農民の心と思いを醸す蔵―山形県・東の麓酒造

gazou 004
農民が農民のために造った酒「耕心」。
加水してない原酒なので、キレはいいのにがつんとくる力強さが自慢。
生ならではの華やかな香りも楽しめるお酒です。



山形県の農民たちの団体「おきたま興農舎」が、自分たちの米で造った純米吟醸酒があります。
農民の心をこめたその酒の名は「耕心」。

先日「耕心」を仕込んでいる南陽市の「東の麓酒造」に蔵見学に行ってきました。

おきたま興農舎では、山形県オリジナルの酒米「出羽燦々」が生まれた時、
酵母も米も、全て山形県産のもので酒を作ろうと、
オリジナル純米吟醸酒を、東の麓酒造に依頼しました。

東の麓酒造は規模としては500石と、小さめながら全国新酒鑑評会で何度も金賞を取った、
知る人ぞ知る、おいしいお酒を造っている蔵です。

地域とのつながりを大切にしていることから、
おきたま興農舎の試みを快く引き受け、現在に至ります。

gazou 058
東の麓酒造社長・遠藤孝蔵さん。創業141年の小さな蔵、遠藤さんは8代目にあたります。
蔵人は冬季の間も基本的に地元採用。家庭的な雰囲気で酒造りがされています。



最近では「オリジナル酒づくり」が流行のようになっていますね。

しかし最低ロットとか酒米の手配などで、酒蔵側に負担がかかることが多く、
仕込んだ酒の売り先などで二の足を踏まれることも多いとか。

地酒ブームが過ぎ去った昨今では、通常の酒ですら販売に苦心するのですから、
知名度も取り扱ってくれる酒屋もない「耕心」は、古酒になることも多い酒。

古酒の価格が高額なのは冷蔵庫代や場所代など、
何年も「そこにあり続ける」ことが経費の上乗せになるからなのですが、
東の麓酒造では地元の農民の心意気を受け、冷蔵庫代・保管代もなんのその。
瓶詰めした後マイナス8度で、できるだけ空気に触れないよう大切に保管しています。

普通の酒蔵ではこんなことはしないもの。
長年地元で酒を造り続け、皆に愛されてきた蔵だからこそできることなのでしょう。

古酒になった「耕心」は、より味わいが増すことを発見したのが去年のこと。
どっしりとした中にもキレのある、おきたま興農舎自慢の酒に成長しました。

農民と酒蔵の思いがこもった耕心は、加水しない純米吟醸生原酒。
今年度産の残りはあと400本…来年中に売れるといいですね。本気で祈ってます。

gazou 054
試飲させていただいた酒。手前からわたくし好みの順番に並べました。
東の麓大吟醸は、平成22年全国新酒鑑評会で栄えある金賞を受賞しました(写真のものとは違います)。
また、平成22年度全米日本酒鑑評会の金賞も受賞。スゴイですね! 海外の人にもわかる酒なのです。
国内での需要がいまひとつ伸びない日本酒業界、今後は海外への販売も視野に入れています。



お酒に関するもっとも古い文献をご存じですか?

それは私の出身地に近い土地で起きた出来事、
「日本書紀」にあるヤマタノオロチ退治の物語です。

八つの頭がある怪物(キングギドラじゃないよ)「ヤマタノオロチ」は、
たらふく酒を飲んで酔っ払い、簡単にスサノオノミコトに退治されてしまいます。
オロチの尻尾から草薙の剣が出てきたという有名なお話ですね。

オロチが飲んだこの酒は、口噛み酒か果実酒であろうと考えられています。

果実酒→果実の糖をアルコールに変えるだけの酒は私でも造ることができます。
しかし、日本酒はちょっと敷居が高い。なぜなら日本酒は、
世界でも珍しい方法―並行複発酵という方法で作られているからです。

