野生動物と肉とわたくし-おばあさんは山へ鹿撃ちに

gazou 166
25歳のとき、高野山に修行に行って阿闍梨の位をもらって
尼になるのはどうだろうと真剣に考えたことがあり、
ちょびっとだけ仏教を勉強した。結局結婚したので修行には行かず、
煩悩にまみれた人生を送っております。



ここ数年、冬になると庭にやってくるヒヨドリを見て
「あれ食べたらおいしいかなー」なんちて考えているわたくしだが、
生まれた時からこうではなかった。はて? いつからこうなったのかな?

つーことで、野生鳥獣及び肉についての記憶をたどってみた。

0歳~18歳
世の中に牛豚鶏以外の肉があるなんて想像もしていない。つーか、
豚肉が大キライで、牛肉も脂が、鶏は皮が食べられず、母を困らせる。
小学校三年のとき、親戚のおばちゃん宅でハチの子ごはんを出され
絶対ムリーと泣き叫ぶ。

19歳
大阪のバイト先でばんごはんに鹿肉ステーキ(1,500円)を注文して食べてみた。
おいしいと全く思わなかったらしく記憶なし。

20歳
実家で合鴨肉の鍋を食べ、カモってんまいな!と感激。
ナルニア国物語を全巻読破。主人公の女の子二人がナルニアでの旅の途中、
ウサギを弓で射て皮をはいで食うシーンがあり、すげーなイギリス人と感心。
わたくしにはできないし。っていうかウサギって食えるんだと驚く。

21歳
会社の慰安旅行でぼたん鍋を食う。豚肉が大キライだったので、
猪肉もたぶんキライだとほとんど口を付けず赤身をちょびっとだけ食べてみて、
心のなかの「二度と食わなくていいものの箱」にしまう。

22歳~26歳
鳥取に戻る。この間、岩ガキ、サザエの内臓、ふぐやタラの白子、鮎など、
それまで敬遠していた水産物が食べられるようになり、
人の味覚って変わるのだなと実感。

27歳
東京に引っ越す。渋谷のくじら屋でくじら肉をさまざま食べてみて、
給食のくじらよりもおいしいけどムリに食べなくていいなと思う。
(お酒が呑めるようになった今ではくじらはかなーり好き)
まだトンカツなんて一生食べなくていいと思っている。

0971.jpg
鳥取で牡蠣と言えば岩ガキで、広島の牡蠣は食わないんだが、
子どもの頃は岩ガキもみんな食べない。自衛本能かなー。
それがある日突然食べられるようになるから不思議です。



28歳
某D社入社。新人研修で屠畜場に行き、牛の屠殺を見学。
ハンマーによる原始的な屠殺方法で失敗してかわいそうなことになった。
「ちゃんと屠殺されるのをもう一回見る」と言い研修担当を呆れさせ、
同期の体調が悪くなる。彼はその後吐いたらしい。

某D社の社員食堂でトンカツを食べる訓練をし、豚肉が食べられるようになる。

29歳
豚が生まれてから肉になるまでという企画を立て仙台に取材に行った。
近代的な屠畜場を見学しワクワクする。養豚農家に3日間へばりついて、
交配・去勢・出荷・屠殺など出産以外の全てを見学させてもらう。

肉は最初からスライスされてパックに詰められているわけではなく、
誰かが育て、誰かが屠殺し、誰かが肉にしてくれていることを知る。
パックに入っているのは生命のかけらだ。
であれば、自分にもそのかけら分の罪があると考えた。

これ以降、かわいい子豚の写真を見ると肉が食べられなくなるから
情報誌に載せないでとか口走る人とは友だちになれないと思う。

35歳
ベトナムでカエルのフライを食べる。鶏に似ているがうっすらと川の味がした。
「ムリして食べなくていいもの箱」に格納。
レストランで出てくる川魚は臭くて全く食べられなかった。

36歳
北海道出張で帯広から富良野に移動中、東大の演習林でヒグマに遭遇。
農家が慌てて車の窓を閉めたのを見て、ヒグマはコワイもんだと認識した。
情報制作部署から産地担当部署に異動。

37歳
担当産地から「タヌキが取れたから食べに来い」とか
「小鳥が取れたから食べに来い」とか電話がかかって来るようになる。
ヒヨドリ・ムクドリ・スズメを初めて食う(タヌキは臭くてムリ)。
砂糖醤油炒めで食べたらおいしくて、この後小鳥を食べものと認識。
どの小鳥かわからなかったけど、ちょっとクセがあるよなあと思う。

gazou 010
肉用の豚は210日(LWDは190日)で出荷するからまだ若くて、
本当の大きさになっていない。完成形である種雄はサイのような大きさで
めっちゃ恐ろしく、飼ってる人でも背中を見せると危険らしい。
この写真はデュロックの種雄候補(まだ小さい)。顔は可愛いんだけど。



某D社に茨城の農家から鯉が送られて来た。
産地担当が一日かけて調理し、事務所中に鯉のニオイが充満し皆が嫌がる。
鯉を「二度と食べなくていいものの箱」に格納。

翌日、同じ産地から送られた鯉を持て余した某R社から
「食べてください」ともう一匹届き、産地担当が涙目になる。

38歳
ビストロでウサギを食う。微妙なクセがありたくさん食べるのはムリと思う。
実家でマガモ・ヒヨドリを食べる。ヒヨドリがめっちゃおいしくて、
なぜだと聞くと、小鳥のクセは冷凍すると無くなると教わる。

39歳
山梨の農家に連れてってもらった居酒屋で食べた味噌汁の底から
タニシが出てきて椅子から飛び上がるほど驚く。

また「ネコっておいしいよねー」「泡が出るけどねー」「泡はやだね~」
とかいう農家のおじさま方が戦中・戦後に食べた野生動物の話を聞き、
おなかがペコペコになったら自分もネコを食えるだろうかと悩む。

41歳
モクズガニ初体験。川の味がした。どんなに泥抜きをしたとしても
鳥取生まれの自分には川のカニは食べられないと思う。

42歳
長野県の温泉旅館で鯉を食う。
清流で泥抜きされたとかで全く臭みがなくおいしく食べられた。
心のなかの「食べられるものの箱」に鯉を格納し直す。
処理のまずさ、手順についての情報が脳内にインプットされる。

りんご農家で蜂蜜を採るのを見学。
そこで取れた副産物、ハチの子&サナギをバター炒めで食べさせてもらう。
甘くてものすごーくおいしかったので一人でどんどん食べてしまった。
ハチの子を「かなりおいしい食べものの箱」に格納し直す

その他の昆虫、ザザムシとかジバチとか、一番おいしいのはカミキリの幼虫だよね、
食べてみる? 的な話は、耳にフタをして聞こえなかったフリをする。

IMG_7916.jpg
これが熊です。ヒグマです。すげおいしかったです。
二日酔い防止にとかで熊胆もひとかけら食べさせてもらったけど、
翌日は正しく二日酔いだったが、あれは何に効くのだろう。



43歳
フレンチレストランで友人のメインディッシュのハトを味見。
血のニオイがきつくて吐きそうになり息を止めて全部飲みこむ。
心のなかの「食べなくていい箱」にハトを格納。

新宿の羊料理屋でザリガニを食べたら泥の味がして、
心のなかの「二度と食べなくていい箱」に格納。

44歳
知床の鹿猟に同行。
猟師が撃った若い雌鹿の内臓を出す場面でビビって心臓がドキドキする。
その夜、その鹿の肉を食べさせてもらう。ものすごく柔らかくておいしくてビックリ。
豚や牛同様、野生動物も若いメスがおいしいのだと認識を新たにする。
さらに熊鍋を食べさせてもらい、熊の味わい深さに驚く。

東京に戻って、猟師になるのはどうだろうとかなり真剣に考えたが、
「猟師は自分で鹿をさばかなくちゃいけないんだよ」と言われ、断念。
その後、アタシって鹿肉食えるんだぜ! と強気になり、
銀座のフレンチで鹿を注文したら臭くて食べられず涙目になる。

45歳
再び知床で鹿猟の見学。鹿は獲れず、定置網漁の船に乗せてもらった。
鮭をもらって帰って食べたらめっちゃおいしくて、お店で売ってるのはなんなんだと思う。
「鉄砲の免許取ったら猟に連れてってやるから」と勧誘されるが
「さばけないからムリー」と丁寧にお断りする。

46歳
代々木上原のフレンチで鹿を食べる。全然臭くない。なぜ?
鹿の味の差は個体差もあるかもしれないが
主に処理方法やその後の管理による品質の問題ではないかと思いつく。

47歳
知床の鹿猟に同行。吹雪で山に行けないので鴨撃ちに連れてってもらう。
死んだ鴨を初めて見て、あり得ない方向にぐんにゃりと曲がる首にビビる。
相変わらず「鉄砲の免許取れ」と言われるが「ムリー」と断る。

48歳
全日本ジビエ協会のメンバーになる。

IMG_9060_20150831101519e69.jpg
若い雌鹿のモモ肉。注文するときは「バンビ」指定。
届いた冷凍パックに「バンビ」って書いてあってちょっと笑った。
柔らかく臭みがないが通のヒトにはちょっと臭いほうがうまいらしい。
基本女性にはそんな臭みいりませんから! と言いたいわたくし。



50歳
知床の鹿猟に同行。目の前でさばかれる鹿を見てもなぜか平気になっていた。
撃った鹿の目に雪がべったりついていたが、死んでるから鹿はもう気にしない。
生命が失われるとあっという間に単なる肉の塊になることを実感。
鹿を動かしてた生命はどこに飛んでくのかなー。

漁師のおじさんたちが「若いメスより若いオスのほうがおいしいよね。
あのちょっとした臭みが味わい深くて」と話すのを聞き
野生動物の肉は人によって好みが全然違うことを認識する。

秋、若いメス鹿の肉指定で買ってイベントで食べてみる。
「今までの生涯で一番おいしい肉」と小学生の女の子が言ったのを聞き。
肉が適切に処理されている業者で若いメスを指定すれば
臭い肉が苦手な人でも食べられると実感した。

51歳
六本木のフレンチで鹿を、埼玉のイタリアンで鴨を食べたが
どちらも臭くて悲しくなる。ジビエの品質とはどうなっているのか、
もしくはこの臭い肉がシェフの好みなのか、であればレストランを
どう選べばいいのか、などあれこれ考える。

52歳
全日本ジビエ協会がようやく始動。猪鹿肉を食べるイベントを開催する。
猪肉は鹿よりはるかにおいしいことを知り、すげー損した気持ちになる。

ジビエ協会のイベントの二回目、女性ハンターを講師に招き、彼女が
「エゾライチョウがすごくおいしくてハンターになった」と言うので
ものすごーくエゾライチョウが食べたくなる。

イベント翌日、ハンターになろうと決意し現在に至る。
おしまい。

こうして見ると、ターニングポイントはどうも某D社入社のようだ。

いろんな経験をさせてもらって、某D社、ほんとにありがとう!!!
いつか猪鹿とか小鳥とかでご恩返しをさせてもらうってことでお願いします。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR