ニッポンのミツバチのためにできること

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気に入らないことがあるとすぐに出て行き、とても飼いにくいけど
昨今流行のニホンミツバチ。実はヒトとの関係は「大家と店子」で、
人間の管理はニホンミツバチにとっては「大きなお世話」だと中村さんは言う。
ヒトは飼ってるつもりだが「巣に住んでいただいている」と言う方が正しいのかも。



10月30日、j-laboセミナー
「ミツバチはホントに減っている?不幸なミツバチを減らそう!」に行ってきた。
講師は玉川大学ミツバチ科学研究センター、中村純さんである。

ミツバチが好きでいろいろ知ってるつもりでいたが、
全然知らないのだなと今さら感じた一時間半であった。

さて、ミツバチとは人間が使えない資源を有用な物質に変えてくれる昆虫である。
花の蜜を濃縮し保存性を高め、花粉をミツロウに変えてくれる。
ついでにプロポリスやローヤルゼリーも作ってくれる。

他にこういう昆虫がいるかな? おお、蚕もそうだった。
ミツバチは蚕と同じく生産物あるいは労働を搾取される「産業動物」である。

養蚕地帯や養蜂家が近隣にいる地域では、農薬散布の際に
蚕やミツバチに配慮するようにと指導されている。
薬害とかで死んじゃうと訴訟騒ぎになるからね。

鱗翅目(蝶や蛾)用の農薬、たとえばBT剤が桑の葉に付いたら
大切なお蚕がおなかを壊して死んじゃうから、農薬の袋の裏には
「養蚕地帯での使用は厳重注意」的なことが書いてあるし、
ネオニコ系農薬には「ミツバチに注意」とちゃんと書いてあるのだ。

その他の有益な昆虫、たとえばクモなどの天敵類についても
農産物の防除という点でヒトへの貢献度は非常に高いと思うが、
農薬の袋にはそれほど書いてなくてバンバカ死んでいる。

産業動物と「知らない間にわく名もない虫」との大きな違いであろう。

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もともとはスイスの一地域にいたセイヨウミツバチイタリア種は、
飼いやすく生産性が高いことから今や世界中で飼われている。
ある意味ヒトの手を借りて世界征服を果たしたとも言える。
ミツバチにとってヒトは「役に立つ家畜」らしい。



この「有用な昆虫ミツバチ」が日本人にどれくらい貢献しているかというと、
「平成26年養蜂をめぐる情勢」によると、はちみつ、ローヤルゼリー、ミツロウなどと、
花粉交配用ミツバチも合わせた生産額は84億円強である。

農産物の花粉交配(受粉)の貢献を金額にするとなんと1,619億円にもなる。
1999年には3,925億円で、ブロイラーの生産高よりも高かったらしい。
(日本養蜂協会 ポリネーター利用実態等調査事業報告書より)

わたくしたちはミツバチと言えばはちみつと瞬間的に思い浮かべるが、
ミツバチは生産物よりもその労働で多大な貢献をしているのだった。

そのはちみつの平成25年の自給率は6.8%と非常に少ない。
消費量は伸びているが、消費者は安価な輸入品を食べているようだ。

輸入国の代表は中国だ。中国産はちみつは加工用に使われるのはもちろんだが、
国産はちみつに混ぜて「国産」と称して売っている業者も多く、
景品表示法違反でよく指導されているから調べてみるとビックリする。
チョー有名な養蜂場とかけっこう出てるのでうひいって感じだ。

国産はちみつ、高いからなあ。中国産の3倍はするのだ。

新聞や雑誌にバンバカ広告を出している某養蜂場のはちみつはミャンマー産らしい。
世界的にはちみつの産地は発展途上国に移行しつつある。

さて、昨今ミツバチが減っていると騒がれているが、数字を見てみよう。
おや? ミツバチだけではなく養蜂家も減っているよね。

これは、みかん、養豚、肉牛等々の農家が減ったのと同じ現象で、
輸入はちみつとの競争力がなくはちみつで食えない
→養蜂家減少→蜂群減少という図式だ。

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農水省「養蜂を巡る情勢」平成25年9月より。ミツバチの数は微増、
しかし蜜源作物が軒並み減少しているのにご注目ください。
蜜源となる作物が減るとミツバチが蜜を集めるのが厳しくなる。
養蜂業は衰退すべくしてしてるのかもしれないとか思っちゃったなー。


youhou_meguji_2014_ページ_09
いちご農家が増えてると勝手に思ってたけど減ってるし、
畑作で利用する農家も減っててちょっとびっくり。ひえー。
交配用ミツバチというよりも、それを利用する農家が減ってるのだった。
がんばれー! 日本の農業!