糖化と発酵を断続的に行うその方法は、米の澱粉を麹が糖化し、
その糖を酵母がアルコールにするというもの。
米の澱粉を利用して酒を造る…まさに、ごはんの国、日本人のためのお酒です。

gazou 027
米を蒸す釜とボイラー。以前は下に人がいて薪をくべて火を焚いていたそうです。
火加減がとっても難しかったとかどうとか。
昔ながらの設備を生かし、できるところは近代化した…東の麓酒造さんの蔵はそんな感じでした。

gazou 025
蒸し上がったお米を釜から外に出すときに使う下駄と木のシャベル。
本当にむか~しからこの蔵で使われてきた、昔ながらの道具です。感動しました。
下駄は米をつぶさない・滑らないという利点があるそうですが、指は火傷しないのかな。



さて、平成4年に「特級」「一級」など日本酒の等級による表示は廃止になり、
現在では原料や製法が一定の基準を満たすもののことを「特定名称酒」と呼び、
それ以外を「普通酒」と読んでいます。

私たちが日頃よく目にする純米酒、吟醸酒、本醸造酒などは特定名称酒。
醸造アルコール、糖類、酸味料、うま味調味料などを加えてあるものなどが普通酒。

普通酒はあんまり飲まないと思うので、特定名称酒のことのみおおまかに言うと、
純米酒<吟醸酒<大吟醸酒ってな感じで、どっしり感が薄くなり、
スッキリとした味わいと華やかな香りが強くなっていきます(ように思います)。

gazou 018
35%まで削ったお米は丸くてとっても小さく、これが酒になるなんて信じられない感じ。
科学技術の進んだ現代ならではの酒、吟醸酒。江戸時代のお殿様でもこんな酒は飲めなかったのです。
素直に「この時代に生まれてきて良かった!」と喜んでしまいますよね~。

gazou 029
米の澱粉を糖化する麹を米につけて繁殖させ、麹米を作っているところ。
麹のお部屋は全部杉板張り。暖かく清潔で、麹のニオイが充満してました。

gazou 034
その麹のもと。箱に「もやし」と書いてありました。
「これは愛知のもやし屋さんのもの」と社長。ほんとにもやしって言うんだなあ…。

gazou 030
麹カビをつけた米、ちょっと白くなってますね。これが真っ白になると完成です。


こういう言い方をすると日本酒好きの人に怒られそうですが、
吟醸や大吟醸は、ワインのようにするすると飲める女性向きの酒。
(中にはサクサクとキレのいいおじさま好みの酒もありますけど…)

その理由は飲み口の良さと果物や花のような芳香にあります。

米の周りを60%以上削り、芯の部分を使う吟醸酒(大吟醸酒は50%以下)は、
外側のたんぱく質・脂肪分などがそぎ落とされた雑味のあまりないお酒。
普段使いのお酒ではないと言う人もいます。

でもがっつりとした米糠のニオイのする酒を熱燗で…なんてのはおじさま方にまかせ、
口当たりのいいグラスで色合いも楽しみたい、女性にはやっぱり純米吟醸酒。

焼酎のような蒸留酒は、ごはんを食べながら飲むにはちょっと強すぎる。
さらに果物の香りが強すぎるワインでは、和食にはちょっと…って感じです。

ニッポンのごはんには、やっぱりお米のお酒ですね。

gazou 038
まず最初に、麹と酵母、米を合わせてもろみを作ります。
味を一定化させるため、最初に小さなタンクで酵母を増やし、それを大きなタンクに移すんだそうです。
もうすでにお酒のあま~い香りが漂っておりました。

gazou 041
これ全部日本酒のタンク…酒好きにはたまらん風景ですなあ!
写真は案内をしてくださった高橋啓さん。

gazou 045
「わーいわーい」と酵母の小さな声が聞こえてくるような勢いで、バンバン発酵しています。
きっとこれ、お米サイダーみたいでおいしいんだろうなあ…。
自分で酒を作ると、この段階が一番おいしいんですよね(あとはなんか酸化していくだけって感じ)。

gazou 050
仕込んだ酒が貯蔵されているタンク。今回初めて知りましたが、
吟醸などの特別な酒以外は、新酒と昨年の酒の味が変わるとお客様が気づいてしまうので、
新酒と前年の酒を少しずつブレンドしながら味を確認し、売って行くそうです。
そんな配慮がされているとは…なんだか少し感動しました。

