農薬を使い続けてしまう理由

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見つけやすくわかりやすい天敵くん、カマキリ。
冬の間に卵を見つけて畑に移植すると、春にはちっこいのがたくさん孵って虫を食ってくれます。



以前働いていた会社で、生産者の自主基準集という冊子を作ったことがありました。

農家手書きの原稿をテキスト入力し、レイアウトしている最中、
原稿の中に、どう読んでも「リーサージェンヌ」と読める見慣れない言葉がありました。

「タ、タカラヅカ…?」 私の頭の中には金髪巻き毛のオスカルが
高らかに愛を歌う光景が…ついでにその原稿にその絵も書いてしまいました。
そして農家に質問した担当者から返事とお小言がやってきました。

「あれさあ、リサージェンスなんだって。それと、もう原稿に落書きすんのやめてね」

リサージェンス…普通に暮らしていたら一生耳にしない言葉。
ざっくり言うと、虫に農薬が効かなくなる現象のことを言います。

ひとくくりに「害虫」と呼ばれていますが、畑や田んぼの中にはたくさんの虫がいて、
それぞれの虫に天敵がいて、食べたり食べられたりを繰り返しています。

画像9
アブラムシの天敵ヒメハナカメムシとその卵塊。でもこの虫、アブラムシと目が同じなので、
アブラムシを殺す農薬をまくと死んでしまいます。ヒメハナカメムシの登場は6月。
6月以降にアブラムシに効く農薬をまかないことが天敵温存につながるのです。
写真提供・市川泰仙


その中には、一年に一度卵を産んで死ぬものもいれば、
一年のうちに3代も4代も世代交代をするものがいます。

おおむね害虫と呼ばれ嫌われているものたちは世代交代が早く、
昨今の温暖化で一世代余分に世代交代するものまで現われているらしく、
虫の世界でも大きな変化が起きているようです。

さて害虫は農薬で殺す…これが近代農業の考え方なのですが、
毎回同じ農薬を使っていると、世代交代の早いものから抵抗性を獲得します。
最初に使った農薬で生き残ったものが、次世代を作るわけですから
同じ農薬を使っていると、生き残るものがどんどん増えていくというわけですね。

だいたい最初の農薬散布で天敵は姿を消しています。
ということで、害虫を食べるものがいなくなった状態の畑で、
農薬に抵抗性をもった害虫のみが増え続け、わしわしと作物を食べ続けるのです。

リサージェンス…恐ろしや。

病虫害3
なんの卵か同定不能…こんなちっこい卵からちっこい虫が孵るのですね。
よく観察しないと畑の虫は見つけることができません。(今回幼虫系の写真は自粛しております)



一度抵抗性を獲得した害虫はよその畑でも繁殖するため
地域全体で使える農薬がなくなって大変ってなことにもなります。

昨今では害虫に抵抗性をつけないよう、またついている害虫を増やさないよう
防除暦では同じ農薬を続けて使わないように指導されています。

しかし、古い考えの農家の方は「出た→まく→また出た→まく」を繰り返し、
ますます抵抗性をつけてしまう…なんてことになりがち。

今年、抗生物質の耐性菌が話題になっていましたが、
虫の世界でも以前から同じようなことが起こっているのでした。

さてこの天敵類、どれぐらいで戻ってくるのかというと、
絶滅系農薬を散布しなくなれば、半年ぐらいで戻ってくるそうです。
しかし散布し続けているとその都度死ぬわけなので、おそらく栽培期間中は、
天敵くんたちはほとんどいない状態が続いているってことのようです。

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果樹類の難防除害虫ワタムシ。ワタ状のものにくるまれているので強い農薬しか効きません。
通常の農薬散布をしていれば、あまりお目にかかることはないのですが、
低農薬栽培を始めると必ず現れ、皆が困る害虫です。農薬ってスゴイですね。



実は、土の中でも同じことが起きています。

健全な土には、土壌由来の病気を抑制する微生物が存在しているのですが、
昨今の指導は「土壌病害は土壌消毒剤で微生物を絶滅させることしかない!」なので、
こういった菌も病気を起こす菌も絶滅させてしまってから、作物を栽培しています。

無菌状態で作物が栽培できるので、殺菌剤が減らせられるかと言ったらさにあらず。

微生物の拮抗がなくなった畑では、特定の菌のみが繁殖することになりやすく、
結局、病気が発生するため、殺菌剤に頼らざるを得なくなるのです。

こういうのを「負の連鎖」って言うんでしょうか。

農業には虫も微生物も必要で、要はバランスなのだということを
もっと知ってもらいたいなあと思います。

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意外に大食漢のアマガエルくん。一日60匹のウンカを食べたという記録もあります。
大量の虫を食べてくれるのはいいんだけど、天敵も害虫も関係なく何でも食べちゃうのが難点。



耕作面積当たりの農薬散布量が世界でほぼ一番の日本。
いつまでこの不名誉な状態が続くのか…せめて3位位になって欲しいのですが。

それは有機農業に取り組んでいる方たちの双肩にかかっています。
天候不順の年が続きますが、みなさん、来年もがんばってくださいね!



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お釈迦様の手のひら

ヒメハナカメムシの画像検索からやってきました。
微生物の役割を研究・考察する傍ら、食育活動を通して微生物の大切さを感じてもらおうと奮闘中です。
判りやすい写真と的確な文章、とても大事なことを書かれた記事なのに、コメントが無いことが気になりました。
やはり一般的にはまだまだ難しい話なのでしょうか?

考えればすぐ判ることなのですが、何十億年もかけて微生物が作り出した環境を土台にして自然環境が作られ、その上に生き物の暮らしがあるのですから、殺菌しちゃそもそもダメなんですよね。殺菌したら繁殖力の強いものがスタートダッシュよろしく一気に増えて、不安定な世界をつくるだけですから。もちろん病気で抵抗力が落ちていれば微生物から隔離する必要もあるでしょうが、健康な暮らしは病院の外にあるはずです。
長文失礼しました。

Re: お釈迦様の手のひら

スズキさん

コメントありがとうございます。

> 判りやすい写真と的確な文章、とても大事なことを書かれた記事なのに、

ありがとうございます~。うれしいです。

> やはり一般的にはまだまだ難しい話なのでしょうか?

そうですねえ。わたくしの夫は「何のことかわかんない」と言ってました。
リサージェンス自体専門用語みたいなものなので、一般的にはわかりづらいと思います。

> 殺菌したら繁殖力の強いものがスタートダッシュよろしく一気に増えて、

人間でも表皮常在菌の働きが最近ようやく話題になってきましたね。
抗菌ナントカはかえって害があることが、知られるようになればいいなあと思っています。

冷蔵庫のなかに納豆とヨーグルトがあると、天然酵母は早く劣化するとか、
酒蔵の麹部屋には朝食に納豆食ったら入れないとか、
ぬか漬けのある家の主婦は風邪ひきづらいとか、そういった身近なことを
もっと知ってもらえるといいですよね。

「菌」=「ばいきん」のイメージが強いので、なかなか難しいのかもしれませんねー。

ちなみに今家庭菜園をやってるのですが、納豆菌と乳酸菌で自家製資材を作り、
葉面散布で病気予防の実験をする予定です。
(前回はトマトの葉カビはもちろんですが、きゅうりのカッパン病も一時的に抑制しましたよ!)

地道に皆さまに伝わるようにがんばりたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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