ネオニコチノイド系農薬は規制されないよねと思った話

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講師の本山直樹氏(千葉大学名誉教授 東京農業大学総合研究所研究会農薬部会長)
なんか前に農大で講演聞いたような気がしたことをあとで思い出したけど
ARfDのこととかいろいろ聞けて良かったです。



NPO法人みつばち百花主催の
「最近の報道から考えるミツバチと農薬 それぞれの課題」に参加した。

ネオニコチノイド系農薬とはニコチンに似た化学式をもつ物質で、
日本人が開発したわりあいと新しい農薬である。
最初にできたのは「イミダクロプリド」だ。

当初、この新しい化学式を持つ農薬はネオニコ系という名前ではなく
クロロナントカ系と呼ばれていた(正式名称失念)。
それを「ネオニコチノイド系」と名づけたのも日本人である。

ネオニコはそもそもメイドインジャパンの農薬なのだった。
おお、すごいじゃないか! 
開発した会社は外資系の農薬メーカーに買われたので、今はもう無い。

ネオニコがクロロナントカ系という名前であれば
こんなに話題にならなかったかもとわたくしはよく考える。

ネオニコチノイドという名前は非常にキャッチーで覚えやすく
ニコチンという既知の物質名がついてるからさらに身近な感じがする。
そしてなんとなく「ニコチン=悪いもの」という気もする。
クロロナントカ系だったら絶対話題になってないはずだ(言い切り)。

さて、ネオニコチノイド系農薬には現在以下の7剤があり、
このうち5剤がミツバチに影響があると考えられている。
※がEUで2013年から2年間規制されてる農薬

成分名 イミダクロプリド 農薬名 アドマイヤー ※
成分名 アセタミプリド  農薬名 モスピラン
成分名 チアクロプリド  農薬名 カリプソ
成分名 ニテンピラム   農薬名 ベストガード
成分名 チアメトキサム  農薬名 アクタラ   ※
成分名 ジノテフラン   農薬名 スタークル
成分名 クロチアニジン  農薬名 ダントツ   ※

ネオニコ系農薬とひとくくりに言われるが、
イミダクロプリドとジノテフランは違うし、
適用作物も殺す虫も微妙に違う。

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中村 純氏 玉川大学ミツバチ科学研究センター教授 みつばち百花理事
ネオニコとミツバチの話が出る際に、なぜミツバチの研究者や
農薬関係の科学者が発言しないのか、率直な意見を聞かせていただきました。
「ですよねー」って感じ。以前「関わりたくない」って言ってた人もいたし、
科学者として非常に発言しにくい話題だってことを再認識したです。



ネオニコ系農薬はそもそも有機リン・カーバメイト系などの
毒性の強い絶滅系農薬の代替品として開発された。
有機リン・カーバメイト系は、散布するとそこにいるものを全部殺す。
毒性は強く、環境への影響もおそらく高い。

しかしこれらの農薬が生態系にどういう影響を及ぼすかとか、
どんな虫を殺しているかとかはあまり研究されていないようだ。
検索したら「空中散布は人間にどれだけ危険か」という報告書を見つけた。
たぶん虫はどうでもいいのだろう。

ミツバチの農薬被害について研究されているのは
養蜂という職業が関わっていてヒトの利益に関係あるからだ。
害虫ですら農薬まいたらどれぐらい死ぬかなんて研究もされている。

ヒトに関係ないそのへんにいる小さな虫は気にしてもらえない。
そしてそのへんの虫は殺虫剤でバンバカ死んでいるのだった。

数年前から果樹農家に「なんとなく最近虫が減ったよね」と聞くことが増えたが、
どんな虫がどれだけ減ったかなんつーのはわからない。「なんとなく」だもん。
研究してもお金にならないし、たぶんされないから
何かが絶滅していてもおかしくないが、誰も気にしないのだった。

虫にも価値のあるものと無いものがいる。

ちなみに某D社は有機リンとカーバメイト系農薬はほぼ使えないが、
これらの農薬を使わなくなって3年経つと「変な虫が増えてくる」と
友人のりんご農家が言っていた。

実際に他の人の畑では見ない虫が木にくっついてるのを見たが、
強い農薬でバンバカ死んでいた虫が、
それらを使わなくなったため戻ってきたのだろう。

絶滅系農薬がいろいろなものを殺しているのは間違いない。
そして生態系の強力な修復能力にもちょびっと驚くわたくしであった。

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5月、害虫が出始める前に一度有機リン系農薬をまいて叩いておく。
それが果樹防除のコツ。ここで叩きそびれると後日大変なことになり、
最終的に農薬散布数が増えたりするから大変。まだ実が小さい
初期の農薬は、相変わらず強いものが使われております。



さて、そこにいるものを全部殺す絶滅系農薬は効果絶大だが、
農薬散布時に飛んでっちゃう虫に対しては効果が無い。
そういう虫はあとで戻ってきて悪さをするから腹が立つ。
また害虫を食ってくれるクモなんかも死んじゃうからそれはそれで迷惑だ。

効かなかったから再び農薬を散布すると散布量が増えるしお金もかかるし、
何度もまくと虫に抵抗性が付いてそのうち効かなくなる。
飛んで行く虫にも農薬を効かせるにはどうしたらいいか。
そこで浸透移行性の高いネオニコの出番なのだった。

浸透移行性とは作物の体内に農薬成分が残るということで、
飛んでった虫が戻ってきて、それをかじると死んでしまう。

これが「怖いねー、ネオニコ!」と言われる理由のひとつでもある。

果樹類・稲類のカメムシほか難防除害虫に絶大な効果があり、
「スゴイよねー、ネオニコ! 効くよねー、ネオニコ!」的なことを
某D社の果樹農家に何度か言われ、当時のわたくしは
「有機リン使えなくても虫が死ぬ農薬があって良かった!」と真剣に思った。

ネオニコを規制してと言う人はおそらくこういうことを知らないのだ。
難防除害虫をやっつけるのはものすごく大変で
そういう害虫に食われた作物を消費者は食べたくないだろう。

オーガニックではない安価で提供される見た目のいい作物を
フツーにお店で選択している人々は、間接的に農薬の恩恵を受けている。
そのことを知らねばらないと思うが、それを意識している人は少ない。

ネオニコの浸透移行性の高さにはもうひとつメリットがある。
例えば果菜類の初期のアブラムシ防除はすばらしい。

定植時に株元にパラパラと置いておくと、苗が農薬を吸う。
この苗にアブラムシがたかって樹液を吸うと
同時に農薬成分も吸うからアブラムシが死ぬ。

総合的な毒性評価
初めて聞いた時はどうかと思ったアドマイヤーの使い方。
トータルで散布する農薬量が減らせるし、ヒトには危険性ないし、いいよねー。
しかし最近、イミダクロプリドにも抵抗性がつき始めたらしくって、
虫ってすごいなー。次代の地球はきっとあなたたちのもの。



この定植時の植穴散布は、栽培ステージトータルで考えた場合
初期の農薬散布回数が抑えられることから農薬数が減らせるというメリットもある。
また、幼苗期の農薬は可食部に残らないから人間にとっても安全だ。

小さな苗のときにアブラムシにたかられると生育が悪くなるし、
アブラムシ対策で何度も農薬をまくと農薬の手間も経費も大変なので
農家にとってもメリットが大きい。

ということで、ネオニコチノイド系農薬はとても便利で、安全面では
有機リン系・カーバメイト系よりも環境負荷が少なく毒性も低く、
クモを殺さない等の選択制もあり、初期の使用で農薬が減らせる。

規制しろと言われても絶対そうはならないだろうとわたくしは確信している。
農薬メーカーと国の陰謀ではなく、この農薬がないと
野菜や果樹類の難防除害虫に効く農薬がなくなるからだ。

さて、EUで上記3成分の農薬を規制して一年が経ったが、
一年間の評価はどうだったのか質問してみた。

「蜂群は増えたが採取できる蜂蜜が1/4に減った。理由は特定されていない。
作物被害ではナタネにノミハムシの被害が拡大し、平均で7%の減収だった。
イギリスでは最大で40%減収というところもあった。
ナタネの被害によりミツバチの蜜源が減少した」等々。

使用規制で期待された効果(蜂の健全な生育?)が出たかどうかは
はっきりしていないが、ナタネの生産減という予測は的中したらしい。
2年後の評価がどうなって、規制自体がどうなるのか
わたくし的には大変とても楽しみで注目しているのだった。

日本ではミツバチとネオニコ系農薬が不幸な出会いをする場は
ある程度特定できていて、どうかすると訴訟問題になるから
昨今では農業者の意識は以前と比べてはるかに高くなっている。

海外の事例とは環境も栽培作物も規模も違うのだから、
EUの例を持ちだして日本も規制を!というのは全然違うのだが、
そういうことをきちんと伝えているメディアは少ない。っつか
見たことないんだけど、知らないのか、あえてそうしてるのか、どっちかな?

単位面積農薬国際比較

粗放栽培で穀物生産が主の米国と単純に比較しては絶対にいけないけれども、
そうは言ってもこの農薬は多いでしょう。アジアモンスーンのせいと言っても、
この農薬は多いでしょう。半分はムリかもしれないけど、
せめて2/3くらいにならないのかなー。できると思うけどなー。



現在の日本の農薬散布量が多すぎるのは事実だし、
減らす技術は研究されてはいるのだが、農業の現場にそういう技術の伝達は
積極的に行われていないように思える。どちらかというとこのへんが
「農薬メーカーの陰謀では!!!」(振り上げるこぶし)
なんちて思ったりする。

しかし、最近の防除暦を見ると全体的に強い農薬は減りつつあるし、
安い&毒性が高い&古いという3拍子揃った農薬が次々失効してたりして
やっぱり安全性だよな~としみじも思ったりするのだった。

わたくしは農薬については「絶対ダメ」とは思っていないが
自分が食べるものは農薬をできるだけ使わない人のものを選ぶ。

だってさあ。ミツバチ以外の小さな虫も大切だし、
そういうものがいなくなったら世界が少しつまらなくなるような気がするでしょ。

わたくしの菜園にはイモムシもカマキリもいて、食べたり食べられたりしていて欲しい。
山椒を食われてキーっとなっても、アゲハの幼虫はいて欲しいのだ。

農薬を嫌う人は多いが、嫌いでも安定的に生産される野菜や
おいしいくだものという利益は享受しているわけで、
そういうことも考えて反対したりする必要があるんじゃないかしらと思いながら
セミナーを聞いたわたくしでありました。

講師のお二方、くどい質問に答えていただきありがとうございました。


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ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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