gazou 055
昔ながらの道具と便利な道具が混在している蔵の中。
お酒のあまい香りが漂う清潔な空間は、近代的な蔵しか知らない私には貴重な経験でした。



焼酎ブームと言われて久しい昨今、
日本酒の売り上げはいまひとつはかばかしくありません。

以前、大手酒造メーカーの「お米だけで造ったお酒」とかいうCMを見て
「じゃあ、今まで他に何を入れてたんですか? ねえねえ、ねえったら!」と
思わず突っ込んでしまった私ですが、
「米だけで造った酒」が付加価値商品になるってことは、日本酒ってどんなものなのか、
知ってる人しか知らないってことなのだろうなあと思います。

日本のおいしい水と米を使い、何百年もの発酵の歴史と文化を持つ酒。
もう少しがんばって欲しいですね。

私も飲みすぎない程度に、4合瓶くらいで応援したいと思います。

gazou 059
きっと今はもう雪景色であろう東の麓酒造さん。蔵見学もさせてもらえます。
詳しくはホームページを↓

東の麓酒造URL↓販売店の紹介もされています。
http://www3.omn.ne.jp/~yamaei/
蔵人のブログ「蔵人日記」↓
http://blog.goo.ne.jp/kurabito/

「耕心」にご興味のある方↓おきたま興農舎のホームページ
http://y-umaiya.com/list/index.html


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

色々とありがとうございました

先日は取材お疲れ様でした。天気も良く冬空じゃないような気温でしたね。

今回の取材にて特集していただいた純米吟醸酒「耕心」は、置賜興農舎様に育てていただいた商品となっており、会社の数あるプライベートブランド品の中でも古い歴史のある吟醸酒です。蔵人一同ご愛飲いただいている皆様方に本当に感謝しております。

どんな商品でもそうですが、発売した直前は目新しさで自然と売上が伸びます。しかし、本当に大切なのは「いかに長く飲んでいただけるお酒を造るか」。本当に酒造りや営業を通して悩むところです。今年限りの流行などに決して流されず、一貫した考えを持って造ったお酒。「耕心」はそんなコンセプトの元で毎年同じ品質にて出荷を行っております。

これからも、皆様に愛される「耕心」を造っていきたいと思います。

この度は、このようにご紹介をしていただける機会をいただきまして本当にありがとうございました。またのお越しをお待ちしておりますねe-257

Re: 色々とありがとうございました

高橋さん

もう南陽市は雪景色でしょうか。

お忙しい中対応していただき、あれこれ質問してすみませんでした。
ありがとうございました。

お酒の甘い香りが充満していた蔵、わいている酵母、
杉の板ばりの麹のお部屋など、興味深いものばかりでした。

買って帰った純米酒生があまりにもおいしかったので、
今年の年末酒に指定したいと思います(笑)。

耕心もおいしいのですが、原酒なのでへなちょこな私にはキツイです。
耕心は夫におまかせして、私は純米生を飲むことにします。

おいしいお酒は心を豊かにしてくれますよね。
食事とともに楽しめるのが、日本酒のいいところですよね。

今後もおいしい酒を作り続けてください。
よろしくお願いいたします。

ブログの更新も楽しみにしていますね~。

No title

ほんたべさん、こんばんわ。今回の記事はとてもたくさん書かれているように思えました。やはり、好きな食べ物(飲み物)となると、いっぱい書きたいことがあるのでしょうね。うんうん。

35%まで削ったお米。こんなに丸っこくなるのですね。はじめてみました。そう思うと、お酒って本当に美味しいところだけで作っているのだなぁと感心します。

Re: No title

駆動さん

酒が好きなんですねえ…と何人かの人に言われました。

とても感じのいい蔵で、社長も地域のことを第一に考えてる人で、
たくさん書きたいことがあったので、少し長くなってしまいました…すみません。

ところで日本酒、すごく好きです。
でも翌日ダメダメ君になってしまうので、あまり飲まないようにしています。

山形県は出羽桜が有名ですね。あそこのお酒も好きですよ~。
近くにいい蔵がたくさんあって、駆動さんがうらやましいです。

プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR