畜産の飼料のお話

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平飼養鶏の小鳥たち。まんなかのモヒカンヘアの子がオス。
通常は卵を産む直前の鶏を仕入れるのが常なのですが、平飼で健康な鶏を育てる場合、
クチバシにまだ卵を割る突起がついてるような小鳥(初雛)を仕入れます。
小さな時から健康に育てるのが、抗生物質に頼らない養鶏の基本。


現在の日本の食糧自給率は40%。もう皆が知ってる数字です。

これはカロリーベースなので、本来は生産額ベースで見るべきと言う人がいます。
生産額ベースでは70%。そんなに危機的状況ではないような数字です。

でも例えば鶏卵単体の数字を見てみると、品目別自給率は97%。
スゴイじゃん! ここに飼料自給率を掛けます。×10%。
さて、カロリー自給率が出てきました。=9.7%…ひ、低い。

鶏は輸入トウモロコシ(たぶん遺伝子組み換えトウモロコシ)を食べていますから、
国内で生産されている割合は高くても、自給率が低くなるという典型的な品目。
トウモロコシがなくなっちゃったら、何を食べるの?
想像すると恐ろしいですね。1P200円の鶏卵が500円くらいになりそうです。

このように、輸入穀物がないと、現在の日本の畜産業は立ち行かなくなっています。

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鶏たちがあちこちに産んだ卵を拾うのは楽しいもの。
平飼なので鶏があっためちゃったりしてて、卵がほんのりあたたかいことも。
こういう体験をすると「卵は生きもの」って気がしますよね。



トウモロコシや小麦がダメなら米を食べさせればいいじゃないか…なんて
思っている人も多いんじゃないでしょうか。
しかし実はそんなに簡単な話ではないのです。

日本の伝統的な農業は、少数の家畜と畑作・稲作による有畜複合農業と言われます。

家畜糞を肥料にし、作物を育てその残さを家畜に与え、ハレの日には肉を食う。
全てが循環している非常にエコな農業を営んできたのです。

しかし1961年の農業基本法の施行により、畜産と農業はかい離し始めました。

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この建物、養鶏の鶏舎なのです。ウインドウレス鶏舎といい窓は全くありません。
内部は自動給餌で採卵も自動。人工的な照明で朝も夜もわからない環境。
ケージの中にぎゅうぎゅう詰めになり、ひたすらに鶏は卵を産み続けています。
一度入ったら死ぬまでお日様を見ることができない鶏の卵。私はちょっと食べたくないかなあ。


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平飼養鶏の鶏舎と鶏。外を見物したり他の鶏をつついたり、卵をあっためてみたり。
思い思いにふるまってます。飼い主によって人懐っこくなったり、人を見ると追っかけてくる鶏になったり。
鶏にも個性があるのですねえ。



安価な輸入穀物を与え、大規模化による効率UPと大量生産、
米国型の畜産の導入が、日本の畜産業を大きく変えることになります。

大規模化=畜産工場なんじゃないかと、昭和60年頃には問題点が色々と指摘され、
本も何冊か出ていましたが、最近はぱったりと聞かなくなりました。
問題が解決されたのかなあ。そんなことないと思うけど。

ともあれ、このおかげで日本人は肉や卵が日常的に食べられるようになり、
小さく頑健な体だった日本人の体形を、すらりとしたバランスの良いものに変えました。

また動物たちも、大量生産に合った品種改良が行われてきました。

穀物を大量のミルクに変えるホルスタインや、
早く大きくなっておいしい「ロース」が長い(つまり胴が長い)豚(LWD)など、
穀物飼料ありきの品種改良で、日本人の食卓はより豊かになったとも言えます。

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乳肉兼用種・ブラウンスイス。傾斜地に強い牛なので山地酪農(やまちらくのう)で飼われています。
山地酪農…の説明をすると長くなるのでまたいつか。
ざっくり言うと中山間地に放牧し森の下草を食べさせる酪農のこと。穀物はあまり与えません。
そのミルクはあっさりとした草っぽい味になります。



その陰で、そもそも草を食べる反芻動物の牛に穀物を食べさせることのおかしさとか、
その牛はほとんどが放牧などされずに、狭い牛舎で飼われている悲しさとか、
ぎっしりと身動き取れないケージに詰め込まれ、暗闇で卵を産んでる鶏とか、
産業動物の飼育方法には「うへえ」と思うことがたくさんあります。

これは私たちにはほとんど知らされていません。
畜産の在り方は、実は日本はものすごく立ち遅れている分野でもあるのです。

さてそんななか、輸入穀物を日本で手配できる穀物に変えて
国産飼料100%の畜産にチャレンジしている人たちがいます。
(この商品は大地を守る会の宅配で注文できます)

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大地を守る会のthat`s国産卵。黄身が少し白っぽくなります。
これはそれほど白くないけど、白いときはほんとに白いのでびっくりされることも。



国産飼料100%に最初に挑戦した養豚農家に話を聞いたことがありました。
一番困ったのが、子豚がコロコロと死ぬことと、肉の味が変わってしまうことだったそうです。
子豚の死亡はなんとか食い止めましたが、肉の味を確立する配合を見つけるのに4年かかりました。

餌を変えると味が変わる…なんだか少しびっくりしました。
経験によって配合比は決まっているもの。急に内容を変更しても、同じ味にならない、
食べたものによって体は作られるのだから、当然のことなのですが。

また、粗飼料主体にすると牛肉はサシが入らない赤身中心の肉になり、
霜降り肉を喜ぶ日本では等級が低く、一般市場では安値がついてしまいます。

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赤身に網目のように入る脂肪(サシ)。脂肪は甘くておいしいので、日本人が大好きな味。
黒毛和牛のA5クラスなんて、ものすごい霜降りで怖くなるほど。
赤身の肉は鉄分が多くて健康にいいんですが、この脂肪の誘惑に勝てる人はあんまりいません。



鶏肉の場合は米を食うと脂肪が黄色っぽくなり、ちょっとニオイが変わり、
鶏卵農家は、卵の黄身が白くて気持ち悪いってクレームが来るんだよねと嘆きます。

卵の黄身の色味は実はカロチンの色。トウモロコシを食ってると黄色くていかにも卵色です。
これを小麦や米に変えると、白っぽい黄身になり、卵焼きも白っぽくなります。

私はもう卵の黄身が白いのに慣れてしまったので、オレンジのを見るとびっくりしますが、
スーパーの卵を食べてる人から見ると「白くて病気みたい」とか思うらしいです。

黄身の色はエサの配合で着色できるので、大したことじゃないと思うんですが、
安全性や農業の将来などよりも、黄身の色の方が大事な人もいるってことですよね。

食べものの見た目の許容範囲って意外に狭いのだなあとつくづく実感する話です。

そんな人はきっとたくさんいるはず。そういう中で、国策として穀物飼料を米に変更した場合、
その味や見た目が受け入れられるのかどうか。
誰が肉の味が確立するまで配合の実験をしてくれるのか。

トウモロコシがなければ米を食わせれば?と言ってる人に
聞いてみたいなあと思ったりします。

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今まで飲んだなかで一番おいしかった牛乳「森林の牛乳」緑ラベル。
伊勢丹で売っています。たしか500ml600円ぐらいだったような…。
森林酪農という放牧主体の酪農方法で、ほぼ草だけ食べているジャージー牛のミルクです。



今、100%国産飼料で…なんてことができるのは、本当に一部の人だけ。
そのことを理解して、対価を支払ってくれる消費者がいないと、うまくいきません。
でも、少しずつですが、飼料米を食べさせる取り組みをしている畜産農家が増えているようです。

できたらそういうものを選択し、食べ支えることが大事なんじゃないかなと思います。
ロシアや中国が穀物の輸出を制限し始めています。
そのうち、肉や卵が自由に食べられなくなる日がやって来そうです。

「私が若いころは100円のハンバーガーがあってねえ(遠い目)」
「ばあちゃんまたウソついてるよ~!」

近い将来、そんな会話が交わされるようにならないことを祈っています。

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いつも勉強させていただいてます。

 こんばんわ。
いつもためになるお話ありがとうございます。

 白い黄身の卵、食べてみたいですね。
あ。でも白かったら黄身じゃなくなる??

 今まで卵が黄色いのは当たり前のことで、
それがトウモロコシなどの穀物のせいだとは知りませんでした。

 以前、飼料米の話を聞いた時に始めて知ったんですが、
今まで、黄身が黄色いのがいい卵みたいに言われているのを聞いて、
そうなんだぁって思っていたけど、そういうわけじゃないんですね。

 畜産も野菜と同じで品種改良がされて、
大量生産用になっているんですね。

 農業で生計を立てることと、純国産の農産物を作ること。
両立するのはなかなか難しそうですね。

Re: いつも勉強させていただいてます。

まいさん

こんばんは。

黄身が白っぽいと、ゆで卵にしたときにすごく目立ちます。
卵の味はちゃんとするんですけど…びっくりする人が多いです。

クレームが来るんで、人間が食べないジャンボかぼちゃを鶏の餌用に作付してた人もいました。

カロチン分が入ればいいので、夏草が豊富な時期は割合と黄色いのですが、
冬場、生草が少なくなってくると、とたんに白くなるみたいです。

そう言えば、ヨード卵とか栄養素が添加されてる卵を食べたことがありますが、
黄身がびっくりするぐらいオレンジ色で、思わず「ひょえ~!」と声が出たことがありました。

その色が一般的な色なのに…白い黄身に慣れてしまっている自分にも驚いたです。

No title

いつ頃、本が出ますか。
一冊、贈ってやりたいひとがいるので、予定を教えてください。

No title

ほんたべさん、こんばんわー。平飼養鶏のお話は興味深かったです。僕は毎朝卵を食べているのですが、できれば平飼養鶏のほうがいいなぁと思いました。
効率を求めると、ウインドウレス鶏舎の方がいいのでしょうけれど・・・生産者が、命を粗末にしてはいけないのではないかと考えさせられました。

Re: No title

田中さん

本…すみません。まだ予定は全くありませんのです。
いつか出版できることになったら、お知らせいたします!

Re: No title

駆動さん

ウインドウレス鶏舎は鶏インフルエンザの流行時に、閉鎖系なので感染しなくていいと言われてましたが、
日本での鶏インフルエンザの第一号はウインドウレス鶏舎から出ました…。理由は不明です。

やっぱり生きものなので、いくら経済動物とはいえ、
生きものらしく育ったものの方がいいなあと私も思います。

はじめまして!

ほんたべさん。こんにちは。

わたしがアルバイト先で毎日お世話をしている鶏さんの卵は
「大地を守る会」に出荷してますよ!!

なにげなく、ブログをさまよってるうちにこの日記にたどりつき、
なんだか嬉しくなり おもいきって コメント してみました(笑)


Re: はじめまして!

絢花さん

こんばんは。ご訪問ありがとうございます。

大地を守る会に出荷していらっしゃるなら、家に届いているかもしれません。
生産者カードをしげしげと見ることはないのですが、きっと食べてるんじゃないかな。
あ、でも出荷日によって配送曜日が違うかも…。

大地の卵を食べてると、他の卵は食べられなくなるんですよ~。
やっぱり知ってしまうと、きちんと履歴がわかってないと怖くて。

毎日卵を産んでる(たぶん時々サボっている)鶏さんたちによろしくお伝えくださいませ。
今後ともよろしくお願いいたします。

ほんたべ

No title

>
はい!!
よろしく伝えておきますね~(笑)♪

わたしは 自分の収穫している卵で
毎朝「 卵かけごはん 」をいただいていますが、
食べ飽きるっていう感覚が まったくありません(笑)

毎日感動のおいしさです♪
健康な鶏の新鮮卵は知ってしまったら戻れない味ですね♪

Re: No title

綾花さん

よろしくお願いします!

卵かけごはん、おいしいですよね! 私も大好き。
白飯と卵…もう抗えないおいしさ…ついつい食べ過ぎてしまいます…。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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