農水省HP「第2節 主要品目の需要・生産の現状と課題
コラム:地域差がなくなりつつある牛肉・豚肉の消費 」より無許可で転載中。
問題があったら言ってください。削除いたします。



現在では日本全国一律で牛肉の率が30~40%くらいになっており、
日本全国で主たる肉は豚肉に変わっている。

西日本の牛肉文化は失われたらしい。健康志向によるものか、
牛肉がお高くなったからかは不明だ。後者のような気がするけどどうかな?

なんてことを書いてたら文字数が多くなってしまった。
ほんとは豚の品種のことを書こうと思っていたのに。ううう。

それはまた、次回ということで。
どうでもいい話を長々と書いてすんませんでした。


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No title

こんにちは。…こういう話ならついて行けそうです(笑)

明治の頃、日本の牛肉食の初期
関東では「牛鍋」…後の「牛丼」の形で定着し
関西では、元々は「鶏」でやっていた「すき焼き」(現在の鶏数寄)を
牛に置き換えた「すき焼き」という形で定着して行った
…という事だと思います。

また「肉じゃが」は、料理研究家の江上トミさんが
NHKの「今日のりょうり」で発表されたもので
その時のレシピが豚でしたが…というのが、関東の流儀

関西では、「呉」の軍港で海軍の料理長が
イギリスで学んできた「ビーフシチュー」を和風にアレンジしたものを
船内で出した…というのが「定説」で、双方譲らないところ。

とはいえ、実際のところ
東京を含め「関東エリア」は、昭和の中ごろまで
一般に、関西に比べて所得が低く、
自由化以前の牛肉は高くて買えなかった…というのが真実のようですね。


●なお、現在の「すき焼き」の原型は
京都のすき焼き専門店「いろは」のスタイルがベースです。

牛のすき焼きがお好きなら「魯山人風」の作り方など
内緒で、いくつかお教えしましょうか?


No title

どうもです。
昔は関東以北の農耕は馬、関西は牛だったらしい。
なので関西は普通に牛がいっぱいいたが関東にはおらず、
馬は肉が少ないので食肉用に豚が普及したのだと聞きました。
昔から関東東北は良馬の産地と言われてましたし、
馬は乗るもんで喰うもんじゃなかったんでしょう。
あと関西人なんでもとりあえず喰うからじゃね?とかも思いました。

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Re: No title

ながおさん、どうもっす。
遅レスですんません。


> 昔は関東以北の農耕は馬、関西は牛だったらしい。
> なので関西は普通に牛がいっぱいいたが関東にはおらず、
> 馬は肉が少ないので食肉用に豚が普及したのだと聞きました。

Facebookでいろいろうんちくを調べてくれた人がいて、
大阪方面には早くから耕運機が導入されて、牛が不要になったんだと。
んで、しょうがないから食べ始めたらしく。

関東は使役動物は馬だったので、牛は食べる機会がなかったらしいす。
まあ、庶民がってことみたいだけど。

しかし西日本に早くから耕運機が来たってのがどういうことなのか。
ナゾがナゾを呼ぶなあと思ったです。金持ちが多かったのかな?
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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