日本では、ミツバチの減少に農薬は関係ないのでは? と思うわたくし。
っつか、なんか最近は増えてるし。個人の養蜂家が増えたせい?
でも、海外ではミツバチは減っているよね?
これについては中村さんが興味深いことを言っていた。

「BeesとHoney beesをなぜか日本では混同していて、bees、つまり
ミツバチを含むハナバチが減少しているという海外のデータを
日本ではミツバチと訳し、ミツバチが減っていると言っている」んだって。
Bees=ミツバチを含むハナバチのこと

おお、そうなのか。データが全てミツバチだけのことではないとわかると、
受粉昆虫(ポリネーター)の減少で大騒ぎと言う話が少し変わってくる。

また、国によってそれぞれの事情があるから、
よその国の話を日本に当てはめるのも違うと中村さんは言う。

例えば、アーモンド産業が非常に重要な米国や、果樹類の受粉を人間がやらない国、
日本人にはなじみのない作物の受粉をハチに頼る国などの事情は、
現在のところ花粉を媒介するミツバチが足りている日本には当てはまらない。

また日本でミツバチが薬害で死んでいると報告のある作物は主にコメで、
海外のようにひまわりだのその他の野菜だのはあまり関係ない。
産出額2兆286億円のコメという基幹作物に使う農薬を、84億円強の産業の
ある一部分のために規制するって話は考えにくいだろうなあと思うわたくし。

栽培作物も環境も、海外と日本では大きく違うのだから
それぞれの国の事情で考えるべきなのだった。

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トマトの受粉のみに使われその後捨てられるセイヨウオオマルハナバチ。
日本にも土着のマルハナバチはいるらしいけど見たこと無いのよね。
トマトやナスなどの果菜類は蜜を出さないためミツバチは使われないらしく、
まさに受粉のためだけの産業動物、セイヨウマルハナバチ。



では日本のハナバチは減っているのかな?

日本のミツバチは上記データの通りで微増しているが、
ハナバチについては、データがないからわからない。
そもそも日本では、野生の草や花が生い茂る土地がどんどん減っており、
ハチだけではなく昆虫が生きていくのにいい環境ではなくなりつつある。

これは天敵を研究している人によく聞く話だ。

天敵の住処は草花が生い茂る植生の豊かな土地だが、
昨今では、草花のあるべき場所が除草剤でスッキリきれいになっており、
さらに里山の植生も単調なため、昆虫が生きづらくなっている。

作物の栽培に利用される絶滅系殺虫剤の合成ピレスロイド系農薬、
有機リン・カーバメイト系農薬で、天敵を始めとする昆虫は
ミツバチも含め、ネオニコチノイド系農薬以上にバンバン死ぬ。

産業動物ではないただの昆虫が死んでも誰にも気づいてもらえない。
果樹農家が「なんか最近虫が少なくなったよねー」とつぶやくくらいである。

日本の豊かな虫たちの世界は、徐々に死に絶えつつあるのかもしれない。

さて、ではその「知らない間にわく虫」のために
わたくしたちにできることはあるかな?

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ほんたべ農園で花が咲くとよく飛んでるのを見かけるヒラタアブ。
小さな花でも抜け目なく見つけて飛んでくるからかわいいよね。
幼虫はアブラムシを食ってくれる天敵である。



いつ実現するかわからない農薬の規制に一票を投じるのもいいが
本日、今、この瞬間からできることがひとつだけある。
上記のような農薬を使わずに栽培された作物を選択して食べることだ。

そうすればそのうち減農薬や無農薬の畑が増え、死んでいく昆虫が減るだろう。

また、ベランダや庭の隅っこで草花を育てることもできる。
長い間花を咲かせるハーブを植えれば、ハナアブやハナバチ、天敵類
そしてミツバチもどこからか飛んでくるだろう。

わたくしたちはそのとき、確実に虫たちの役に立っている。
ミツバチの羽音がやむことのない世界を小さな草花でつくることができるのだ。


ミツバチが好きな草花を植えたい人は以下のサイトをご参考に。
みつばち百花http://bee-happy.jp/


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No title

海外でミツバチが減っていてたいへん!というイメージを持っていましたが、ちょっと違うということしょうか?
全体的なハナバチの減少、ということはあるでしょうね。
森林はまだしも日本では草原はどんどん減少していると聞いたことがあります。
http://meme.biology.tohoku.ac.jp/bumblebee/
マルハナバチプロジェクト
ご存知かもしれませんが、こンな調査もあるようです。特徴がわかりやすくまとまっています。国産マルハナバチ、トラマルハナバチなど武蔵野地域を歩いているとよくみかけます。マルハナバチの仲間はあったかそうでかわいい!
ほんたべさんの虫たちも人間も生きていけるやり方、バランス感覚を大事にしようとしているところいいなあといつも思っております。

Re: No title

nabanaさん、こんにちは。

> 海外でミツバチが減っていてたいへん!というイメージを持っていましたが、

米国だけで言うと増えております。
というかハナバチが減少しているので、受粉昆虫の代替として
ミツバチが増えているということらしいです。

> 森林はまだしも日本では草原はどんどん減少していると聞いたことがあります。

日本では草地が減っており、植生が単調になっていると
天敵の研究者の人が良くいいます。

夏の蜜源植物が足りなくて、大規模養蜂家が北海道に移動するのは
よく知られている話ですが、ミツバチだけでなく
天敵類も夏越しをするのに花粉が必要らしいので、
花粉や蜜を採取できる植物を畑に植えたほうがいいそうです。

> 国産マルハナバチ、トラマルハナバチなど武蔵野地域を歩いているとよくみかけます。

おお、そうですかー、いいですねー。
散策している際に虫を見つけるのは意外と難しくて、
虫目になってないと見つかりません(笑

わたしはクマンバチのえりまきが好きです。

> ほんたべさんの虫たちも人間も生きていけるやり方、バランス感覚を大事にしようとしているところいいなあといつも思っております。

ありがとうございます。

しかし山椒を丸裸にしてしまうキアゲハの幼虫だけは
無慈悲に捕殺しております(泣)

ミツバチとかホタルとか、いなくなって慌てられる虫以外にも、
大切な虫はたくさんいるのになーといつも思っています。

山椒の木

コメントへのレスですが、

>しかし山椒を丸裸にしてしまうキアゲハの幼虫だけは
>無慈悲に捕殺しております(泣)

山椒の木は丸裸になったあと新芽が出ますよ。
ベランダにある山椒の木は、今年2度丸裸になって都合3回の新芽が出ました。
春と、7月下旬からと、9月上旬から。
山椒の葉がどのくらい売れるものか分かりませんが、
スーパーでは4月後半から5月前半くらいにしか見かけません。
この作用を利用すれば、柔らかい新芽が春以外にも楽しめますよ。

キアゲハの幼虫は蛹になる直前から木を降りて徘徊しだすので、
お隣さんの方に行かないように、
木に丸ごと洗濯ネットを被せたりといろいろと手がかかりました。

花粉を媒介するミツバチに余裕はありません

以前、都内でお会いしたことのある、愛媛の男です。ミツバチはホントに減っているかについて、インドやベトナムや中国やアフリカやオセアニアなどでは増えています。日本はアジアで養蜂が唯一落ち込んでいる国です。以前からの、論争は、ネオ二コ反対派や農薬業界側双方に、行き過ぎと理解不十分なところが見られます。ネオ二コ被害は、韓国、日本、カナダ、米国や欧州でもお金持ちの国に集中しているように見ています。
また、日本の養蜂は、業界内部の問題が多くあり、封建的で技術革新は遅れています。
下記の文面は解説不十分です。更なる検証をお願いします。
現在のところ花粉を媒介するミツバチが足りている日本には当てはまらない。
また日本でミツバチが薬害で死んでいると報告のある作物は主にコメで、

 現在、玉川大学、中村純教授や愛媛大学の教授が2013年に発表した蜂蜜に取り込まれた残留農薬問題で、国内生産の蜂蜜が売れず、昨年何とか生産した少ない商品が今も売れ残っています。卸価格も問屋に買いたたかれ、昨年の価格の2-3割程度の取引になった話も聞いています。問屋は、返品可能な輸入蜂蜜におり替えています。この件で、取り込まれた残留農薬問題で養蜂家を追及することは、消費者からは簡単にできます。しかし、養蜂家には解決は容易ではありません。
おそらく、特にイチゴハウスのミツバチなどは、ミツバチが死ににくいネオ二コ農薬のアセタミプリドを、ミツバチが毛に覆われた体に取り込んで巣箱に持ち帰って、連鎖的に問題がかなり多く起きています。玉川大学、中村純教授が、関西で組合の準組合員にもなりながら、対応を怠っていることに疑問を持っています。あちこちの講演でも実態には触れないでいるようです。
 多くの専業養蜂家は仕方なく、生活を維持するために、1年間養った蜂を多めに切り売れしています。このような成り行きの検証をお願いします。
現在のところ花粉を媒介するミツバチが足りているように、見えています。
 多くの専業養蜂家はイネや果樹の農薬でハチを殺され、残留農薬被害を受け、学者のネタにされ、そして一方で消費者の風評を気にしています。
 消費者は旬を外れた真冬のイチゴを可愛い,おいしそうと喜び、農家も1反当たり、数百万円の売れ上げになっています。メロンやスイカも同様です。全国のミツバチ群はこのハウス内の花粉交配に3-5割を取られ、消えていきます。さらに、野外では農薬被害で侵されます。しかし、養蜂家はこの花粉交配を当てにしないと、もう生き残れず、悪循環になっています。
 ちなみに、中村純教授3月、農薬学会で、特別講演「ネオニコチノイド系農薬の使用規制でミツバチを救えるか」 と、講演するようです。私には、彼が養蜂家の味方には見えません。
http://pssj2.jp/congresses/40/taikai40.html

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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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