人知れず活躍する天敵くんの話

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ブローチにしたいぐらいのこのかわいさ。ナナホシテントウは天敵の代表格。
テントウムシダマシ以外のナミテントウはアブラムシ類の天敵です。
作物の下から上に食べ進んで行き、てっぺんに到着したら飛んでっちゃうのが難点。



前の会社で働いていた頃、農家の畑から
人参の葉についたアゲハの幼虫を2匹もらってきたことがありました。

おしゃれなシマシマ模様のアゲハの幼虫は、マットな色調と触った時のすべすべ感が好きで、
唯一素手で触れる幼虫でもありましたから、
さなぎになるまで事務所で大切に育て、羽化を心待ちにしていました。

ある日、さなぎの一つに穴が開き、下にゴキブリの卵のようなものが落ちていました。
羽化したアゲハらしいものは見つかりません。「あれれ?死んだのかな?」
少しがっかりしたのですが、もう一匹いたのでそのまま放っておきました。

そしてある秋の午後、ゴキブリの卵風のものが割れ、
中からハチのような昆虫が出てきたのでした。

「何なに~? これ何? 何なのよう!」虫カゴをブンブン飛び回るハチ。驚く同僚。
同定は、同僚により素早く行われました。

この虫の名は、「ブランコヤドリバエ」。
アゲハの幼虫に寄生する寄生バエだったのでした。

キアゲハ幼虫
通常はセリ科のニンジンや山椒の葉にいるのですが、これはなんでキャベツにひっついてるのかな?
こういった鱗翅目の幼虫類は、天敵昆虫の他鳥たちも食べることができるので、
生態系の下支えをしてるんじゃないかと思ったりします。いなくなると困るんじゃないかなあ。



生まれて初めて幼虫を飼ったら寄生されていた。
この事実に衝撃を受けて間もなく、同僚が飼っていたアオムシからも何かが出てきて、
ある日その死体の周りで大量のさなぎになっているのを見つけました。

これは「アオムシコマユバチ」。

…いや、大変驚きました。虫の世界の弱肉強食ぶりと言ったら恐ろしいほど。
ヒトの気づかないところで繰り広げられているであろうその世界に、
しばし思いをはせ、感銘を受けた出来事だったです。

このような、害虫を食べてくれる虫たちのことを私たちは「天敵昆虫」と呼びます。

上記のように一匹必殺だけど時間がかかる寄生バエ・寄生バチの他に、
害虫自体をモリモリと食べてくれるものもいます。

ウロコアシナガグモ
ウロコアシナガグモは巣を作る待ち伏せ型のクモ。きれいなクモですね。
ハエトリグモのような徘徊性のクモの方が害虫を捕食する量が多いらしいのですが、
いずれにしても害虫そのものを食ってくれるので、ありがたい存在です。


IMG_1446.jpg
トマト等の果菜類に被害を与えるコナジラミという虫。ウイルスを媒介することでも知られています。
コナジラミの天敵はオンシツツヤコバチという小さな昆虫。天敵製剤にもなっています。
コナジラミがこんなにいるんじゃもう末期的症状。収穫終了のハウスで撮りました。



これらの天敵をうまく利用し、農業に役立てる研究もずいぶん行われています。

しかし、現在の日本の農薬使用量は世界第4位(金額ベース)。
これを耕地面積あたりに置き換えるとおそらく世界一であろうと言われます。

農薬の使用が前提の農業では、天敵は次々に死んでいき、
最終的に害虫のみが存在する栽培環境を、農家自身が作りだしています。
加えて、効率のよい単一作物の大規模栽培が生態系の単一化に拍車をかけています。

単一作物主体のバリエーションに欠ける条件の中で、
どのように天敵を活用するかという研究も行われているのですが、
いかんせん、一般の農家は虫には無頓着。

昆虫などの小さな生きものが、畑にどれぐらい生息しているかなど
あまり気にかけている人はいないのが現状です。

群馬 010
地味~な色合いのナミテントウ。これも天敵。これよりももっと小さいヒメテントウという虫もいて、
同定するのがすごく困難(小さいので写真を撮るのも困難)。
名前がついていないヒメテントウも何十といるみたいです。



日本人にとって虫は「わく」もの、「なんかしらん、知らない間にいた」的な生きもの。

いなくなって初めて焦り、「あっ!ヤバイ!保護しなくては!」とあれこれ活動を始める…
その最たるものが「ホタル」、そして「ミツバチ」なんじゃないかと最近思います。

前者は景観に、後者は人間に対して大変なメリットのある昆虫。
だから意識してもらえますが、その他の地味な昆虫たちが振り返られることはまずありません。
(研究者の世界ではめちゃくちゃ注目されていますけど…)

いなくなって初めて気づく…そのうち『沈黙の春』がやってくるのでは…
恐ろしい想像をしてしまいますねえ。

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テントウムシの幼虫。大食漢でアブラムシをモリモリと食べてくれます。
春先に越冬から目覚めた成虫をつかまえて畑に放してやると、畑で産卵してくれます。
その後幼虫が大量発生し、さらにアブラムシをモリモリと食べてくれます。
さなぎになるまで畑に定着し、延々とアブラムシを食べ続けるのが最大のメリット。



さてしかし。実は天敵はすでに有効活用が始まっています。

ハウスなどの施設栽培では、農薬登録された天敵を導入している農家も多く存在します。
天敵を使用することで農薬を少し減らせるため、その経費と手間を抑えられることから、
慣行農家でも、割合と積極的に取り入れられているようです。

しかし露地栽培での活用は、生態系への影響が出るかもしれないという懸念と
どこかに飛んでっちゃうと役に立たなくて経費の無駄という側面があるため、
昨今ではもともと日本にいる土着天敵の活用が注目されています。

以前NHKスペシャルで日本の生物相の多様性は世界一と言っていましたが、
昆虫の世界も同様で、いまだに名前がついていない虫は山ほどいるそうです。

土着天敵だって山のようにいるらしいのです。
それらをバンバン増やしていけば、ある程度の防除能力が期待できる…スゴイじゃありませんか!


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アブラムシの寄生蜂「アブラバチ」。日本には3000種ほどいて、ほとんど名前がついていません。
アブラムシにそっと忍び寄って電光石火で産卵し、延々と産卵し続ける動画を見ましたが、
「がんばってくれ!」と言いたくなるような活躍ぶり。畑では注意深く見ないと見つかりません。
写真提供・市川泰仙



ではどうやったら天敵くんたちが来て、増殖してくれるのでしょう?

まず農薬をまかない・土壌消毒をしない・除草剤をまかない…皆死んじゃいますからね。
農薬をまくなら天敵に優しい選択性農薬をまくことが大切です。

そして、あぜや畑の周りに天敵温存作物を植えること。
これは花の咲く雑草やハーブ、麦類などがいいようです。

天敵類は基本的に害虫を食べて生きていますが、害虫が減ると生きていくことができません。

しかし花が咲いていれば、花粉を食べてしのぐことができるらしいのです。
花はミツバチの蜜源にもなりますから、
いろいろ植えているとニホンミツバチが喜ぶかもしれませんね!

gazou 001
ズッキーニの花の中。ぽかぽかとあったかそうです。
花の中をよく観察すると、いろんな虫がいて花粉食ってたり蜜吸ってたりするので面白いです。



さらに、単一作物だけでなく、株間に混植したり、小規模多品目農業を行うこと。
(費用対効果からするとプロの方々には「そんなのムリ」と言われそうですけど…)
多種多様な作物が、昆虫の多様性を生み出すのです。

現代農業や現代の農民に忌み嫌われる、雑草が生えた畑、
いろんなものが植わっている雑然とした畑。
そういう畑は天敵に優しく、人知れず害虫が減っていく畑になり得ます。

現在農業が進んでいる方向や、政府の方針とは真逆の方向になってしまうのですが、
本来の農業って、そういうものなんじゃないかなあと思ったりします。

画像 s019
畑の周りに灌木があったり草が生えてたりすると、そこから天敵がやってきます。
でもカメムシなんかもそこで越冬するらしいので、管理された草地というのが理想なのかもしれません。



これから昆虫たちは越冬準備を始めます。

土手などの石の下や軒下、畑のあぜの雑草のなかで。
さなぎになったり成虫のままだったり、卵の状態だったり、それぞれいろいろです。

春になり、またどこからか知らない間に「虫がわき」、
豊かな生きものの世界がいつまでも続くことを祈っています。


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No title

ほんたべさん、こんばんわ。芋虫の画像に鳥肌が・・・!
でも、人間に役立つ虫なので、ありがたいと思わないといけないのですけども・・・

「自然らしく」と言ったときに、虫たちも生きているのだということを忘れてはいけませんね。うんうん。

Re: No title

駆動さん

こんばんは。
そうですか…やはり虫がダメでしたか。

けっこう友人たちに「写真載せないで~」と言われたもので…苦手な人が多いのですね。
配慮が足りなかったかな…アップだったし、と反省しております。

背中をなでるとすべすべで気持ちいいんですけど…でもイヤなものはイヤですよね。
次回はもう少しかわいく撮影したのを載せるようにしますね!
(って、違うか?)

プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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