わたくしたちはそもそも獣肉を食べていなかったのか

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先日野川べりをチャリで走ってたらコガモを見つけました。
今までずーーーーっと子どものカルガモかマガモだと思ってました。
狩猟免許試験おそるべし!!! (以降鳥の写真提供・高取寛氏)
あ、これはカルガモですけど。



「日本人は肉を食べる習慣がなかった」と考えている人は多い。
わたくしも最近までそう考えていた。

仏教の伝来によって肉食はケガレにつながることから禁忌となり、
明治時代まで獣肉を食べていなかったと学校で教わったような気がする。
果たしてほんとうにそうだったのかな? ってことで調べてみた。 

獣肉を食べていなかったと言われている根拠は、
675年に出された天武天皇の勅令であるらしい。

「庚寅詔諸國曰 自今以後 制諸漁獵者 莫造檻 及施機槍等類 亦四月朔以後
九月三十日以前 莫置比滿沙伎理梁 且莫食牛 馬 犬 猿 鶏之肉 以外不在禁例
若有犯者罪之」

→肉に関する部分のみ翻訳
「4月1日から9月30日まで牛・馬・犬・猿・鶏の肉を食べてはいけません」

食べてはいけないのは人間にとって有用な動物のみで、しかも農繁期だけ。
「使役用の動物を食ったりないでまじめに農作業やれ!」ってことか。
ここで驚きの事実がひとつ→鹿と猪については全く禁止されていない。

つまり農繁期でも鹿と猪は食っても良かったのだった。

10月1日以降、食べてはいけないとされていた牛馬犬猿鶏を食べたかどうかは
推測するしかないのだが、わたくしは絶対に食べていたと思う。
身近にいる家畜(使役動物)が弱ったら食わないはずがないのだ。
当時食料に余裕はないはずだ。おなかが減れば食うのはあたりまえである。

この勅令が出た後、貴族や僧侶などのやんごとない方々、武士の上流階級は
獣肉を食べることが認められなくなったようである。獣肉って四足の動物のことね。

理由は宗教的な禁忌によるものだ。血のケガレとかなんとか的な。
しかし農民や町民などの一般庶民はその限りではなかった。

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昨日家の前にヒヨドリの羽毛が大量に散らばっておりました。
猫の仕業でしょうが、ウチの近所にそんな野性的な猫がいることに
むしろ驚きましたです。おいしかったのかなー。


江戸時代後期になると、獣肉は公然と売られ食べられるようになる。
肉を扱う店のことは「ももんじ屋」と呼ばれ、肉食を「薬食い」と呼び、
猪肉を山鯨(やまくじら)、鹿肉を紅葉(もみじ)などと言って食べていた。

建前上は禁止だが実際にはその限りではない、というのは
わたくしたち日本人が得意とするところだろう。

例えば5代将軍・徳川綱吉の時代に「野菜初物禁止令」という、
ナスやたけのこを早く出荷することを禁止するお触れが出されたことがある。

このお触れは、農家がコメや麦などの基幹作物よりも、
高く売れる初物栽培に熱中したことから出されたが、
現実にはほとんど守られず、その後、何度も何度も出されている。

ちなみにウサギはどー見ても四足だがそうではないと考えられていたらしい。
という説がある。だからウサギは一羽二羽って数えるんだと。
やるな、日本人。なんて感じで、必要に応じて食べていたのではなかろうか。

さて江戸時代の狩猟とはどのようなものだったか。

農民は鉄砲を持ってはいけないから、わな猟が主だったのかも、
なんて思ってたがそうではなく鉄砲も使っていたらしい。

【1870年(明治3年)明治政府がそれまで幕府や藩が農民に貸し与えていた
鉄砲を回収したが、その数は実に150万挺であったという。ちなみに平成19年度の
我が国の猟銃の総数が約30万挺である】『狩猟学』朝倉書店刊 より引用

江戸時代の鉄砲の数ハンパありませんね!!!

