農業分野におけるCO2削減について調べてみた

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あるトマト農家の自家製資材「酵素液」。余った果物や野菜とお砂糖でできた
あま~いエキス。こういうのお金もかからないし、CO2も排出しないエコな資材。
だから農業ってエコなんじゃんと思われがちだけど、実はそうでもない。



以前山梨のぶどう農家の畑に行った際、資材の話になった。
「こんな資材を入れるといいかもしれないね」と話したら、
「俺はガソリン使って遠くから資材持ってくるのがイヤなもんで
身近にあるもので農業やりたいから使わないよ」と言われた。

ガソリンを使って遠くからナニカを持ってくるのは
CO2削減という意味ではあまり良くないが、
ふだんそういうことはあまり考えたりしない。

遠くからナニカを持ってくるのは今やあたりまえであり、
良さそうなものがあれば遠くのものでも欲しいからだ。

彼の場合はCO2削減というよりは
「地産地消」という思想のもとでの発言だったのだろう。
「ガソリンくらいいいじゃんか」と思ったわたくしは、
今から考えると彼の思想を理解していなかったのだった。
申し訳なかったなあ。

ある葉物産地に行ったとき、葉物の植え方が雑なのに驚いたことがある。
通常菜っ葉はは4条とか3条とか整然と畝に並んでいるものだが、
そこの菜っ葉は畝にバラバラに生えていた。
さらにマルチも被覆材等の資材も全く使われていなかった。

これじゃあ雑草も生えるし虫にも食われる。
そして何よりも作業性が悪そうだ。

埼玉の農家が「これで効率よくできるんかなー。作業の無駄だよね」と
つぶやいていたが、その葉物農家は「ビニール資材を使わない」
という思想のもとでマルチを使っていなかったのだった。

そこの菜っ葉にはいつもはこべが1、2本混じっていて、
「調整が下手クソなのをなんとかしましょう」とよく指摘されていたが、
マルチを敷いていないのなら雑草も入るよなーとわたくしは思った。
作業性も悪いに違いない。しかし思想だからそれでいいのだった。

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関東の平地でのほうれん草露地栽培。ビニールのトンネル・マルチが必須なのは、
雑草対策と温度管理のため。こういった資材を使わず作ると、皆の出荷が一気に揃い、
無くなる時は一気に無くなるという恐しいことが起こる。いまや石油を使った
農業資材なくては、農業は営めない。ちなみのこのビニールの寿命は3年。



さて昨今では上記のようなビニール資材を使わない農家は稀である。

全体をビニールやガラスで囲い環境をコントロールする施設園芸はもちろんだが、
露地栽培でも、基本的にはビニルマルチ、防虫ネット、寒冷紗などを利用し、
収穫時期のある程度のコントロールや虫対策をしなくてはならない。

この石油系の資材は使用後は廃棄処分である。そしてCO2を排出する。

では農業分野のCO2削減ってどうなっているのかな?
実はわたくし、2009年にとあるNPO法人で10ヶ月ほど働き、
日本郵便の補助で「農業分野のCO2削減」という事業を担当した。

その際「有機栽培のほうが慣行栽培よりもCO2削減できるはず」という
仮説を元に数字を出したが、意外や意外、結果はそうはならなかった。

野菜一個あたりにすると、大規模農業の方がCO2排出量が少ないのだ。
まあ少し考えたらわかることではあった。
生産費を削減するには大規模化である。生産費削減はCO2排出量も少ない。

今はどうなっているかしらないが、当時はCO2削減を見える化した
「カーボンフットプリント事業」というのもあって、
イオングループが国内初のカーボンフットプリント付野菜を販売していた。

菜っ葉一束のCO2排出量が店頭で公開されてたんじゃなかったかな。
2008~2010年はCO2排出量取引がいいビジネスになっていたくらいだから、
人々の関心も高かったに違いない。

ちなみに我々の事業を遂行するにあたり、数字のもとになったのは以下である。

「LCA手法を用いた農作物栽培の環境影響評価実施マニュアル」
(独立行政法人農業環境技術研究所,平成15年)
http://www.niaes.affrc.go.jp/project/lca/lca_m.pdf
産業連関表による二酸化炭素排出原単位
http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d016/co2.html

霜で焼けた
春先の遅霜で焼けちゃったりんごのめしべ。これでは実がつかないため、
畑で重油を焚いたりする。防霜ファンがあるところは電気で防霜ファンを動かす。
水をまいて凍結させる人や霜防止の資材をまく人や、人それぞれ。
でも作物を守るのが第一なのだからしょうがないのだった。



LCA手法マニュアルには自分の使用した資材・農薬・ガソリン等の金額から
どれぐらいのCO2を排出したか、また作物でどれほど吸収したかを
計算するための手法がわかりやすく書かれている。
ご自分のCO2排出量について知りたい方はぜひ。

農業は非常にエコな印象を与える職業だが、実はそうでもない。

露地栽培は前述のとおりだし、施設のビニール資材、加温に使う重油、
トラクター・その他管理機のガソリン、化学肥料、農薬、出荷用段ボール、
畑に通うKトラの燃料などなど、CO2は出すわ農薬で環境を汚染するわで、
どう考えても「エコな職業」とは言えないだろう。

しかし「耕作」とはそもそもその「場」のものを破壊し、
周辺の環境を変えるものだから「自然」ではあり得ない。
エコな農業といえば福岡正信先生の完全な「自然農法」くらいじゃないかな。

何もしないで粘土団子をばらまくだけなら環境は破壊しないが、
それでは1億2708万人の胃袋を満たすことはできないのだった。

さてしかし、農業分野でのCO2削減について調べてみると、
ここ数年でかなり進化していることがわかった。
民主党政権時に鳩山首相が25%削減という目標をぶちあげた後、
農業分野でCO2削減が積極的に行われていたようだ。

平成23年度 食料・農業・農村白書「第7節 持続可能な農業生産」によると
平成 21(2009)年度における我が国の温室効果ガス総排出量(12 億 900 万 t-CO₂)に
占める農林水産業・食品製造業の割合は4% (5,100 万 t-CO₂)である。
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h23_h/trend/part1/chap3/c3_7_01.html

CO2削減のための具体的な取り組みとしては、
施設園芸、農業機器の燃料の省エネ化や、木質バイオマスの利用、
カーボンフットプリントの取り組みによるCO2の見える化、
環境保全型農業への支援などが上げられている。

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化学肥料の原料、リン鉱石・尿素・カリは100%輸入だ。平成21年ごろ、
原料価格の高騰で、農水省から「施肥設計の見直し」という指令が出ていた。
「高騰」が原因で、CO2削減が理由ではないのがなんかちょっと残念。



すごいなー。知らなかったなー。今でも継続しているのかしら。

また、堆肥や粗大有機物を土中に入れることによるCO2の蓄積なども
効果があると考えられており、堆肥の利用が薦められている。
しかしこの場合はC/N比(炭素率)の高い堆肥の利用に限られるのだ。
炭素率が低いものはチッソ成分による水質汚染につながるからね。

そしてなんと! 「化学肥料や農薬の5割減」とか、
冬期湛水とか、リビングマルチとか、さらにさらに
「有機農業への取り組み」についても支援されているのだった。

でも10aあたり4,000円だけど。これどうだったのかなー。

有機JAS認定に限らず、有機農業推進法で言うところの有機農業であれば、
CO2は削減できるようだ。わたくしたちの事業ではそういう結論は出なかったが、
農水省が言うんだから間違いないだろう。

2008年、CO2排出量削減のために我々は以下の様な提言を行った。

1. 農薬・化学肥料の使用をできるだけ減らす
2. 近隣で入手できるものを利用して有機質肥料を作る
3. ハウス栽培の場合は、ボイラーのみの使用でなく太陽熱を利用する

んー。農水省の言ってることとあんまり変わらないみたい。
農林水産業で削減できるCO2は微々たるものかもしれないけど、
やっぱ有機農業にはCO2削減にメリットがあるのだった。

あー、良かった。


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いつも不思議に思うのは食べ物に対する放射能汚染が無いことだ。
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手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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