幻の豚 中ヨークシャー種の思い出

とんかつ
海老名畜産のLWDのトンカツ。NON-GMO、PHFなどの飼料の選択、
肥育期間、及び土壌微生物生物を利用した養豚環境などが影響して
ここのお肉はおいしいです。豚の味はエサと品種で決まるらしいす。



幼い頃からチョー偏食だったわたしは、とくに豚肉が嫌いで、
豚肉は全て避けて食べていた。トンカツなどとんでもなかった。

ながーい間豚肉と疎遠にしていて、豚肉を食べられるようになったのは
某D社の社員食堂で10歳年下の同僚にトンカツを食べさせられてからだ。

「おいしいから食べてみなって!」と彼は言った。

脂がキライだったから、最初は脂の部分を切り取って彼に食べてもらった。
彼は豚の脂をこよなく愛する男であった。
脂だけのトンカツ食べたいとか言うのだ。うひいー、やめてー。

そのうちに少しずつ脂も食べられるようになり、
彼に食べてもらうのははじっこの脂が多い部分だけになった。

小さな脂は切り取るのをやめ、肉と一緒に食べるようになった。

某D社のトンカツは幼いころに食べたトンカツと違って、
脂がほんのりと甘くておいしかった。そのうち脂も平気になった。

今まで脂の臭みが嫌いで食べられなかったのにどうして? と考えた。
今ならその理由がよくわかる。品種と飼料の問題なのだった。

豚とひとことで言うが、現在一般的に飼育されている豚は、
品種改良された胴長で生育の早い三元交配種「LWD」という品種だ。
Lはランドレース、Wは大ヨークシャー、Dはデュロック。これ豚の品種名。

ogazou 053
この豚がLWD。発酵床でのびのび、というかのんびりと
幸せそうにしております。LWDは白くてかわいい豚らしい豚です。

kobuta2_201403102010084da.jpg
おっぱいの出が良い腕側に食いついてる子豚は大きくなります。
腕側からおっぱいの出がいいって話で、ちびっちゃい豚は十分に
おっぱいが飲めずに死んでしまうことがあるらしいです。
LWDの子豚は真っ白でそれはそれはかわいらしいのです。



LWDはランドレースと大ヨークをかけて生まれたメスに
デュロックのオスをかけたもので、胴が長くて多産で早く大きくなる。
胴が長いと豚肉の中でも高額商品のロースとヒレ肉がたくさん取れて
とてもうれしいのだ。お金が儲かるからね。効率のよい豚である。

昨今いろいろな銘柄豚があるが、ほとんどがLWDである。
飼料を変えたり肥育期間を長くして付加価値をつけているが、
わたくし的にはどんな名前がついてもLWDはブランドじゃないと思っている。

だって、脂が臭くておいしくないんだもん。飼料のせいかもしれないけど。
飼料のニオイは脂肪分につくのだ。卵から魚粉のニオイがするのと同じだ。

さて、LWDが主流になる以前の日本では、
中ヨークシャー種と黒豚という中型種が主に飼育されていた。
中型種はLWDのように早く大きくならず、子どもの数も少ない。

LWDが一回に12~13頭出産するのに比べ、中型種は7~8頭。
LDWは飼育期間が190日だが、中型種は210日~230日。
完成品(出荷時)の豚の重量は110kgでどちらも同じだが、
中型種のほうが30日分余分にエサ代がかかる=お金がかかるのだった。

さらに枝肉にした際に脂肪が厚く付いている中型種は歩留まりが悪く、
枝肉重量も少なくなるので、ますます効率が悪い。
そういう理由で中型種は現在では付加価値商品として生き残っている。

ちなみに中ヨークはびっくりするほど器量も悪いのだが、余計なお世話か。

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種牡候補のデュロック。つぶらな目でとってもかわいらしいけど、
種牡になるとバカでかくなり、背中を見せると危ないって人もいます。
わたくしが見たバークシャーの種牡はサイ、とかカバのようでした。怖かったっす。



中型種は以前は農家の庭先に飼われており、
農業と密接な関係を持っていた。人間が食べられないものを食べ、
糞は肥料になり、肉も食べられるというエコな農業、
循環型農業「有畜複合農業」の一部であった。

戦後、食糧の増産をせねばならず、畜産業は品種改良も含め、
大変な効率化が図られた。豚もその例に漏れず、LWDが開発され、
効率よく大量の肉を生み出す仕組みが作られた。

海外から輸入した安価な穀物飼料を食べさせて早く太らせ、
豚の生産量は一気に増え、その結果、
人々は安価な豚肉を食べられるようになったのだった。

LWDと穀物飼料、バンザイ!って感じである。

中ヨークと黒豚は現在その価値が見直されているが主流にはなれない。
LWDよりも確実に割高になる中型種を選んで買う人は少ないだろう。
とくに中ヨークは飼育している人がほんの少ししかいない希少品種でもある。

さて、わたくしが生まれて初めておいしいと思った豚肉は
この中ヨークシャー種であった。

某D社では以前、中ヨークとバークシャー系しか取り扱ってなかったのだ。
理由はこれらの中型種が有畜複合農業の主役の豚であり、
近代養豚からは淘汰された品種だったからだ。思想だね。うんうん。

DSC07818.jpg
写真提供・福田展也氏。中ヨークどころじゃない希少品種「アグー」。
もー、牙といい、顔つきと言い、キミはイノシシですか! って感じ。



当時は全然希少な肉だと思っていなかったが、チョー貴重品だったのだ。
だから中ヨークの産地との取引がなくなったとき、
よそでは買えないことがわかってものすごくがっかりした。

一度、「古代豚」の肉を分けてもらったことがあるが、
脂が分厚くついていて、子どもの頃のわたくしなら
「いらなーい」と言っただろう。しかしその肉は甘くてとてもとてもおいしかった。

元同僚の男の子のように「脂だけのトンカツでもいい!」と少しだけ思った。
中ヨーク、おそるべし。

30年間、豚肉が嫌いでほとんど食べようとしなかったわたくしを
豚肉デビューさせ、その後も食べられるようにしてくれた中ヨークシャー種。
器量の悪いその顔を見るとうへえと思うけど、今一番食べたい肉でもある。

古代豚、スーパーで売ってないかなー。ムリだろうなー。
ほんとうにおいしいものはお店で買えないとつくづく思う今日このごろである。


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「多加水麺」と同じですね。

近所の…と言っても、大阪のど真ん中のミナミの
某・焼肉屋で、「幻の三元豚バラ」と銘打って
サムギョプサルを提供してる店がありましたが…

その三元豚の意味がやっと解かりました!
ありがとうございます…とかね(苦笑)

ところで、ほんたべさんは「多加水麺」ってなんだかご存知でしょうか?
アレね…製麺機で麺を打つ時、手打ちより多めに水を入れないと、
機械が上手く廻らないので、その辺りを加減した「出来の悪い麺」の事。

つまりね、手打ちじゃ使い物にならない「ズル玉」ってヤツなんだけど
そいつにどうやってコシを出すか?っていうと
小麦粉をたっぷり入れて、一晩寝かして、グルテンを出す訳で
これって、「蕎麦粉入りのうどん」なんだけど

コイツを「一晩寝かせた多加水麺」と称して、セールスポイントにしてる大手チェーン店や、生麺メーカーがある訳ですよね。
知識がなくって、騙されてる客も客だけど、なんとも情けな話ですね。

(ご存知の事だったらすみません)

●ところで、脂身の食べれなかった…というか
豚が好きになれなかった ほんたべさんって、
うちの家内のケースに、なんとなく似てますね。

家内の場合は、僕の友人の親父が撃ってきた
野生の猪の焼き肉を食って「脂身の旨さ」に開眼…

今では、牛は不味くて喰えん!
肉はやっぱり「豚」だよね、中でも「豚バラ」が最高!
などと平気で言っております(笑)

もちろん、僕ん家の事ですから
カンガルーからイルカまで、アリとあらゆる肉は
食卓に上っている訳なんですけど…

イベリコ豚って、どうなんでしょうね?

Re: 「多加水麺」と同じですね。

癌ダムさん、こんにちは。

返信遅くなりました。すんません。

> ところで、ほんたべさんは「多加水麺」ってなんだかご存知でしょうか?

ううう、知りませんでした。
外食ほとんどしないので、不勉強ですんません。
も少し外で食べないとですねー。


> イベリコ豚って、どうなんでしょうね?

とある養豚家に聞くと豚の味は6割が飼料で4割が品種だそうです。
ってことなので、飼料にいいものを食べてる(いいものってか美味しい肉になるもの)豚は
やっぱりおいしいってことみたいですねー。

LWDにどんぐり食わせても同じ味にはならないでしょうが、
けっこうおいしくなるんじゃないでしょうか。
海老名養豚の豚はLWDですが脂が甘くておいしかったです。
肥育期間の長さと飼料が違うみたいでした。

昨今の銘柄豚は配合飼料を減らしてイモやらマイロやら食べてるらしく、
ブランドを調べてみたらもち豚だのなんだの山ほどありました。

黒豚でも飼料を代えたら味が変わるってことで、
以前100%国産飼料の豚を作ってた人が、すんごく苦労したらしいです。
コメ食べさせるとあんまりおいしくなくなるとかで。

やっぱ大切なのは飼料なんでしょう。

だから、エコフィード(食品残渣)食べてる豚も、取り組みは立派なんだけど、
わたしは苦手なんですよねえ、、、、、ケモノのニオイがして。
でも獣臭が好きな人にはいいかもしれません。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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