『More than honey』邦題・みつばちの大地 を見てきた

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みつばちの大地のパンフレット。買っちゃったです。
玉川大学の中村純さんの寄稿とか、みつばち百花のコラムがおもしろいです。
みつばちのことを知ってるようで全然知らないのだな、
ってことがよくわかります。



みつばちのすんばらしい映画『みつばちの大地』を見てきた。
http://www.cine.co.jp/mitsubachi_daichi/
原題は「More than honey」である。

おおお? この題名、シオドア・スタージョンの古典SF名作
『人間以上』にかけてるんじゃありませんか? 
『人間以上』の原題は「More than human」だ。もしかして意図的なもの?

『人間以上』は、ヒトとしては半人前の登場人物たちそれぞれに超能力があり、
その超能力が集まり集団になることで完全に機能するという
ヒトの一段階上の進化をとげた(という設定の)ミュータントの話だ。

これに赤ん坊が出てくる。「目・頭脳」である彼は永遠に成長しない。
「手・足」は別にいて、んーと、その他全部で5人くらいいたんじゃなかったかな。
30年前に読んだのでうろ覚えだが、なんか悲しい話だった。
(どうでもいいけどサイボーグ001はこの赤ん坊のパクリだと思ってるわたくし)

みつばちもある意味このミュータントたちのようである。

一個体で見ると小さく弱く3週間しか生きられないただの昆虫だが、
コロニー全体をひとつの生きものとして見ると、永遠に生き続ける
非常に高度なしくみを持ったヒトとは別の進化を遂げた生きものである。

みつばちのような生きものの設定はSF小説や映画によく出てくる。

ダニエル・クレイグでリメイクされた『インベージョン』とか。
ちょっと違うけどグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』とか。
「個」ではなく「全体」で機能するシステムってのは、人間の憧れなのかもしれない。

監督にそのような意図があったかどうかは不明だ。
ともあれ、みつばちは蜂蜜以上の存在であることは間違いない。

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映画の中に中国のりんごの受粉風景が出てくるんだけど、
すごく雑で効率が悪そうで、あれでいいのかなーとか思っちゃったです。
木も変な形だしさあ。まあ本筋とは全然関係ないけど、やっぱり
日本人のりんご栽培ってすごいよな、とか思っちゃいました。



さて、『みつばちの大地』は、養蜂家を祖父に持つ監督が、
みつばちの大量死をきっかけに作った映画である。
昨今メディアで騒がれている農薬の問題にはほとんど触れられていない。
ネオニコチノイド系農薬の話を期待して行くとがっかりするだろう。

この映画では、もっと大きな視点でみつばちの大量死が語られている。

大量死の理由と示唆される言葉が、映画の前半と後半に2回出てくる。
最初は大規模養蜂を営んでいるアメリカ人が、次は監督自身のモノローグとして、
言葉は違うが言っていることは同じである。

養蜂家はこう言う。
「人生に動機はふたつ、“欲”と“恐れ”だ。
生活レベルを下げれば幸せに暮らせない。
それは自分のDNAにはない。我々は資本主義者だ
世界を制覇したいのだ」

監督はこう言う。
「鏡の国のアリスで、アリスは赤の女王とともに全速力で走る。
これ以上走れなくなって倒れて周りを見ると、
実は走り始めたところから一歩も前進していなかった。

“わたしは全然前に進んでいなかったのね”アリスは言った。
すると赤の女王は言う。“わたしたちは今いるところにい続けるために
全速力で走らなくてはならないのだよ”」

わたしたちの社会も、アリスのように全速力で走り続けているのかもしれない。
便利な暮らしを維持するために。後退させないために。

その結果、あちこちにいろいろなひずみが生じている。
異常気象を始めとする猛威をふるう自然災害、感染症などの災厄、そして
みつばちほど脚光を浴びることのない小さな生きものの絶滅等々。

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勘違いしてる人が多そうだけど、日本でみつばちに受粉を依存しているのは
メロンといちごなどの施設栽培で、桃、すもも、さくらんぼ、なし、りんごについては、
みつばちを当てにしていません。りんご・さくらんぼで使われるのはマメコバチ。
GW以前に花が咲くものは、みつばちが寒くて飛べないから役に立たないの。



映画のなかで、みつばちは産業動物として徹底的に利用される存在、
人間社会を快適に維持するための歯車のひとつになっていることが
淡々と示されていく。

直接食べられる産業動物である牛豚鶏のようにわかりやすくはないが、
みつばちは蜂蜜生産者以外に花粉媒介者としても搾取されており、
人工的に増産された女王の下で苦役につかされている。

そのようすも淡々と描かれていく。
昆虫をここまで家畜化し搾取する人間の傲慢さや欲、なんてのは
とくに言及されない。登場人物は自分の仕事を粛々としているだけだ。
自分と家族のために。よりよい明日のために。

そのなかで明確にされるのは、ダニ、病気、農薬など、
みつばちが死んでいく理由はさまざまであり
大量死の原因は突き止められていないということだ。

淡々と進むこの物語の後半、ふと気づく。
もしかしたらわたしたちの社会そのものが大量死の原因なのでは?

「みつばちが絶滅したら人間はその4年後に絶滅するだろう」
映画の冒頭で引用されるアインシュタインの言葉を否応なく思い出す。

もしかしたらみつばちの原因不明の死は、人間への警告なのでは?

わたしたちは、自分たちの暮らしの来し方行く末について
それぞれが考えたほうがいいのかもしれない。
メディアと消費者が農家と政府の責任のように騒いでいる「ネオニコ規制」についても
その結果生産される作物で、みなが恩恵を受けているのだから。

わたしたちひとりひとりが、この社会の構成員なのだから
ひとりひとりそれぞれに、今起きていることの責任があるのだ。

自分にできることはまだ何かあるだろうか。
みつばちのために花を育てること以外に?


『みつばちの大地』は9月19日(金)まで渋谷UPLINKで上映しています。
普段の生活では絶対に見ることができない、
みつばちの生態を見るだけでも価値があります。
http://www.uplink.co.jp/movie/2014/30319


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手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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