自社生産の有機穀物で「有機真鴨」にチャレンジする人-井村辰二郎さん

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農産工房金沢大地・代表の井村辰二郎(しんじろう)さん。
金沢大地はオーガニック農産物の生産及び農産加工品の製造を行っています。
わたくし的に、自社で穀物を栽培する強みを活かした事業展開にシビレました。
皆でシビレましょう。WEBサイト→http://www.k-daichi.com/


合鴨農法ってあるでしょう。
除草剤の代わりに鴨に除草してもらう有機栽培でよく行われる農法。

んでね、あの鴨、一羽いくらするか考えたことあります?
合鴨800円、真鴨で1,000円もするんですってよ。
えええええー! すげー高いじゃん!!! ビックリ!!!!

10アールに20羽入れて1ヘクタールだと、えーとえーと、に、
にじゅうまんえん?? ひいーーーー!! 

合鴨農法の人、すげー!! と今さら思うわたくし。

さて、この鴨ちゃんたちは子鴨の時期にカラスやキツネによく食われる。
その際は買い直しになりさらに経費がかさんだりする。だったらさあ、
お役御免になった鴨を肉にして儲ければ? なんて素人は思うが、
雑草食ってた鴨なんて全然おいしくないから肉用に肥育せねばならない。

肥育ってのはどういうことかというと、鶏舎ならぬ鴨の家を作って
さらにおいしくなるよう飼料も与えて毎日毎日世話しないといけないの。
肉の味を良くするには穀物食わせないといけないから飼料代もかかるの。

コメ作りながら鴨の世話なんてしてる暇ないのね。んでもって、
最後は自分で屠畜しなくちゃならないの。

鴨の羽って鶏みたいにスカスカ抜けなくてキーってなるし、
っつかそもそもコメ農家が鴨の屠畜なんてするのイヤなわけ。
これがイヤで合鴨農法やめる人もなかにはいるわけ。

ってことで、除草期間が終わったお役御免の鴨ちゃんたちは、
業者に引き取られてどこかに連れて行かれるらしい(BGM・ドナドナ)。
おそらく肉にはなっておらず、肥料とか飼料とかになるのだろうが
そのあたりは悲しいからちゃんと聞いていないし不明だ。

合鴨農法とは実は非常に金のかかる農法なのだった。

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飼料の穀物クズや青菜などは全て自社の生産物で賄えて、
しかもそれは全部有機JAS取得だから当然有機飼料なわけで、
「有機真鴨」なんてチョー付加価値商品なわけで。すごいよね。



その邪魔っけな鴨を自社農園で栽培している有機穀物で肥育し、
「有機真鴨」という付加価値を付けて販売することを考えた人がいる。
金沢で農業と農産加工業を営んでいる金沢大地の井村辰二郎さんだ。

わたくしは「鴨邪魔説」しか聞いたことが無かったため
この取り組みを聞いたとき、非常に驚いた。
通常の肥育だとめんどくさいし手間かかるし売れないだろうが、
そこに「有機」という付加価値がつけば話は別だからだ。

有機畜産は日本では非常に難しい。とくに飼料の手配が問題で、
牛乳ならまだ有機は取得できるが、牛や豚では価格的に合わないし、
まず飼育方法から変えなくてはならず、そんなことはできはしない。
そんなニッポンの畜産事情だが、鴨なら可能かもしれないのだった。

一般的な真鴨の買い取り価格はだいたい一羽3,000円から5,000円で、
そもそもが付加価値商品のため販売先はご家庭の主婦というより
レストランや料亭が主で、そこでも付加価値商品として販売される。
肥育期間中世話をしてもそれに見合う価格は取れるだろう。

すごいことを思いつくなあ! ってので、金沢に取材に行ってきた。

井村さんの田んぼと畑は金沢河北干拓地にある。
不勉強で知らなかったが金沢にも大潟村のような干拓地があったのだった。
【河北潟・1963年から農林水産省による国営事業として行われ、
約1100haの農地が1985年に完成した。(Wikipediaより)】

実は1964年には日本の米は供給過剰になっており、
河北潟ができた1980年代にはすでに減反政策が行われていた。
井村さんの父親は河北潟で漁業を営んでいたが干拓に伴い漁業権を放棄した。
当時は米はそれほど余っておらず、皆ここで米作りをする予定だった。

しかし干拓地が完成した1985年には事情が変わっていた。

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近江町市場内の直営店では自社穀物を使った加工品を販売。
「たなつや」という店名は穀・稲(の実)を指す「たなつ」から取ったそう。

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金沢で昔から食べられてきた麦芽で作った次郎飴を使い
砂糖は不使用の優しい甘さのジャムやアメちゃん、きなこのお菓子など
おいしそうなものがたくさん置いてありました。じゅる(よだれ)



減反が行われるほど米が余っているのだからと米作りは禁止され、
しょうがなく皆畑作に向かない農地で大根などの野菜を作り始めた。

水はけが悪い干拓地ではそういった野菜類は当然だがうまくいかない。
農業を辞める人が次々に出て耕作放棄地がどんどん増えていった。

周りの農地が荒れ地になっていく様を見ていた井村さんは、
1997年にサラリーマンを辞めて就農し、増え続ける耕作放棄地を
どうにかして再生したいと、麦と大豆を栽培することを考えた。

当初40ヘクタールだった農地は順調に作付を増やし、現在では
約200ヘクタールの農地を40名の従業員とともに耕している。

当初から栽培するだけでなく農産加工品も開発しようと考えていたため、
最初は大豆の加工品、豆腐から始め、現在は飴や麦茶など
農産加工品は多岐にわたる。なんとお酒や焼酎まであるのだ。

農産加工品を作ることで地元の雇用が増やせることも大きいが、
自社穀物で加工品をつくれば、畑から食卓までつながることができる。

生産者の顔だけでなく食べる消費者の顔が見えることも大切だと考え、
昨今非常に賑わっている「近江町市場」に直営店をオープンし、
自社で栽培した有機穀物を使った商品を販売している。

就農して18年でここまでにするのはとても大変なように思うが、
井村さんは就農時からビジョンを持っていた。その設計図のなかには、
現在すでに行われている農産加工などはもちろん、自社発電や食育など、
農業を中心にした生命と自然の循環が可能な事業が記入されている。

一歩一歩、着実に歩みを進めてきたことがよくわかる。
なんと真鴨もその循環のひとつなのだった。

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女優の杏さんが金沢にいらした際に取り上げられたという飴ちゃん。
金沢のマスコットキャラクター「ひゃくまんさん」が使われております。
九谷焼的な色合いのキラキラしたひゃくまんさん、意外とステキです。



井村さんは言う。

「有機真鴨には人間が食べられない穀物クズを使います。
人が食べるものを動物に食べさせていては飢餓はなくなりません。
牛肉1kgを作るのに必要な穀物量を考えてみれば想像できますよね。

現在では、安く、早く、食べものを作ることが良いとされていますが、
それは持続可能ではないでしょう。環境を保全すること、持続可能であること。
農業にはそういったミッションがあると考えています。なぜなら、この後
千年先でも、食べものを生産する農業という産業がすたれることはないからです。

持続可能というのはそういった意味もあるんですよ。
そういう思いを込めて「千年産業を目指して」という
金沢大地のキャッチフレーズを考えたんです。
ですから、この有機真鴨も大きな循環のなかのひとつなんです」

大きな設計図のなかのひとつの「輪」として有機真鴨を位置づけると
井村さんの思惑が見えてきてとても楽しい。循環の輪はくるくると回り、
地元も、またいまひとつぱっとしない有機の世界も巻き込みそうだ。

「有機真鴨」が成功すれば、また新しい何かが生まれるだろう。
なによりその「有機真鴨」が食べてみたいではありませんか?
そんな金沢大地から、井村さんの企みから目が離せない。

わたくし的には最近忘れがちだった「持続可能」という有機農業の役割を
再認識させてくださった井村さんに感謝である。

有機農業にはそういう役割があるんだよなあ。
昨今有機を標榜している人たちからそれが感じられないのはなぜなのかなあ。
なんて考えてしまった金沢行きでありました。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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