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長野県松川町で見つけたシシ垣。テキトーに積み上げてる感じだけど
崩れちゃったのかもね。なんとなくハドリアヌスの長城みたい。



さらに現在同様「鹿猪の駆除」も行われていた。農民が藩に対して
「猪や鹿を駆除したいから鉄砲貸して」という申請を出して借り受けていたようだ。
だからこそ上記のように大量に鉄砲が残っていたのだろう。

また、現代の電柵とも言える「シシ垣」という鹿・猪よけ目的の石垣の跡が
全国各地にまだひっそりと残っている。当時から猪鹿は農民の敵なのだった。

駆除した鹿や猪の肉は食べ、毛皮も利用していただろう。
野生動物は余すとこなく使える天然の資源であり、牛や豚より身近な肉だった。
そうではなくなったのは高度経済成長期以降である。

養豚や養鶏技術が確立され、効率よく肉が大量生産ができるようになり、
道路が整備され物流網が発達すると品質を維持したまま肉が流通できるようになる。
その結果、庶民にも牛豚鶏の肉がじゅうぶんに行き渡るようになった。

身近だった野生動物の肉はあっという間に特別なものになった。
お店に行けばいつも同じ品質のおいしいお肉が買えるのに、
わざわざ山に行って鹿や猪を取る人はいないだろう。

手間がかかり品質も安定しない野生動物の肉は急速にその輝きを失い、
一般庶民から遠い存在となり、なぜだか輸入された言葉「ジビエ」と呼ばれ
いつの間にかレストランで食べる付加価値商品になった。

日本人が豊かになり食卓にさまざまな料理が並ぶようになると、
わざわざ野生動物を狩る必要はない等の考えを持つ人たちも現れる。
殺生を嫌がる風潮もありハンターは当然のように減少した。
そして野生動物の被害は昨今年間200億円を超えるようになった。

鹿個体数
ハンターの人々の話聞いてると猪はおいしいしお金になるけど
鹿は好きキライがあったり売れなかったりであんまり人気無いみたい。
北海道にしか行ったことなかったから鹿の話ばっか聞いてたけど
みんな猪が好きなのね。んじゃ鹿を積極的に食べないとねえ。



野生動物被害のタネはわたくしたち日本人が豊かになっていく過程でまかれた
と言ってもいいだろう。それは社会の変容によって芽吹き、かなりの大木になった。
誰かの責任ではなくわたくしたちの【現在】がこの木を育てたと言ってもいい。

であれば、わたくしたちにできることは何かあるだろうか。

とりあえずレストランに行ったらイベリコ豚ではなく猪を食べる。
くらいしか思い浮かばない今日のわたくし。
みなさまも考えてみてくださいまし。


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No title

はじめまして。九州で趣味のハンターをしているじゃんと申します。
加工食品メーカーに勤務しており、ほんたべさんの記事は非常に興味深く拝見しています。
とてもフェアでバランスのとれた見解が素晴らしいと思います。

私は野生動物被害増加のタネはこのように考えます。
http://capturefood.blog83.fc2.com/blog-entry-916.html

色々と難しい問題も多いですね。

Re: No title

じゃんさん、こんにちは。
コメントをありがとうございます。


> 加工食品メーカーに勤務しており、ほんたべさんの記事は非常に興味深く拝見しています。
> とてもフェアでバランスのとれた見解が素晴らしいと思います。
>

ありがとうございます。
今後共よろしくお願い致します。


> 私は野生動物被害増加のタネはこのように考えます。
> http://capturefood.blog83.fc2.com/blog-entry-916.html


拝見しました。楽しいブログですねー。

野生動物がここまで大きな被害を与えるようになった理由は、じゃんさんが書かれているように山の手入れをしなくなったこと&農業の衰退&生態系の頂点にいるはずの動物(オオカミ)の絶滅などが複合的に組み合わさったものだと考えています。

私はそもそも狩猟から野生動物被害を見るようになったわけではなく、農業被害という部分から入りました。

農村周りをしている間に見た野生動物被害と、その原因を考えていく過程で、狩猟というひとつの解決策について興味を持ったという感じです。
>

> 色々と難しい問題も多いですね。


それぞれの立場でできることをしていく必要があると考えています。
広い視野を持ち、「誰のために?」と考えることも必要だと思います。

そうでなくては環境省が作った認定事業者制度などうまくいかないと思っています。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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